消失天使①
小学5年になった結衣は、その年の12月。初めて兄に無視された。
何で無視されたのか分からず話しかけるが、返答はなかった。
今までにない兄の態度に戸惑う結衣は、兄を怒らせたのかと謝ったりと手を尽くしたが、兄から言葉を掛けられる事は無かった。
そのままズルズルと小学校を終え、碧武九州校へ入学する事になった。
結衣は、兄への態度が冷たくなった。
理由は簡単だ。
今までがおかしかった、と気付いたからだ。
だが、兄への好意は消えなかった。
しかし、何か切っ掛けがあれば思い出してしまう。
兄からの拒絶の言葉。
兄からの関心の無い目。
大好きな兄が遠くへ行ってしまう。
目に光が当たり、結衣はゆっくりと目を覚ました。ベットの横のカーテンがずれ、朝日が漏れている。
ああ、もう朝か。と先ほどの夢を思い出し前髪を上げ、上半身を起こす。
あんな夢、久しぶりに見た。
「嫌な夢」と一言言うと制服に着替え、階段を下りる。リビングには3人。
エルシュタ、エリーナ、カノン。
「ねぇ、兄貴は?」
居ないのだから聞いた。なのに、3人の顔は曇った。
あぁ、思い出した。
「そっか……兄貴、居ないんだったね」
現在、選抜戦終了より4日目。
そして、朝倉準一消失より3日目。