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熱砂に轟く咆哮①

ひさしぶりの投稿

 それなりにデカい施設の劇場の様な場所で、それは行われていた。展示されているのは、サイズ縮小された大和の新武装である陽電子砲の模型。壇上で語るのは機甲艦隊大和艦長・九条功。

 当然、準一もこれに参加しており客席は満席だ。


「今回我が機甲艦隊の所有する大和に実装されました陽電子砲は、大和艦首に装備されます」と九条。暗い会場内、壇上の九条の声に合わせ投影ディスプレイの映像が切り替わる。


「艦首に装備される陽電子砲は、ハワイの機甲艦隊基地、佐世保の海上自衛隊工廠で開発され、アリシア技術大尉が前に立って開発しました」


 ここまで、九条が下がりアリシアが引き継ぐ。


「陽電子銃砲に関してですが、この新武装は対艦対戦を想定しています。まずこれを」


 作られた合成映像、それが流れ始める。黒いシルエットの駆逐艦や巡洋艦、重巡に空母、そんな艦艇が水平線上に並んでおりそれと向かい合う様に大和。陽電子砲が発射され、端から端まで薙ぎ払う。

 艦首、艦尾の方向転換用ブースターも改修され、新型のAAX-05・マークダグラスに変わっている。


「このように、射程内の艦隊を薙ぎ払うのが今回の新武装の目的です。しかし、問題が一つ」


 アリシアは画面を切り替えさせる。大和の船体図だ。


「大和のエンジンであるX―ML5000ガスタービンエンジンですが、特別なモノであるが為、巨大で既に大和には7個が使用されています」


 客席の各員は、黙ってそれを訊いている。


「つまりは、大和にはもう余ったスペースが無いと言う訳です。この陽電子砲で重要になるのが電力の供給です。陽電子砲の電力供給には、大型化した専用蓄電バッテリーと供給用のケーブルユニットが必要になる為、大和には積めません。なので、今回機甲艦隊は同時に補給艦を大和旗艦の艦隊に置く事になります」


 画像切り替え。準一は黙って見ている。


「補給艦間宮、洋上戦闘に於いてはこの間宮が戦艦大和への電力供給を請け負います。他、機甲艦隊は飛行戦隊とも協力、大和がフェニックスと合同で行動する場合は、フェニックスが電力供給を行い、沿岸での戦闘の場合は陸上戦隊の補給部隊がバッテリーを輸送、となっており、自衛隊との協力もあります」


 アリシアは観客を見、「では」と口を開く。


「それでは別に、新たに搭載された艦首魚雷発射管についての説明を始める前に、我が機甲艦隊の九条が新武装の事を波動砲だ何だと騒いでおりますが、今回の大和の武装は間違いなく陽電子砲なので、間違わないように気を付けて下さい」


 またか、と九条を知る人間はため息を吐き、最後までアリシアの説明を聞き終えた。





 説明後、アリシア技術大尉は準一に頼んでいたシステムまわりのプログラミングのコピーデータの入ったチップを受け取ると、V-24で基地へと向かった。どうやら、ハワイへ帰るらしい。

 忙しい奴め。


「ちょっと」


 声が掛り、準一は振り返った。自分の嫁、であるらしいマリア・ミレイズがこっちを見ている。


「何だよ」

「何だよじゃないわよ。何でこんな退屈な説明会に連れて来たのよ」

「仕方ないだろ。艦長からの達しだ」


 準一が言うとマリアは隣に並ぶ。


「だったらいつも通りにカノンを連れてくれば良かったでしょ」


 ムス、としてむっとしているであろうマリア、準一はため息を吐く。現在、義妹隊嫁より三日。フォカロルは、腕部の幾つかのフレームが駄目になっておりメーカーに発注、劣るが椿姫で代用している。ミゼルに関しては、メインカメラがマリアのお気に入りでないといけない為、それをアメリカより発注中で、実際には二機とも格納庫でおねんねしているのが現状だ。


「カノンは代理に呼ばれてんの。それよりどうする。昼の時間に丁度良いだろ」


 準一が言うと、マリアは「はぁ」とため息を吐く。


「何か美味しいのが食べたいわ」

「探すしかないな」






「ドラゴン?」


 学校に戻って、準一は訊く。


「そ、ドラゴンだってさ。中東で確認されたんだけどね、紅蓮の光を放って砂丘を吹き飛ばし、砂嵐を炎の嵐に変えたとか」


 校長室での代理だが、忙しいのか資料にサインしたり目を通したりしている。

 しかしドラゴンか、間違いなく魔法関連だな。


「情報の出どころは?」

「難民キャンプに駐留していたシルバークォーター社の部隊よ。ヘルブレイカーの試験運用部隊だけどね」


 現在、中東には実戦配備前のヘルブレイカー制圧用仕様が動いている。小さな王国でクーデター、暫定政権を手に入れたのがクーデター軍。正規軍に居場所は無い。


「で、さっき機甲艦隊西部方面隊の司令官から来たのが君に対しての中東へ行くように、って」

「俺が?」

「そ。今回の任務は二つ、難民キャンプで足止めを喰らっている難民救出部隊の脱出の手助け。んで、足止めの原因のドラゴンの調査」


 ドラゴンに関しては調査せずともわかる。恐らくは召喚獣だ。


「準一君さ、出来そう? 難民キャンプの部隊救出の手伝い」

「どうでしょうね……」


 中東での作戦、公に進撃するならそれほど楽なモノは無い。アルぺリスで薙ぎ払えばいいのだから。しかし、そうでないのであれば隠密行動となってしまう。

 現在も前も、中東は戦が多い。現在に至っては、中途半端に最新兵器が入っているモノだから、クーデターを起こした反政府部隊は、各国の反政府軍と連合軍を結成し、各所に部隊駐屯地と対空ミサイル陣地。

 空からは無理だ。

 前にサウジアラビアに向かった時は、シャトルでの打ち上げだったりがあったりしたからよかったが、今回は違う。


「アルぺリスは、ダメなんですよね」

「みたいだね。ま、行くしかないんだろうけどね……椿姫だけど、マークⅣ・ブラックドライブってエンジン積んだから」

「エンジンを変えたんですか?」

「燃焼テストは済ませてあるわ。化け物みたいな速さよ。いざとなったら、あれで対空ミサイルを振り切れる」


 後、と代理は付け加えた。


「見た事の無い形をした機動兵器が確認されているわ」






 機甲艦隊所有の空母赤城は碧武に入港。椿姫、フォカロルを艦載し、駆逐艦雪風、島風、そして長門を伴った艦隊は中東へと向かう。途中、反日軍艦隊を捉えるが、反日軍艦隊はアジアへ出向こうとする中華軍の防空識別圏におり、そこでは米軍を伴った海上自衛隊艦隊と睨みあい。

 やり合いたくはないだろう。

 もしここで機甲艦隊に手を出せば、艦隊の一斉攻撃を受ける事になる。何発ものミサイルを受けては反日軍艦隊も堪ったモノではない。バックに中華軍等が控えているとはいえ、だ。



「兄さん」


 空母赤城のデッキでカノンが準一に声を掛ける。


「どうした?」

「いえ、急な作戦ですよね」

「だな。いいのか? お前は任意の作戦参加だが、今からでも引返せるぞ」

「まさか、引返しませんよ」


 言うと思った、と準一がタバコを咥えると、カノンはそれを奪い取って携帯灰皿にポイ。


「何普通に吸おうとしてるんですか」

「いや、別に」


 言いながら準一は再び咥えるが、それもカノンに奪われる。


「もー! またですか! タバコなんて……あれ? こんなやり取り、前にしましたよね」

「ああ。したな。大和で」


 準一は言うとタバコを仕舞って息を吐く。空母の左、並走する長門、右を雪風。前を島風を見た準一は、デッキにある艦載機、F-35、戦闘ヘリ。そして空母を護衛する対空防御用火器を成す神守。

 そして、膝を付く椿姫にフォカロル。


「お前のフォカロル。あまりに急だったから腕とか別の機体の奴なんだろ?」

「ええ」


 応じ、カノンは「説明しましょう」と言うと「おほん」とわざとらしく咳払い。


「今回、腕部への負荷、脚部全損となっていた為、まず腕部を本郷重工から買い付けたスティラの腕にし、脚部はフレームだけを兄さんの椿姫カスタム、ですが外部フレームには雷のを。なので」

「脚がゴツイわけか。納得だ」

「それよりも、兄さんこそ。随分と椿姫が性能アップしたそうですね。ブラックドライブでしたっけ?」

「ああ。超高性能でな。代理曰く、あれでミサイルを振り切れるらしい。国産だぞ」

「じゃあ高価なんでしょうね。ふふ、兄さんの事だから壊しちゃいそうですよね」

「やかましい」


 言ったカノンの頭を準一はコツン、と優しく叩いた。

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