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十二使徒

衛星兵器が十二使徒に代わりました

番外編はちょっと今日だけお休みね

「ざけんじゃないわよ! あんたが私を倒したのって、部長さんからの命令だったわけ?」


 基地内の格納庫でアルぺリスから降りた準一に歩み寄り、西園寺永華は声を荒げる。


「そうだ」

「詳しく、説明してくれるんだろうな」

「ああ」


 と応じ、準一はため息を吐く。


「あんたの式神は七聖剣の任に隠し玉に置くには勿体ない。らしい。あんたは七聖剣から外れ別任務。西園寺永華の式神は京都魔法系列、なれば常に空間魔法の張られている場所での活動」

「まさか、京都?」

「当たりだ」

「左遷……ってわけ?」


 どうだか、と準一は永華を見、続ける。


「あんたは京都の保険だ」

「保険? 京都には安楽島塾があって、池澤琥珀も居る。私は必要か?」

「必要だろう。その為の保険、だからあんたを任から解いたんだ」


 じゃあ、と口を開きかけた永華はメガネをずらし、自分の髪を撫でる。


「いーや、だからこのタイミングで黒い方が来たわけね」と永華はアルシエルを見る。アルぺリスと肩を並べる様は、少し前では信じられない光景だ。「私の後に黒い奴、ってわけ?」

「そうだ。気を悪くしないでくれ」

「別に」


 とだけ言うと永華は踵を返す。


「むかつく」


 絶対に気を悪くしたか。まぁ、仕方ない。と思いながら準一は去る永華を見送った。


 韓国政府へは話しを通さねばならない。反日軍壊滅の為、貴国への進入を許してほしい、と。だが、中国と一緒になって反日軍を創設したのも韓国政府。対日本戦用の軍壊滅の為に、自国への進入を許すはずは無かった。

 その為、回答はノー。

 当然の対応に、日本政府は強行策を決定。アルぺリス、アルシエルを直接半島に送り込むことで壊滅を試みようとした。





「お前の任務、分かっているのか?」


 と礼拝堂の中。雪の降る外を見、オリバー・アズエルは口を開く。


「知ってますよって。その為に、罪人の俺を呼んだワケだ。あ?」

「そうだ」


 自分を罪人、と言う男はスキンヘッドの白人だ。2m近い身長に真っ黒な長いコート。毛の無い頭には術式と同等の刺青。


「お前は日本へ行け、ローマン」

「それは命令ってか?」

「そうだ。この任務、邪魔な黒妖聖教会のシスターライラの殺害、成功すれば罪を消してやる」


 ひひ、と笑った男、ローマンは踵を返すと「今言った事、破んなよ」と言い残すと礼拝堂を去る。


「……あんな奴を使わなければならないとはな。幾ら十二使徒とはいえ」


 いや、と悪態を吐くのを止めアズエルは手近な椅子に座った。




 

 翌日の日本海洋上基地、そこからは全ての日本側部隊が撤退していた。反日軍壊滅令、それが行われる筈だったのだが、既に姿は無く。作戦練り直しになり日本への撤退だ。

 まだ朝方、日本に着いたのは8時過ぎ。佐世保へ着いたのは10時過ぎ。 

 大和は入港、他の隊員も暇になったので其々時間を潰す中、準一と千早の2人は小倉に行き、電車に乗っていた。



「買い物って、お前何買うんだよ」

「何って、下着とか」


 準一は半ば無理やり千早に手を引かれ買い物に付き合う事に。なぜか、千早は嬉しそうで準一は口を尖らせたまま外を見る。


「ねぇ、何で口尖ってるの?」

「ん? ああ、嫌な予感がするから」

「嫌な予感?」

「そ。何でかな。これは当たる気がする」

  

 へぇ、と千早は声に出すと準一の顔を覗き込む。「それって、準一に関係ありそう?」


「さぁ、そこまでは」


 と言った所で駅に着き電車を降りると目的の店へ向かった。


「マジで下着買うワケ?」

「冗談よ、普通に服が欲しいだけ、知らなかった? 私ってファッション雑誌とか読むのよ」

「意外だな。まぁ」


 千早を見、そう言われれば納得と思う。今の千早はオフタートルップスに黒のスカート。クラスで私服で集まれば、必ず居る賑やかなグループの女子の格好だ。

 可愛い。


「似合うでしょ」

「ああ、似合うな」

「ってか準一さ、服、選んでよ」

「は? 何で?」

「だから呼んだのに。一人じゃ暇だし、折角同じ年頃の男子が居るんだから、自分のファッションセンスって聞いてみたいでしょ?」


 そんなもんかな、と思いながら「分かった」と頷くと準一は千早に並んだ。







「部長」と一人の青年が安楽島部長の執務室へ入る。「何だ」と応じ安楽島は青年を見る。細めで睨み付けられるように見られ「は、はい」と声を強張らせ青年は資料渡す。

「先ほど、空港の方から」


 少しため息に似た息を吐くと安楽島は資料を受け取り眺め、目を細める。


「魔術師か」

「はい。その魔術師ですが、警戒体制の方を」

「敷かなくて良い」


 と冷たく言うと安楽島は資料を突き返す。


「狙いは日本じゃない。国内の別組織だろう」

「は、はぁ……では」


 青年が部屋を出ると安楽島は笑みを浮かべ、付けていたメガネを外す。


「まさか……十二使徒。出て来るとは」






「シスターライラ!」


 第二北九州空港跡地の教会、若いシスターが叫びライラを呼ぶ。


「何事かしら?」

「大変です! 教団の十二使徒です!」


 十二使徒、と呟きライラは目を細めると礼拝堂の椅子から立ち上がり、外に出る。


「今は?」

「まだシスター達が抑えています」


 第二北九州空港跡地。あの事件以来、巨大な空港施設は空。ターミナルもあれば滑走路もある。空港へ続く道は長い横断橋。現在、シスターたちはその横断橋で戦っている。


「戦況は?」


 ライラが聞くとシスターは首を振る。当然だ。十二使徒、魔術師の中でも強大な力を持つ人間の総称。実際、日本の七聖剣はその為に作られた。切り札などではなく、対十二使徒戦部隊。それが七聖剣。


「足止めすら出来ないわよね」


 と呟いた直後、横断橋が爆発し波の音が鳴る。教会があるのは滑走路。まだ時間はある。

 朝倉準一を呼びたいが、来てくれるだろうか。いや、来る筈だ。それまでは防がなければならない。

 事象変換魔法が、一体どこまで通用するか。






「あ、もう買っとこうかな。ビーコート。ねえ、準一どう思う?」


 服を選び、千早は自分に合わせ準一を見る。


「お、似合うじゃないか」

「あ、好感触。じゃこれは買い。後はフードスウェットも欲しいな」


 どこかな、と探す千早の肩を叩き「向こう」と指さす。コート類の向こう側。この時期おススメのコーナーにフードスウェットはある。


「あったあったー。何色が良いかな」

「お前は赤毛だからな。……無難に灰色とか?」

「フードは被った方がいいかな」

「ああ、灰色ならその方がきっとな」


 そっか、と幾つかを取り千早はカゴにポンポンと入れる。これまでスカートなども見たので、カゴはかなりすごい。


「お前、かなり買うんだな」

「まぁね。あ、ごめん。つまんなかった?」

「いや、つまんなくはないが意外だったからな」

「そう?」

「ああ。何かお前、目が活き活きしてる」


 少し自分の目を擦り「どう?」と千早は訊く。別に何も変わっていないので首を振っておくと千早は苦笑い。


 そこから少しして、準一はポケットにライラから受け取った護符を入れていたのを思い出す。

 ライラから受け取っていた護符は、普段は紫色の光しか放たない。緊急、危険の場合は赤。準一がポケットから取り出した札は赤。何かあっているのか、と思い隣で服を選ぶ千早を見、肩を掴む。


「千早、悪い。急用ができた」


 とだけ言うと千早の声も聞かず準一は走り出していた。

 場所は第二北九州空港跡地で間違いないだろう。






 第二北九州空港跡地一帯に雪が降る。自然の雪ではない。魔法によって降る雪。京都の桜と同じ、特定の魔法に影響を与えるものだ。

 滑走路の教会前では、武器を構えたシスターの後ろにライラが居た。

 空港施設の壁が凍り、バリバリと割れるとその中から歩いて来ているローマンは、2人のシスターの襟首を掴んでいる。


「ははは! 弱っちいなぁ! シスターさん達はよ!」


 そう笑いながら2人を投げる。投げられたシスターはライラの前のシスター達の前に転がる。若いシスターたちは、その倒れた2人の名前を呼びながら揺すろうとしゃがみ込み、ローマンは微笑む。


「止めなさい! 近づいては!」


 ライラが言い終える前に、2人の動かぬシスターに触れた数人が凍り付く。


「バーカ。ちゃーんと考えて行動しないからだ。しかし驚いたな、ホント。シスターがここまで弱いとはなぁ」

「大罪人……十二使徒ローマン。ここに来た理由は?」

「あ? なーに分かり切った事聞いてんだよ」


 とローマンはライラに笑みを向け目を細めると左手を向ける。周囲の雪が結晶化し、凍ったシスターに当たり、シスターの身体は氷の結晶となり弾け飛ぶ。


「手前を殺す為だよ! 罪深き俺は、そうしなきゃ罪が無くならねぇんだからな!」


 叫ぶローマンを睨み、ライラはまだ生きているシスターに指示を出す。「あなた達、今よ」

 応じたシスター達は一斉に剣を掲げ、術式を発動させる。

 何をする気か、と笑みを浮かべたままのローマンは動かない。 

 シスターたちは剣を掲げたまま、ローマンを囲む様に大きな円を作る。そして剣が光りはじめ、術式が浮かび上がるとライラが右手の人差し指を立て、下に降ろす。

 風から始まり、稲妻が突き抜け、紅蓮の炎が螺旋を描き、海からの水が押し潰す。4属性を一気に放出する攻撃魔法。

 巨大な水がローマンを押し潰すのを見、シスターたちは笑みを浮かべるが、水は凍りつき、その場に落ちる。


「まさかこれが隠し玉? ここまでやって? 嘘だろシスターライラ!? 拍子抜けだぜ!」

「とんだ化け物ね……」


 あなた達、とライラはシスター達に声を掛ける。「離れなさい。命令よ」と言うが、聞かずシスターたちは武器を手にローマンに突っ込む。もう遅い、ローマンは術を発動させると周囲に氷の柱を立て、行く手を阻む、かと思えば氷の柱から幾つもの長い棘が伸び、シスター達を串刺しにする。


「教育か、ああ、問題だ。これはあんたの教育ミスだ。俺が殺したんじゃない。これは罪じゃない……ああ! そうだ殺したけど罪じゃねえよなぁッ!」


 とローマンはライラに氷の柱を幾つも飛ばすが、眼前で砕け散る。「チッ、やっぱ伊達じゃねえな。事象変換魔法はよ」

 ライラはローマンを睨み、数枚の札を取り出すと投げ捨て、右手を突きだす。


「周囲が氷なら、溶かしてしまう炎へ」と術を発動させる。札が燃え上がり、ライラの右手に長い炎の剣が形成される。「氷結魔法がお好きの様ね」

「ああ、そうだな!」


 ローマンは地を蹴り、ライラに迫る。ライラは剣を振るい、ローマンはしゃがんで回避し、拳を突きだすが弾き返される。

 事象変換魔法により攻撃がキャンセルされた。

 クソが、とローマンは悪態を吐き舌打ちし。


「使用は炎。撃ちだすは炎の刃」


 ライラは次なる術を組む。赤に光る弓を取り出し、右手の剣をセットすると撃ちだす。直後、ライラの手から弓が消える。ローマンは苦も無く回避、そして氷を形成しようとするが雪が止む。

 振り向くと、矢は空中で止まり、先端を空に向け魔法陣を描いている。


「効果はキャンセル。……私、雪って嫌いなのよ」

「はは……甘く見てたよシスターライラ。ったくよ、俺も迂闊だぜ」


 腕を大きく振り上げ、ローマンは術式を組む。「こうなりゃ何でもアリだな。ヒヒ、さぁて事象変換魔法はこれに対抗できるか!」とローマンは四角の剣を取り出すと、左右に振り、構える。


「あんたなら知ってんだろ? この剣、どんだけイカれた代物かがよ」

「ええ」


 四角の刀身。柄の所に描かれた十字架。対魔法用武器、朝倉準一のファルシオンの様に斬るのではなく、キャンセルする。事象変換魔法に効くかどうかは分からないが、恐らく効く、とライラは判断。舌打ちする。


「それじゃ! ミンチにして―――ッ!」


 飛び掛かろうとしたローマンは左に跳ね、直後に銃声が響く。銃声の方を見ると、ローマンが出て来た壁、ブレードを持った朝倉準一がハンドガンを構えている。


「丸腰の女相手に武器構えて、正気か?」

「手前っ!」


 準一は銃を投げ捨て、ゆっくりと歩き出す。


「まさか、シスター相手に十二使徒が出て来るとはな。教団も切羽詰って来たわけか」

「何でここに居る! 介入できる事柄か! 教団と教会の事に!」

「バカ言うな、ここは日本だ。国内で好き勝手暴れる魔術師を放っておくわけないだろう」

「チッ……出直しだな」


 言うとローマンは剣を空に向け、突風を起こし姿を眩ませる。ライラはローマンが消えたのを見、その場に膝を付き準一は駆け寄る。


「全く、堪らないわ。魔法を使っただけで」とライラは自身の胸を抑えている。「事象変換魔法のツケね」

「はぁ……あんたが無事ならいいが、他は」

「少なくないわ。かなり死んだモノ。……あ、そうだ。ジェシカは碧武に居るわ」

「碧武に?」

「そう、私も直に碧武への移動になるわ」


 それを聞き、準一は目を細める。


「敵の狙いはあんただ。……学校を戦場にする気か」

「したくないわよ。でも、今はそれしかない。私を狙うのは十二使徒の中でもあの1人な筈。奴さえ倒せれば、十二使徒は大人しくなる」

「だとしても」

「今は戦力が欲しい所よ。揖宿家の子息も、テンペスト部隊長。七聖剣の1人だっている。簡単には攻め入って来ないわ」


 言いながらライラは立ち上がり、胸から手を離す。


「それより、来てくれてありがとう。助かったわ」

「別に良いが、もう少し早ければな」

「言っても仕方ないわ」


 とライラが言った後、準一の携帯が鳴る。見て見ると千早からで、少し怒った口調で早く戻って来いとの事。

 ため息交じりの準一は再び小倉に戻る事にした。

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