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散るは椿姫

「黒いアルぺリス? ああ」とシスターライラは夕日の差し込む聖堂で、笑みを浮かべる。


「何かご存じなのですか?」と若いシスター。「黒いアルぺリスを」


 シスターライラは「ふふ」と笑い、若いシスターに向く。「確か、アルぺリスと同じ見た目、姉妹機で1号機。アルシエル、だった筈」


「詳しいですね」と若いシスターは息を吐く。「どこからその情報を?」


「ある人間の動向を探ってたでしょ?」


 シスターライラの言葉通り、黒妖聖教会は脅威となる存在、氷月千早とその一派を追っていた。

 アルシエルの情報が入ったのは、それが原因だ。


「では、そのアルシエルは」

「察しの通り、氷月千早が搭乗しているわ」 




 体育館内での料理対決。三木原は天ぷら、本郷はフルーツケーキ。あまりに趣向の違う2人だが、勝利は本郷へ。

 どうやら、フルーツの使い方があっぱれだったらしく、三木原は落ち込み、3回戦へ。

 と、なる筈だったのだが、ここで想定外の事態が起こった。


 2つしかない、選択肢の筈だったのだが、3つ目ができてしまい、2人はその3つ目に負けてしまった。

 その3つ目とは、女装した朝倉準一だ。

 似合っているか、似合っていないか、似合っているのだろうがその狭間だ。そこが男女問わず評価された。

 その飾り気の無さが良い。と男子は盛り上がり、女子はそれなりに盛り上がった。

 まぁ、そんなこんなで超結婚宣言はうやむやになり、終了。

 本郷、三木原は対立したまま。


 妹2人は眉間にしわを寄せ、準一に「変態」等の罵りの言葉をぶつけていた。


朝倉準一はトラック泊地へ向かっていた。

 現在、超結婚宣言より二日後。


「特級少尉、直にトラック泊地だ。椿姫で降りてくれ」と輸送機の機長。「分かりました」と答え、準一は床ハッチを開け、椿姫に乗り込む。


 すぐに輸送機は艦隊の展開するソロモン諸島上空に到着。輸送機から椿姫が飛び出し、新型ユニットを噴射させ、基地へ飛び、数分とせず到着。

 直立に近い形になり、足裏が滑走路に着くと、少し進み、止まる。

 椿姫を格納庫まで歩かせ、コクピットから降りると基地司令の元へ。

 今日の要件はアルシエルの情報収集だ。



 基地司令官の執務室へ案内され、準一は入室し敬礼。指定された椅子へ座る。


「すまないな。わざわざ日本からご足労してもらって」

「いえ」


 司令官は困った様な顔で、短い息を吐く。「早速だ。我々はアルぺリスに襲撃された」


「その事ですが」


 説明する。全てではない。アルシエルの名前は教えない。

 ただ、魔術師が手に入れた機械魔導天使だとだけ教える。


「そうか……信じよう」と司令官は席から立ち、投影ディスプレイを出す。「この間の黒いアルぺリス襲撃時の映像だ」


「サイドアーマーの魔導砲の使用は確認済み、だが、魔法は使用していない」


 準一は、基地に来る前、黒妖聖教会シスターライラから預かった護符で会話をしていた。

 シスターライラとだ。

 そこで聞いた。

 1号機、アルシエルに搭乗しているのは氷月千早だと。


「それでは、失礼します」


 準一は椅子から立ち上がり、部屋を出る。

 そして、執務室のある棟から出ると、大型輸送ヘリが数十機以上。

 陸上自衛隊の支援ベクター部隊だ。 


『各員へ通達! 泊地沖合より高速潜航物多数!』の基地アナウンス。準一は椿姫に乗り込み、起動させる。


 軍港より停泊していた護衛艦が出航。左右に広がり、アスロックを連続発射。

 1分ほどで目標へ、水面に水柱。

 だが、護衛艦は直ぐに抜かれ、潜航物が水面に顔を出す。

 水陸両用のベクター、マリンの後継機。マリンⅤ。

 マリンⅤは、基地の防衛隊の展開よりも早く陸地に近づき、準一は椿姫のマシンガンを斉射。

 2機に命中させるも、装甲が堅く抜けない。

 上陸を許す。

 マリンⅤはそのまま対空ミサイルでベクターを運ぶヘリを次々に撃墜。

 戦車隊が基地後方に展開し、マリンⅤに攻撃を開始。

 護衛艦も回頭し、速射砲、CIWSでマリンⅤを攻撃しようとするも、マリンⅤはちょこまかと動き回り、基地棟を盾に戦車隊を攻撃。

 他の機体が椿姫に向かう。

 だが、攻撃を繰り出す前に、椿姫の構えたブレードに切り裂かれる。

 準一は、戦車隊の支援に回る。

 戦車隊に攻撃するマリンⅤに接近、後ろからとび蹴りを決め、頭部を掴み、引き抜くと直上からブレードを刺し、コクピットを貫き、動かなくなった機体を別の機体へ投げる。

  

 マリンは元々一撃離脱、夜間急襲等の特殊作戦用の機体。

 ある程度の深度で水圧に耐えられるため、対潜水艦戦に使われ、ザブマリンキラーの異名を持つ。

 だからこそ、マリンは椿姫(準一の椿姫は特殊すぎる)クラスとまともな近接戦を行えない。

 関節部の強度が明らかに違うからだ。


 椿姫に気付いたマリンⅤはナイフを装備させ、腕を伸ばす。

 だが、椿姫に腕を掴まれ振り回され、地面に叩き付けられ胸部コクピットゼロ距離でマシンガンを撃ち込まれる。

 メインカメラが黒い煙を吐き、コクピット、胸部装甲が細かに散る。

 残るマリンは3機。

 撤退を始め、海に出ようとする。だが、護衛艦の速射砲、CIWSの弾幕に動けず、止まる。

 そこを椿姫が攻撃、胸部にブレードを刺し、横に斬る。

 3機撃墜。

 レーダーからマリンⅤの反応が消える。


 片付いたか。と基地司令に通信を入れる。「片付きました」


『確認した。警戒体勢は維持する。助かった、朝倉準一』


 いえ。と一息つくと、ヘリが着陸を始める。

 今日は雲が無い、だが急に暗くなる。


 基地の人間は一斉に空を見る。準一もだ。

 太陽の光を遮ったのは、真っ黒な翼を持った巨人。

 1号機、アルシエル。

 手に持っているのは魔力のブレード。 


「みーつけた」


 聞こえた声は紛れもなく、氷月千早で、嬉しそうな声だった。

  

「千早か」

「そうよ」


 アルシエルはブレードを向け、急降下。椿姫に肉迫。

 咄嗟に椿姫の足を振るい、蹴り飛ばし、基地後方の演習場へ飛ぶ。

 そこじゃなければ、基地への被害が大きい。

 椿姫はマシンガンを構え、斉射。

 アルシエルは盾を形成させ、翼を羽ばたかせ急接近。

 椿姫胸部を膝で蹴り、椿姫は体勢を崩しそうになるが、ユニット噴射で起き上がり、頭部バルカンを撃つが、機械魔導天使には効かない。

 もう、今更アルぺリスは呼べない。

 呼んだとして、乗り込めない。

 くそ。と舌打ちし、アルシエルに接近させ、ブレードを突きだす。

 アルシエルは刀身が真っ赤なブレードを取り出し、椿姫のブレードを弾く。

 アルシエルはブレードを振り上げ、振り下ろす。

 椿姫はもう一方のブレードでそれを防ぐ。

 刀身の激突、衝撃波で木々が倒れ、椿姫の膝関節が悲鳴を上げ、準一の見るメインモニター脇のサブモニターに機体ダメージが表示される。

 

 だが、それよりもアルシエルの力が強く、椿姫は動けない。

 衝撃波で、ユニットがおかしくなっている。

 準一はアルシエルのブレードを抑えるので精一杯。

 

「力持ちでしょ? このアルシエル」と千早。笑みを浮かべ、モニターからの光で唇が艶やかに光る。

「ベクターじゃ無理よ。まぁ、今更アルぺリスを呼んでも壊すだけだけど」


 アルシエルの力が強まり、椿姫の腕、が押し込まれる。

 

「でも大丈夫。すぐに会えるわ」


 千早が操縦桿を押すと、アルシエルの腕の力が強くなり、椿姫はブレードを弾かれる。


「だから、今は」


 魔力ブレードが振り上げられ、椿姫は準一の利き腕左腕を弾かれる。


「あなたがあまり体験しない」


 続いて右腕が弾かれ、宙を舞い、椿姫は後ろに怯む。


「敗北を」


 椿姫の首に魔力ブレードが入り込み、首が飛ぶ。


「これで、あなたは敗者よ」


 胴体内の動力系が魔力ブレードで切られ、上半身、下半身に分かれ、椿姫は機能停止。

 コクピット内で準一はヘッドセットを外し、ハッチを開け、外に出る。

 見上げると、黒い巨人、アルシエルが悠然と立ち、鋭いデュアルアイで準一を見下ろしている。

 2機の居る場所は、丁度基地から見ると、山の陰になっている。


「どう? 敗北の味は」

「じゃあ、また」


 するとアルシエルは飛翔。空へ消える。

 準一は座り込み、膝を叩く。


「最悪だ」


 その呟きは、機械魔導天使撤退を見て駆け付けたヘリのローター音にかき消された。

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