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碧武選抜戦③

 選抜戦、試合初日。午後の部の最初の試合は関東校・曽屋千秋。

 相手は、碧武九州校。

 テトラ・レイグレー。

 テトラは、初めての選抜戦。緊張はしていたが、女子組の応援に笑顔で返し、格納庫へ向かい。愛機である椿姫に乗り込んだ。


 程なく、2機がアリーナに上がる。椿姫と、千秋の機体。

 椿姫の初期タイプ。プロトⅡ.


 武装は、大鎌に腕部ガトリングガン。


『それでは、第3試合』

 

 2機が構える。


『開始!』


 サイレンが鳴り、2機は近接武器を構え、激突した。




 曽屋千秋の駆る、プロトⅡの近接武装。大鎌はかなり特異な形状だ。

 鎌は、刃の部分に噴射口の様な物がある。 

 それは、鎌を振るう上で起こる、動作の鈍重化をカバーするモノだ。

 

「あのプロトⅡの手が当たっている部分。トリガーがあるんですよね」

 

 カノンが、隣の準一に言うと頷く。

 振るう瞬間、そのトリガーを押せば、噴射口が爆発。振るう一閃が加速する。

 強力な武装だ。



「あの鎌。前に資料で」と呟いたテトラの眼前。プロトⅡがしゃがみ、加速。一気に距離を詰め、椿姫の頭部バルカンを撃つが、ジグザグ機動で躱される。


 舌打ちし、テトラは椿姫を後ろに退かせ、ブレードを構え、鎌を横に構えたプロトⅡに肉迫する。

 ブレードを振るい、一撃が決まったと幻視するも、椿姫は左に弾き飛ばされる。

 自動姿勢制御機構が正常に作動。

 機体が高度を図り、脚部を地面に突き立てるようにし、着地。


「見えなかった」


 鎌の一閃だ。それは確かだ、先ほど居た場所で、プロトⅡは鎌を、構えなおしている。

 その一閃が見えなかったのは、観客席の大半の人間も同じだ。


 だが、何か対抗策を出す前に、プロトⅡは加速。接近しながら、ガトリングガンを撃つ。

 混乱するな。

 自分に言い聞かせ、テトラは椿姫に回避機動を取らせ、持ったマシンガンを撃ち返すが、弾丸は当たらない。

 先の様な回避機動。

 近づかれれば、また。


 サブモニターを見る。機体ダメージが効いて来ている。次を喰らえば、確実に。

 

「このッ!」


 マシンガン下部に装備した、グレネードを発射。プロトⅡ手前で爆発。

 煙を切り裂き、プロトⅡは飛び出すと、ガトリングガンで正確にマシンガンを撃ち抜く。


 しまった、と思わず、頭部バルカンを発射し、牽制。

 直後、プロトⅡがサイドアーマー内から2発のロケット弾を発射。

 空中のそれを、頭部バルカンで破壊。

  

 判断ミスだ。避けてしまえば良かった。

 爆発の煙が、煙幕代わりだからだ。


 しかし、気付いた時、行動は間に合わず、リーチの長い鎌の一閃が迫るのを感じるが、次の瞬間には激しく揺られ、試合終了のサイレンが鳴った。


『勝者! 曽屋千秋!』


 そんな。と呟き、テトラは大きな息を吐き、コンソールを撫でる。


「ごめんね。椿姫」


 小さな声で言うと、拳を強く握る。





 テトラが格納庫に納まった椿姫から降りた時、準一のワンオフ、椿姫カスタムが起動した。

 第4試合が発表された後だ。

 

「朝倉! 勝てよ!」


 呼応するように、椿姫は右手を上げた。

 



 準一の対戦相手は、近畿校の神代廉也。

 彼はベクターに於いて、かなり強い。当然、皆承知していた為、結衣、本郷は大丈夫かな。と心配そうに声を出す。

 だが、カノンは笑みを崩さず2人に顔を向ける。


「大丈夫。兄さんとまともに張り合える人なんて、千尋さん以外に居ませんから」


 余裕の表情。それを浮かべるカノン。

 彼女の言葉は、作戦行動などで準一の戦闘能力を知っているからこそ言える言葉だ。


「いやぁー、問題児だけど。こんな時は助かるな」


 足をパタパタさせながらの代理。呑気だなぁ。と綾乃が呟くと、神代機、準一機が姿を現し、歓声が響く。

 直後の戦闘開始のアナウンス。そして、サイレン。



「クズはクズらしく這いつくばっていろ」


 神代の声は、椿姫の準一に鮮明に聞こえた。

 一種の勝利宣言に近い言葉。

 準一は笑みを浮かべる。


 神代の行動は予想できた。確実に一直線に突っ込んでくる。


 それは当たった。神代機は準一機に肉迫するが、一瞬後、試合終了のサイレン。

 説明するまでも無く、準一の勝ちだ。

 一瞬の呆気ない試合。だが、観客は盛り上がった。


「這いつくばるのは貴方の方でしたね」

 

 と言葉を贈った準一。神代は歯ぎしりし、膝を叩き。

 倒れ込んだ神代機の冷却液が漏れた。



「ね? 言ったとおりでしょ?」


 と、カノンが言うが本郷、結衣はポカンとしたままだった。

 準一が本当に関東校エースと同じ芸当を。 

 結衣は、前に一度聞いた言葉を思い出す。

 そういった組織の人間が、兄を呼称する時、兄は化け物、と呼ばれていた。


「何でこんなのは強いのに勉強できねぇんだ?」


 戻ったテトラが言うと、他は口を揃えた。


「さぁ」


 と。




 誰もが驚く中、曽屋千秋も驚いていた。

 朝倉準一の戦闘能力。直に見たのは今日が初めて。

 予想以上、想定以上。

 最悪の結果を予想してしまう。

 もし、朝倉準一が、五傳木千尋と当たったら、負けてしまうのではないか?

 関東校エースに、敗北の文字は似合わない。


 何かを決心し、拳を握った。







 午後の二試合が終了し、その日の過程は終了。観客席の人間が疎らになり始めた時


「朝倉君」


 と聞き覚えの無い声が後ろから掛り、準一は後ろを向く。結衣達もだ。


「あ、あの」

「あ」


 準一はその声の主を見る。私服の女子生徒だ。

 よく覚えている。

 自分に、ラブレターを渡してくれた人間だ。

 だが、よくよく考えれば、名前は知らない。 


「ごめんなさい。いきなり来て」

「いや、どうしたんだ?」

「応援……です」


 と女子生徒はプログラム表で真っ赤になった顔を隠す。


「ありがとう。差支えないなら、名前を聞いといていいか? よく考えれば知らない訳だし」

「あ、うん。私の名前は、時雨甲斐雪乃」


 時雨甲斐? と準一は少し驚き聞き返す。「う、うん。時雨甲斐だよ?」


 時雨甲斐家、日本の魔術師一族の1つ。勢力こそ大きくないが、政府認定魔術師が2人いる。

 魔術に関わっていれば、知らない家ではない。

 だが、変に勘ぐるのはマズイ。彼女は、自分が魔術師である事を知らないのだから。


「ああ、なんでもない。宜しく、時雨甲斐」と立ち上がり、時雨甲斐に向き準一は手を差し出す。


 時雨甲斐は手を握り返し、握手の形になる。 




 時雨甲斐雪乃。魔術師一族であり、名門と言われる時雨甲斐家の養子。

 本当は、時雨甲斐家の実の娘だ。

 だが、一族内ではかなりハブられた扱いだった。

 理由としては、時雨甲斐家の娘でありながら、魔術が使えない点だ。

 唯一の汚点、魔術が使えない娘を産んだ。それが、知れ渡ってはあまりよろしくない。そう考え、時雨甲斐家当主は、娘である雪乃を養子にする事で、血縁関係を隠したが、知るところには情報が出回っている。


 そして、時雨甲斐家はもう1つ。ベクターに秀でている。第二次日露戦争中、時雨甲斐家当主は、ベクターで戦場を駆けた事で有名だ。

 だが、雪乃は違う。

 雪乃の適性は、最低ランクギリギリ。動かし、精々射撃支援が関の山。

 親の武勇伝には、到底及ばない。

 

 しかし、その為、雪乃は準一に惚れてしまった。適性ランク圏外の落ち零れ、等と言われた人間が、一年生最強と称される本郷義明、スティラに勝った。

 碧武九州校に於いて、朝倉準一の存在はかなり大きいものになっている。

 適性のある人間からすれば、準一は厄介者以外の何物でもない。

 適性の低い人間からすれば、多少の希望が持てる存在だ。

 しかし、手動操縦等という学生離れの所業には、自信を無くす者も多い。

 だが、全てに共通しているのが、朝倉準一最強説だ。

 スティラ戦、フォカロル、篤姫戦。悪鬼戦。

 この並びで、全て勝利している。

 

 基本的に、準一を蔑んでいたのは適性ランクがCからの人間だ。それより下のDの人間は、何も言えずにいただけだ。

 だからこそ、準一は、碧武九州校に於いて割かしモテるのだ。

 特に、後輩、同級生女子、適性ランクに関係なく、人気がある。

 時雨甲斐雪乃も、その1人だ。



「代理、教えてくれてもよかったじゃないですか」


 結衣や綾乃達と楽しげに喋る時雨甲斐を見ながら、準一は後ろの代理に耳打ち。「彼女が、甲斐一族だと」


「言っても、あんまり変わらないでしょ? 彼女には魔法は使えない」代理は準一に顔を向け、小声。「そして、一家が魔法に関わっている事も知らない」


 まさか、と準一は驚く。「何故、彼女は何も知らないんですか?」


「一族がデカ過ぎるからよ」

「甲斐一族ですか」


 志摩一族。志摩甲斐、時雨甲斐、静城甲斐の3家から成っている。

 無論、九州校生徒会に所属する志摩甲斐悠里は、この一族の1人だ。


「デカすぎるからこそ、言えないんでしょう。だから、彼女は養子になったワケよ。肩書がね」

「確か、時雨甲斐雪乃には、双子の妹が居ましたよね?」

「似てない妹で、他分野の才能にも恵まれた」


 だからじゃない? と代理は意味ありげな顔を準一に向ける。「何がです?」


「雪乃ちゃんが準一君に惚れた理由」


 雪乃は、姉の才能と比べられている。準一は、妹の結衣と比べられた。

 それを、実力で覆したからこそ、雪乃は自分と準一を重ねた。


「自分には分かりませんね」


 準一は考え付いたが、言わない事にした。


「分かってるでしょ?」

「分かりません。それよりも、どうします? 暇になりましたよ」


 うーん、と代理が考え始めると、雪乃が「あ、そうだ。朝倉君」と声を掛ける。


「レイラさんが探し回ってたよ」


 ゲッ、と口に出しそうになったが飲み込み、準一は困った様な顔を浮かべ、レイラに電話をかけ、宿泊施設前で合流する事にした。





 黒妖聖教会所属、シスターライラは、ある人物を見つけ、接触した。

 場所は、アリーナ外。出店が並ぶ道を抜けた高台だ。

 

「氷月千早に、アイルマン・キース。だったかしら?」ライラは、その2人に目を向けると、その隣の1人を見る。「それと」

「反日軍のヨアヒム……そうそうたる面子ね。米軍の師団を幾つか潰せるわ」


 ライラが言うと、千早はムスッとした顔を向ける。「何故、あなたがここに居るのかしら」


「どういう意味かしら?」

「邪魔、消えて」

「そう言って、私が消えると思って?」


 薄い笑いのライラが言うと、アイルマンが前に出る。「では、あんたの腹の内を明かしてほしいんだが」


「黒妖聖教会のシスターライラが、何の用だ? と? 決まっているでしょう。朝倉準一の勝利を目に入れようとね」


 勝利? と怒気の混じった低い声を、千早が出すとパワードスーツ、ジェイバックが姿を現す。


「趣味ではないが」とジェイバックは、魔力を圧縮したブレードを抜こうとする。


 だが、ライラは笑みを崩さず、ジェイバックに向ける。

 すると、アイルマンがジェイバックを止める。


「止せジェイバック」

「何故止める」


 ライラは、笑みを崩さない。「分かっているじゃない」


「只のシスターじゃないの?」と千早。アイルマンは後ろの千早に向く。

「シスターライラは、魔術師でもまれな存在だ。使う魔術がな。だから、ジェイバックのソレは、絶対に当たらない」


 千早は訝しげにライラを見る。


「本当によく知ってるわね。私の魔術は、殆ど知られていないのに」


 ライラの使う魔法。

 それは、事象改変魔法。

 大きな事象改変ではない。ただ、向かって来るソレを、当たらない、と設定できる。

 その程度。

 聞いてしまえばそうだが、魔術師にとっては脅威だ。

 

「確か、朝倉準一もそれを使えた筈だ」


 事象改変の話の後、アイルマンが言うと、千早は驚いた。


「残念、少し違うわ」ライラは目を細める。「朝倉準一には既に事象改変が行われているの」


 準一には、毒物も呪術も効かない。

 自分にそういった物が来るとキャンセルされる。

 それが、準一の使用する事象改変。

 準一には、それしか使えない。


「化け物揃いか、この会場は」とアイルマン。

「今更じゃない? キャスト、役者は揃ったわ」


 ライラは背を向ける。「後は、幕が上がるだけ。誰も、もうステージからは降りられない。劇場からは逃げられない」


「全てが決着するまで、終わらない。それが秋の祭典」


 歩き去るライラを見て、ヨアヒムは笑みを浮かべた。

 朝倉準一との戦いを望む彼からすれば、降りられないのは好都合だからだ。

 だが、その挑発ともとれる言葉に、千早は不機嫌だ。


「千早。黒妖聖教会は敵に回さない事だ」


 氷月千早は、この戦い、確実に負ける。

 朝倉準一は、氷月千早が考えている以上に化け物だ。

 幾つかの作戦に参加した朝倉準一は、その本当の戦闘能力を発揮していない。

 アイルマンは、少し恐怖していた。

 千早が何をしでかすか、朝倉準一の逆鱗に触れてしまうのではないか?

 思想も、願望も、野心の無いアイルマンは、千早に手を貸している。

 それは面白いからだ。

 千早と居れば、何かしらのアクションを起こし、退屈しない。

 だから、アイルマンはお膳立てもしている。

 だが、今回は違う。


 興味本位で手を貸したが、相手は化け物だ。

 朝倉準一という、1人の学生の皮を被った、最悪の魔術師。

 そして、異例天使イレギュラーエンジェル

 

「もう、何もかも、手遅れかもな」と呟くアイルマンは諦めの息を吐く。

「え?」

「いや、何でもない」


 



「私は、あなたが気に入りません」


 宿泊施設屋上、1人で居た準一だったが、偶々出くわした千秋に言われ、準一は顔を向ける。

 

「曽屋千秋か……何の話だ」

「決まっているでしょう。あなたの戦い方です。あなたは強敵です。なので、戦術を練る為にあなたの資料を確認しましたが、随分と九州校では手を抜いているようですね」

「それに何か問題が?」

 

 千秋は目を細める。「この碧武に来た以上。出し惜しみはするべきではないでしょう。あなたは、他の生徒を凌駕する力を持っている。だったら、力は最初から全力で振るうべきです」


「俺には俺の立場がある。君も、それを承知している筈だ。それに、君には関係ないだろう?」

「……本当の要件を言います。選抜戦、あなたは確実に決勝まで残ります。相手は、お姉さまです」


 千秋の言うお姉さま、とは五傳木千尋の事だ。


「ですから、あなたは負けて下さい」


 絶対に言うと思った。と準一は目を細める。

 曽屋千秋、以前より自分に突っかかって来ている。


「お姉さまは関東校エース。赤い彗星等という異名も持っています」千秋は、長い瞬きをする。「お姉さまに敗北の汚点はいらない」

「君は、自分のその行為をよく考えた方がいい」


 諭す様な準一に、千秋は「何故?」と聞く。


「君は、千尋をお姉さまと慕っている。だからこそ、そう言っているのだろうが、君の行為は千尋への侮辱行為だ」

「どういう意味かしら?」

「君は、千尋が負ける事を前提にこの行為に及んでいる」


 それは、拒否ですか? と千秋の問いに、準一は頷く。   


「君の指示は、聞かない。君は俺の上司じゃない。だから俺は千尋と全力で戦う」

「そう。分かりました」


 千秋は一礼すると、屋上から出る。

 そして、千秋は俯く。


「断ったのは貴様だ。後は、私次第だ」

 

 


 同じ時刻、空が暗くなった頃。宿泊施設廊下。歩くカノンの裾を掴み、結衣は口を開く。


「ねぇ、カノン……」

「どうしたの?」


 カノンは結衣に向く。結衣の表情は、何か考え込んでいる表情だ。


「もしかして、また厄介な事?」

「例えば?」

「魔法とか」


 気付いたか、とカノンは思いながら「部屋にいこ?」と結衣の手を引く。



 部屋に入り、結衣はベットに腰掛けた。カノンも同じ、結衣の横に座る。2人はピタリとくっ付いている。


「結衣の想像通り、厄介な事よ。魔法関係の」

「やっぱり……また、カノンと兄貴さ。危なくなるの?」


 どうかな、とカノンは結衣の肩に頭を乗せる。「分かんないな。まだ。でも、敵の狙いは兄さんよ」


「……ねぇ、あたしに手伝えることってないの?」

「はっきり言うと、無い。だって、結衣じゃまだ」


 魔術には対抗できない。

 自分は、兄の役に立てない。

 義姉妹の手助けも出来ない。


「魔術師はいつ攻めて来るの?」

「それも分かんない。戦いになるのは夜間。魔術師対抗戦の時、って兄さんは言ってた」


 兄の存在を遠くに感じ、結衣がため息を吐くと、カノンが結衣に腕を絡め、ベットに倒れ込み2人はそのまま眠った。



 

 翌朝、眠そうに目を擦るレイラは寝ぼけているのか、部屋から出て来た準一に抱き着き、眠りこけた。

 そして、他の部屋から綾乃達が出て来ると「もうそんな? 朝帰りですね」みたいな目を向けられ、準一は身振り手振りで否定。


「おはよ」

「おはようございます」


 と近くの部屋から結衣、カノンが互いに腕を絡めたまま出て来る。


「百合か!」とロンが部屋を飛び出す。取り敢えず、準一は顔にスリッパを当てる。

「なぁ朝倉、この姉妹はこんな関係なのか?」


 テトラが聞くと、準一は「さぁ」と言い、続ける。


「だが、大概家ではこんなだ」


 へぇ、とテトラは言うと、まじまじと2人を見る。「超アリだな」

 お気に召したらしく、眠そうな2人を部屋に連れ込んだ。しばらく、結衣、カノンの悲鳴が聞こえた。

 一体、テトラは何をしたんだろう。


「ってか、レイラ様。大丈夫ですか? 一度お顔を洗って来た方が」と準一が抱き着くレイラに言うと、眠そうに目を擦り顔を向ける。


「むぅ。準一。夫でしょう。私は妻ですわ。寝ますの、準一と寝ますの」

「寝ません。いいから、お顔を洗いに行きますよ」


 にゃー、と唸るレイラを準一、綾乃は引き、洗面台へ。顔を半ば無理やり洗うと「目が覚めましたわ」


「それは良かった」と準一、綾乃は目が合い、ため息を吐く。

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