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吸血鬼

あ、こんな吸血鬼ないからね

知ってのとおり、適当ですよ

フィクションですから

 吸血鬼。明確な発生原因は発覚していないが、人の姿をしている。

 一般的には何かしらの未練があったりと、霊的なそれに近い。

 当然、血を吸う生物で、人に近いからこそ、人と交わり、それは広まり、ヨーロッパ、アジア、北米各地に広まり、その存在が確認されはじめたのは中世ヨーロッパ。

 巨大な宗教組織が、魔女裁判を行う中、人に噛み付き、血を吸い暴れた女性が最初に見つかった吸血鬼で、残された書物の絵画、その絵画の説明によれば、人との区別がつかない、となっている。

 

 彼ら吸血鬼にとって、人間の血液は魔法的に神聖なモノ、ではなくただの栄養素だ。

 それを吸収しないと生きられないが、無差別に吸う訳にはいかない。中世の中で吸血鬼は数が減り、残された少数は、人の中で生きて行かなくてはならなくなったからだ。

 人の中で生きる彼らは、愛する者を人間に作り、その相手が寝静まった間、睡眠薬等で眠らせた時等に血を吸い、生きながらえて来た。

 

 現代、純粋な吸血鬼の数は数えるほどで、世に出回っている吸血鬼の殆どは人とのハーフ、クオーターだったりと純粋ではない。

 しかし、吸血鬼としての力は残っており、血を吸う事は出来る。

 

 だが、純粋種よりも、ハーフ。ハーフよりもクオーターの方が魔法的な力が強い。だから現在、ゼルフレスト教団はクオーター吸血鬼を欲している。

 




 雪上を歩く朝倉準一は、吹きつける雪を睨みながら、その吸血鬼の事を思いだしていた。これを伝えられたのはつい先ほど、護符を介し、シスターライラから教えられた、何故このタイミングで、と考え始めた時、彼の視界の先。

 吹雪く雪の中、シスターが立っている。

 近づくと、シスターは振り返り微笑む。


「どう? シベリアは」

「最悪だよ」


 シスターは、ライラ。準一はここまで来た彼女に呆れ、ため息を吐いた。




「ねぇ」


 歩く中、シスターライラは前の準一に声を掛ける。「何だ?」


「気付いてる?」


 ライラは降る雪を見渡す。「これが、魔術だって」


「当の昔に気づいてたよ。俺の事象変換魔術が使えるからな。それに」準一はライラを見る。この極寒の中、自分と同じくそんなに寒そうではない。「あんたも事象変換してるだろ?」


「あら? 気付いてた?」


 答えず、準一は息を吐く。「で? 急な作戦変更だ。何かあるんだろ?」

 聞くと、ライラは脚を止める。「吸血鬼の話。言ったでしょ?」


「ああ」

「さて、質問。吸血鬼は何を欲する?」

「血だろ?」

「正解」


 この質問の意図が分からない準一は振り返る。


「さて、急な作戦変更だけど、最低のタイミング。何で最低のタイミングなんでしょうね?」

「その施設に結構な魔術師が居るんだろ?」


 準一が言うとライラは「ふふ」と笑い空を見る。「魔術師より性質が悪いのよ」


「言えば、吸血鬼のお姫様」

「お姫様? 吸血鬼の?」

「そうよ。しかも、あなたと同じ、イレギュラーな天使を持っているらしいわ」

「で、さっきの質問は?」


 ライラは顔を下ろす。「ハンニバル戦。何があった?」


「神の十字架、ブラッド・ローゼンの能力消失」

「能力はどうなった?」

「奪われた」


 じゃあ、とライラは続ける。「奪われたのは?」


「血と薔薇だ」

「はい、終了ー。もう想像が付くでしょう?」


 考え付いた準一は苦笑いする。「吸血鬼のお姫様は、その力を機械魔導天使に組み込む。だから、奪わせた……しかし、それで何であんたが出て来るんだ?」


「フランベルジェは特に関係は無いだろう?」

「大有りよ。……フランベルジェの特徴は、波状の刃。その意図は、相手に治りにくい傷をつけるのが目的」

「つまり、特殊な相手用に有効。魔術師や、得体の知れない生物」

「例えば、吸血鬼とかね」


 言うと、ライラは目を閉じ、息を吐くと目を開ける。「ミレイズ姉妹、ヴァルキューレ・シスターズは正真正銘。吸血鬼の血を引く人間よ」

 準一は少し驚いた。


「フランベルジェは、現代に生き残るまで変更されてね。特殊な血液を刀身に流す事で使用可能になるの。その血液は、吸血鬼」

「だから、あの2人が」

「そう、必要な血の量は、人の身体の全て。一滴残らずね。しかも、殺してはいけない」


 かなりエグイ武器だな、と準一が長い息を吐くとシスターライラは前を見る。「人?」

 準一は振り返り、シスターライラの前に立つ。「離れるな」


「優しいのね?」

「クライアントだからだ」


 近づいてくる人影、それは女性のもの。次第に見えてきたそれは準一に見覚えがあった。


「あいつ……ミレイズ姉妹の」


 ライラは目を細める。「さて、どういう事かしらね」

 すると、ミレイズ姉妹の1人、ジェシカは準一に気づく。


「あ……朝倉…準……一」

 

 その声を出し、ジェシカはその場に倒れ込んだ。近づき、2人は確かめる。

 完全に意識を失っている。


「取りあえず、温めてあげましょ? 何か知ってるかも」

「だな。手伝ってくれ」


 ライラは頷き、辺りを見渡し大きな木を見つける。「ひとまず、あそこで。少しは凌げるわ」

 準一は従い、ジェシカを背負うとそこへ向かった。

 背負う瞬間、準一はジェシカの首筋に噛み後を見つけた。


 ―――こいつは俺達へのエサ?


 その考えを止め、着ていた上着を敷き、ジェシカをその上に乗せため息を吐く。

 

「早速問題ね」

「ああ、そう思った所だよ」

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