表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/166

レプリカ・レーヴァテイン

「準一君。勝手に動いたね」


 放課後の校長室。準一は「いいえ」と首を振った。


「ライラから話しは聞いたよ。ミレイズ姉妹だっけ?」


 割と長い息を吐き、準一は口を開く。「俺の持っていた情報では、姉妹でどんな戦場にも介入すると」

 代理は机に突っ伏し、息を吐くと顔を上げる。


「で、何で急にその姉妹を調べたの? 可愛いから?」

「違いますよ」


 準一は呆れ気味だ。察し、代理は唇を尖らせる。


「中東での作戦、知り合いの部隊がその姉妹に潰されて。その事で」

「知り合いの部隊?」

「ネバーヴィップって、アメリカのPMC。シルバークオーターの精鋭です」


 ライラの言っていた部隊か、と代理は少し驚く。「どこで知り合ったの?」


「当然作戦ですよ。で、そのミレイズ姉妹ですが、シスターライラ曰く俺への接触の可能性がある、と」


 代理は少し考え込む。「ねぇ、ミレイズ姉妹ってどの程度?」


「さぁ。戦ったことは無いので分かりませんが、大部隊に突っ込み無双をしたと聞きますし、一筋縄じゃいかない。くらいでしょうかね」


 参考にならないなー。と代理は椅子ごとクルクルと回り始める。


「ですが、俺が狙いであるなら学校での戦闘はまずいです」

「ああ、残忍とか」代理は回転を止める。「言ってたもんね」


 ええ。と準一は続ける。「ですから、ここから移動したくはあるんですが」


「ダメですよね?」準一は代理に聞くと代理は頷く。「今はエディ君も揖宿君も外に出てるから。君しか頼れないの」


 参ったな。と準一は後頭部を撫でた。




 

 岩肌に隠れた場所にある豪邸に着地。機体から降りたミレイズ姉妹は、クライアントの前に立った。クライアントは中東の富豪。戦争によって儲かった男なだけに、ミレイズ姉妹を雇った理由は、紛争を長引かせるためだ。


「貴様ら。帰って早々だが、失敗したな」


 クライアントのアラブ系老人が言うと、控えていたスーツの男達が拳銃を取り出す。


「失敗?」


 ジェシカの姉、マリアが聞く。マリアの後ろにさがったジェシカはワクワクしている。


「そうだ。隠密任務、と聞いた居て筈だが既に正規軍が此方の捜索を開始している。そこでだ」老人が言うとスーツの男達は拳銃を構える。「貴様らを差し出せば丸く解決だ」


 ジェシカ、マリアは豪邸屋上。周辺をゆっくりと見る。スナイパーが居る。

 しかし、それは何の脅威でもない。ただ心配なのは、これまでここで稼いだ分の金だ。

 この男が別の場所へ移したと、考えられないわけでは無いからだ。


「まぁ、ただ殺すのは勿体ないよな。折角の上玉だ」老人の声の後、男達はニヤニヤと笑い始める。視線は、姉妹を舐め回すように、厭らしい目だ。


 見ると、スナイパー達は無線を付けており、同じようにニヤニヤし銃を降ろし、油断している。


「抵抗しないなら、楽に殺してやるが。どうする?」老人が聞くとマリアは両手を挙げる。それをジェシカはクスクスと笑いながら見る。「懸命だ」


 老人が言うと、マリアはゆっくりと歩き、老人の前に立つ。「いい子だ」

 厭らしく微笑み、老人はマリアの胸元に手を掛け、胸元のボタンを開ける。マリアの谷間が目に入ると老人はマリアと目を合わせる。


「ここでいいのか?」


 マリアは妖艶に微笑み、艶やかな唇が上を向く。


「いいわ。ここで満足させてくれるなら」


 この言葉は、合図の言葉だ。ジェシカは聞こえ、微笑む。


「妹の方は好きにしろ」と老人。男達は銃を降ろす。


 待っていた、と言わんばかりにジェシカは腰からナイフを抜く。

 マリアは老人を蹴り、倒すと袖口からナイフを抜きスーツの男の脳天に投げつける。

 1人、2人。

 そして3人目。


「男って単純」


 ナイフが3人目の脳天を貫くと同時、マリアが呟く。するとジェシカは高笑いしながらナイフを両手に持ち、男達に斬りかかっている。

 見ると、スナイパーが狙撃しようとしているが、問題ない。


「ミゼル」


 マリアが呼ぶと、しゃがんでいたベクターが起動し、羽織っていたマント。

 フードみたいに被っていた布を外し、頭部が出るとバルカンを発射し、スナイパーを片付ける。

 1人の男の銃口がマリアに向く。

 気付くが、マリアは回避しない。

 次の瞬間には、ジェシカが回りながら男の首筋にナイフを突き刺し、手首を捻り、肉片が飛び、血が噴き出した。

 顔に掛った血を撫で、手に付いたそれを見てマリアは顔を顰めた。


「汚い」


 するとジェシカがマリアの隣に立つ。どうやら、制圧は終わったらしい。

 屋敷内から数人出て来るが、バルカンの餌食になり、屋敷に隠れていた人間も無残に圧殺される。


「お姉ちゃん。満足してなーい」

「この取り分をあげたんだから文句言わないでよ。私だって満足なんかしていないのに」


 それより、とマリアは怯える老人を見て、血まみれの男の死体から拳銃を取り上げる。

 近づき、老人に拳銃を向け、撃鉄を下げカチと音が鳴る。


「ねぇ。報酬、払ってほしいんだけど」

「ここには――」


 無い。と言う前に引き金が引かれ、老人は脚を撃ち抜かれ悲鳴を上げる。


「どこにあるの?」


 老人はマリアの目を見る。光が無い、恐ろしい目だ。向こうではその妹が楽しそうに高笑いしている。

 こんな奴ら、雇ったのが間違いだった。

 

「屋敷の中だ」


 答えたのだが、老人は髪を鷲掴みにされる。無理やり引き寄せられ、脚が痛む。


「此処から見て、屋敷のどこ?」

「に、二階のここから見て右の一番目」


 声を聴き、「ミゼル―。お願い」とジェシカが自身のベクターに指示を出す。ミゼルと呼ばれたベクターは、ジェシカを持ち上げるとそのままその部屋の前まで行くと、バルカンで周辺を払い、壁や障害となるモノを排除する。

 ジェシカはコクピットに乗り込み、ミゼルの腕を伸ばし、煙を払い壁を漁る。すると空間に手が入り、確信する。

 ここだ。

 人差し指と親指で置いてあったそれを掴み上げる。金庫ごと出て来る。


『お姉ちゃん。見つけたよ』


 ジェシカが言うと「開けて確かめて」とマリアは指示する。ジェシカは従い、ミゼルの指で金庫の扉を引き抜く。

 中を見て見ると、USAドル。

 向こうへ逃げる気だったのか、とジェシカは思うと金があったとマリアに報告。


「そう」


 小さく言うとマリアは老人の顔を地面に叩きつけ、歩き去ろうとする。


「ま、待て。金は教えた。払った。頼む」縋る様な目で、痛みに堪え、老人はマリアの背中に叫ぶ。「助けてくれ!」


 分かった。とマリアが答え、一瞬老人が笑みを浮かべた。しかし、次の瞬間にはマリアの手の拳銃の銃口が向いており、老人は脳天を撃ち抜かれ射殺される。


「一番の治療よ。手っ取り早い。ミゼル」


 マリアもミゼルに乗り込むと、マリア機はフードの要領で布を頭部にかぶる。

 ジェシカは金をコクピットに入れ、カバンに詰める。


「ねぇ。お姉ちゃん。一旦戻る? 潜水艦が来てるから。乗ろうよ」


 そうね。とマリアは言うとミゼルを空へ上げる。ジェシカ機も続くと、2機は100km先の洋上に浮上した潜水艦へ着地し、機体は艦内へ収まり、潜水艦は急速潜航。

 姿を眩ませた。





「ベクターに魔術武器?」


 自室で準一は携帯の向こうのシスターライラに聞き返した。歩き、ベットに座り肘を膝上に置く。


「ええ。灼熱のランス。まぁレーヴァテインのレプリカよ」

「レーヴァテインは剣だが、レプリカはランスなのか?」

「同じ剣の形にしちゃいけないの。あくまでこのレプリカは衛兵の持つ量産武器だから、剣にしちゃうと同じになるの」

「で、そのレーヴァテインのレプリカはどの程度なんだ?」

 

 準一は目を細める。


「残念だけど、ベクターの近接武器で戦ったとして、勝てる見込みはゼロよ」


 まさか。準一は対抗策を考えるが、魔力崩壊魔法は2人いる以上無理。なれば、アルぺリスのブレードを使うしかない。

 が、出来る限り使用はしたくない。


「レーヴァテインは全てを焼き払うモノ、とされているけど異説であると聞いた事もあるけど、詳しくは知らないわ」ライラは横に出た金髪を撫でる。「でも、近接だけよ。勝てないのは。射撃や遠距離砲撃ならいけると思うけど」

「だが、ミレイズ姉妹はベクターの操縦に長けてるんだろう。必然的に近接戦に持ち込まれそうな気がするんだがな」


 確かにね。とライラの声を聴き準一は訊く。「あんたの欲しがってた魔術法具って何だっけ」


「あら。覚えてたの?」

「何に使う気か気になってな」

「ふふ。私が欲しいのはフランベルジェよ」


 聞いて準一は息を吐き後頭部をかく。「ありがとう。情報が増えて助かった」


「いいのよ。あなたは特別」


 はいはい、と準一は通話終了ボタンを押す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ