ミレイズ姉妹
姉妹の敵って出したかったです
ですのでお付き合いください
中東では紛争が絶えない。第4世代ベクターを使用するNeverVip隊もそこに居た。
ネバーヴィップ隊は、総勢5機のプロトⅡからなる精鋭部隊だ。
ネバーヴィップ隊はPMCである、シルバークオーター社の部隊でアメリカに本社を置いている。
今回、彼らは作戦に参加している正規軍より依頼を受けて、正規軍支援任務に就いている。出したベクターは5機だが、後方には支援ヘリや、垂直離発着軽戦闘機、他多数の歩兵が控えている。
「ネバーヴィップ01より」先頭のプロトⅡ、そのパイロットはモニターを見て舌打ちする。「モニターの様子はどうだ?」
「多分、同じですよ」
1人が答え、01はモニターを睨む。モニターに映るのは、忙しく動き回るターゲットサイト。別に敵がいるわけでは無く、ただ視界が悪いので動き回っているだけだ。
視界が悪い理由は、砂漠であるゆえの砂嵐だ。夕刻だが、空は曇って、視界は更に悪い。
こうなってしまえば、後方に控える部隊は戦車しか動けないだろう。
参加していた正規軍のベクター。ヘルブレイカー数機はいるが、他の機は下がっている。
他の機は、砂嵐対策の為に関節部を覆ってなかったからだ。
「正規軍でしょ? 下がった奴らって。砂漠での戦闘なら準備くらい」
「ぼやくな」
ぼやいた1人に01が一言。「行くぞ。ネバーヴィップ隊の任務は反乱分子掃討の支援だ」
プロトⅡが歩き出すと、ヘルブレイカーが横に付く。プロトⅡは関節部から布がはみ出ているのに対して、ヘルブレイカーはそんなものは無い。
「いいんですか? 揃ってからじゃなくて」
揃ってからとは、下がったベクターの事だ。01は息を吐き答える。「時間が切迫している。その戦力で行け。だそうだ」
上からの命令ですか、と聞いた1人は長い息を吐く。
そして、一瞬レーダー画面が各機から消え、点いた時には後方に控えていた部隊がレーダー上から消えた。
「消えた? 01より。各機警戒」と01。「ネバーヴィップ隊。気を付けろ。早い。2機」ヘルブレイカー4機隊の隊長。01は戦闘態勢に入る。
「そっちのレーダーは?」
「敵しかいない。射程内だ。攻撃する」
01に答え、ヘルブレイカーは砲撃を開始。長砲身が火を吹き、衝撃波で砂が舞う。
「ネバーヴィップ隊。行くぞ」
01が言うと、プロトⅡ5機はユニットを全開にし、砂嵐の中を飛ぶ。向かう先には砲撃の爆発が煌めく。
「各機へ。射程に入り次第撃って構わん。砲撃に当たるな」01は徐々に近づくビーコンを見る。早い、プロトⅡと同等の性能だ。「油断するな。早いぞ」
見るといつの間にかビーコンは直ぐ近く。
「エンゲージ」
直後、ネバーヴィップ隊の後方の2機のプロトⅡのビーコンが消える。01の機が振り向くと、マントを羽織った2機がプロトⅡをランスで貫いている。
「各機! 離れろ!」
01は言いながらマシンガンを向ける。だがその銃身はランスが纏った熱で溶解。爆発し、01機は下がる。しかし敵機は早く、01機の首が掴まれる。
『ネバーヴィップ隊って強いって聞いたから来たのに。つまんないなぁ』
聞こえた声は少女の物だ。驚きながら、01は胸部の単発式のマルチグレネードを撃つ。敵機はひらりと躱し、ジャンプし、膝でプロトⅡの頭部を蹴る。
プロトⅡは倒れ、01は舌打ち。機体は動かない。押さえつけられている。
『ねぇ。これ皆に聞いてるけどさ』敵機のランスが胸部に向く。熱を纏い、オレンジに光る。『今、走馬灯って見えた?』
「貴様ら、何―――」
言い終える前にランスはプロトⅡの胸部に突き刺さり、熱でコクピット内は解け、当然人間の身体は何もなくなる。幾つかの電子パネルが爆ぜ、小さな爆発が上がる。
『あはははははは! 答えになってなーい! 言葉のキャッチボールが出来ない人って嫌い。ねぇ、お姉ちゃん』
少女の駆る機体が振り向くと、既にネバーヴィップ隊は壊滅。向こうで爆発が広がる。
『なーにジェシカ。今忙しいの』
ジェシカと呼ばれた少女は、銀髪の長い前髪を横にやり、膨れっ面になり『いいなー。お姉ちゃんの取り分多いよー』
『公平なジャンケンで決めた事よ。今更文句言わない。……よし、終わったわ』
その声の後、同じようにマントを羽織った機がジェシカ機の前に降りる。
『お姉ちゃん。次だっけ?』
『何が?』
『ほら、あの日本人の』
ああ、とジェシカの姉は妖艶に微笑む。似た顔の2人は白人だ。
『そうよ、次は大きな獲物よ。報酬も大きい。その分、とんでもない強さよ』
ジェシカは微笑み、サブモニターにワンオフの機体、椿姫カスタムを表示させ、そのパイロットの画像も出す。
『朝倉準一かぁ。走馬灯、見てくれるかなぁ?』
『私たち2人がかりよ。見るに決まっているわ。さぁ、帰りましょ。直に正規軍が来るわ』
言葉の後、2機はレーダーステルスを起動し、姿を眩ます。
正規軍が着いた頃、ヘルブレイカー、プロトⅡの部隊は壊滅状態だった。
文化祭で飲食店を開く為、2年3組は試作品を準一筆頭に製作していた。
「歯磨き粉」とアンナは執拗に準一に歯磨き粉を押し付けたりで、結構時間は掛っていた。しかし、2年3組には料理上手が揃っており、アイデア自体は結構浮かんだりしていた。
料理の出来ないレイラ他数名は、店員さんの衣装決め。今回、3年生の志摩甲斐たちは忙しい為、独自に制作しなければならいのだが、裁縫、というより家事全般の得意な準一、カノンは料理に専念してる。
仕方なく、カルメンの知り合いの服屋さんを呼んだ。来たのはいつかの店長。
見た目はあれだが、店長の腕は確かだ。見ただけで女子のスリーサイズを測り、全員分の衣装を製作。
「コンセプトはねー。大正の女の子」
と言ったレイラの言葉を忠実に守ったそれは、可愛らしくピンク的な色で、露出の無い服でかなり可愛い。
試しにレイラが着ると大好評。
店内レイアウトを決めていた男子たちは、始まった衣装決めに夢中だ。
「あ、男子がサボってます」とカノン。聞き、準一は衣装決めに目を向ける。「気になるな」
「兄さん……変態」
咳払いし、準一は真面目に料理思案に戻る。
「もう、気になるなら私が着ますよ」
「あー。お前は絶対似合うから、見せてくれるなら」
「はい! 後で着替えますね」
おう、と準一は答え、前を見ると左腕を強く握られる。少し痛い。と思いながら見ると結衣。
「兄貴。何であたしには訊かないのかな?」
「いや、いなかったから」
「あたしも着るからね!! 見てくんなきゃ知らないかんね!」
「分かった。楽しみにしてる」
と準一が言った直後、教室の戸が開き大正の女性の恰好をした女装男子が目に入る。
「朝倉着てみたぞ」と本郷。彼は隣で小さくなっていた三木原前に出す。
「せ、先輩」
三木原の顔は羞恥から真っ赤になっている。のだが、似合っている。
準一は本郷に「ナイスだ義明」と親指を立てる。
「朝倉って結構バカだよな」
「最近そう思う事が多くなった」
見て居た真尋が言うと、綾乃も続く。
「あたしは端から気付いてたぜ。あいつが馬鹿だって」とテトラ。
真尋と綾乃は大きくため息を吐いた。
「ミレイズ姉妹?」と聞くのは代理。持った電話の向こうには黒妖聖教会シスターライラ。「なにソレ、モデル?」
電話の向こうでライラはため息を吐いた。「モデルなら戦闘状況に介入して引っ掻き回したり、特定目標の破壊とかしないわよ」
「で、それが?」
「シルバークオーターだったかしら。米国のPMCの精鋭部隊がやられたそうよ。昨日ね」
「随分とまた情報が早いね。どっから仕入れてるの?」
「秘密よ。それより、何かしらの方法で仕掛けて来る筈よ。気を付けた方がいいわ、彼女達は道徳が無いから」
「バカって事?」
「そうね。否定しないわ。そして、言葉も通じないらしくてね。あ、そうそう。その姉妹は2人とも相当な美少女で、顔に合わず残忍らしいわよ」
詳しいね。と再び代理が聞くとライラは息を吐く。「色々調べたのよ。頼まれてね」
「頼まれて?」
「そうよ。あなたの所の問題児にね」
電話を耳から離すと、代理は顔を手で覆い息を吐いた。
「またあいつか―――」




