表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/166

七夕のお祭り①

というわけで、お祭りです。

平和に終わらせます。

 その日の進展と言えば準一が三木原凛を下の名前で呼び始めた事だろう。他は特段変わらない。ただ学内に魔術師が侵入した方法は不明。機械魔導天使に関してもだ。


 三木原凛の発砲騒ぎ(騒ぎと言っていいモノかは不明だが)はその場に居た人間しか知らない。口外禁止の代理の命が下った。


 三木原凛は代理に連れられ説教された。そして罰として生徒会、志摩甲斐悠里に引き渡され入念なメイクを施され、女子生徒の恰好をさせられた。


 そんな当たり前の日常を準一はほほえましく思っていた。しかしそれは口には出さない。




 すっ飛ばした感じだが三木原凛と榊原竜二郎の一騎打ち。これは実は行われなかった。当日になり何処からかその渕上の事、榊原の事が漏洩。渕上は教頭先生の長い説教。榊原も同様だ。


 ちなみに渕上は長い長い休暇を貰ったそうだ。


 正直、特訓を頑張っていた準一、三木原からすれば拍子抜けだった。


 そして以前受け取ったラブレター。その返事は準一の口から丁重にお断りした。その際、女子生徒は泣きまくったという。どうやら人生初の告白だったらしい。





「そんでもって今日は七夕です」


 なーにがそんでもって何でしょうねー。と準一はため息を吐いた。ちなみにそう切り出したのは碧武九州校が誇る最凶トラブルメーカー、ゴスロリバカツインテールの異名を持つ御舩茉那。碧武九州校校長代理だ。


 場所は体育館。凄く広い。マジで広い。オペラ座の怪人が暴れても広い位だ。等と準一は馬鹿な事を考えポケットから携帯を取り出し開く。日付は七夕、7月7日。


 何故か脳裏には笑顔でカレンダーを破り捨てる代理が浮かんだ。


「俺病気かも」とため息を吐き、壇上の代理に目をやる。


「七夕は何をする日でしょうか? はい?」


 そう代理が全員を見渡すと「願いを叶えてもらう日です!」と男子生徒数十人が叫び「その通り!」と代理は右手を上げる。


 別に間違ってはいないだろうが、何て欲に塗れた人間達だ。織姫と彦星が年に一度会える日と言えば良いだろう。と準一はため息を吐く。


「そうです! 皆でハッピーになろうぜ!」と代理が叫ぶとノリの良い九州校生は歓喜の声を上げる。


 アンタ達で勝手に幸せになってくれ。何か言われたわけでもないが、巻き込まれそうな嫌な感覚を覚えた準一は手で顔を覆った。


 するとそれを象徴するかのような集団が壇上に登場。


「そこで我らの出番だぁッ!!」


 お分かりだろうか。そんな言葉が聞こえそうなくらいの筋肉男達がシルエットになっている。


「神の与えた最強の兵器! 力! コミュニティ! それが筋肉! それがマッスル同好会!」


 だれがあんた達を待っていたんだろう。と思うと生徒は再び歓喜の声を上げる。


「皆にはこれから各々で短冊を書いてもらいます。んで、書いたら午後4時までに提出。皆のお願いの書かれた短冊を笹の木に飾ります」


 代理は手にピンクの短冊とマジックペンを持ち、首を傾げ微笑む。


「そしてその後はお待ちかね! 我らマッスル同好会のステージイベントだ!」


 準一はただ苦笑いを浮かべた。何をする気かさっぱり分からないからだ。


「んでマッスル同好会のステージイベントの後は七夕パーティーでーす!」再び代理が叫ぶと男女問わず生徒は喜んだ。


「でもって! 織姫彦星に倣ってカップル限定のダンスイベントもやるよ! どうだ! 踊りたいか!」


 当然、会場からは賛成。の声だけではなかった。カップル。そんな単語が遠い存在の人間は不平不満を漏らした。




 体育館から出ると準一はそそくさと逃亡を図ろうとする。巻き込まれたくないからだ。しかしそれは叶わなかった。


「あ、準一」と呼ぶ声に振り返るとレイラ・ヴィクトリアが居た。


「レイラ様。どうかなさいましたか?」

「どうかなさいましたか? じゃありませんわよ。全く、私の夫だというのに料理の特訓でしか顔を出さないんですから」


 はは。と準一は乾いた声を出す。ここ数日、レイラからは度々お出かけのお誘いがあった。しかしそれよりも三木原の特訓が忙しかった事実があり、全て断ったが、料理特訓だけは時間を割いて付き合った。


「それよりも、生徒会からお呼び出しですわ」

「へ? お呼び出し? どうしてまた」


 身に覚えが無い。パーティー準備は手伝ったぞ?


「お料理の仕込が終わったので仕上げですわ。さ、行きますわよ」と納得のいかないまま特別に設けられた厨房へと向かった。




 設けられた厨房は外。パーティー会場に使われるのは寮エリアのパーティーゾーン。そこの隅に仮説厨房があった。そこには篤姫が膝を着いている。


「おいすげえ事思いついたぞ!」厨房に居たテトラが大きめの魚を串に刺し、篤姫の脚部バーニアに翳す。「結衣! バーニア点けて!」


「はーい」と結衣はコクピットに乗り込み小出力でバーニアを噴射。案の定、魚はこんがり。テトラも真っ黒になった。


「ケホッ……スゲエだろ?」

「スゲエのはお前の頭の中だ」


 言ったテトラに準一はタオルを渡す。「拭きなさい」


「でも見ろ! 魚はこんがりだぞ」魚を見せびらかし、テトラはかぶりつく。「おお! 美味い」


 一応料理用の食材なんだけどなー。と準一はエプロンを付け、見渡す。


 メンバーはエリーナ、エルシュタ、結衣、カノン、生徒会、会合会メンバー、3バカ。錚々たるメンバーだ。


「ギャー! 鍋が吹っ飛んだ! 菜月ー! シャーリー!」

「アンナ! 何入れたの!?」

「炭酸代わりの爆薬!」


 再び聞こえる爆発音。何で料理場で爆発が起こり火薬の臭いが充満しているのだろう……。


 取りあえず準一は食材にラップをした。





 料理は4時ごろには完璧になった。保温用のボックスにすべてを収め、調理担当した生徒たちは短冊を提出しに行った。


 取り敢えず紹介しておこう。


『兄貴と結婚』『兄さんと結婚』見てわかる通り、これは結衣とカノン。


『平和に過ごしたい』『皆と一緒に居られますように』これはエリーナ、エルシュタだ。


『どうか準一に夫としての自覚を』レイラ。


『皆』『仲良く』『イェーイ』これはアンナ、菜月、シャーリーだ。


『給料上げて』『好きな人に好かれたい』テトラ、綾乃だ。


『女の子を眺めていたい』『好感度を確かめる装置が欲しい』ロン、真尋。


『代理の暴走を止めて下さい』『中途半端に駆り出すのを止めてほしい』揖宿、エディ。


 そして生徒会は満場一致『目立ちたい』


 そんなこんなで校長代理は決まっている。


『もっと楽しく!』


 ちなみに準一は書いていない。いや、書いてはいるが書いてないと言い張っている。


 変なメンツが集まるこの集団。他の生徒からすれば相当注目の的だった。理由は簡単。妹のコネで入って来たと聞いていた(まぁ噂だが)朝倉結衣の兄、朝倉準一がその中心に居るからだ。


 生徒会に美少女の部類の少女達。元イギリス王家の人間。本郷重工御曹司。そして校長代理。まぁこんな集団に注目が集まらないわけがない。


「さぁ皆パーティーの前に前哨戦だ! ステージイベントを見に行こう!」と揖宿が厨房前で皆に言うと準一、エディ以外は「おー!」と手を挙げた。


 2人は思った。自分たちはお祭りを楽しめない人間だな。と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ