超結婚宣言!
まーたバカな話です
温かい目でお付き合いください
一応、女装がメインです
リンフォード襲撃の早朝。準一達が慌てたのは理由がある。
夏休み中の出校日だからだ。
夏休みに学校に出てする事は決まっている。
宿題の解答配布。体育館での長い長い教員の話。
全てが終了したのは午後1時。
2年3組で朝倉準一が結衣達に言い寄られる中、教室の隅でカルメン・ディニンズは携帯を握っていた。
「了解……(目標)ターゲットは女子に言い寄られている。え? 女子は邪魔? 了解」
カルメンは一呼吸置く。「準一だけを連れて向かうわ。ええ」
「メイド服で。ラジャー」カルメンは携帯をポケットに仕舞い、カバンを持つとバズーカみたいなカメラを背負う。
「準一!」とカルメンは大声で呼び、教室は静まり返る。「緊急事態よ」
何? と言う前にカルメンは準一の手を引く。女子が止めに入るがカルメンのばら撒いた準一秘蔵写真に釣られ、そこに群がる。
「お、おい。緊急事態って?」
このカルメンが魔術や反日軍に関わっているとは考え難い。
では一体……。
「目的地に着いたら分かる。任せて、メイク担当者は呼んでるから」
嫌な予感がした。
絶対に良い事ではない。
その予想は的中した。案内されたのはナイスガイが経営する被服ショップ。
主にコスプレ専門の。
「なぁ。帰っていい?」
「何言ってんの着いたばっかだよ。店長ー」
店内に入り、カルメンが呼ぶとウェイトレス姿のナイスガイが飛び出し、目を輝かせる。
「あーんら来たわね! そんなにあたしにたかったのかしら!」
ナイスガイはその巨体で準一に抱き着く。
その風貌でありつつ女の子の様な甘い香りを醸し出している。
「あの、帰りたいんだけど」
「やだ。照れ隠しね。可愛いわ!」
傍らカルメンはバズーカカメラをパシャパシャ言わせている。
「撮るなー」
「やだ。愛する2人の記念写真よ。ほら笑って」
この状況で笑えるなら心が壊れてるか頭が狂ったかだ。
「笑え!」
「笑うか! このバカ!」
「照れてんのか!」
「照れるか! このバカバカバカ!」
途端に口調を変えた店長に馬鹿を連呼。すると「そこが良い!」と抱き着く力を強める。
店内に案内され、奥の事務室。準一、店長は長椅子前のパイプ椅子に座っている。
「つまりね。学校の広報部から学校紹介のポスターを頼まれてね。そのモデルに朝倉準一。あなた必要なの」
「店長さん? 一度頭を医者に診てもらった方がいいんじゃない?」
「やーね。あたしは正常よ。まぁ」
熱っぽい視線を準一に送る。「あなたがあたしの好みなのよね……キスしない?」
「帰ります!」
「逃がすか!」
「ざけんな! モデルなら女子に頼め! カルメンは十分可愛いだろうが!」
「女に興味ねぇんだよ!」
「知った事か!」
逃げようとする準一の腕を掴み、店長と準一は言い合う。
傍らカルメンはカメラのセッティングを始める。
鼻歌交じりに。
バラライカって聞こえてきそうなあのアニメのオープニング。
「だから、どう? モデル、ヤらない?」
ヤ、が気持ち悪いんだよ。と準一は腕を振り払おうとするが如何せん店長は握力が強い。
「やらない」
「やりなさい」
「やらないって」
「ヤれって言ってんだよ!」
「端っから拒否権無いのかよ!」
「うるせえ! メイド服は準備出来てんだよ!」
「んなの準備してんじゃねえよ! このバカバカバカバカ!」
「バカって言った方がバカなんです―」
「そう思うなら自分の言動考えろ!」
とここまで進むと「セッティング完了しましたー」とカルメン。
すると事務所内のブザーが鳴る。客が来た合図だ。
店内カメラにはガンプラの箱を抱えた男子生徒。
三木原凛だ。
「あら、あなたの知り合い?」
「ああ。何の用だろう」
「あなたに用じゃないの? 呼ぼうか?」
「頼む」
すると店長は事務室を出る。すぐに三木原は事務室へ案内される。
「あ、先輩」
「よう凛」
準一が言うと店長が入り、事務室の扉がバタンと閉まる。
「今日はどうしたんだ? この店に用が?」
「いえ。先輩がここに居るって」
「それは誰から?」
「校長代理です」
準一は店長を見る。「代理は一枚噛んでるわ」とガッツポーズ、ウィンク。
ため息を吐き準一は三木原に向く。「俺に用があるんだろ? どうした」
「いえ。この」と三木原はガンプラの箱。パッケージを見せる。「RGのゼフィランサスを買ったので、先輩と作りたいなって」
嬉しい誘い。よし、これを使って逃げよう。と思った直後、店長が三木原に詰め寄る。
「あなた男子よね」
「は、はい」
「逸材だわ……ミニスカートの制服……絶対似合うわ」
聞き捨てならない物騒で不穏な言葉。準一は冷や汗を掻く。
「そうねぇ。あなたは朝倉君と一緒にモデル確定。ハイ決定ー」
「おい」
準一は苦笑いのまま聞く。「凛は巻き込むなって」
「先輩……モデルって?」
「聞かない方が良い。お前の為だ」
と言うのだが「あんら。安心していいわ。ただ女装して写真撮るだけ」
「じょ、女装!?」
「おい、折角言ったのに何言ってんだよ」
「ごめん。つい」
店長は可愛らしく舌を出す。するとカルメンが「店長」と呼び携帯を仕舞う。
「第2の客人です」
第2の客人? と準一が思うと店長は事務室を出て店に入る。カメラを見ると知った顔。
「……あれ? 本郷君」と三木原は訝しげな顔を浮かべ、準一はため息。
直後、扉が勢いよく開き「聞いたぞ朝倉! 誰だコイツ!」と乱入した本郷が三木原をビシと指さし、店長が入り扉を閉める。
「えっと、先輩の後輩で三木原凛です。同じ学年だよ?」
と三木原が言うと本郷は目を細める。「先輩……だと?」
あ、何かスイッチ入れたかも。と困り、三木原は準一に向くが、準一は顔を逸らす。
「ざけんな! 朝倉の後輩はこの俺! 本郷義明ただ1人だ!」
三木原はムッとし、一歩踏み出す。「勝手な事を。先輩は僕の先輩です」
「先輩の後輩はただ1人。三木原凛です!」
「修羅場ね」と店長はムフ。と笑う。「ゾクゾクしちゃう」
あんたマジ黙って。と準一は呆れ顔。
「よし、決まりね」店長はパンと手を合わせ、三木原、本郷を順にみると笑みを浮かべる。「ここで勝負。なんて如何かしら?」
「いいぜ。望むところだ」
「僕も異存はありません」
2人は勝手に了解。準一は絶望する。
「そうね。勝負の題名はこうよ」と店長は一度考えると閃く。
「超結婚宣言!!」
いつかこのナイスガイを若度大橋からバンジーさせてやる。
準一は心に誓った。