12 深まる疑問
斎藤の最後の言葉が、俺の頭の中でこだました。
(スーさんが好き? あいつ、なんでそんなこと知ってるんだ?)
俺と山本さんがスヌーピー好きだということは、確かに最近、しゅんとタケルに話したばかりだ。
だが、斎藤はそれをどうやって知ったんだ? もしかして、俺と山本さんの会話を盗み聞きしていたのか? あるいは、山本さんから直接聞いたのか?
その言葉は、俺の気持ちを試すような、あるいは、俺たちの関係を嘲笑うような、そんな意図が込められているように感じられた。斎藤は、俺が山本さんのことを好きだと知った上で、なおも何かを企んでいるのかもしれない。
俺は、斎藤が消えた体育館の出口を見つめた。 嫌な予感が拭えない。
俺はすぐにしゅんとタケルを探した。二人はまだ体育館の隅で、俺を心配そうに待っていてくれた。
「お前ら」
俺は斎藤とのやり取りをすべて話した。特に、最後の「スーさんが好き」という言葉について、二人にどういう意味だと思うか尋ねた。
「斎藤のやつ、マジで気に食わねぇな!」
しゅんが眉をひそめた。タケルも腕を組み、考え込んでいる。
「なんであいつが山本さんのスーさん好きを知ってるんだ?」
タケルが腕を組みながら言った。
「考えられるのは二つだな。一つは、教室でりょうと山本さんがスーさんの話をしてたのを、斎藤が聞いてたってこと。もう一つは、山本さんが斎藤に話したってことだ」
しゅんが冷静に分析した。俺は、後者の可能性に、心臓がギュッと締め付けられるような痛みを感じた。山本さんが、斎藤に俺とのスーさんの話をした?
「まさか、山本さんが斎藤に俺とのデートの話を?」
俺は震える声で尋ねた。
「いや、それは考えにくい。山本さんはそんな軽々しく話すタイプじゃないだろ。それに、もし山本さんから聞いたとしたら、斎藤はもっと別の言い方をするはずだ。」
タケルが首を振った。
「だよな。俺もそう思う。それより、あの斎藤の言い方、まるで、山本さんとお前がスーさん展に行ったことを、もう知ってるかのような口ぶりだった気がするんだよな。」
しゅんが、斎藤の言葉を思い出すように言った。
その言葉に、俺はハッとした。確かに、斎藤の言葉は、ただ単に「山本さんがスーさん好き」という事実を知っているというよりも、俺とりんがスーさん展に行ったことを知った上での、嫌味のように聞こえた。
「じゃあ俺たちがスーさん展に行くことを、あいつはどこかで知ったってことか?」
俺の背筋に、ゾッと嫌な汗が流れた。




