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第二次日本海侵攻戦②


 カノン、マリアの両名は空港職員によって保護され、事の次第に箝口令を敷かれた。そのままの状態で帰宅、着替え学校に向かい3組の一限目はベクターでの射撃訓練。

 カノン達の番ではなく結衣の番。篤姫がエレベーターで上がり、コクピット内の結衣は訓練用狙撃銃を構えさせる。

 射出機が開き、ダミーバルーンが打ち上げられ、担当教師からの「撃ち方」と言う声を聴き、トリガーを引く。

 大きくは無い発砲音が数回響き、最後の一発で一つのバルーンを撃ち抜く。

 

「……何で射撃出来ないんだろ」


 自分の射撃評価を現すDランクを見、結衣は声を漏らすと席に座っているカノンを見ると、何やら考え込むような暗い顔で下を向いている。

 若干、結衣も感づいている。兄の事だろうと。しかし、結衣に何かできるわけでは無い。

 兄貴は自分ではなく、カノンを頼りにしている。

 

「兄貴……何してんだろ」


 その呟きは誰に聞こえる訳でもなく、結衣は弾倉を切り替え、次の訓練に備えた。




 反日軍空母より発進したベクターは、対地上攻撃装備のまま午前日本海の空へ舞い上がると、高速で接近する2機を捉えた。誰が叫ぶわけでもなく、訓練通りに散開。反日軍ベクター、クルセイダーの一団はバラバラに散開し直進。迫る脅威に多目的ミサイルで対処する為だ。

 指揮官機からの射程に入り次第攻撃、の報を聞き各機は返事。

 直後、戦闘の一機が黄色い電磁を帯びた光線に撃ち抜かれ、動力炉にも命中し大きな爆発が起こる。


「各機! 突っ込め!」


 冷静さを欠いた指揮官機からの指示、既に中継回線を受信したアルぺリス、アルシエル。準一と千早は高速で飛びながら、リニアレール砲を構えさせている。静電気の様に小さな電気が銃身を駆け、次の瞬間には弾を撃ちだす。

 次々と敵機を撃破したアルシエルは弾倉切り替えの間、ショルダーキャノンを撃つ。


「良い武器ね。このレール砲」

「だろ?」


 言いながらトリガーを引く準一は、アルぺリスに装備させた建御雷から黒に近いビームを撃ち出す。先で爆発が左右に広がり、2機は加速。


「まずは艦隊だ。ハエ叩きはその後、でしょ?」

「そうだ。先に行く」


 千早に答え、アルぺリスを加速させ艦隊を目視した準一は、リニアレール砲を構えさせ、電磁弾をばら撒きつつ建御雷を連射。艦隊から伸びるミサイルのマーカー、アルぺリスの300手前で全てアルシエルの魔導砲に撃ち抜かれる。

 対し、電磁弾、ビームの直撃を受けた艦隊はその大半を轟沈させられ、撤退に転じた艦をアルシエルが撃ち抜く。だが、それを黙ってみているベクター部隊ではない。中距離戦用のアサルトライフルを構えた一団が2機に迫り、残りは基地へ。


「足止めにしたって」と呟き、千早はレール砲をラックにマウントさせ、ブレードを両手に構えさせ一団に突撃。基地に向かった敵は俺か、と準一は機体を加速させ一団を抜け、基地に向かう敵機を狙撃。的確にコクピットを撃ち抜き、胸部が撃ち抜かれた敵機は黒煙を吐き力なく落下すると海に波が立つ。

 応戦を開始する敵の部隊、千早は加速魔法で次々に敵機を撃破し、準一も次々と撃ち抜く。

 布を羽織り翼を広げる圧倒的な二機、敵は機械魔導天使だと気付くがそれに意味は無く、レーダー上からは反日軍ベクターが次々と消える。




「流石、準一君だね。あのアルシエルも」と呟く九条は、発進した大和のCICに居た。「しかし、まさかあの二機が手を組むとは」と磯島。他の面々も同じ意見だ。知る限り、最強のコンビと言って良い2人。


「そうだな、まぁ上の目論みがどうあれ本番はこの次に来るであろう敵機だ」


 の直後、迫る2機の機影。「来たか」と呟くと「画像でます」とオペレーターの声に続き、モニターに機影を映した画像がでる。黒機神、白機神。


「準一君。きたぞ、式機神を連れている」


 西園寺永華か、と声を漏らすとハエ叩きを切り上げ、その迫る2機に向かおうとフットペダルを踏み込んだ時だった。基地周辺、かなりの範囲に桜の花びらが舞い始める。

 彼女にとってはプラスの状況。桜花を発動させたわけだ。



「全部上からの命令。あんたに怨みは無いけど、殺せって命令が下った以上……いえ、この命令が下った以上、負けるわけにはいかない」


 永華の声に準一は顔を上げ、機体を停止させる。彼女は、この命令の裏を知っている。

 この命令で、朝倉準一が勝った場合、彼女が死のうが死ぬまいが七聖剣から西園寺永華の名は消え、新たに氷月千早が組み込まれる。逆に、永華が勝てば状況は変わらない。


「悪いけど、本気で行く」

「それは此方もだ」


 永華は黒機神に入り込んでいる。遠隔での操作に限界がある為、直接中に乗り込んでいる。白式、黒式の操作もある為、普段は絶対にしない。彼女の本気。目を光らせた黒機神は、持った刀を振り上げ、桜の花びらの中をアルぺリス一直線に飛ぶ。

 ブレードを構えず、レール砲を連射しながら高度を下げるアルぺリスを追う黒機神は、電磁弾を回避し、肉迫する。紙一重で避けたアルぺリスは、振り上げた足を黒機神に振り下ろし、強い衝撃と、甲高い金属音の直後、黒機神は海に叩き付けられる。自動で動くようにされている白機神は、薙刀をクルクルと回しながらアルぺリスに迫り、気付いた準一は機体を跳ねあげさせる。

 純白の翼が数回羽ばたき、海面の波が高くなり、弾切れになったレール砲を投げ捨てるとブレードを構え、迫った白機神の薙刀の刀身をブレードで受け流し背後に回り込む。無人とは言え機動力の高い白機神は、背後からの建御雷射撃を避け、裏拳の要領で薙刀を持った手を後ろに回す。

 建御雷のビームが波を立てると同時、アルぺリスはブレードで薙刀を受け、後ろに押しやられる。クルリと風車の様に自身を回転させた白機神は、薙刀を突きの体勢にさせ迫る。白機神を避け、魔導砲を向けた瞬間、海から黒機神が飛び出す。桜花の影響で、永華自身の操る黒機神は早く、受ける間もなくアルぺリスは紙一重で左にずれる。 

 次に迫った白機神の薙刀の一閃を加速魔法で回避、アルぺリスは左手のブレードで白機神の腕を刎ねる。


「様子見は終わりなわけね」


 ここに来て準一は魔法を使用した。それは、様子見の合図。来る、と思った直後白機神の背後に出たアルぺリスはブレードを振り上げ、残った右腕を刎ねあげた。宙を回る腕を見、舌打ちした永華は黒機神を加速させ、刀の一閃を振るう。かなりの速度だったが、捉えていた準一には避けられ、一閃はただ羽織っていた布を切ったに過ぎない。


「勝負ありだな」


 と首筋にブレードを突きつけられた黒機神の中で、この声を聴いた永華は「くそ」と声を漏らした。


「悪いが、これも命令だ」と準一。「何?」と返した永華は黒機神の目から映る背後を見る。

「反日軍壊滅令、の中の余興だろうが……そういう訳だ。あんたは見切りを付けられた」


 準一からの言葉に永華は息を吐く。七聖剣とはいえ、自分は最弱。何れこうなるのでは、と覚悟はしていたがこうもあっさりやられてしまえば、反論もしようがない。


「あんたには悪いと思う」

「ここまでしておいてよく言う」


 言葉を返した永華はアルぺリスを睨む。「悪魔め」と言いかけたが敗北したのは自分。これ以上言葉を重ねるのを情けなく思い、呑み込む。


「聞くけど、あの黒い奴を私の代わりに入れるなら、どうして私とあの黒い奴を戦わせなかったの?」


 最もな疑問だな、と思いながら準一は口を開く。


「今回、あいつは雑魚の始末。戦闘能力を測る為にな。だが予定が早まってあんたが来た。本当なら全部終わってから戦わせるはずがな」

「だから、あんたが相手したわけ?」

「そうだ」


 そして、準一のアルぺリスに通信が入る。反日軍のここに向かっていた別動隊を、他の七聖剣が撃破したと。

 それを永華に伝えると、永華は「クソ」と声を漏らした。


「皆、示し合せてたわけか……良い笑い者だな。私は」

 

 準一は、別動隊の事など知らなかったが、言い訳になるので何も言わない。


「ふざけやがって……私も、これっきりだな」


 この後、七聖剣と言う役職を剥奪された彼女は、必要以上の事を知っている為記憶を改竄される。勿論、彼女の魔力の高さは本物だ、記憶を改竄する魔法に侵入できない様に、自我を一度破壊させた状態で魔法を掛ける。


「すまない」


 これしか言えなかった準一は、アルシエルが周辺の敵を全て撃破したのを確かめ、基地へ戻った。次は、反日軍の重要拠点。韓民共和国の北部のゴーストタウン。そこを攻めなければならない。


「千早、戻ろう。次は明日だ」

「分かった」


 答えた千早は基地に機体を急がせた。

第二次日本海侵攻戦はここで終了。

次は反日軍の本拠地を攻めます。半島への進撃ですね

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