表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

血に酔う街Ⅳ

 ―――2222年 日本 第四地点 B地区

 日が昇っても、明るさの変わらない、平日の午後の事だった。

 銀行。中は小さいながらも別世界のようで、甘い花の香りとシックな連中に満ち溢れていた。

 そこに回転ドアをくぐる一人の男。右手には縦30センチ、横60センチ、厚み15センチ程度の黒い革製の鞄が揺れていた。

「いらっしませ。ご用件を」受付嬢は言った。

「えーとそれじゃ」

 どこぞのサラリーマン風だ。背広も下のシャツも上等。ネクタイも良いセンスだ。禿げかかった頭に銀縁眼鏡の下の顔は知性を漲らせていた。ただ、眼だけが違った。

「とりあえず金庫の金、全部」

「はい?」受付嬢は目をパチクリさせた。

 黒革の鞄を引き上げ、弾けた。鞄の中で折り畳まれた銃身が跳ね上がる。それはごちゃごちゃとした変形を繰り返し、やがてそれは本来の姿を取り戻した。一体どうやって収まっていたのか、さっきより一回り二回りも、それは大きく見えた。

 ドゥゥン!!「ウオッ」

 ドゥゥン!!「ギャッ」

 警備員は突然の先制攻撃になすすべもなく撃ち殺され、彼等は呆気にとられた。

 それもそうだ。ダイラタンシーの装甲服、ヘルメット、そしてMP7Aを身に着けた警備員が居るこんな所に押し入ろうとするのは自殺志願者だけだろう。皆がそう思っていた。だが、目には目を、防弾にはそれを貫く弾で、奴らはここにやって来た。

 広間ロビーには銃声が響き、誰かが悲鳴を上げた。彼等の目の前は防弾ガラスに仕切られている。大丈夫だ。しかし弾は防弾ガラスを打ち抜き、そのまま真向かいの壁に突き刺さる。最後の砦は脆くも崩れ去った。

「さっさと金庫を開けな」割れて開いた巨大な穴をくぐり、恫喝する。

 突如起こった出来事に唖然となった時、猛烈なエンジン音が轟く。今度は何だ!?ガラスが四散し蝶のように跳び、金属の折れ曲がる快い音が響きわたる。壁を壊し、巨大な装甲車がバックで突っ込んできたのだ。コンクリートの破片をまき散らし続けている壁と天井。

 そのぶ厚い装甲板が勢いよく開いた。

 戦闘服を着た奴。黒いブーツにサングラスをかけた奴。頭がツルツルに剃り上げた、腕から刺青が見える奴。ひと目でゴロツキとわかる男たちがぞろぞろと出てくる。

「何だ、もう片付けちまったのか!?予定と違うぜ」

「コイツらがかったるいんでな、こんなモンまだ着やがって。弾はもうチト、ケチるば良かった」

「よく言うぜ。まったくよ」

「気に入ったか?携行対戦車砲タンク・バスターは」

「最高。でも、徹甲榴弾が撃てなかったのが少し残念だな」

「仕方ないですよ。そうしないと警報機に感知されますから」

「だよな」

「なーソレあとでオレに貸してくれない?」

「構わん。コイツは俺の趣味じゃない」ポイと投げ渡した。

「ウヒョー!すげーーや!」両腕に抱え、新しい玩具を買って貰った子供のようにはしゃぐ。

「こいつがあれば、だって軍隊だって目じゃないぜ」

「流石に機甲兵装相手は無茶じゃないか?」

「いや、いくら強化装甲でも中身は人間なんだ。アレ食らったら、貫通しなくても骨は折れるし、内臓だって破裂する。結局お陀仏だぜ」

「今のうちに逃げよう」柱の陰から一人が呟いた。

「動くなぁぁぁ!!!」

 あの銃口が店内をゆっくりと店内を舐め回していく。


 ―――PM4:44―――事件発生

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ