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アーティフィシャル・ライフ ①

巨大ロボット対怪獣

そんなものが書けたらいいなこの件はと思っております

結衣達が上陸したのは猛獣の島。と呼称される場所だ。その名の通り猛獣がいる、わけではなくただ蛇やイノシシが居るだけ。他には何も無い。


現在、結衣達3人はその島を浜辺に沿って移動していた。


3人ともブツブツ文句を言い合っている。よっぽど代理に騙されたのがショックなのだろう。


「じゃ、さっさと終わらせてあのゴスロリを大和主砲で地平線の彼方に撃ち込もう!」


3人は雄々しい叫びを上げ、拳を空に向ける。直後、3人の後ろに何故か怒り狂ったイノシシが飛び出す。


「フゴ」


鼻息を荒げるソレに3人は思った。


逃げよう


そしてイノシシと3人とのかけっこが始まった。







同時刻、大和前甲板にはライフルを構えた隊員数人が居り、そのすぐ近くの海にはブレードを構えたフォカロルが臨戦態勢に入っている。


何故かと言えば、前甲板には忍者の恰好の狐のお面を被った男が腰に刀を携え立っているからだ。それだけなら良かったが、この男は監視の目に引っ掛からずここまでたどり着いたのだ。


隊員の展開までは数秒と掛からなかった。


「物騒な歓迎会ですね」


見渡し、男が言うと隊員たちの前に代理が出て行く。


「あ、マナ様。やはり・・・随分お変わりな恰好ですね?」


代理をマナと呼んだ男はどうやら代理の勝手を知っている様だ。


「相変わらず生意気ね・・・式神のクセに」

「はは。私にはちゃんと当主から頂いた名前があるんですよ」

「・・・鬼童丸」


と代理が言うと鬼童丸は手をお面に掛け外そうとする。


そこへ準一が出て行くと男はお面を外す。


式神、と言う割には案外カッコいい顔をしているな。と準一は思った。


「知ってはいたが、初めましてですね。朝倉準一」


言われ、準一は会釈をすると口を開く。


「いきなりだが、あんたの素性を教えて欲しい」


それに「良いでしょう」と鬼童丸は答え、2人に背を向ける。


「まず、君の隣の碧武九州校校長代理、彼女の名前は御舩茉那。その彼女の母親、御舩一族当主である御舩京華。私は京華様が召喚した式神です」


聞いて準一は代理を見る。あの一族が嫌い、と言っていたが。


「ほんとは京都で言うつもりだったんだけど・・・私は御舩家の長女、御舩茉那。間違いないよ」

「そうですか・・・あんた、ここに来た理由は?」


準一の問いに鬼童丸はゆっくりと振り返る。


「碧武九州校が懸念している七夕の反日軍の事です。言っておこうと思いまして、結論から言うと反日軍は碧武まで手が回らないでしょう」


準一は何故? と聞く。


「茉那様の妹君である茉耶様が見たんです。御舩家の予知夢で」


御舩家には特別な魔法として、一族にしか使えない魔法。予知夢がある。ほとんどは暫定的なモノであるが、時として確信ある夢が見れる。


「反日軍は近いうちにゼルフレスト教団との武力衝突を起こします。ま、対碧武・・・いや、対朝倉準一用の戦力は全てそこに注ぎ込まれ、その戦力はほぼ疲弊、無くなるでしょう」


それはありがたい事だ。と準一が思うと「もう1つ」と鬼童丸は続ける。


「それに伴い、堕天使の身柄ですが、御舩家で預かろうと」

「却下」


間髪入れず代理が言うと鬼童丸は「まいったなぁ」と言いながら頬を撫でる。


「あんな家にエルシュタちゃんは預けられないわ。・・・私にした事と同じ事をする気でしょ?」


目を細めた代理に聞かれ、鬼童丸は悪い笑みを浮かべる。


「実験ですか? それとも――」



「あなたを傘下の一族の慰み物にした事ですか?」


その言葉に代理は動揺する。


代理の脳裏には、自分に迫る男達の厭らしいいち物と、自分を拘束する幾つもの手が写り、次の瞬間には自分の中に幾つもの男が入り込んで汚している。


目が虚ろになり、代理は足がふらつき倒れそうになるが、準一がそれを受け止める。受け止められた代理は、身体を震わせ、怯えている。


「・・・慰み物、とは?」


準一に聞かれ、鬼童丸は笑みはそのままで首を傾げる。


「想像が付くでしょう? 女として男達に蹂躙され、嬲られ、汚され、犯される。茉那様はそれを当主によりされてきたんです」


嫌いな理由が分かったよ。と準一は思いながら代理を見る。普段、動揺は見せてもここまで弱った所は見た事が無く、準一はため息を吐く。


「やはり、京都に俺が着いて行くのは正解なようだ」と準一が言うと鬼童丸は「ま、今日はここまで、次は京都で会いましょう」と言うと再び背を向け


「化け物」


と準一に言い残すと姿を消す。すぐに隊員は構えていたライフルを下げ、持ち場に戻る。


「代理?」


準一が呼びかけると、代理は準一の胸元を強く握る。


「お願い・・・お願い、一緒に居て」


あまりに弱弱しく悲しい懇願に準一は小さく頷くと膝を曲げ座り込む。すると代理は声を押し殺しながら、すすり泣き始め準一はその頭を優しく撫でてあげた。






落ち着いた代理は子供の様に寝てしまい、準一は取りあえず女性の船員に預けると九条に呼ばれ艦長室へ向かった。


準一が入ると磯島が入れ替わりで出て行き、一度会釈。


「お、準一君。座って座って」


物腰柔らかな九条に従い準一は長椅子に座る。それに九条はコーヒーを出し、準一の向かいの椅子に座ると一息つく。


「君が京都に行くなら話しておこうと思ってね」


いきなりのそれに準一は先ほどの代理を思い出す。あまり詮索はしないでおこうと思ったのだが。


「話していただけるのであれば」


準一が言うと艦長室にカノンが入り一礼する。


「代理は自室のベットに寝かせました」


カノンの報告の後九条はカノンにも座るように言う。準一は右にずれ、カノンがそこに座る。


「じゃ、話しておこうか。御舩茉那の2年間を」


目を細め、九条は語り始める。



「御舩茉那は知っての通り、御舩家の長女だ。今の茉那の年齢は15歳。あいつは12の頃に母親に見限られたんだ」


見限られた? とカノンが聞くと九条は頷きタバコに火を点け吸い始める。


「あの一族の特殊能力。予知夢が茉那には使えなかったんだ。そんなあいつは一族から出来損ない、失敗作と罵られそれはもう酷い扱いを受けていたらしい。そして12歳からは屋敷の地下で幽閉されていた。そして、茉那の母親である京華はある事を知った」


「ある事?」と準一はタバコを吸っていいかとマルボロのボックスを取り出し、九条は頷く。


「カノンちゃんなら良く知っているだろう。実験だよ」


カノンは脳裏に教会での惨劇を思い出し、膝上で拳を握る。


「その実験で茉那は劇薬を打たれ、式神相手に殺し合いを演じさせられた。茉那自身は、この実験で母親に認めて欲しかったらしかったが、当主京華は実験に飽きてな、茉那を一族傘下の男達に身柄を引き渡したんだ。そこから3か月。13歳の茉那は男達にレイプされ、自我は崩壊していたよ」

「酷い母親も居たもんですね」


準一がふと言うと九条はタバコを灰皿に押し付ける。


「ああ。そして茉那は能力値が高い事が分かり、碧武九州校に保護された。俺があいつに会ったのもその頃だ」


言い終えた九条に「代理の高位治癒魔法の事を当主は知らなかったんですか?」とカノンは聞く。


「ああ、知らなかったみたいだが・・・最近知ったらしくてな。あの鬼童丸を寄越したのは堕天使、エルシュタの身柄要求と茉那の引き渡しも兼ねていたんだろう」


今になって代理の高位魔法の力が欲しくなった、って事か。準一は心中で言うと煙を吐き、タバコを灰皿に押し付け火を消す。


「正直、準一君が茉那に着いて行くなら助かる。準一君なら生身でも強いし、アルぺリスも使用できる」


使用する状況が生まれるのか? と準一は疑問に思いながら頷く。


「兄さん。私も行きます」


言ったカノンに艦長はバッテンを作り「あかんよ」と一言。


「何でですか!」

「カノンちゃんは強いけど、魔術のそれと同じ奴を相手にするんだ。止めといたほうが良いでしょ」


カノンは反論できず「うぅ」と俯く。


「ま、準一君には準一君なりに要件があるんだよね。御舩家には」


代理に話した事だが、代理は九条には細かい事は話していないらしい。


「ええ。まぁ」


準一が答えると「それなら良い」と九条は言いながら立ち上がり、腰をトントンと叩き「俺も歳かなぁ」と呟く。


「では、俺はこれで」

「私も、失礼します」


そう言い、2人は艦長室を後にする。







その頃、島で結衣達はイノシシから逃げ切り、何とか次の島へ向かう為、海を目指していた。3人は森の中を走っており、先に海を見つけ加速し、飛び込む。


筈だったのだが、3人はそこが岸壁だとは気付かず30m以上の高さから海へ落下する。


3人は何とか海面に顔を出すと、首にかけていたゴーグルマスクを着け、互いの無事を確認する。


「綾乃、朝倉無事!?」


真尋の声に結衣は「無事」と返すが綾乃はゴーグルに手を掛けたまま黙りこくっている。何か恐ろしい物を見た。と言いたげな顔に真尋と結衣は心配し、綾乃の腕を引き、岸壁下の岩場を登った先の洞窟に入る。


そこに用意されていたサバイバルキットを見つけランプを点ける。


「綾乃。どうしたの?」


結衣に聞かれ、綾乃は肩を抱き、震える。


「さ・・・さっき、海に落ちた時・・・居たの」

「居たって何が?」


抽象的な表現に真尋が聞き返す。


「分かんない・・・でも、何か巨大で・・・ベクター位の大きさだと思うけど・・・目が動いてて口があって牙があって、何か触手みたいのがヒュンヒュン動いてた」

「クラーケン?」


ぽつりと結衣が言うと真尋は呆れる。あんたは一応成績がトップなんでしょうに、もっとマシな事思いつきなさいよ。


「違う・・・人の形をしてた。機械みたいに四角だったけど、生き物だった」


言いながら怯えている綾乃に、2人はただ事ではない何かを感じ、無線機で大和に連絡を入れると、すぐにフォカロルが迎えに来てくれ3人は大和へ送られた。





「成程・・・ベクターサイズの機械みたいな生き物か」


そう言ったのは準一、戻って来てジャージに着替えた綾乃に事情を聞き終えたのだ。場所は食堂。他の船員数十人も聞いておりざわめいている。綾乃や真尋、結衣には炊事班から暖かいココアが出された。


そんな中に磯島が入ってきて船員は敬礼。準一は立ち上がり、綾乃も立ち上がろうとするが磯島は「いい。座って」と言うと神妙な顔で全員を見渡す。


「各員。持ち場へ、すぐにこの海域から離れるぞ」


磯島からいきなりだったが、船員たちは大声で返事をすると各部署へ走り、すぐに大和のエンジンが始動し碇が上がり発進する。それを確かめるように音を聞き、磯島は座る綾乃と準一に向く。


「とりあえず訓練は中止にさせてもらったよ」

「それはどういう理由でです?」


準一に聞かれ綾乃に向き「彼女の言葉は真実で、現在この諸島群周辺に未確認の巨大な生き物なのか機械なのか分からないモノがいる」と磯島は告げ、準一はため息を吐く。


「彼女の証言を上に話してみたらな、どっかの生物学研究所が作った人工生物が逃げ出したらしい1週間前だ」

「それはまた・・・」

「その生物の特徴は牙があって、目があるそうで、今は恐らく成長の最終段階でベクターと同サイズだろう。となっているそうだ」


綾乃の証言にピタリと合致。準一はまた厄介な事が起こったかもな。と思いながら綾乃を見る。余程怖かったのだろう。まだ震えている。


「綾乃、そんなに怖かったのか?」

「うん・・・」


そうか。と準一が言った直後、磯島にCICに来るように命令が来て、磯島はCICへ急ぐ。





現在、CICの探索レーダーには一隻の艦艇が異様な存在感を放っていた。国内の船。中型のタンカーだ。武装は無い。だが、荷物も無い。そして、この進入禁止海域に入り込んできている。


一応仕事だ。と九条が言うと通信士がタンカーへ呼びかける。


『航行中のタンカーへ。こちら機甲艦隊。ここは進入禁止海域だ、こちらの指示に従え』


呼びかけに応答は無く、再度呼びかけようとすると数回ノイズが入り『こちらタンカー東稜丸!』と男性の声が聞こえ通信士は事情説明を求める。


『今俺の船は化け物の触手みてえな奴で操舵不能! 仲間は大概喰い殺された! 時期にこの操舵室にも来る! 機甲艦隊だったか、早く逃げろ! 殺されるぞ!』


その声に通信士は九条に向く。九条が「助ける」と言うと通信士は「待っていてください。必ず助けます」と言うと、後部甲板からティルトローター機、V-24が飛び、東稜丸へ向かう。


だが、東稜丸の男は『来るな』と叫び続けている。しかし、目の前の人間を見捨てるわけにはいかない。


「V-24へ。臨検及び、船内の人間の救出に当たれ。想定外の事態に備え搭載火器、携行火器全ての使用を許可する」


それにV-24のパイロットは「了解」と小さく言うとV-24をタンカーに着艦させようとローターを上に向け、高度を下げ始めた瞬間、V-24は左の翼を貫かれた。


「何!」


パイロットは翼を見る。そこには触手の様な物が刺さっており、ドアガンナーはその触手を機関銃で撃ち抜くと、痛いのだろうか、聞いた事のない生き物の叫び声が聞こえ、4つの触手がタンカーから伸び、V-24を掴むとタンカーに叩き付ける。


悲鳴が聞こえる間もなくV-24は爆発。それは大和からも確認でき、通信士は東稜丸へ呼びかける。


「無事ですか!?」


それに東稜丸の男は答えようとしたが、何か大きな音が聞こえ、次の瞬間には東稜丸船員の断末魔が聞こえ九条は静かに言った。


「大和はこれより東稜丸を敵、と断定。主砲1番から3番、4式弾装填」


砲雷長の復唱後「撃て!」の声が響くと自動で東稜丸を捉えた前後部の主砲、計9問の砲が火を噴き、4式弾が飛び出すと衝撃で船体が揺れ、波が立つ。


そして九条はモニターで東稜丸を見る。4式弾は数発が海に堕ち、数発が命中。爆発の炎と水柱に東稜丸は隠れ、姿がチラリと見えた時には沈み始めていた。


「やったんでしょうか?」


磯島に聞かれ、九条はため息を吐き「それフラグだぜ」と小さく言うと他のCIC要員は頷く。


「フラグ?」

「やったんでしょうか、とかさ。次の回には敵が復活してボッコボコにされるってのがセオリーなんだよ」


テレビの中だけでしょうよ。と磯島が思った直後「着弾海域、深度100に潜航物あり!」の声が響き「ほらね」と九条に言われ帽子を深く被る。


「潜航物は」

「は、はい。潜航物は現在深度150を20ノットで潜航中」


言われ「追撃だ。対潜戦闘用意」と九条が言うと大和は対潜戦闘を開き「前甲板VLS解放。対潜ロケット弾4発」の言葉に前甲板のVLSセルが開く。


「発射始め!」


すぐにVLSからロケット4発が飛び出し、着弾海域へ向かい、1度ブースターをパージすると海中に飛び込み、航跡を描きながら潜航物に接近し、着弾。小さな鈍い音。着弾海面には少し波が立ち、九条はレーダーを見る。


潜航物のビーコンが途絶え、「目標・・・撃滅したかと」と言われ一息つき「佐世保に戻ろう」と言うと大和は佐世保へ向かった。


大和が佐世保に停泊し、九条は基地司令に状況報告。それはすぐに日本国政府にも回り、各自衛隊基地、機甲艦隊、飛行戦隊、陸上戦隊にも知れ渡った。


程なく代理は目を覚まし、準一が呼ばれ代理の部屋へ向かった。


大和内の代理の部屋は別に私物が置いてあるわけでもなく、ただ机にお菓子が並んでいるだけだった。


「ごめん・・・呼びつけちゃって」


何ともしおらしい代理に出迎えられ準一は室内の椅子に座った。


「別に構いませんよ。それよりも、大丈夫ですか?」


容態を心配し聞くと代理は静かに頷き、机からチョコレートを拾い上げると準一へ渡す。準一は「ど、どうも」と受け取る。


「何かさ・・・凄く情けない所を見せちゃったね。ごめん」


言った代理はベットに腰掛ける。その様子は本当に弱弱しく、準一は驚く。


「いつもの貴女と違い驚きましたが。謝らなくても」


言うと、代理は準一に精一杯微笑み口を開く。


「最近はあの事を忘れられる位楽しかったから・・・何か、あの事を思いだしてさ、この楽しい生活が終わるんじゃないかって・・・はは、なっさけないなぁあたし。一応碧武九州校の校長代理なのにね」


何とか弱気を見せない様にしているのだろうが、準一には弱り切っているのが見え見えで、本当は黙っていれば良かったのだろうが何か言わずにはいられなかった。


「あなたは校長代理の前に1人の御舩茉那っていう女の子でしょう」


これを言って準一は代理の反応に期待した。これで「何言ってんだー! バーカ!」と元気になるかと思ったのだが、代理はポカンとしている。


「・・・すいません、出過ぎました」


顔を手で覆い、準一が言うと代理はクスリと笑い準一に近寄り


「ねぇ。もしかして元気出させようとして言ってくれた?」


と聞き、準一は「はい」と頷く。それに代理は微笑むと「ありがとう」と礼を言う。


別に礼を言われても、と思いながら準一は手を退け代理を見る。


「本当に・・ありがとう。・・・あたし、どっかで準一君とあたしを同じに見てたんだよね。比べられて罵られて。謝っとくよ。凄く失礼だったね」


真剣な表情の代理は頭を下げ、謝る。


「本当に失礼ですね」


少し冷淡な口調の立ち上がった準一の言葉に代理は顔を上げ「分かってる。失礼だったよ」と言うが、ふいに代理は頭に準一の手を置かれ「ふぇ」と声を漏らす。


「俺と貴方は同列に出来ません。言えば不快になるかもしれませんが、貴女の方が圧倒的に酷い目に遭っている」


準一に言われ代理は目を細め、準一を見上げる。


「失礼かもしれません。差出がましいかもしれません。ですが、そんな弱弱しい貴方はらしくありませんよ」


その少し優しい表情からの準一の言葉に代理は頬を染め俯く。


「今のあたし、らしくないの?」

「ええ」


言われ代理は悩むような表情を浮かべる。


「・・・今みたいなのイヤ?」

「イヤではないですが」


と準一が言うと代理は恥ずかしそうに胸の前で両手をモジモジさせる。


おや、どうしたんだ? このゴスロリは。と準一はその仕草に無表情で戸惑う。


「・・その、今のこれってさ、あたしの素なのよね」


へぇ、そうなんだ。


「でね・・・あのね、その・・たまには素でいたいっていうかね」


何て歯切れが悪いんだろう。


「じゅ、準一君と2人の時は素でいたいっていうか!!」


んなこったろうと思いましたよ。と言わず準一は困ったように笑みを浮かべると「分かりました」と短く言う。


すると代理は顔を笑顔にさせ「うん!」と頷くと燥ぎ回り、鼻血を出し気絶。ため息を吐きながら準一は代理を医務室へ運び、医師に任せると端末に九条からの呼び出しが入り、そこへ向かう。




先ほどまで準一は大和内に居たが、九条からの呼び出しで後部甲板へ出る事になる。出てみると九条が携帯灰皿を手にタバコを吸っている。


「来たね」

「来ましたよ」


準一が答えると九条はsevenstarの箱を準一に差し出し一本取るように言う。準一は一本取ると咥え、火を点ける。


「あの、九条さん。代理の素って何ですか?」

「あの馬鹿の素? ・・・言われてみりゃ知らないや。どうかしたの?」

「いえ、代理は俺と2人の時は素でいるらしいので」


それを聞き「ああ。分かった」と九条は言うと一吸いし、灰皿にタバコを入れ蓋をする。分かって何が? 準一は思った。


「そうだな・・・君にそう言った時茉那は大人しかったかい?」


確か、大人しかった。


「大人しかったです」

「そういう事さ」


どういう事だよ。と準一は考える。が思いつかない。


「あの馬鹿は常に元気に振る舞い、時に強気に振る舞う。そうする事で身を護ってきた訳で、それを取っ払った状態が素なワケよ」

「・・・・ん?」

「はは、つまりさ。茉那はかなり君に懐いてしまったんだよ。準一君は年が近いし、茉那は姉妹の上で、あんな過去があるだろ? 頼れて甘えられる人間が欲しかったんだよ」


あの素でいるという事の重大さに気づき、準一は苦笑いを浮かべるとヘリのローターの重低音が聞こえ、上を見る。


「来たか」


考えてみれば事情説明が何も無かった。誰なんだ? あのヘリに乗っているのは。


「さっき聞いたと思うけど、あのワケの分かんない怪獣。それに関わっているであろう生物学研究所の所長さ」


成程、実際に交戦した大和に事情でも聞きに来たのだろうか。


思いながら準一はタバコを消した。





ヘリは後部甲板、フォカロルの邪魔にならないように着艦し扉がスライドで開き、灰色の年配のスーツの男が降り立ち「お待ちしておりました」と九条と所長は握手をする。


「どこか話が出来る場所へ案内していただきたい」


所長の言葉に九条は艦長室へ案内する。




案内された所長は手に持ったスーツケースを置き「どうぞ」の九条の声が掛りソファへ腰を下ろす。それに準一がコーヒーを淹れる。(九条が淹れないのは、実はコーヒーを淹れるのが下手だからである)


「彼は?」


気になったであろう所長は準一を見ながら九条に言う。


「ああ、碧武校からの生徒です。ベクターの操縦に長けているので本件のお役にたてるかと」


そうですか、と所長が言うと準一はテーブルにコーヒーを並べ、九条の隣に座る。


「私は石川県にある朽木生物学研究所所長、朽木幸太郎です。早速ですが、あなた方が遭遇したであろう例のアレの詳細を教えて頂きたい」


アレとは東稜丸のアレでいいのだろう。と九条は説明を始めると、朽木は表情を曇らせる。


「以上です」


説明が終わると準一は朽木を見る。曇っていた表情は無くなり、焦りからだろう、脂汗が浮かんでいる。


「・・・つまり、アレは。ALは人間を襲った、という事で間違いないでしょうか」

「ええ。間違いありません」


と九条が答えると「失礼」と準一が口を挟む。


「此方側は必要な情報が足りていません。必要情報は話していただきたいのですか」


言われ、朽木はコーヒーを啜り一息つく。


「あれは、人工生命アーティフィシャル・ライフ。AL。我が、朽木生物学研究所で遺伝子実験を専攻していた見上浩二が開発した進化生物です」


なら、対抗策はあるな。作った本人が分かっている。と九条、準一が思った矢先「ですが、見上は自殺しました」と言われ驚く。


「ALに関する資料も全て、消去済みの状態で」

「データは残っていないと?」

「ええ。見上はコンピュータネットワークで所内コンピュータがシェアされているのを嫌っていたので、殆どは紙面にデータを残したいたんですが、自殺前に消去させたようで」


そうですか、と言うと九条はコーヒーを啜る。


「朽木さん、見上さんはどこでどうやって自殺を?」


準一に聞かれ「あ、ああ」と朽木は口を開く。


「1週間前、南西諸島での海洋調査に向かう船から身投げを。場所は東シナ。死体は発見されませんでした」

「では、そのALが海へ放たれた経緯は?」


続けての準一の質問。


「彼の身投げに合わせて、研究所のEMERGENCYが立ち上がり、その混乱の中、試験水槽から逃げ出したようで」

「ALの特徴や生態、知っている範囲で教えてください」

「私も残っていた少ない資料でしか知りませんが、酸素に触れて一週間で成長最終段階へ。そして、あらゆる物を情報とし、自らに取り込む」


取り込む。に九条が反応し、準一はそれを横目で見る。


「・・・ALの欲求は取り込み、それを自らとし吸収する事。それが人を襲ったという事は」


の所で準一と九条はハッとし気付く。


「あなた方の察しの通り。ALは恐らく思考能力を得たはずです」


そこで準一はため息を吐き、九条は前のめりになる。


「朽木さん。そのALはどういう目的で作られたんですか?」


ここまで聞いて、開発目的は明白では無かった。


「本来、ALはその吸収能力からガン細胞、腫瘍など、体内の不純物を吸収する医学的なモノです」


そんなモノが、何故あれだけ大きいのだろう。と思い九条が聞くと朽木は口を閉ざす。


「そこは言えないと?」

「ええ。言えません」

「では、見上さんが自殺した理由は?」


その問いにも朽木は口を閉ざした。九条はため息を吐き、瞼を閉じる。


「朽木さん。ALが人を襲い、吸収し、思考能力を得た。と言いましたよね」


準一に聞かれ「ええ」と朽木は答えると準一を見る。


「思考能力を得た、という事は死への恐怖も生まれた。とは考えられませんか?」


それに朽木は考え込み「ありえなくもない」と答える。


「でしたら、自らを死へ追いやるモノがあったとして、それを敵と断定する等は?」

「さっきのがあり得るのであれば、あり得るでしょう」

「大和は一度ALと交戦。その際、攻撃をしています。その事に死を感じていれば、ALは人間を敵、と断定するのではないでしょうか」


九条は目を開け、横目で準一を見る。


「あくまで僕の考えた仮説ですが」

「いえ、あり得ない訳じゃ無いと思います。可能性としては十分、あり得るかと」


朽木が言うと準一は一度息を吐き「では、対抗策は」と聞く。


「正直、攻撃するしかないでしょうな。ALを消すには火力で対応するしかない」

「ですが、攻撃はALを学習させるのでは?」

「そうなるでしょうな。しかし、現段階ではこれしかないのが現実です。理想としては核に匹敵するそれで消滅させる事ですが、奴は人口の密集している港付近に移動している筈です。ターゲットを人間に絞ったでしょうし」


準一はため息を吐く。


「朽木さん。奴は学習すると言いましたね。奴が基本戦術を学んだ、とは考えられませんか?」


九条は言うと朽木を見る。ここで九条の言う基本戦術とは火力攻撃などは人口がある場所では攻撃しないなどだ。


「では、奴が港付近に近づくのは此方の揚げ足を取っていると?」

「私はそう考えます」


だが、準一と朽木は思った。そうであったとして、あまりに学習が早すぎる。しかし、あり得ないわけでは無い。


「では、まずは様子見。と言う訳ですかな」


朽木の言葉に準一、九条は頷くと朽木は艦長室を後にする。


「あのおっさん。ALと見上に関して後ろめたい事をしてるな」

「ええ。俺も思いました」

「じゃ、色々調べて回りますかな」


言うと九条は通信機器で連絡を始め、準一は艦長室を出る。


どうやら、ALは未だ健在のようだ。





準一はまず甲板へ向かった。出て程なくV-24が離陸、朽木は帰るのだろう。と思いながら主砲の下に回ると綾乃を発見する。


「あ、準一」


綾乃は気付き、準一へ近寄る。


「もう平気か?」

「まぁね。流石にビビッてらんないよ」


それに準一は笑みを浮かべると「そっか」と言い基地を見ると、携帯が鳴る。誰じゃい。と思いながら見ると五傳木千尋と出ており出てみる。


『もしもし準一』

「ああ。千尋。・・・どうしたんだ?」


準一が聞くと『実は・・』と千尋は答えを渋る。


そんなに大変な事が? 準一は答えを覚悟する。


『あたいのお腹には準一との子―――』


言い切る前に準一は携帯を閉じる。すぐにまた千尋から通話要求の着信が鳴り出る。


『ごめんごめん。冗談冗談』


冗談を選べ馬鹿。


『いやね。ホントの要件は別。ついさっき、米軍偵察機が反日軍がたむろしてたロシアとモンゴルの境界線で戦闘を確認したの』

「戦闘? どこと?」

『ロシアを南下してきたゼルフレストの数部隊』


準一は鬼童丸の言葉を思い出した。本当に戦闘を開始した。


『ま、そんだけ。あの反日軍の戦力は多分対碧武用だった筈だし』

「そっか、助かった」

『そう? なら結婚ね』


返事を返さず準一は携帯を閉じる。


「誰から?」


綾乃に聞かれ「愉快な友達」と答える。綾乃は直感で「女やな」と感じ取り準一をジト目で見る。


「な、何だよ」

「別に・・・準一ってさ、態度冷たくて無表情だけど女たらしだよね」


思い当たるフシが無いのに、言いがかりだよ。と準一が思うとキャッキャ騒ぐ女の子の声が聞こえる。


「やっぱ真尋ちゃんはおっぱいでかいよね。結衣ちゃんに負け劣らずだよ」

「ちょ、代理! そんなに大声で言わないで下さいよ!」

「そうですよ! 兄貴も居るんですから!」


そんな会話を繰り広げる3人は主砲下に準一と綾乃を発見しそこへ行く。


「3人とも何してたの?」


綾乃に聞かれ「お風呂―」と結衣が答える。「あ、そっか。あたし先に入ったからね」と綾乃は言いながら代理を見る。代理は何か、真尋の後ろに隠れ、準一を恥ずかしそうに見ている。


「代理? どうしたんです?」と真尋に聞かれ「べ、べべべべべべっつにぃ」と代理は答え、綾乃、真尋、結衣は準一を見る。


3人の目は「何したんだ?」と言いたげな目だ。


準一はそれを見て、代理が素になる。と言ったのを思い出す。


・・・あれって2人の時じゃないの?


と準一は思うのだが、それは虚しく妹達から激しい言及を受ける羽目になった。





大和との戦闘より3日。ALは、一度民衆へ姿を晒した。場所は瀬戸内海。すぐに通報。海保の巡視艇が向かったが触手により沈められた。


情報を聞き付け、瀬戸内海上空にはマスコミ、警察のヘリが数機飛び回り、沿岸では野次馬が殺到している。それの対応に県警は追われている。


その様子はニュースによりお茶の間に流れた。


映像は野次馬や警察。そして巡視艇を沈めたAL。ALは綾乃が見た時と見た目が大きく変わっている。東稜丸を半分にし、腕に無理やりくっ付けて、そこからは触手が生え、ウニョウニョと動いている。



「へぇ・・・初めて見た」


ふと、学生寮エリア準一宅でエルシュタが言い、エリーナが「何を?」と聞く。


「ほら、アレ。怪獣」


エルシュタはテレビのALを指さす。怪獣ではないのだが、と傍にいたカノンは言わずお茶を啜る。


「違うよ、あれは怪獣じゃなくてベクターだよ」

「えー? ベクターの腕は船になんないよ? トランスフォームしないよ?」


結衣に言われ、答えたエルシュタ。


やっぱり兄さんの持ってる映画3作品見たんだな。とカノンは思いながら茶を置く。すると手元の携帯が鳴り、出てみる。


『もしもし? カノンか?』

「はい、兄さん今どこです?」


現在、準一は碧武に居ない。早朝から居なくなっているのだ。ちなみに今日は平日。今は夕方。


『ああ、今は瀬戸内の状況を見に来てるんだ。野次馬に混じるのはアレだから、別の場所に居るんだが、この件が片付かない限り帰れないかもしれない』


それを聞いてカノンは「えぇ~」と声を漏らし、聞く。


「というか、何で兄さんがこの件に駆り出されるんです?」


朝倉準一はこの件に関し、無関係な筈。なのに何故駆り出されるのか。


『さぁな。すぐに自衛隊も出張って来るだろうし、今かなりALに関して情報を持ってるのは政府関係者、研究所職員、自衛隊や各機関上層部を除けば、俺や九条さんだけだしな。この件が片付くまでは手の届く範囲に置いておきたいってのもあるんだろう』

「って事は大和も出てるんですか?」

『いや、大和は佐世保でお休みだ』


まぁ、相手が相手だしおいそれと出せないのが現状だ。


「分かりました・・・終わったらすぐに帰ってきて下さいよ」

『ああ、分かった。じゃあな、カノン』

「はい」


通話を終了させ一息つくと「もしかして兄貴から?」と結衣に聞かれ「うん」と答える。


「何て?」

「準一は何て?」


エリーナ、エルシュタに聞かれ「この怪物の件が片付くまでは帰れないんだって」と伝えると3人は「えぇ~」と同じリアクション。カノンは苦笑いを浮かべ立ち上がり「さ、晩御飯作ろうか」と3人に言い、晩御飯製作を開始する。






同じ時刻。準一は瀬戸内海が一望できる場所に居た。ALが居るのは瀬戸内海と言っても山口県に近い場所。宇部岬から良く見える。テレビの野次馬もそこに居る。


準一が居るのは宇部空港滑走路より連絡橋で繋がっているコンビナートだ。そこで自衛隊の人間がテントを張り、準一はその近くでタバコを吸っている。隣には代理が居る。


「呑気だよねぇ。結構あのALは脅威なのにさ」


代理がポツリと言い、準一は目線を野次馬に向ける。


「まぁ、呑気と言えば呑気でしょうが、事情を良く知らないのであればこうなるでしょう。日本人は斬新で新しい物には過敏に反応しますから」

「良くも悪くも?」

「ええ。ミーハーですしね」


それに代理は笑みを浮かべしゃがみ込む。


「ねぇ、準一君。いつになったら帰れると思う?」

「どうでしょう・・・今はまだ海上保安庁しか動いてませんが、自衛隊も動くでしょうし・・・まぁ、自衛隊が動くまでは無理でしょうね」


それから準一は続ける。


「事の進展はあっても解決には近づかないでしょうし」

「その根拠は?」

「勘です。奴の行動目的は分かりません・・・今は人の様子見か観察か、どちらかでしょうし。次に行動を起こせば何をどうするか」


とここまで準一が言うと代理の端末が鳴る。通話では無く文章だ。


それを見て代理はため息を吐いた。


「誰からです?」

「九条から、何かあのALの事で幾つか分かった事があるみたい。聞きたい?」

「ええ」


準一が答えると代理は一度咳払いをする。


「あのALだけどさ、最初は医療目的。ってなってたでしょ。どうもあの大和に来てた朽木って所長はALを売り出そうとしてたのよ」


別に売りに出すのは構わないだろう。医療目的であればそれが自然だ。


「市場は軍事の分野よ」


それはヤバいな。と準一は思った。


「そしてね。それに買い手が付いたの。合衆国陸軍っていう大手がね」

「また米軍ですか」

「私も思った。・・・んでね、米軍はそれを買うには小さすぎる、って言ったらしくて、朽木は言葉巧みに見上を騙して大きくさせてアレが出来たの」


代理は顎でALを指し、準一は目を向けた。


「でもね、見上はそれに気づいたらしくて」

「それで身投げを?」

「そう。自殺もそれが原因ね」

「では、逃がしたのは?」

「彼は自分の研究に自身を持ってたわ。それに人に害を為す事を嫌ってたみたいだし、逃がしたのは朽木への復讐。が一番有力ってトコかな」


成程。と準一は言うとタバコを落とし、足裏で踏みつける。


「兎に角、この事に米軍が関与してくる可能性が出てきたわけ。ALを奪い取りに来るとかね」

「笑えませんよ」


米軍の介入があればまた面倒臭い事になる。


「ねぇ、準一君の推測で良いんだけど、ALが狙うとしたら何を狙うと思う?」

「そうですね・・」


少し考え込み、準一は口を開く。


「人の知恵を得て、仮にですが、それなりに人間としての知識があれば、人にダメージを与えられる箇所を狙うと思います。例えば、変電所や基地。発電所とか」

「成程ねぇ。そうなれば厄介よね。言ってみる? 自衛隊とか警察に」

「止めときましょう。下手に信じて動いて的が外れれば面倒な事になります。今の段階では少数精鋭の状態で片付けたいでしょうし」


それを聞き、代理は立ちあがり小さく言った。


「知恵がついた怪物ってのは厄介だよね」


聞こえた準一は夕日に照らされた代理の横顔を見て、すぐに視線をALに戻す。


また面倒臭いな。とは言わず新しいタバコに火を点けた。



人工生命アーティフィシャル・ライフ。通称ALが瀬戸内海に姿を現し、ニュースはそれ一色になり始めた頃。姿を見せて2日目だ。ALは忽然と姿を消し、海上保安庁は全管区にAL捜索を命令し、日本の海上は慌ただしくなった。


その2日目、ALが姿を消した午後の昼下がり、準一は代理と昼食をとっている。適当な店に入りざるそばを啜っている。


「いきなりだったね」

「ええ。ホントに」


答えながら準一はそばをつゆにつけ、口に運び啜る。


「さてさて、ALは対潜ソナーに引っかかるかな?」

「引っかかるでしょうね。熱ソナーには反応しませんが」

「ALには体温が無いの?」

「ええ。朽木さんに話を聞きましたが、そうみたいですよ」


代理は冷たい麦茶を飲みながら、箸を置く。


「いつ聞いたの?」

「つい2時間前です」


2時間前、と聞き代理は思い出す。準一は用を足すと言ってトイレに行っていた。


「呆れた。よくもまぁ……どうやって聞き出したの?」


聞くと準一は箸を止め、苦笑いを浮かべる。


「合衆国陸軍との密売の件をチラつかせたらあっさりと」

「うわぁ……高校生のする事?」

「してしまったんであればそうなんでしょうね」


言い切った準一に代理は再び呆れる。準一がソバを食べきっているのを見て立ち上がる。


「ALは姿を消したし。どうする?」


「さて、どうしましょうか」と言いながら準一は立ち上がり、財布を出す。


「あ、幾らだっけ。あたしが持つよ」

「いえ、俺結構任務やらで稼いでるんですが、使う暇が無くて。持ちますよ」


多分、あたしのが稼いで尚且つ使う暇がないんだけど、と思ったが準一はそれを承知していると考え代理は大人しく従う。


ちなみに、勘定は2人で計1000円。


レジでおばちゃんに千円札を渡し、2人は店の外へ出る。


さて、と時間を見る。まだお昼。何かして時間を潰そう。と思っていると代理が準一の袖をひっぱる。


「何か?」

「暇だしドライブ行きたい」


別に断る理由も無いので車を停めてある駐車場へ向かった。





ゆったりまったりドライブ開始から3時間。準一の運転する車は伊佐パーキングに停まった。特段目的地の無いドライブなので仕方がない。準一と代理は車から降り、パーキングに設置してある自動販売機で飲み物を買った。


準一は緑茶。代理はココア。それを飲みながら2人はベンチに座り、ゆったりしている。ちなみに代理は準一にピッタリとくっ付いている。


「ねぇ」

「はい?」


答えながら準一はタバコの箱を取り出した。


「準一君さ、未成年だしさ……吸い過ぎじゃない?」


指摘した代理に準一は苦笑いを浮かべた。代理が指摘したのには理由がある。ドライブの間やこの駆り出されての数日間。準一はとんでもないペースでタバコを吸っているからだ。


「いえ、吸ってないとやってられませんよ」

「いい? 吸うにしたって限度があるの。ってか、未成年だし普通に考えて駄目でしょ?」


と言われるが、準一は中学のころから吸っているので今更。と思うが口には出さず、指摘も構わず一本取り出し咥え、火を点ける。


「聞いてない」

「聞いてます。これが最後です」

「まだピン箱が4箱はあるでしょ?」


代理は準一がコンビニで買っていたのを見逃さない。


そういえばこの人。チューハイ飲んでたよな。と思ったが、別の事を引き合いに出すのはどうかと思い言うのは止める。


「多分今、お前は酒飲んでただろうが、あ? とか思ったでしょ?」

「……いえ」

「図星ね。良いわ。お酒はね限度さえ守ればお薬なの。OK?」

「代理は最初の一本で酔っぱらってましたよね」

「……いえ」


自分と全く同じ反応の代理を横目に準一は煙を吐く。


「それにしても……少し日差しが強いですね」


準一に言われ、代理は空を見る。快晴。夏が近づいている所為でもあるのだろうが日差しは確かに強い。後ろの森では虫が鳴いている。


「一旦車に戻りますか?」

「うん」


と答えると代理は準一の手を握り、車まで行くと助手席に座り、運転席に座った準一が備え付けのテレビを点けた。番組はお昼のニュースだ。


『さて、この暑くなってきた日に更にホットなニュースです。皆さんご存知の通り、瀬戸内海での怪獣騒ぎです。番組も先日レポートに向かいましたが、今日になりパッタリと姿を消しました。しかし、居なくなって尚、瀬戸内海に居るのでは? と周辺住民や各地方からたくさんの人が押しかけています』


番組では若いアナウンサーが楽し気に話している。この様子では東稜丸の件はまだ漏れていないのだろうが。時間の問題だろうな。と準一が思っていると代理はチャンネルを変えた。


『えー。先ほどですが、このTSCニュース局は瀬戸内海の怪獣騒ぎに関し、独自の情報を入手しました』


別のチャンネルで年配のアナウンサーの声を聴き、代理は前のめりになる。


『まず、怪獣の腕、にあたる部分は船は、5日ほど前から消息を絶った東稜丸と酷似している事が独自のレポートで判明し、その怪獣と機甲艦隊所属、戦艦大和が交戦した。

との情報も寄せられており、専門家によれば、何らかの情報操作、隠蔽が行われているのは事実である。

として、ネットなどでは政府のその対応策に関し、強い非難が寄せられています』


聞いて、準一はため息を吐きながらお茶を飲む。


「案外東稜丸の件、漏れるの早かったね。大和の事も」

「東稜丸の件は仕方ないとしても、大和との交戦の事までとは」

「見られてたとして口封じが甘かったよね」


それに準一は頷く。するとニュース番組が慌ただしくなった。すぐに番組が一旦消え、画面がブラックアウト。かと思いきや別の番組に切り替わった。


『テレビをご覧の皆さん。こちらは、政府広報です。

出来る限り知り合いに声を掛け、ニュースを見るように言って下さい。

つい先ほど、怪獣騒ぎの件に関し、日本政府は対応策、方針を決めました。怪獣、怪物は敵と断定。発見後、比較的近くの陸上自衛隊駐屯地より、部隊派遣を行う事を決定しました。

この怪獣、怪物による被害、脅威は確かな為、発見しても絶対に近づかないで下さい。尚、発見後、陸上自衛隊との戦闘となる場合、近隣住民の皆様には避難勧告を出させて頂きますが、この勧告には絶対に従い、所定の避難場所へ避難してください』


その言葉に、お茶の間が凍りつき、見ていた人間が驚いたのは言うまでもない。準一と代理はただ画面を見つめている。


「やっぱり、固有名称や一連の流れ、米軍との事は内緒みたいですね」

「言えないでしょうよ。問題が問題なだけに、ALの事は実体さえ分かっても、知恵を付けた訳だし、何をするか分からないから」

「言うとパニックになる。米軍との事も、ALの事も」

「うん。言ってパニックを起こさせれば、やり辛くなるでしょうから、細かい事は言わず、ただ脅威と伝えた方が良いんでしょうね」

「後から追及を受けても『脅威』と伝えていた。と言えば良いでしょうしね」


準一が言うと代理は悪い笑みを浮かべ、外を見る。


人工生命アーティフィシャル・ライフねぇ……想像以上に厄介になりそう」

「何か根拠が?」

「根拠じゃないよ」


じゃあ何か? と聞こうとすると代理は準一に向き


「女の勘」


と可愛らしく微笑んで見せ、準一は苦笑いしお茶の缶を口元に寄せ、一口飲もうとするが中身が空っぽなのに気づき、ため息を吐く。


「厄介だったとして、こっちに回ってこない事を祈るばかりですよ」

「祈りは無駄じゃないかな? 勘だけど、多分回って来るよ。準一君もそう思ってるんじゃない?」


言われ、考えない様にしていたのに、と準一は思いながら頷く。


「忙しいよね」


そう呟いた代理に準一は「ええ」と言うと外に目をやった。


言い合っている中、準一の中では嫌な予感が渦巻いていた。


「あ、噛まれた」


そう呟いた代理の右手の人差し指を子猫がかじっている。代理はそんな子猫の頭を撫でながら「可愛い~」とニヤニヤしている。


そんな代理と子猫を横目に、準一は缶コーヒーを飲んでいる。準一の肩には、その子猫の親猫と思しき黒猫がへばり付いている。


ちなみに現在。政府発表より翌日の午前だ。2人が居るのは瀬戸内に向いている港湾地区。その堤防の上だ。


「見て見て、準一君。可愛いでしょ~」


子猫を抱っこし、準一に見せ代理が言うと子猫は「ニャー」と短く鳴く。準一は猫の頭を指先で撫で「可愛いですね」と言うと指を離す。


すると子猫が前足を動かし始め、降りたそうなので代理が降ろすと子猫は準一へ駆け寄り、その肩へよじ登る。


「何で準一君ばっか懐くの!」


喚きながら代理に胸板をポカポカと叩かれ「俺が悪いんじゃありませんよ」と準一は両手を上げ空を見る。


ALはどこへ行ったのだろう。






ALが水中潜航可能な事を聞いていた捜索隊は、自立型無人潜水艇(AUV)を投入し、日本海、瀬戸内海を含む日本領海内の探索を開始した。


そんな捜索隊の日本海担当の隊が美保湾沖合で、不明の潜水物を発見し、通信を入れるが音沙汰なし。まさか、と思い、AUVの全方位サーモグラフィーカメラでその潜水物を見るが体温は無い。


この情報も得ていた。ALに体温は無い。


そしてAUVの遠隔操縦者がライトを点灯させ、それを照らすと映像が途切れる。


「間違いない。美保湾沖合だ。怪物が居るぞ」


その報はすぐに捜索隊全体に知らせられ、海上部隊、航空部隊が向かったのだが、部隊が到着した時は既にALは姿を眩ませていた。




「美保湾沖合にALが?」


携帯を片手に持った代理に準一は聞いた。


「うん。捜索隊が発見したんだって」


代理は携帯をポケットに仕舞った。代理はその事を九条から聞いた。


「しかし、美保湾ですか……えっと山陰本線から見える湾ですよね」

「うん」

「かなり離れましたね。瀬戸内から美保湾ですから」

「確かに、何か目的があるんじゃないかな? 準一君、何か思いつかない?」


代理に聞かれ、準一は一つだけ思いついた。


「勘ですが、先に進めば若狭湾がありますよね」

「若狭湾って事は横断運河……?」


現在、日本には若狭湾から琵琶湖へつながり、四日市を抜け太平洋に出る横断運河がある。作られた理由は艦隊の移動を楽にする為と、輸送船を抜けさせる為だ。


「いえ、若狭湾の運河以外にも舞鶴には海自の基地がありますし」

「じゃあ狙うならその2つ?」

「多分。陸へ上がる事も視野に入れた方が良いとは思いますが」


陸へ上がったら厄介だ。政府発表の後もあってALは脅威になっているからだ。






「暇ですわ」


碧武九州校でレイラ・ヴィクトリアが呟いた。彼女は現在アリーナでベクターの操縦訓練を行っている。そして呟きは外部スピーカーで外に漏れている。


「何ですの! 準一は最近全然全く構ってくれませんし!」


その漏れる声に観客席の生徒と教師陣はため息を吐いた。ちなみにベクター操縦を指南しているのはカノンだ。


「レイラさーん。取り敢えず訓練再開していいですか?」


メガホンでカノンがレイラの搭乗機、雷に呼びかけると「分かりましたわ」と諦めの声が聞こえ、射出機より射撃用のクレーが飛び出し、それを雷は装備したマシンガンで射撃する。




「いやはや、あの朝倉準一と校長代理が居ないだけで学校というものは随分とつまらなくなるな。なぁ、洋介」


観客席でマッスル同好会首領、遠藤渉に言われ揖宿は頷く。


「洋介、お前たち会合会メンバー駆り出されないのか?」

「分野が違うさ、俺達は魔法だからな」


揖宿が言うと遠藤は目線を雷に向けた。


「なぁ、最近俺の天使、本郷義明に元気がないんだ」


何でんな事を俺に相談するんだ。と揖宿は思いながら遠藤を見る。


「準一君が居ないからだろう? 彼女の妹の結衣ちゃんも沈んでるんだ」

「まいったなぁ」


遠藤は疲れた顔で後頭部を撫でた。


「まぁ、今の怪獣の件はすぐに片付くと思うが、自衛隊も出張るだろうし」


そう遠藤が言うと揖宿は息を吐き、目線をアリーナへ戻す。


「すぐには片付かないさ……勘だが、多分。火力で攻め立てて片付くような案件じゃない」


何? と遠藤が返すと揖宿は立ち上がり「悪い、そういや俺は選抜戦のメンバー決めの途中でな」と言い残すと観客席から姿を消し、残された遠藤はため息を吐いた。






「今日の晩御飯は……これだっ!」


と声を上げ、代理は準一の手に握られた紙を抜き取る。その紙には『ファミレス』とだけ書いてあった。


「ファミレスか……この辺、何かあったっけ?」


夕刻のパーキング。並ぶ店の奥に下へ降りる階段があり、降りた先は街。その階段から比較的近い場所にファミレスを見つける。


「ジョイフルがありますよ」

「じゃいこー。あたしお腹空いたー」

「はいはい」


と準一が返事をすると「ん」と代理は準一へ手を差し出す。それを準一は握る。


代理は笑顔を浮かべ「えっへへ~」と上機嫌な声を出し、準一は小さく微笑みタバコを咥え、火を点けた。


余談ではあるが、現在代理はゴスロリではない。普通に可愛らしい服にメガネ。そしてモフモフした帽子を被っている。



ついたファミレスは込んでおり、準一達は10分ほど待ってやっと席に座れた。準一の望みは届かず禁煙席だ。準一は肩を落とし、代理は勝利の笑みを浮かべる。


ちなみに、さっきの食事決めのクジはずっとやっている。代理が退屈を嫌うからである。


「あ。しまった。あたしドリンクバー券忘れた」

「ああ、俺持ってますよ」


財布を漁る代理に準一はドリンクバー券を渡す。


「期限きれてるよ?」

「使わせてくれますよ。さ、何食べます?」


準一に聞かれ、代理はメニュー表を手に取り開き「何食べようかなー」とペラペラとページを捲っている。そんな代理を目の端に、準一もメニュー表を開く。


迷う事10分。メニューを開いて30秒で決めた準一だが、代理はまだ迷いに迷っている。


「代理、何が食べたいんですか?」

「ハンバーグ、スパゲティ、定食、日替わり」


ああ、そんなに。と準一は苦笑いする。


「む。今良く食うなこの女とか思ったでしょ」

「思ってませんよ。食べるのは良い事です。食べ過ぎはいけませんが」

「むぅ。じゃあ何食べればいいと思う?」

「デザート食べたいですか?」

「食べたーい!」

「じゃあ1品」


再び代理は迷い始めた。


「スパゲティにハンバーグを単品で付けたらどうです?」

「んー……妥協する」


やっとだな。と準一は思い備え付けられたボタンを押すと、押したテーブルの番号が天井モニターに表示され、鶯の鳴き声が店内に聞こえる程度に響く。


程なく、店員が注文を取りに来る。


「お待たせしました。ご注文は?」

「カツ定食」

「ミートソーススパゲティとハンバーグ単品」

「あ、それとドリンクバー」

「かしこまりました。ご注文を繰り返しますね――――」


メニューを繰り返し、間違いない事を確認すると店員さんは厨房へ。準一は「ドリンク淹れてきますよ」と言い残すとドリンクバーへ向かい、自分にはコーヒー、代理にはオレンジジュースを淹れテーブルに戻る。


ここまでで5分と経っていないのだが、よくもまぁ。と思う光景が戻ったテーブルで繰り広げられていた。


「貴様可愛いなぁ。1人? 1人なら一緒にどうだ?」


テーブルでは馬鹿そうなモヒカン男3人が代理に言い寄っている。代理は呆れ気味の表情で「はぁ」とため息を吐いている。


そんなテーブルに準一は近づきコップを置く。


「代理、オレンジジュースです」

「あ、お兄ちゃんあんがとー」


まるで自分たちを無視しているかのようなやり取りに男の1人が準一の胸ぐらを掴む。


「力こそ全て」


世紀末ですか?


何と言われてもそれは準一の台詞なのだが、準一は無表情を崩さぬまま胸ぐらを掴む手を握る。


「ぶっ殺してやんよッ!」


テーブルのコップを手で払い、2人が立ち上がるとコップが地面に落ち、パリンと割れる音が店内に響き、他の客が準一達に注目する。


「お兄ちゃんお店の中は危ないよ」


微動だにしない代理に言われ、準一は頷き胸ぐらを掴む手を思いっきり抓る。すると男はその抓られた手を押さえ、後ろに退く。


「表に出ませんか? お店に迷惑です」


準一の提案に男達は何か叫びながらも従う。そして4人は店の駐車場まで移動すると、男達は一斉に準一に飛び掛かろうとするが、準一は手近な1人の手を引き寄せ、スーツの上着のポケットから折り畳みのナイフを抜くと、引き寄せた男の膝を蹴り、体勢を崩させるとその首元にナイフの刀身を突きつける。


他2人はそれを見て動きを止める。


「さて、どうします?」


と準一が聞くと、ナイフを突きつけられた男は震え上がる。するとパトカーのサイレンが聞こえ、近づいて来ているのに気付き、準一は男の背中を踏みつけ抑えると、ナイフを仕舞う。


「お、おい警察が来てんぞ」

「急げって早く逃げねえと」


男達がサイレンに慌て始めると、準一は抑え込んでいた1人の腕を掴み上げ、振り回し他2人に投げつける。2人の上に1人が圧し掛かる形になり、した2人は身体をコンクリートに打ち付ける。


「あ、終わった?」

「はい」

「じゃあ、チョイ待ち。演技の準備準備ー」


の言葉の直後、警察のパトカーが到着。


「報告にあった男3人組を発見」

「あ、そこの君」


降りた2人の内1人が報告、もう1人が準一を呼ぶ。


「はい?」

「何があったか知らないかい?」


と警官が聞くと嗚咽を漏らしながら代理が準一の背中に抱き着く。


「お、お兄ちゃん、ぐしゅ。怖かった!」


準一には分かった。鳴き真似だ。


「お嬢ちゃん? 怖かったってどうしたの?」

「ぐしゅッ! 私がお兄ちゃんとご飯食べに来てて、お兄ちゃんが、ぐしゅっ! ドリンクバーに行ってた時にあの人たちが」


真似しながら代理は男達を指さした。


「怖くて、ぐしゅっ! それでお兄ちゃんが!」

「そっか、怖かったねぇ。あの彼らは君が?」

「いえ、サイレンを聞いて逃げ出して勝手にこけました」


準一が嘘を吐くと「そっか、ありがとう」と警官はもう1人に駆け寄り、取り出した手錠で3人の手を拘束し、パトカーに乗せる。


「お巡りさん! マジで待って! あいつ! あのスーツの奴障害未遂だって!」

「はいはい、皆そう言うの」

「マジだって! あいつナイフ持ってっから!」

「はいはいー、詳しくは署で聞くからねー。女の子を無理やりなんてあかんよ?」

「いやいや違うから! マジ、おい!」


と弁解を求める男達が後ろを見ると、準一と代理が笑顔で手を振っている。


あ、悪魔。と男達は思うが、パトカーに乗せられ手近な署に運ばれた。


「代理、演技が過ぎますよ? 彼らに申し訳ないです」

「いやぁごめんごめん。身が入っちゃって」

「はぁ、俺ちょっと警察に連絡して弁解してきますから」


とだけ言うと準一は携帯を取り出し警察へ電話。代理は店内に戻り「お騒がせしました」と店員さんに謝り席に座る。すぐに料理が運ばれてくるが、一緒に食べようと準一が戻って来るまで足をパタパタさせていた。




ファミレスで準一達が食事を終えて3時間後。


時刻は9時を回ろうとする中、ALは舞鶴の海上自衛隊基地に姿を現した。基地の警備隊が使用するベクター、雷6機が出撃しようとするが、ALは口を開き、そこから水圧レーザーに似たソレをベクター格納庫へ発射する。


レーザーは格納庫となっているバラックを貫通し、そのままALは首を動かし、弾薬が貯蔵されている簡易増設タンクを撃ち抜く。タンクは爆発し、それはバラックに引火し、雷の前に吊るされていたミサイルに引火。バラック内の雷は爆発に巻かれ、コクピットハッチが開いていた為、爆発で使えなくなる。


そのままALが停まっていた護衛艦に近づくと、護衛艦のCIWS、主砲が起動しALに向き、すぐに射撃が開始されるも、ALは腕の船舶でそれを防ぎ、左腕を振り上げ、護衛艦に振り下ろすと、その1隻は艦橋が潰れ、ミサイル発射管も破壊され爆発を起こす。


『こちら海上自衛隊舞鶴基地! 例の怪物に襲撃されている!』


その報を受け、応援の部隊が舞鶴基地に着くが既に遅く、護衛艦は壊滅。基地施設には護衛艦が投げつけられており、宿舎には護衛艦が突っ込んでいる。



「コイツは……マジで怪物の所業だな」


応援の為に来たヘリコプターの操縦士が言う。


「舞鶴基地はほぼ壊滅、ですかね」

「だろうな。……マーシャル05より本部。舞鶴基地に敵は確認できない。生存者の捜索、救出にあたる」


と通信を入れるとマーシャル05は生存者捜索を開始した。


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