11 2人の関係は?
放課後、俺は斎藤がよくいる場所、バレー部の練習が始まる前の体育館裏で彼を待ち伏せた。しばらくすると、斎藤が一人で現れた。
「斎藤!」
俺が声をかけると、斎藤は少し驚いた顔で俺の方を見た。いつもチャラチャラしているその表情が、一瞬だけ固まったように見えた。
「なんだよ、佐藤? 俺に何か用か?」
斎藤は、すぐにいつもの軽薄な笑みを浮かべた。
「お前、山本さんのことどう思ってるんだよ?」
俺は単刀直入に尋ねた。心臓がドキドキしているが、ここで怯むわけにはいかない。斎藤に直接聞くしかない。
斎藤は、俺の言葉に一瞬眉をひそめたが、すぐにまたニヤリと笑った。
「ああ、山本さん? 可愛いじゃん。別に、友達として仲良くしてるだけだけど? お前には関係なくね?」
その言葉に、俺の怒りが頂点に達した。友達だと? 楓にフラれた腹いせに、山本さんを狙ってるくせに。
「とぼけんな。お前、楓さんにフラれたからって、次は山本さんを遊び半分で狙ってんだろ。山本さんは、そんなお前の遊びに付き合う人じゃない」
俺は声を荒げて言った。斎藤の顔から、笑みが消え、鋭い眼光が俺を睨みつけた。
「は? 何言ってんだ、お前。楓のことなんて関係ねーだろ。俺が誰と仲良くしようが、俺の勝手だろ。お前こそ、山本さんのこと、なんなんだよ?」
斎藤の挑発的な言葉に、俺は一歩踏み出した。
「俺は山本さんのことが好きだ。だから、お前みたいな奴に、山本さんを渡したくないんだよ」
俺は、斎藤の目を真っ直ぐ見て、自分の気持ちを伝えた。その瞬間、斎藤の顔にわずかな動揺が走ったのが見えた。
俺が斎藤に自分の気持ちをぶつけると、斎藤は俺の目をしばらくの間、鋭く見つめていた。一瞬、何か言い返してくるかと思ったが、意外にも斎藤はふっと力を抜いた。
「へー、そうなんだ。そっか、そっか」
斎藤は、まるで興味なさそうにそう呟いた。俺の真剣な告白を、まるで他人事のように聞き流すような態度に、俺はさらに怒りが込み上げてくる。
「ま、頑張れよー。」
そう言って、斎藤はひらひらと手を振ると、俺に背を向けて体育館の出口へと歩き出した。まるで、俺の存在など取るに足らない、と言わんばかりの態度だ。
俺は悔しさに拳を握りしめた。しかし、斎藤は体育館の出口に差し掛かったところで、足を止め、振り返った。
「そういえば、山本さんカピバラのスーさん好きなんだね」
斎藤は、最後にそれだけ言い残すと、ニヤリと意味深な笑みを浮かべ、そのまま体育館の出口から消えていった。




