3 展示会デート前編
いよいよ土曜日! 今日は本山さんとカピバラのスーさん展に行く日だ。朝からそわそわして、いつもより早く目が覚めた。タケルには「気合い入れすぎだろ」ってからかわれたけど、こんなの当たり前だろ!
約束の10時より少し早めに駅前に着いた。まだかなってキョロキョロしてると、遠くから見慣れた顔が近づいてくるのが見えた。
山本さんだ!
俺の心臓がドクンと跳ねる。今日の山本さんは、葉柄の白いスカートに、涼しげな白ブラウス。耳元にはキラッと光るイヤリングをしていて、髪は高めのポニーテールに結んでいた。
いつもより大人っぽくて、でも可愛らしさもあって、その姿に思わず見惚れてしまった。
「山本さん!」
思わず口から名前が漏れた。山本さんは俺の声に気づいて、パッと笑顔になった。その笑顔が、今日の朝日に照らされて、一段と輝いて見えた。
「お待たせ! 遅くなっちゃったかな!」
山本さんが小走りで俺の元へ駆け寄ってきて、申し訳なさそうに言った。
「全然! 俺も今来たとこだよ! むしろ、早く来すぎたかも」
俺は慌ててそう答えた。本当はかなり前から来てたけど、そんなこと言えるわけない。山本さんと話せるだけで、もう心臓が飛び出しそうだ。
「よかったー! じゃあ、行こっか!」
山本さんがニコッと笑って、俺の横を通り過ぎようとした。ポニーテールが揺れて、シャンプーのいい匂いがフワッと香る。
「おう!」
俺も一歩を踏み出した。今日は最高の一日になりそうだ。
駅に着いて、電車に乗り展示会の最寄りに着いた。そしてついにカピバラのスーさん展の会場に到着した。入口には大きなスーさんの看板があって、もうそれだけでテンションが上がる。
「わー! すごい人だね! 楽しみ!」
山本さんが目をキラキラさせて、会場を見回している。その笑顔を見て、俺も胸がいっぱいになった。
中に入ると、スヌーピーの歴史や、作者さんの紹介コーナーがあったり、歴代の原画が展示されていたりした。一枚一枚、時間をかけてじっくり見て回る。
「あ! このスーさんの顔、めちゃくちゃ可愛い!」
山本さんが、ある原画の前で足を止めて指をさした。俺も隣に並んで、一緒にその絵を眺める。
「本当だ! なんか、いつもよりちょっと丸い感じがするな!」
「ね! 私、この時代のスヌーピーの絵、好きなんだ!」
山本さんが楽しそうに話してくれるのが、すごく嬉しい。俺も知ってるスーさんの話してみたりして、二人で盛り上がった。
展示の途中には、フォトスポットもいくつかあった。大きなスーさんのぬいぐるみと一緒に写真を撮ったり、キャラクターになりきってポーズを取ったりして、二人でたくさん笑った。
「見て、これ! スーさんがムクさんに優しくしてる絵、可愛いー!」
山本さんが感動したように呟いた。その絵を見てる山本さんの横顔が、なんだかすごく綺麗に見えた。
俺は、そんな山本さんの隣を歩きながら、心の底から思った。
(来てよかったな)
展示物を一つ一つ丁寧に見て回って、あっという間に時間が過ぎていく。こんなに楽しくて、幸せな時間が、ずっと続けばいいのに。