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渡されたラブレター

読み返しました。若干、文体変わりました。読みにくかったら言って下さい

頑張って改善を図ります

翌日。6月後半。7月が近づき、日差しは日増しに強くなり、男子生徒は暑さにうだっていた。現在、午前10時。2年生はベクターの格闘訓練及び機動訓練を行っている。当然、場所はアリーナだ。


今回、準一、カノンは観客席に居る。結衣や綾乃達は訓練に参加している。


「さて、今回私たちは見学ですね」カノンは言うと隣の準一を見る。「気分はどうです? 兄さん」


「別にどうって事もないだろう。教員からの指示だ。俺は機動力、お前は射撃。どっちも生徒の手本にならないんだろう」


準一は言うと背中を丸め、手を顎に当てる。


「確かに。兄さんはずば抜けてますから」カノンは微笑み、目線をアリーナへ向け「手本になんてなりませんね」


言ってくれるな。と準一は苦笑い。


「そういえば、舞華さんとの勉強の程。どうです?」


あんまり思い出したくない準一だが、聞かれてしまっては答える。「訳分かんない公式を頭に叩き込まれた」


「あの女悪魔だよ。鞭で叩いてくるんだぜ?」と準一。遠くを見るような準一のそれを聞いて、カノンは苦笑いし「嬉しかったんですか?」と聞く。


「お前、俺の事なんだと思ってんの?」

「冗談ですよ。でも、面倒見のいいお姉さんだと思いますよ。家事はできますし―――魔界飯はいただけませんけど」


確かに、と準一が返すとアリーナで授業が始まった。結衣達以外の生徒がベクターを起動させ、模擬戦用ブレードを構える。そのまま格闘戦が開始され、ベクターの踏み込み、足回り、手捌きを教員がメガホンで注意する。


「兄さん。昨日から忙しいみたいですけど」準一に目を向け、目を細める。「何に首を突っ込んだんですか?」


全く、変に鋭い。どこから情報を仕入れたんだろうな、この義妹は。と準一は背を起こし、目はそのまま。「人の良さそうな人が面倒な事を始めてな、その事で迷惑してる後輩が居てな」


それが、善意から来る事ではない。と理解しているカノンは目を再びアリーナへ向ける。「兄さん。何で首を突っ込んだんですか? 必要以上に面倒臭い事は嫌がると思ってたんですけど」


「まぁ、そうなんだがな。事情を聞いてしまったらな」

「事情?」

「ああ。嫉妬とお金が関わっててな」


準一は一度息を吐く。「榊原インダストリーの御曹司の怒りを買ったんだとさ」


「あーあ」と声を出し、カノンは苦笑い。思い浮かんだのは聞いていた転校してすぐの本郷義明と兄の決闘。「成程、兄さんは境遇が似ているから協力してあげる事に?」


そうだ。準一は答え続ける。「悪い事はしていないんだ。あまりにも不憫だろう?」


「ええ。そう思います」


答え、カノンは準一に微笑む。


「そういえば兄さん」

「ん?」


ふと言われ、準一は目を向ける。


「元イギリス皇族のレイラ・ヴィクトリア様がお怒りですよ」

「何で?」

「へぇー。何でって聞くんですねぇ」


この口調は怒っている。カノンの怒りを察知し、準一は苦笑いを浮かべる。「悪い。俺には本当に理由が分からないんだ」


「それはいけませんね。兄さんはレイラ様のファーストキスを貰った挙句、婚約までされたとか?」


あ、そんな事も言ってたな。と準一はポケットからブローチを取り出す。「じゃーん。レイラ様の騎士の証しのブローチ」


「む」とカノンは声を漏らす。ふくれっ面で何かまた不機嫌になったかと思いきや、カノンは準一の腕を絡め取ると抱き着く。


「これはどういう?」

「ふふん。どうせまたどっか行ってしまうかもしれないんです。好き勝手甘えますから」


別にイヤではない。イヤではない。そうイヤではない。周囲の視線はイヤだけど。


観客席は準一達だけではない。したがって、他の生徒も居る。が主に男子からの視線が痛い。


「カノン」準一は名前を呼び「離れない?」


「嫌です」そんな事はお構いなしに一層強く抱きしめる。「えへへー」




その授業終了後、準一にとっては苦行以外何ものでも無い数学の授業。どういう訳か、その授業の教師は舞華だった。舞華は授業中、ずっと準一に不敵な笑みを向け、左手には参考書と鞭。


何のための鞭なんでしょうねぇー。と準一は終始苦笑いの状態で授業は終了。すぐに結衣達が準一に駆け寄る。一応4時限目なので、次は昼食。駆け寄る理由もそれだ。


しかし、妹達より先に1人の女子生徒が準一に駆け寄る。3組の人間ではない。だが2年生だ。


「あ、あの」駆け寄った女子は手紙を差し出し、顔を下に向ける。「朝倉君! これ!」


馬鹿でも分かる。これとはこの手紙だ。「あ、はい」準一は言われるがまま受け取る。見ると可愛い女の子らしい丸文字で『朝倉準一君へ』と書いてある。


女の子も可愛い。が準一はここで思考停止する。まぁ、当然だ。これがラブレターと理解したからだ。


「あ、あの! 良かったら読んで下さい!」そう言うと女の子は顔を真っ赤にし教室を走り去る。


準一はそれを見ると手紙をポケットに仕舞う。「……兄貴?」結衣の問いかけに準一は出入り口を見る。


そして走り出す。目指すは人気のない場所。




人気のない場所の定番。体育館裏、ではなく玄関を出た先の木の陰。準一は封を切り手紙を取り出す。


文面は至ってシンプル。


「朝倉君の事が好きです。付き合って下さい」


さて、準一は読んでしまった。さぁ、参ったぞ。準一はポケットから缶コーヒーを取り出すと開ける。プシュ。と音が鳴る。


しかし、返事は決まっている。断る。本当なら受け取らないのも手だったかもしれないが、勢いに呑まれ受け取ってしまった。その手前、返事はキチンと言わなければならない。


どうしてこう次から次へと。と準一は気にもたれ掛り缶を持った降ろす。7月が近く、虫が鳴いている。主にセミだが、少しうるさい位だ。それに加え、日差しも強い。


文面は自分に対する好意の内容だ。一応考える。もし、ドッキリだったら? いや、馬鹿か。んな事あるわけねぇよ。


「はぁ」とため息を吐く。すると声が掛る。「先輩?」


最近覚えた声だった。「三木原」言った通り三木原凛だ。購買で購入したであろう菓子パン4つを抱えている。


「弁当ここで食うの?」

「いえ、先輩の姿が見えたので」


三木原は答えながらカスタードパンを準一に差し出す。「どうぞ」


「ありがとう」準一が受け取ると三木原は隣に腰を下ろす。2人が座っている場所は木の葉で陰になっている。


「先輩。どうしたんですか?」聞きながら三木原は袋を開ける。「疲れ切った顔ですよ?」


「そうか?」

自分では気が付かなかった。準一は眉間に人差し指と中指を当てる。


「何かあったんですか?」三木原は不安そうな表情を浮かべ「僕の事ですか?」


「いや、そうじゃない。ついさっき発生した問題だ」言いながら手紙を畳み胸ポケットに押し込み、パンの袋を開けかじり付く。


三木原も小さな口で一口パンをかじる。「どういった内容ですか?」


内容。と聞かれるがばらしていいモノか。と悩み言わない事にする。「すまない。これは言えない。プライバシーに関わる」


準一はパンを再びかじるとコーヒーで流し込む。「パン美味いな」


「ですよね。お気に入りなんですよ」

「にしてもすまないな。パンを貰ってしまって」


準一が言うと「いえ、その。カスタードパンは先輩に買って来たんです」と首を振り続ける。「甘いもの嫌いだったらどうしようかと思いました」


その少し照れるているかの様な仕草に準一は微笑む。「基本好き嫌いは無い」


「そういや三木原。資料には目を通したか?」

「はい!」


準一の言った資料とは、昨日渡したものだ。何に関する資料かと言えば、武装に関してだ。昨日の訓練で準一は三木原の技術を観た。射撃、格闘。どちらに秀でている訳でもない。どちらかにするよりも、どっちも使えた方が良い。


そういった理由からガンブレードを用意した。ガンブレード、といってもサブマシンガンに中型の刀身をくっ付けたモノ。まぁ、銃剣が一番近いだろう。その資料だ。


「でも先輩。あんな武器どうやって? 正規の武装ではないですよね」


その三木原の指摘通り、正規の装備ではない。別にそれは問題ではない。三木原が気になったのは入手経路だ。


それに「知り合いのツテを辿ってな」と準一はコーヒー缶を空にする。「今日あたりに届く。まずは実射。そして俺との訓練だ」


三木原は頷く。本当に頼りになる先輩だ。そう思いながら準一を見る。すると「どうした?」と声が掛り「い、いえ」と目を背ける。


「あ、おい」急に呼ばれ三木原向くと、準一はハンカチを構えており、三木原の口を拭う。「お前。口の周りにチョコが付いてたぞ」


微笑みながらのそれに恥ずかしさから顔が赤くなる。そのまま三木原は無言でパンをガツガツと食べ進め「どうしたんだろう?」と準一は頭に疑問を浮かべ、それに続くようにカスタードパンにかじり付いた。


返事は放課後にしよう。準一はそう思いながら胸ポケットに収まる手紙を見た。

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