表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/166

秋の祭典②

いきなり始まって、いきなり終わりそうですね

すいません

 空間魔法の解除と共に、青かった月は元の色に戻り、生徒は魔法の効果が切れた。

 その中、朝倉準一は赤羽岬しかいないVIP席に居た。


「全く……末恐ろしい男だ」と赤羽岬。高位魔術師と白兵戦を行い、尚且つ機械魔導天使一機を大破させた朝倉準一は、何事も無かったかのようにタバコを咥えている。

「それは此方の台詞ですよ。なーにが魔術師対抗戦だ」


 準一はタバコを手に持つ。「あなた方の余興代わり、なワケですよね?」

 赤羽岬は否定せず頷く。「政府高官、各組織の高官。そのVIP達は随分と楽しんでいた。特に、お前の戦いをの」

 

「赤羽岬さん的には納得していないんでしょう?」


 この戦闘は、シナリオ通りに進まなかったからだ。


「当たり前じゃろう。魔法による戦いの流れは、全て貴様のおかげで狂いっぱなしじゃ。生徒の本当の強さも分からずな」

「『魔法崩壊術式』を言っているんでしょうか?」

 

 赤羽岬が頷くのを見ると、準一は「申し訳ない」と一言。


「俺がそれを使ったのはヨアヒムだけです。他は」

「まさか……」

「お察しの通り」


 はぁ、と息を吐き「黒妖聖教会、シスターライラ……か?」と赤羽岬。

 ええ。そうです。と準一は肯定し、一吸いすると、携帯灰皿にタバコを落とす。


「では、俺はこれで。時刻が来れば選抜戦は正常に行われるのでしょうか?」

「いいや」


 案外、つまらんかったのぉ。と髭を撫でる赤羽岬を一瞥し、準一はVIP席を去る。

 

 それと同時、準一の無線機が鳴る。「カノンか? どうした?」


「いえ……」


 何やら言い難そうにしているカノンに再度聞くと、カノンは口を開いた。「あの空間魔法下、結衣は動いていました。自分の意志で」

 結衣が動いていた? あの空間の中で。

 準一も、空間魔法の効果は知っていた。

 だからこそ、驚き、再度聞こうとすると肩を叩かれる。

 シスターライラだ。


「実妹の方でしょ?」ライラは言うと、護符を取り出す。「渡していたの。これを」

「勝手な事を」と準一。「すまんカノン。結衣には一種の護符を渡していたんだ」


「カノン、結衣はお前の考え通りの脅威じゃない。安心しろ、拘束しているのなら解放しろ」

「わ、分かりました」


 すぐに無線のスイッチを切る。恐らく、カノンは結衣に謝りまくっているんだろうな、と準一はライラを見る。


「いつの間に?」

「私と喋っている時、彼女は来たでしょう? その時に」


 結衣に忍ばせた訳か。つまり、結衣は護符を持っているなどと知らない訳だ。


「でも、助かったんじゃない? 眠りこけたままだったら、あのアルシエルの操縦者。何かしたかもよ?」

「まぁ、例は言っておく。助かった」


 口からはそう言ったが、準一は納得できなかった。

 結衣は、魔術側じゃない。

 魔法的な道具であっても、手元に持っていてほしくは無い。  


「じゃあ、俺はこれで。撤収準備がある」




 本年度の選抜戦は異例の途中中止。

 理由は簡単だ。

 アルぺリスタイプの一号機、アルシエルが日本政府の手元に渡ったからだ。

 もはや、選抜戦など行っている場合ではない、機械魔導天使をどうするか。

 それを考えなければならないのだが、結論は出ていた。

 そうそう機械魔導天使に乗れる人間は居ない、その人間が現れるまで、アルシエルは政府直属機関が管理する事になった。

 アルシエルの保管場所は、富士樹海のミサイルサイロ側。

 防衛隊にはかなりの大部隊が派遣されるそうだ。



 選抜戦中止の報を聞き、曽屋千秋は自室の壁を肘で殴った。

 朝倉準一と戦い、殺すチャンスが消えてしまったからだ。


「くそッ!」と大声で言うと、再度殴りベットにダイブし大きなため息を吐いた。



 選抜戦中止には、誰も納得していなかった。消化不良もいいトコだ。

 生徒は、朝倉準一対五傳木千尋の戦いを楽しみにしていたのだが、それを見る事無く終わってしまった。

 一般の観客も納得できぬまま会場から追い出された。



 時雨甲斐雪乃も、納得していない1人だった。好きな人、朝倉準一の戦いを最後まで見て居たかったのに。

 心中で呟くと、九州校メンバーと待ち合わせしていた滑走路エリア入り口に着く。

 そして強めの風が吹き、流れに乗り後ろを見ると朝倉準一が歩いて来ている。


「あ、おはよう。朝倉君」

「おはよう。随分と早いな。まだ時間はかなりあるが」


 目が覚めて。と時雨甲斐は微笑む。「朝倉君。残念だね。最後まで戦えなくて」

 準一は取りあえず頷いた。

 だが、準一も割と残念だった。

 五傳木千尋とはここいらで白黒ハッキリさせたかったからだ。


「でも、朝倉君はやっぱり凄いね。試合、一撃で勝ったんだから」

「見てたのか?」

「うん。皆の戦いも見たかったけど」


 俺もだ。と言うと滑走路を見る。フェニックスが大和を載せ終わっている。


「あれ、すごいね。輸送機の上に戦艦が載ってる」

「確かにな」


 ここで、代理が出現。ふくれっ面で「むす」としている。


「あの代理。どうしたんですか?」と時雨甲斐。「どうもこうしたも中止だからね。怒ってる」


 はは、と苦笑いし、時雨甲斐は準一を見ると同じような顔をしている。


「さぁ! 2人とも輸送機内の部屋の確保だ!」と代理は2人の手を引きフェニックスへ走った。




 共闘の約束を果たしたエルディ・ハイネマンは準一に挨拶し終えていたので姿を消した。

 アイルマン、千早、ジェイバック3名は行方をくらませた。

 これで、選抜戦は終了。

 慌ただしいスタートを切った2学期は、まだ始まりでしかない。

 だからだろう、何かが起こらない様に朝倉準一は祈った。


 イベントはまだいいが、戦いはあんまり来てほしくない。

 面倒だからだ。


 九州校の面々は、輸送機内の大部屋に集まっていた。

 皆の前に立つ代理は右手を上げる。


「皆! 次はお待ちかね! 10月の文化祭!」


 あれ? 碧武祭ってやつは? 準一が聞くと揖宿が答える。


「碧武祭は初夏の行事だ。ALの件でうやむやになってな、今年は催されないんだ」 


 へぇ。と準一は言うと代理の視線に気づく。


「今年は優秀な料理人が居るからね」


 逃げればよかった。心底そう思った準一は顔だけを俯けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ