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反日軍壊滅令

「清城甲斐家、の当主が怪しいクラブに所属していたのはしっていますよね?」


 と昼休みの屋上。準一に向いた池澤は声を掛ける。知っていた事実だったので頷くと、池澤は下から聞こえる車の走行音を出す道路を見た。


「クラブ名はウォンバット。ご存知でしたか?」と池澤に聞かれ首を縦に振った。「ええ、一応個人的に調べましたが」言うと、池澤は「そうですか」と声を出し続ける。

「ウォンバットを開いているのは、在日朝鮮人、在日中国人……というのは?」


 知らない準一は少し驚くも、続ける様子の池澤に気づき口を開くのを止める。


「まぁ、彼らが日本で暮らす上の小遣い稼ぎと聞いていますが、趣味の悪いクラブです。知っての通り、碧武九州校長代理も一度はあそこを通され、参加一族へ引き渡されています」

「あなたは、池澤講師は上と繋がりが深い。そこまで知って、どうして潰さないんですか?」

「そうしたいのは山々です。ウォンバットは、拉致、誘拐した少年少女を売春させる組織ですからね」


 別に自分が潰しても良かったが、あまり関わりたくは無かった。だが


「ウォンバットの日本支店は神奈川県。横浜中華街にあるんですが、朝倉君」と池澤は意味ありげな笑みを浮かべた。「現在のウォンバットには所属無し、フリーのVIPが来ています。此方から使者を送る事も伝えていますし、行ってはいただけません?」


 多分そんな事を言われるのでは、と思っていた準一は少し息を吐くと「いいですよ」と言うと池澤に身体を向ける。「しかしVIPとは?」VIPの事が皆目見当つかない準一。池澤は笑みのまま一言言う。


「漆黒の翼を背負いし天使、と言えばお分かりいただけますか?」

「……ええ、よく分かりますよ」

 

 漆黒の翼を背負う天使、それはアルぺリスと対を成す機。機械魔導天使アルシエルだ。


「確か、聞けばアルシエルはアルぺリスの一号機だとか?」

「そう聞いていますが」

「おかしいですね……私の知る限りでは、一号機はアルぺリスの筈ですが」


 またもや知らない情報、気になった。アルぺリスが自分の搭乗機である以上、手に入れられる情報は手に入れておきたい。「それはどこから?」


「いえ……私も薄らとしか。どこかであの白い翼が一号機だと。申し訳ありません」

「いえ」

 

 お気になさらず、と言うと準一は息を吐く。「繁華街へはいつ?」と聞く。「出来れば今日」といきなりの報告を告げると池澤は続ける。


「この後塾長室へ向かって下さい。安楽島魔法戦部統括部部長がお待ちです」


 塾長ではなく統括部部長の名で呼ぶ、という事は任務関係か。しかし、現在は塾生。何をさせるのかと思いながら池澤に会釈すると塾長室に向かった。





「昼間に申し訳ない」と口を開いた安楽島は準一を見ると執務机から手を離し、椅子から腰を離した。「まぁ、座ってくれ」と長椅子を差す。


 一度会釈し準一は長椅子に座る。


「それで、要件は?」と向かいに座った安楽島に聞く。 


 いえ、と一度下を見、上を見、準一に目を合わせると膝に置いていた手を合わせ肘をテーブルに置く。


「池澤から話は聞いている、な?」

「ええ。ウォンバットの日本支店にVIPが来ているとか」

「なら」


 と一呼吸し、顔色を変えない安楽島はゆっくりと口を開く。


「君はVIP、氷月千早と合流後、魔術戦部統括部部長である私直々のオーダーで任務に就いてもらう」

「任務とは?」

「単純明瞭だ。君の力量なら手に余る任務……反日軍を叩き潰し、壊滅してもらう」

「氷月千早との共闘ですか?」

 

 そう考えてもらって差し支えない、と答えた安楽島は立ち上がった。


「さて、向かってもらうのは塾が終わってからだ。それまでは講義に集中してくれ」





「ったく、何午後の一発目サボってんだよ」と剣崎に言われ、教室ではなく別の教室、講義室の席に座った準一は「悪い」と小声で隣の剣崎に言う。


 別に何も無かった、という体を装ってはいるが加耶、剣崎の2人は何かあったんだろうな、と少し思い立つのだが、それよりも講義に集中する2人は、講師が書き記すボードに目をやった。





 校長室に入ったカノンは、代理が肘を置く執務机に書類を置いた。「これは?」と聞き、代理は資料を取り見て見ると退学届。


「兄さんとの接触禁止令。碧武生に適応されているんですよね」

「そうだね……だから、学校を辞めちゃうわけ?」


 はい、と頷いたカノンに代理は困った様な顔をする。


「一応、あたしの方でも色々考えたんだけどさ、接触は無理だったね……ねぇ、接触禁止令がどうして出たか分かる?」

「……さぁ」

「つまりというか、まぁ……上の妥協案かな」

「妥協案?」

「そ。単体であの戦闘能力、現在に至っては黒妖聖教会や他多数の強い奴らと深く関わっている。って事を此間の会議で機甲艦隊の西部方面隊司令や他数名が言ったのよ。彼は危険だって、んでその会議の中で朝倉準一の処分が話し合われた」


 一瞬、カノンは眉を顰めると目を細めた。


「代用は利くから殺してしまった方が、って話を流石に酷いだろうって、上が取り消したわけ。で、準一君は碧武を辞めさせられ現在に至っては機甲艦隊をも除隊。上の監視下に置かれている……らしいよ?」

「それは、どこから聞いたんですか?」

「黒妖聖教会から」


 だから、と続け代理は書類をカノンに突き返す。「これは受領できない」

 と、笑みを浮かべる代理を見、カノンは書類を受け取る。


「カノンちゃんが接触禁止令を破っちゃ、準一君に迷惑掛るよ?」

「……はい」


 少し考えれば分かる事なのに、頭に血が上っていた。と言う事実にカノンは心中で叱責する。


「だから、迷惑掛っちゃうから準一君も大人しくしてるんだよ」

「……ですが」

「もう、分かってよカノンちゃん」


 言いながら代理はカノンを見ると、今にも泣きそうな顔で、俯いている。

 理由は察しが付く。カノンは準一に助けられ、カノンの中では準一が彼女に於ける全てだ。過去の記憶が曖昧の中、教団の実験から救い出してくれた彼の優しさに救われ、心を取り戻し、彼の為に残りの人生を使うと決めている彼女にとって、接触禁止令は重すぎる。

 少し、代理は心配であった。

 教団の実験の末、感情の基盤を壊されたものの、彼女は準一のおかげで感情を取り戻したのだが、その準一がいないとなっては彼女がどうなってしまうか。


「ほら、結衣ちゃんも同じ心境だと思うし。今は準一君が帰って来るのを待ってようよ。ね?」

「……はい」


 困った様な顔を再び作った代理は、窓の外を見て大きく息を吐いた。





 ジーンズに黒いシャツ。白のパーカーを羽織り、フードを被った準一は、夜の中華街の喧騒の中を歩きウォンバットを見つける。その3階のテナント募集を見ていた時、先ほどから自分を付けて来ていた男に肩を掴まれ、腰に堅い金属の様なモノを突きつけられた。


「大人しくしていろ。死ぬぞ……何の用だ」


 自分の事を知っているであろう男は、手を震わせている。「朝倉準一」と男に名前を呼ばれる。

 行きかう人の中、止まった2人は結構異様な光景なのだが、酔っ払いや怪しい店への勧誘などでそれは目立っていない。


「瑠鈴明……知っているな?」


 と準一が聞くと男は腰に当てていた金属を押す。「何故知っている?」

 その金属は拳銃の類だと知っている。恐れる事も無く、眼帯をしていない片目を向け「叩けば出て来る」と言ってみると、男は見る見るうちに手を震わせそれは激しくなる。


「震えているぞ……それじゃ脅しにならない」

「黙れ……! この化け物が」


 174cm程の高校生。だが高位魔術師。朝倉準一。男の恐怖は膨れ上がる。


「ここは、貴様の様な化け物の来るべきところではない。帰れ……!」

 

 と周囲に聞こえない位に声を出すと、準一は少し笑みを浮かべる。


「何がおかしい」と男が聞いた瞬間、準一はクルと振り向く。「貴様……!」と男は銃口を準一の額に押し付ける。


 それさえ準一は屁とも思わない。恐怖は無い、所詮は魔術師でもない男の構えた、訓練さえ受けていない銃。


「あまり威張るなよ不法入国者」


 笑みを浮かべたままの準一に言われ、男は一歩後ずさり。震える手のまま引き金に指を掛ける。


「中国……いや朝鮮系か。さて」と準一が右手を振り上げると、男の右手から銃が消える。感触を確かめる様に手を握り、準一の左手を見て見る。一転し、悪い笑みを浮かべた準一は、左手に持った拳銃の銃口を男の額に向けている。


「さて、瑠鈴明の所へ案内してもらおうかと思ったが、場所はもう分かっている。しかし、俺が来ることは伝えた筈なのにこの歓迎……貴様は不要だな」

「ヒッ!」


 見てわかる位に怯え、男は悲鳴を上げる。直後「待って」と声が掛り振り返るとチャイナドレスの若い女が居た。


「……瑠鈴明だな」

「ええ。初めまして、朝倉準一。会えて光栄よ」


 不敵に微笑んだ瑠を見、男は情けなく膝を付くと震える膝を手で押さえている。準一は奪った拳銃を持ったままの手をパーカーの深いポケットに押し込んだ。

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