表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『円安都市の僕』

作者: かめ
掲載日:2025/08/23

円は価値を失い、経済は数字に支配される。

人間が経済の中で自由を保てるのか――それを見つめる僕の記録である。

これは、まだ誰も抗えない世界の小さな抵抗の物語。

僕の名前は藤原レン(27)。

普通の会社員だったはずが、気づけば日本の経済が僕の生活を支配するようになっていた。


ある日、いつものコンビニで買い物をしていたときのことだ。

「え、これ…こんなに高かったっけ?」

500円だった弁当が、なぜか650円になっていた。

店員も申し訳なさそうに、ただ「値上げです」とだけ告げた。


家に帰り、スマホを開く。

ニュース速報が飛び込んでくる。


【政府発表】円相場、一時140円突破。物価上昇率5%超。


僕は息をのんだ。140円!?

3年前までは120円だったはずだ。

しかも、この円安の影響で電気・ガス・食料品が軒並み値上がり。給料は上がらないまま、生活費だけが膨れ上がっていく。


会社に出社すると、同僚たちは疲れ切った顔でスマホを眺めている。

「また円安が進むらしいな」

「次は150円突破って噂もあるらしいぞ」


僕はふと考えた。

もし、このまま円安が進み続けたら、僕たちはどうなるのか──。


その夜、寝付けずに経済ニュースを調べていたら、ある記事に目が止まった。


【未来予測】2030年、日本は「デジタル円」を導入。現金流通量は半減し、経済はAI管理下に。


僕は心の中で呟いた。

「デジタル円…AIに監視された経済?」


翌朝、会社に行くとニュースキャスターの声が流れていた。


「政府は来月よりデジタル円の実証実験を開始します」


同僚たちは笑った。

「またいつもの噂だろ」

だが、僕には分かった。これはもう噂ではない。現実になる。

しかも、僕たちが気づかないうちに、経済の自由は少しずつ奪われていくのだ。


昼休み、僕は同僚のカフェ代を払おうとした。

スマホでデジタルウォレットを開くと、残高が妙に少ない。

取引履歴を確認すると、知らない支出が記録されていた。


「え…これ…」


デジタル円の仕組みを理解する前に、僕たちはもう管理されていた。

政府も企業も、誰も文句を言わない。AIがすべて計算し、決定しているのだ。


僕は心の中で決意した。

「この経済の流れに抗わないと、僕たちはただの数字になってしまう」


しかし、どう抗うのか──。

給料も、支出も、すべてAIが計算する世界で、僕の手には何も残されていなかった。


夜、自宅の窓から東京の街を眺める。

ネオンは煌めき、車は走り、経済は動き続ける。

でも、その動きはもう僕たち人間の意思ではない。


僕は静かに呟いた。

「誰もが数字になっていく…それでも、僕はまだ、人間でありたい」


その夜、僕は一つの決意を胸に抱いた。

来月のデジタル円実証開始。

僕はこの世界で、自分の自由を取り戻すための小さな抵抗を始める――。

デジタル円の影響下で僕たちは管理される存在になる。

でも、自由を諦める必要はない。

一人の抵抗は微力かもしれないが、それを積み重ねることで、数字ではない人間らしい未来が生まれる――僕はそう信じている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ