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人類を見守っている精霊っぽい何か(自称)  作者: たまごかけキャンディー


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第7話


「うう、なんでぇ……。どうしてぇ……!」


 ルドガン辺境伯が治めるという、この辺りでは比較的大きいらしいニンゲンの街へと無事に辿り着いた私は、門兵に奪われ空っぽになったスライム軍団の魔石達を惜しみ涙を流す。


 さきほどまで石壺には大量のスライム魔石が詰まっていたというのに、いまはもう見る影もない。

 全部、全部やつらに奪われたんだ!!


「お、おいお嬢さん……。それは絵面が悪いからやめてくれないか? まるで俺達がお嬢さんをイジメているみたいじゃないか……」

「そうだぜ。これは街に入るための税金として正当な金額なんだ。俺達は誓って嘘なんか言っちゃいない」

「でもぉ……、でもぉ!!」


 分かっている、分かってはいるんだ。

 そもそもその辺の子供でも倒せそうな軟弱魔物の魔石をいくら集めたって、二束三文にしかならないことくらい。

 それにどうやらスライムの魔石は十個で鉄貨一枚となり、百個で銅貨一枚、千個で銀貨一枚になるそうなのだ。


 この近辺では比較的大きく安全なルドガン街への入場料は、ニンゲン達の常識ではかなり良心的な銀貨一枚。

 私の集めたスライム魔石が八百個よりちょっと多いくらいだったから、これでもサービスしてもらっている方だったりする。


 でも、だからって。

 散っていった八百匹のスライム達がこんなにあっさりと……。


「ほら、涙を拭けって。お嬢さんの可愛い顔が台無しだぞ?」

「うん……。これからは前を向いて生きることにする……。もう、スライム狩りはやめた……」

「そ、そうか? それならまあ、街で仕事でも見つけるといい。今は天変地異の調査とかで他所からの来訪者が多いからな。ある意味では逆に好景気で、仕事が溢れているぞ」


 などなど、傷心気味の精霊さんは門兵さんに慰められ、ちょっと拗ねつつ頬を膨らませながら街の門を潜っていったのであった。


 もう、こんなことなら幽体になってからサクっと街に侵入しちゃえば良かったよ。

 あ、でも、そうなると私が街に入ったという記録が残らないから、ニンゲン交流には支障が出る場合もあるね。


 なら、これで良かったのかな?

 きっとそうだよ。

 いつまでもくよくよせず、前向きに考えようと思う。


 そうして街へと入った私は、門兵さんの言う通り他所からの来訪者が多くなって活気がでているという言葉の通り、そこら中でニンゲン達の渋滞が起きている大通りの街の散策に苦労していた。

 そこで一度裏路地へと入り込み、幽体になってから再び上空から街の眺めを観察。


 街の中心には周囲より明らかに大きな建物が何個かあり、この建物はおそらく公共施設とか、もしくは大きな組織の所有物件なのかなと推測できるくらいに人の出入りが多かった。


 幽体の状態で近づいて盗み聞きしていると、商業ギルドとか冒険者ギルドとか、他にも鍛冶ギルドだのとそういう、なんちゃらギルドと呼ばれる施設群だったらしい。


「ふーむ。ギルド、ギルドねー。なにやら前世の知識が僅かに主張しているけど、まあ、ようするに公共施設の亜種みたいなものじゃない?」


 運営の責任者が誰かによるけど、みんなが寄り集まり大きな組織として人々にも利用可能なら、それはもう公共施設の一つだ。

 たしかこの街の責任者はルドガン辺境伯なる貴族のニンゲンだったはずだから、その人も一枚噛んでいるのだろう。


 だって街の責任者の許可なく、勝手に武装したギルドなる団体を放置するはずがないからね。

 ギルドなる組織や団体を許容するならば、税金を納めてもらった上で、ギルドのトップにある程度は命令できる権力を握っていなきゃ話にならない。


 そう考えると、噂によると辺境の大貴族だとかいうルドガン辺境伯みたいな人物が治める、大きな街以外にはギルドっていうのは存在しないのかもしれない。

 だって小さな村とかにこんな組織があったら、逆に村の責任者の立場を奪われてしまうだろうから。


「そうかそうかー。なら、次はルドガン辺境伯とかいう人のところに向かってみようかな。この街で一番偉い人みたいだし」


 幽体となった私は誰に察知されることもなく、あっちへいったりこっちへいったりと、ふよふよと上空を漂いながら街で一番大きなお屋敷を目指す。

 ドラちゃんには一発で看破されちゃったけど、どうやら普通のニンゲン達にはこの幽体状態の私を認識することはできないようだ。


 まあ、実体がないからね。

 それは当然の話である。

 むしろ、これに関してはドラちゃんがおかしいんだよ。


 本人、もとい本竜曰く。

 目には見えないのに明らかにおかしい異常エネルギーの力場が発生していたから、魔力を目に込めて上空を振り返ったとのこと。


 そうしたら半透明の幽霊が見えたとかなんとか、そんなことを言っていた。

 竜はそういう力場やエネルギーの高まりに敏感なんだってさ。


 ニンゲンにもこういう気配に敏感な個体は稀に存在するから、過信はダメだよとも教えてもらった。


 そして気配の話ついでのように語られたのが、竜は武力面で自然や世界のバランスを司り、精霊は資源面で自然や世界のバランスを司るということ。

 世界のバランスを維持するためにエネルギーや力場に敏感な竜や精霊は、確実に幽体の私に気づき見抜いてくるんだってさ。


 そうやって世界は守られているらしいのだけど、詳しいことは教えてもらえなかった。

 なんでも、一気に話すと次に私と会った時のネタがなくなってつまらないからだとか。


 気になったら自分で調べるか、またドラちゃんに会えることを楽しみにしていて欲しいって言われちゃったら、嫌な気持ちになんてならないよね。

 精霊さんはマブダチから気遣ってもらえて、とても嬉しいです。


 そうして、ふよふよ~っとルドガン辺境伯のものと思われる大きな屋敷に近づくと、そこには見知ったニンゲン達が集まり出立の準備をしていた。

 あれは確か、私が勇者に認定したリーダーの皆さん達だ。


 ノリと勢いで託したアイスソードはちゃんとした白い鞘に収まり、渡した時の抜き身の剣だった頃よりも気品が増している。


「ほへぇ~。さすが物作りで一大文明を築き上げた前世の覇権種族だ。アイスソードがよりカッコよく見えるね!」


 他にもリーダーを信頼して男の友情を見せてくれたあの時の斥候さんとか、弓使いの女性、二枚も巨大な盾を担いでいる大男さんとかが馬車に乗り込んでいる。

 馭者はこの屋敷から選抜された兵隊さんがやるようで、何やら物々しい雰囲気だ。


 いったいどうしたのだろう?

 こっそり後ろから近づいた私は、聞き耳を立てながら彼らの会話を盗み聞く。


「それじゃあ世話になったぜ辺境伯」

「ああ、お前達も気をつけろよ。王都からの使者と行き違いにならないよう、わざと出立の準備に時間をかけたが、だからこそ逆に揚げ足をとってくるやつらもいる」

「分かってるって! 中央のやつらのやりそうなことだ。どうせ異変調査に時間をかけすぎだーとか、陛下を待たせるなどなにごとだーとか、そんなことだろ?」

「分かっているならいい。どうせ文句を言うのは、ことの重大さが分かっていない有象無象の貴族だからな」


 ふむふむ。

 どうやらリーダーさんたちは念入りに準備をしつつ、中央とやらに何かをしに行くらしい。

 陛下とか言っているから、きっと王様のいる王都とかに行くんだろう。


 いいなー、私も行きたいなー。

 都会には危ないことも多いけど、楽しいこともいっぱいあるんだ。

 あるようでない、前世の知識がそう主張しているよ!


 本来ならここで駄々をこねて終わりだっただろうけど、しかし今の私は自由な精霊さんだ。

 せっかくスライム軍団を犠牲にして安全に入り込んだ街だけど、気分次第でリーダーさんについていくことだってある。


 それに一度はこの街へ訪れたという痕跡を残せたのだから、またいずれ戻ってきた時にその立場と身分は保証される。

 つまり、アリバイができているということだから、けっして無駄ではないのだ。


 なら、ついて行っちゃおうか?

 そうだね。

 そうしよう!


「なあ、リーダー」

「どうしたジーク?」

「さっきから、妙に背中がチリチリするんだが、誰かに監視されてないか?」

「……おそらく、中央からの監視だな。俺にすら気配を悟らせない手腕を見るに、王族の影か、大貴族の隠密あたりだろう。まあ、気にするな。やつらが真っ向から仕掛けてくることはないから、堂々としておけ」


 おっと!

 さっそくドラちゃんに言われていた、少しカンの良いタイプのニンゲンさんが居たようだね!


 斥候のジークと呼ばれた彼は、確信は持てないものの私の力場を少しだけ感知できるらしい。

 リーダーに気にするなといわれても、やっぱり気になるのかチラチラとこちらへ目線を向けているよ。

 まあ、実体がないから視線が合うことはないんだけどね。


 ただ、何かがそこにあるということだけは理解できるらしい。


「うーん。なんか、ちょっと違うような気もするが。まあいいか。リーダーがそう言うなら、実害はねぇんだろうよ」


 ぬぐい切れない違和感を持ちつつも、彼らは馬車に乗り込み移動を始める。

 そしてその馬車の上に寝そべり、そのままついていく精霊さん。


 こうして私達の王都へ向けた旅路は幕を開けたのであった。


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