18 置き物
俺は急いでラッピングを解いた。中から現れたのは、想像していた以上に素敵なものだった。
それは、スーさんの置物だった。
鳥のムクさんがスーさん頭の上に乗っていて、スーさんが少し首を傾げているデザイン。シンプルな色合いなのに、二人の温かい関係が伝わってくるような、おしゃれかつ可愛らしい置物だ。
「わぁっ!」
思わず感嘆の声が漏れた。こんなにセンスのいいプレゼントを選んでくれるなんて。
「どう? 気に入ったかな?」
りんが、少し不安そうに、でも期待に満ちた目で俺を見ている。
「気に入ったなんてもんじゃないよ、めちゃくちゃ嬉しい! すごく俺好みだし、可愛い、 ありがとう、りん! 本当にありがとう」
俺は満面の笑みでそう伝えた。斎藤への誤解も、俺の不安も、この置物一つで全部吹き飛んだ気がした。りんが俺のために、こんなにも素敵なものを選んでくれたんだ。その気持ちが、何よりも嬉しかった。
俺がりんからの誕生日プレゼントに感動していると、授業の開始を告げるチャイムが鳴り響いた。
「あ、チャイムだ。もう行かなきゃ」
りんが少し残念そうに言った。俺も、もう少しこの感動を味わっていたかったが、仕方ない。
「うん。本当にありがとう、りん。最高の誕生日プレゼントだよ。」
俺は、もう一度心からの感謝を伝えた。スーさんの置物を大事に抱きしめながら、りんに微笑みかけた。
りんも、「どういたしまして!」と満面の笑顔で応えてくれる。その笑顔が、俺にとって何よりのプレゼントだった。
俺たちはそれぞれの席に戻った。授業中も、俺はスーさんの置物のことや、りんの優しさで頭がいっぱいだった。
これまでの斎藤に対するモヤモヤや、りんへの不安は、もうどこかへ吹き飛んでいた。りんは、俺のためにこんなに素敵なサプライズを用意してくれていたんだ。俺はなんてバカだったんだ。
授業が終わり、俺は興奮冷めやらぬまま、しゅんとタケルを探した。二人はまだ教室にいたが、俺の顔を見るなり、「どうした?」と顔を上げた。
「お前ら、聞いて欲しい」
俺は声を弾ませて、今日の出来事をすべて話した。りんに誕生日を覚えていてもらったこと、斎藤がりんのプレゼント探しを手伝ってくれていたこと、そして、スーさんの置物をもらったこと。話している間も、俺の顔はきっとニヤけっぱなしだっただろう。
「はぁあああ!? マジかよ、りょう!!」
「え、斎藤ってそういうことだったのか!?」
二人は、俺の話を聞いて、驚きと感嘆の声を上げた。特に、斎藤の件については、顔色を変えている。
「そうなんだよ! 俺、斎藤のこと、めっちゃ勘違いしてたんだ。りんに変なこと言っちゃったし、本当に最悪だよな」
俺は恥ずかしさと申し訳なさで、顔が赤くなるのを感じた。
「いや、りょう! お前は悪くねぇよ! 俺たちが勝手に焦って、斎藤のこと誤解してたんだ。でもまだ少し引っかかることがある。」
タケルが冷静に言った。
「だよな。斎藤、意外といい奴だったってことか? でも、あの言い方は何かありそうだよな」
しゅんが苦笑いした。
「でも、りょう、良かったな! りんさんがお前のためにそこまでしてくれたんだ! これはもう、完全に脈あり確定だろ!」
タケルが俺の背中をバシバシ叩いた。俺は、その言葉に顔をさらに赤くしながらも、嬉しくてたまらなかった。




