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一騎打ち開始直前  義妹vs実妹編②

「恐ろしい展開ね」

校長室で代理は言った。


機体の状況資料を届けに来ていた城島は「何がです?」と聞く。


「今日の転入生、朝倉カノン。準一君の義妹いもうとらしいのよ」


「それが?」


「分からない? 結衣ちゃんは度を越えたブラコンよ」


城島はハッとする。


「気付いた?」


「ええ」


代理は海苔煎餅をバリバリ噛みながらこう言った。


「しぇんしょうににゃるわ」


訳、戦争になるわ。


「モノを噛みながら喋るんじゃありません」

城島の注意の後、お茶で流し込もうとするが詰まらせ咳き込む。


「言わんこっちゃない」

城島は代理の背中をさする。


落ち着いた代理は城島に礼を言うと席から立ち上がり窓に寄る。


そして上がっていたブラインドを下ろそうと紐を引く、だがブラインドはゆっくり下りず勢いよく代理の頭に命中する。


「いたッ!」

代理は頭を押さえしゃがみこむ。


「代理、何がしたいんですか」

呆れ気味の城島が聞く。


「いや、刑事ドラマみたいにブラインドから外を見たくて」

頭を押さえながらしゃがんだ状態で城島に向き、代理は言う。


「・・・代理」


「何?」


「楽しみにしてますよね。朝倉カノンと朝倉結衣のぶつかり合い」


言われ代理は誤魔化そうとするが、ばれたなら仕方ないなと開き直る。


「まぁね」


立ち上がり胸を張った代理の言葉を聞いて城島はため息を吐く。




<><><><><><><><><><><><>




自己紹介を終え、準一の隣の席を陣取ったカノンは、準一にベッタリくっ付いた状態で授業を受けた。


午後の授業終了まで続いたが、昼休み開始のチャイムと共に終わりを告げた。



結衣が、準一の席の前まで行きこう言ったからだ。


「兄貴、昼ごはん一緒に食べよ」


するとカノンが立ち上がる。


「今日、兄さんは私とお昼するんです」


結衣はムッとした。


感情に任せ準一の左手を掴み「あたしと食べるの」と反抗する。


「いえ、私です」

カノンは右手を掴む。




「いや俺が―――」

突然本郷が教室の外から飛び出そうとする。


「せい」

だが、待機していた生徒会メンバー、副会長四之宮にエルボーを叩き込まれ最後まで言えなかった。


「空気読まなきゃ」

雪野小路は本郷に言う。


本郷は窓から教室を覗き込む。


結衣とカノンの修羅場だった。


「俺が悪かった」


「わかれば良いのよ」

と雪野小路。


「分かればいいさ」

と揖宿。


揖宿はかなりノリノリだ。





「授業中ベッタリだったんだからいいでしょ!」


「それとこれとは話が別です!」


結衣、カノンの両者は譲る等という選択肢はない。


右左に引っ張られ準一はガクンガクンと揺さぶられていた。



教室の外の生徒会メンバー、本郷は役に立たない。


黒板の前でカメラを構えるカルメンも同様だ。


そして先ほどから「おおー」とか「いいねいいね」とか「グッジョブ」と言っているシャーリー、菜月、アンナは戦力外だ。



どうでもいいが、この3人、2つのあだ名を付けられている。


3バカと悪の3兵器である。


3バカは兎も角、悪の3兵器って何?



等と気を抜いていた時、強い力で右と左に引っ張られる。


「兄さんは! 私とお昼するんです!」


「あたしが! 兄貴とお昼ご飯なの!」



止めて、千切れる。準一が内心悲鳴を上げていると、教室の入り口が勢いよく開いた。



「だったら勝負しないと!」

代理だ。いつにも増してハイテンションな代理が居た。


準一は思った。


しまった。大変なのがきた。と。


この人が来たからにはもう面倒臭い事になるのは目に見えていた。


「いいでしょう・・受けて立ちます」


「あたしも、異存はありません」

2人は言うが準一は問題しかなかった。



「じゃあ両者合致で決まりね! 義妹VS実妹! 大好きなお兄ちゃんを賭けた一騎打ち! あたしが許可するわ!」


するなバカ。準一は口には出さなかった。一応、碧武九州校の最高権力者だからだ。


「じゃ、勝負は3回勝負。まず一回戦は、どれだけお兄ちゃんの事を愛しているか!」


「・・・は?」

準一はポカンとした。同時に嫌な予感がした。


「いいでしょう、兄さんの事を一番愛しているのはこの私です」


「兄貴の事はあたしが一番・・あ、愛してるんだから」


準一の嫌な予感は的中した。


まずい。非常にまずい。と思うがもう打つ手は無い。


「代理、会場準備は任せてください」

突然、揖宿が立ち上がる。


止めて下さい。会長。準一は心の中で懇願した。


「おお! 揖宿君!」


「体育館の使用許可を、お願いできますか?」


代理は無言で親指を立て『グッジョブ』とOKの合図を出す。


準一の懇願は届かなかった。



「では、生徒会メンバー総員、第3種展開、体育館の準備、同時に情報操作を開始。掛かれ!」

揖宿が指示すると生徒会メンバーはそれぞれの準備に入った。





<><><><><><><><><><><><>





体育館の準備は、生徒会と、ある同好会が一緒に行っていた。


体育館の外ではベクターを無断で使用した人員整備が行われている。


『はいはいー。みなさんゆっくりおねがいします』

ベクターに搭乗し、指示をしているのは綾乃だ。


今日は、いや今日も碧武九州校は授業は全面中止となった。


その為、生徒が体育館に押しかけるので、その為のベクターを使用しての整備である。




<><><><><><><><><><><><>




体育館に着いた準一は驚愕した。


あまりの人間の多さに、酔いそうになった。


取り敢えずは近くのベンチに座った。



すると1人の男子生徒が近寄ってきた。


「お前が、朝倉準一か」


「え、ああはい」

準一は向く。そこには屈強な肉体を惜しげもなく晒した(上半身裸)男子生徒が自分を見下ろしていた。


「え・・っと。あなたは?」


「よくぞ聞いた!」

準一が聞くと男は待ってました、と言わんばかりに筋肉を主張するポーズをとる。


「俺の名は遠藤渉、この体育館準備を生徒会と共に行っているマッスル同好会の首領だ」


「ま、マッスル同好会?」


「そうだ。マッスル同好会だ。我らマッスル同好会は筋肉最強神話伝説を信じ、健全なる魂を肉体に宿すため、常日頃から筋肉を増強している」


あんまり関わりたくないな。準一は思った。


「よし、お近づきの記だ。我が同好会で愛用されているマッスルプロテインだ。さぁ受け取れ」


「どうも・・ところでマッスル同好会は何故この不毛な一騎打ちに?」


「愚問だな」


「え?」


「我らが筋肉は美の集大成。我らが筋肉の活躍場所は神聖なる公平な戦いの場。美しい乙女が2人、公平に一騎打ちをするのだ。我がマッスル同好会にはそれを無事に終わらせる義務がある」

その時、遠藤の白い歯がキラリと光った。


準一は「成程」と言いながら「別にないだろ」と思う。そして1つ疑問に思う。


「だったら、どうして俺と本郷のベクター兵器での一騎打ちでは出てこなかったんですか?」


「愚問だな」


「・・・?」


「我らがマッスル、幾ら鍛えようとも鉄の巨人には太刀打ちできない。そして我らがマッスルはこう言っている!」



「男に興味は無い!――――」


楽しい、いや面白い人たちだ。準一は思った。


「ところで朝倉、お前我がマッスル同好会に入らないか?」

それは思わぬお誘いだった。


「いえ、結構です」

だが丁重に断る。






<><><><><><><><><><><><>





体育館横の倉庫は、対戦する2人。結衣、カノンの控室になっていた。


複数の女子生徒が入り込み、衣装設定を行っている。



「今風にお洒落にきめる?」


「いや、あえて地味に」



等と意見が飛び交い、2人の衣装は決まっていない。


そんな時倉庫に生徒会メンバー、志摩甲斐悠里が入る。


「あ、志摩甲斐先輩」

1人の生徒が反応する。


「あなた達、衣装設定をしているのよね?」


「は、はい」

1人が答える、すると志摩甲斐は結衣とカノンをじっと見て何かを閃く。


「そこのあなた!」

と志摩甲斐に大きな声で呼び止められ1人の女子生徒が「は、はい」と返事をする。


「ここにはかなり多数のジャンルの衣装があるわよね」


「は、はい」


「今すぐ用意してくれる?」


「分かりました」

答えると複数人の生徒が走り出しその衣装を持ってくる。



そして受け取った志摩甲斐は言う。


「さぁ。お着替えしましょうね?」


結衣とカノンは恐怖を感じた。


だがその志摩甲斐の威圧感を含んだ視線から、体は一歩も動かない。


そして2人は志摩甲斐の着せ替え人形と化した。





<><><><><><><><><><><><>





恐らく、碧武校の体育館に初めて入った人間はまずこう思うだろう。


「ここは今からオペラでもやるのか?」


体育館はそう思わせる程に広く、巨大な劇場の様になっている。


そんな体育館の最前列に準一は居た。


あらかた準備が整い指定された座席に座っている。


他の生徒もほとんど入っており体育館内はざわめいている。


準一の右隣には本郷、彼は手伝っていたようで少し疲れている。


「義明、プロテイン飲むか?」

疲れている本郷を見た準一はプロテインを渡す。


「ありがとう、朝倉」

本郷は頬を染め礼を言いながら受け取ると一気に飲む。


見た準一は頬を染めるな。と思いながら、そのプロテインがどういうものか本郷で実験している。


「な、なんだ・・・このプロテイン。おいしい」

本郷の感想を聞いて「なんだ。ただのプロテインか」と思う準一。



「最近はイベントが絶えないね!」


「ホント、楽しくて仕方ないね!」


「実妹VS義妹・・・・熱いね!」


菜月、シャーリー、アンナが順に準一の席の後ろの列から身を乗り出し言う。


「安心して、あたしのカメラはばっちりよ」

準一の左隣からカルメンがピースをして言う。


「なぁ、後ろの3人撮ってみたらどうだ?」

この3バカも信じられないくらいの美少女集団なので言ってみる。


「やだなー。もう撮ってるよ。ほら」

カルメンは1枚の写真を準一に渡す。


「どれどれ―――!」


準一は言葉を失った。覗き込んだ本郷も同様だ。


「へぇ、どんなの?」


「見たい見たい」


「気になる」


さっきの順番で準一の手元の写真を覗き込む。


3人も同様に言葉を失った。


「ね? 良く撮れてるでしょ?」

自信満々にカルメンは言った。


確かに良く撮れている。


更衣室で下着姿の3人がじゃれ合う姿の写真が。


それも体勢が凄い事になっていてかなり際どいアングルになっていた。


「いつ撮った!」

目に涙乗せた菜月が言及する。


「結構前」


「なんでそんな体勢撮ったの!」

とシャーリー。


「いや、エロかったから」


「もっと別の撮ってよ!」

アンナの叫び。


「いいわよ。裸が良い?」


「そういうのじゃなくて!」

3人は声を揃えた。


直後、体育館内の照明がすべて消える。


真っ暗になった体育館で生徒がざわめく。同時に謎のテーマソングが流れステージに幕が垂れる。


そして幕の後ろから照明が光り、恐ろしいシルエットを浮かび上がらせる。


マッチョな筋肉男が10人ほど、シルエットになっている。

「ま、マッスル同好会」

準一は呟く。


すると、テーマソングが止み、ナレーションが始まる。


『筋肉・・・そう筋肉』


ステージのマッチョたちがポーズを変える。


『かつての筋肉最強神話を信じる者達が居た』


ステージのマッチョ達がポーズを仁王立ちに変える。そして幕が上がり、マッチョたちの姿が露わになる。


『そう、それこそが!』


「我らマッスル同好会!」

マッスル同好会は全員口を揃えた。


準一は思った。なんの演出だよと。


他の生徒は呆れている。


そして全くどうでもいい事に準一は気付いた。


あのナレーション、綾乃じゃね? と。



『えー。今ここにお集まりの皆様。どうもマッスル同好会です』


首領、遠藤が挨拶すると男子生徒からの「帰れー」とか「ひっこめー」とか「お前らじゃねー」とブーイングが入る。


すると遠藤は『偉大なる筋肉の同志たちよ、見せしめだ。5番列の男子生徒をここに連れてこい!』と同好会メンバーに指示をする。


直後、2人のマッチョがステージから飛び降り、5番列の男子生徒を確保し、ステージに連行する。


男子生徒は怯えている。


屈強な筋肉男に囲まれれば誰でも怖いだろう。


『樹利亜! お前が刑を執行しろ!』

遠藤が言うと、いかにもなマッチョオカマが男子生徒に近づく。


マッチョオカマは「っしゃあ!」と叫ぶとステージ裏に男子生徒を連れて行く。


直後、短い悲鳴が聞こえすぐに消える。



『えー。皆さん。マッスル同好会です』


体育館の生徒は恐怖に支配された。(男子)


『本日のメインイベントですが、対決内容はどれだけお兄ちゃんの事を愛しているか、となっております』

遠藤は一度咳払いをする。


『では、2人に入場して頂きましょう!』

遠藤が言うと、マッスル同好会は裏手に去る。


そしてステージ両端から2人が入場してくる。


準一から見て左が結衣、メイド服ver。


そして右がカノン、ウェイトレス衣装ver。


2人を見た男子の熱狂っぷりは耳が痛くなりそうで、準一はため息を吐く。


そして入場した2人は椅子に座る。



『では! 第一回戦、お兄ちゃんの事がどの位好きか対決! 開始!!』






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