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首都東京侵撃戦④

 文化祭の延期になった碧武校。その九州校では、東京の情報は入っていなかった。教師陣が、意図的に情報を遮断したのだが。

 


 結衣とレイラ。そして3バカは昼食をしていた。空は晴れており、屋上で食事をするにはもってこいだ。


「全く。何だか嫌な雰囲気ですわ」


 準一に習った簡単サンドイッチレシピを元に作成した、サンドイッチを手にし、レイラは一口。


「あ、同感」と菜月はタマゴ焼きを一口。「何か気のせいかもだけど。隠してる」とアンナ。


 結衣は何となくで察していた。兄がいない、という事はまた仕事、魔法とかその類だ。と。

 シャーリーは会合会メンバー。魔術師ではあるが、何の事情も聴いていない。

 だが、生徒会長やエディ等の雰囲気で分かる。

 何か、結構大きな事を隠している。


「まさか……準一ってばあたらしい女かしら。ねぇ結衣、どう思います?」

「え……? ええ? あ、ああうん。きっと男だよ」


 結衣はから揚げを箸で持ち上げ答える。皆は思った。

 この妹さんったら話聞いてないね。


「い、いやいや。聞いてたよ? あたし聞いてたよ?」

「じゃあ……何が男なの?」


 菜月が聞く。


「え? 兄貴の性別でしょ?」


 この子ってば、だめですわ。4人は一斉にため息を吐く。





 

「最終隔壁だ」


 東京テレポート駅前、地下鉄の通路にマリンで穴を開け、その数百メートル以上潜った先の防護扉を突き破り、中の隔壁を破壊していた。

 入ったのは歩兵隊。ライフル、手りゅう弾。迷彩服に防弾性のあるチョッキ。

 1人が、壁に爆薬を仕掛け、他2人の手招きに応じ、そこへ逃げ、陰に隠れる。


「起爆」


 鈍い衝撃音と共に、壁が吹き飛び、ワイヤーを使ってマリンが降下。歩兵隊に近寄る。

 他の隊員は破壊され、煙に覆われた壁の向こうを見る。

 次の隔壁だが、もう爆薬では破壊できない。壁には、一面護符が貼られている。


「ここからは貴様の領分だ。できるか?」


 マリンの肩から、黒衣の男が降り、微笑む。そのままの足で護符の貼られた壁に近づくと、魔術を発動させる。

 防護魔法を解析、解除、無効化する魔法。

 彼は手に持った杖を壁に当てると、次の瞬間、彼の頭は爆ぜた。

 頭の中身、顔のパーツ。全てが四散し、血が飛び散る。


「クイーン。あなたの想定通りだ。解除に当たった途端爆ぜた」


 1人は札を耳に当て、シェリエスに言う。


「やっぱりね。分かったわ。爆発系の魔法を仕込んだ起爆札が数枚あるでしょ? 試してみて」

「了解」


 歩兵隊は彼女の言う通りに起爆札を張り巡らせると、爆発。だが傷すら付かない。


「先は長いな」


 呟くと同時、何か小さなものが転がる音がし、最初の隔壁前に待機していた歩兵隊は爆発により、壁に叩き付けられる。

 何が、と思う前に床を乱暴に踏む足音。続いての幾つもの銃声。歩兵隊は、突入してきた部隊と交戦状態に入る。


「どこの部隊だ」


 応戦しながら1人が聞く、マリンは歩兵隊を庇う様に前に出ると、対人用の散弾をばら撒く。


「確認する」


 後方に控えたマリンが、突入して来た部隊を確認する。


「……米軍だ」


 今、自分たちに攻撃をしてきているのは、アメリカ国籍の在日米軍。


「破壊は後回しだ。抑えろ。マリン!」


 一瞬の爆発的な跳躍を見せ、マリンは米軍へ突撃した。





 コクピット内から敵を捉え、ミサイルで落とす作業を再び始めた朝倉準一は、機体を変形させ、椿姫の後ろを取ったと勘違いしている敵機に振り向き、腕部に内蔵されたブレードを突き刺した。

 そのまま機体を左に回転させ、ユニットを噴射させると東京テレポートへ向かおうと機を向ける。悪鬼も支援に付いてくれてはいる、だが敵は多い。想像以上に。

 展開している日本側の部隊の支援も行わなければならないが、極力行わない様にしている。

 最優先目標は、クイーンシェリエスの目的のモノを確かめる事だ。

 一瞬、準一の脳裏をアルぺリスが掠める。制御不能と言う今までにない特殊状況に陥った、自分の相棒。

 だからこそ、今頼りになるのはお前だ、と思いながらコンソールを撫で、正面を向き自分の先を行く悪鬼の射撃を見る。




 紫炎の破壊者の名は伊達ではない。その名の通り、彼は敵を破壊し続ける。現在は東京国際空港、滑走路拡張予定地区。そこに停めてある揚陸艇をすべて破壊し、敵対するモノを破壊する。

 右手に持った鎌の一閃は、彼の狙った対象を捉え、構成物質を破壊する。かなり強力な魔法、ではあるのだが、事情変換魔法で防げるという弱点はある。

 しかし、殆どの魔法は事情変換魔法で防げるのだが。


「どうなっている。アルぺリスが見えん」


 空を見上げ、ジェット機やベクターの航跡雲の軌跡を目に、姿の見えないアルぺリスを考え呟く。そのまま顔を下ろし、湾へ侵入しようとする敵艦隊と、その対処に当たる駆逐艦の後姿を見る。

 本来なら、湾の魔導船撃退に、アルぺリスが赴くはずなのだがいない。それどころか、八王子の改修班からはアルぺリス無人起動の知らせ。

 状況が掴めないが、やるべき事は倒せる範囲での敵を倒すだけ。

 八千条巳六は、迫る揚陸隊第2波に鎌を向けた。




 

 魔導船の甲板を勢いよく蹴り、アルシエルは海面擦れ擦れを飛び、飛沫が立つ。彼女、アルシエルが待機していた魔導船は東京の沖合ではなく、福岡の沖合。

 一斉に、召喚された天使30機がアルシエルに続く。

 それに気づいた九州校の来栖、西園寺は戦闘態勢に入る。


「とびきりのお客さんだ」

「冗談。いやよ、あんなの客じゃないわ」


 冗談だよ、と来栖は西園寺に一言言うと機械魔導天使、ミストルティンを召喚し、自在浮遊剣発動の為、背中のスラスターウィングを開くと、背部の剣放出機を開く。

 同時、両手を前に出し魔法を発動させると、剣が数十枚以上飛び出し、空へ飛んだミストルティンの周辺をグルグルと回る。

 

「永華。さっさと来いよ」

「るっさいわね。あんたさっさと突っ込みなさい、よ!」


 西園寺永華は両手をポケットに入れると、式神を召喚できる札2枚を取り出し、瞼を閉じると魔法を発動させる。と言っても、西園寺永華の魔法は、南雲家御舩家の陰陽術と、西洋寄りの召喚獣発動術式を合わせたモノで、厳密には魔法ではない。どちらかと言えば、西洋寄り、よりも陰陽術の方が近いからだ。

 彼女の召喚したモノは、式機神2機。

 白機神、黒機神。両方15m以上でベクター、機械魔導天使への対抗策として使える。

 

「白機神、黒機神。バカの支援お願い」


 答える事無く、白機神、黒機神は飛翔魔法で飛び、ミストルティンを追う。




「七聖剣だったっけ、準一より強いか」


 千早が言うと、アルシエルは大剣を取り、右手に持ち振り上げる。「それとも弱いか」

 加速し、アルシエルはミストルティンへ向かう。ミストルティンは浮遊剣の切っ先をアルシエルに向け、一斉に飛ばす。

 アルシエルは加速魔法で上に跳ね、迫る剣に大剣を振り下ろすが、七聖剣は伊達ではない。

 飛翔する剣は、アルシエルの大剣を止める。一度舌打ちし、千早は機体を空に上げ、サイドアーマーの魔導砲を連射。

 それを、剣が束になり打ち消す。


「自在浮遊剣……厄介ね」


 言い、千早は少し焦る。来栖春樹1人でこの戦闘能力。しかも、春樹のミストルティンに対し、アルシエルは直接的な攻撃を行えていない。

 同時、真下から白機神が日本刀を振り上げ、アルシエルの踵を掠める。

 ギリギリ回避できた、しかし、と無人の天使群を呼び寄せ、式機神の対処に当たらせようとするが、黒機神の振るった日本刀から飛ぶ黒い衝撃波に、迫る天使群6機は一掃される。

 嘘、と口にだし機体を回転させながら魔導砲を乱射すると、一気に上昇させ、迫っていた自在浮遊剣を回避。直後、眼前に迫った光線に気づき、盾を張る。

 2発。魔法じゃない、とショッピングエリアのビルの1つ、その屋上でハイパーロングレンジスナイプ装備のフォカロルを見つける。


「良い腕ね。頭部、胸部。当たればダメージ大……朝倉カノンね」


 千早は勝利の笑みを浮かべる。


「でも、彼女を狙撃、戦闘に駆り出すって事は、まだ知らないみたいね」


 だが、目的遂行の前に下の七聖剣は邪魔だ。

 一度、七聖剣を一瞥し、再びフォカロルを見る。


「吸血鬼のハーフ……ハーフヴァンパイア、でいいのかしらね。彼女は」 






『いいから、聞きなさいこのちんちくりん。いい?』


 校長室で、代理は通信機に顔を向け、一度、息を吐く。言わずもがな、相手はシスターライラだ。


『今あんたのトコに来てるアルシエルの目的はただ1つ。朝倉カノンよ』


 代理は息を吐くと、戦闘状況を映すディスプレイを見る。


『彼女を狙う理由は、彼女がミレイズ姉妹と同じ、極少数の吸血鬼の血を引く者だから。そんな彼女を使ってやろうとしている事は、首都地下に収めてあるフランベルジェ、その改良大型版を使用する為よ』

「……分かったわ」


 ゆっくりと言うと通信を切る。そのままの手で出撃した戦闘可能の学校警備のベクター部隊に連絡をする。


「展開している部隊へ。最優先よ。いい? 敵の狙いは、朝倉カノンよ。今すぐ、彼女を地下へ避難させるわ。彼女の確保が最優先よ」


 そのまま返答を聞かず、カノンに通信を入れる。


「カノンちゃん、聞こえる?」

『だ、代理? どうしました』

「今すぐよ、展開中の警備隊が向かってるわ。合流して、地下へ逃げなさい」

『どうしてです。頭数は多い方が』

「いいから! 敵の狙いは、あなたなの。お願い、したがって」


 代理のお願いに、カノンは一度呆気に取られるが、分かりました。と答えるとサブモニターのSOUNDONLYを弾く。

 ま、代理の言う事だし、と機を立ち上がらせ、後ろを向いた瞬間だった。フォカロルの右脚部から右腰が貫かれ、爆発し、その場に倒れ込む。

 衝撃がコクピットを襲い、カノンは気を失った。






 敵の真正面に当たるショッピングエリア沿岸部。そこに無理やり飛び出し、戦列参加し展開していた結衣、篤姫は、カノンを撃ったそれを見て居た。


「あれ……ベクター?」


 言うと、篤姫の隣にテトラの椿姫が降りる。


「そうみたいだがな……結衣、カノンのトコに。助けて来い」


 ガッテン、と言うと篤姫をジャンプさせるが、カノンを撃った敵のビームが掠め、ビルの陰に隠れる。


「テトラ! どうしよう……」

「どうしようって」


 テトラの椿姫もビルの陰に隠れる。篤姫と同じように、銃身にブレードを付けたガンブレードを構える。

 そのまま、望遠で敵機を捉え、ちゃんと見る。


「知らない機体だ。どこの機体だよったく」


 カノンを撃った機は、単眼。15m。通常サイズだが、頭からは左右4枚づつのバインダーが降りている。手持ち武器は無いが、そのバインダーからビームが出ている。

 ショルダーアーマーを見ると、反日軍のシンボルマーク。


「反日軍? また教団と」

「どういう事?」

「あの機体だよ。よく見ろ。肩の部分」


 結衣も篤姫の顔を出し、敵機の肩を見る。羽劉、と書いてある隣に反日軍のマーク。


「中華製だよ。あの機体」

「ヤバいの?」

「恐らく、性能は折り紙付きだろうな」


 成程、と結衣は大きく息を吐く。

 さっき、カノンを撃った一撃はとんでもない威力だったが、自分に向かったビームは威力こそ大きくは無かった。

 先ほどの攻撃では、8枚のバインダーからの一斉射。


「でも、撃ってこなかった。それってさ、あの機体。さっきみたいな高出力射撃は連続できないって事でしょ?」

「だろうな、どうする? 今なら後方支援に回れる。生徒会長方にまかせっきりに出来るよ?」


 テトラが言うと、結衣は「ふふん」と笑う。


「やるに決まってんじゃん。高等部最強の盛り通り名は伊達じゃないよ」

「だったら決まりだ。やるぞ」


 同時、篤姫、椿姫の1km先にその機体。羽劉は着地。周囲索敵を始める。


「結衣、出て来るなって命令を無視したんだ。死んでも恨みっこ無しだ。いいわけ?」

「勿論、ってか。死なないし。射撃、任せるね」

「おう。格闘戦は任せる。ちゃっちゃと片付けて、カノンを助けるぞ」


 了解、と言うと2機はユニットで羽劉へ飛び、篤姫はガンブレードを構え、その後ろから椿姫の援護射撃。羽劉はゆっくりとモノアイを向け、左手を迫る篤姫に向けると同時、バインダーが可動。

 4つの青の光線が篤姫に向かった。




 


 高速湾岸線。その無人になった高速を滑りながら、朝倉準一の駆る椿姫は射撃を行っていた。ユニットは使用していない。着陸用に、足裏に装備されたランディングギアを利用し、車の様に走っているだけだ。

 何故、ユニットを使用しないかと言えば、飛行ユニット、外部ユニットとの併用で、推進剤の貯蔵タンクがあるとはいえ、消費がバカにならないのだ。

 だが高速移動は変わらない、敵に捉えられぬ様、ミサイルを撃ち、左腕に持った砲を右手で構え、一発づつ丁寧に撃ち、撃ち落とす。

 もう戦闘中なので、高速の看板やらを吹き飛ばすのは気にしない。

 他の組織、部隊の奮闘のおかげか、都市上空の敵の数は減っている。このまま進めばすぐに、と思った瞬間、ビームが進行ルートを切り裂き、椿姫は脚を止める。


「来たか」


 上空にはカレンデュラ。ロツンディフォリアの切っ先を向けている。

 ユニットを全開にし、カレンデュラに肉迫。対魔術師戦用に改良した刀を振り上げるが、カレンデュラに簡単に受け止められる。


「聞くが、千早はどうした」

「さて、どうしたんでしょう、ね!」


 カレンデュラの踵おろしを右肩にモロに喰らうが、構わずタックルし、そのままの勢いで地面に叩き付け、抑え込むと刀を胸部に向ける。


「答えろ。お前の狙うものがフランベルジェだとして、それの発動には吸血鬼の血がいるだろう。どうする気だ」


 聞くと、シェリエスは啜り笑う。


「ねぇ、あなたミレイズ姉妹が教団の実験に使われていたのは知っているでしょ? そして、彼女達とあなたの義妹が顔見知りだって事も」

「それが?」

「聞くけど、彼女達のいた実験場。なんて呼ばれてたか知ってる?」


 知らない情報だ。


「吸血鬼の収集所……まぁ、つまりそういう事よ。あなたの義妹は、あの姉妹と同じ」

「吸血鬼って……まさか」

「そのまさかよ。今私が調べ上げただけでは、姉妹とあなたの義妹くらいだけよ。そして、姉妹の妹の方は黒妖聖教会、姉の方はあなたと契約したから使い物にならないからね」


 顔に出さず、準一は驚く。シェリエスのカレンデュラと音声で繋がる、受信した敵の通信回線。向こうから、吸血姫の啜り笑いが聞こえる。


「今頃、アルシエルに捕えられたいんじゃないかしら?」


 くそったれが、と一言。準一はカレンデュラを睨み付けた。

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