表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/35

第七話  変化

第七話    変化



「おはよう、護♪」

オリガミは朝のコーヒーを淹れてから護を起こしている。



「いつもありがとう♪」

護は笑顔で目を覚まし、顔を洗ってコーヒーを飲む。


いつもの変わらない毎日である。



オリガミが護と暮らして二週間、ごく普通の仲良しカップルに見えるが少し変わったカップルである。



彼女、オリガミは特殊とくしゅな女の子である。

植物から生まれ、陰陽師のような能力を持った女の子。


そして、極度の人見知りである。



護が会社に行き、しばらくしてのこと……


『ピンポーン』 と、インターホンが鳴った。



「はーい」 オリガミは玄関に向かうと新聞の勧誘かんゆうが来ていた。



オリガミが玄関を開け、しばらくすると……


一生懸命、勧誘する営業マンの言葉に圧倒され、オリガミが困った顔で立っている。



「……ですので三か月でもとって頂けませんか?」

新聞の営業マンは、オリガミを説得していた。



「……でしゅ……」 


オリガミは言葉を出したが、営業マンは聞きとれなかった。



「すみません……聞き取れなくて……」 営業マンは聞き直す。



しかし、オリガミは同じトーンで話しているため営業マンは聞こえなかった。



「じゃ、いいです……」 結局、営業マンは聞き取れず諦めてしまった。



「はぁ……」 オリガミは、ため息をついた。



人見知りを克服こくふくしたいと思っているが、全くできないことに嫌気いやけがさしていた。



「どうしたらいいのか……人見知りだから人がいっぱいの所で種も売れないし……」



オリガミは人見知りの為、人気の無い所で種を売っていて売上が出ない……


それで売上や人見知りを悩んでいるのだ。



「さて、今日もバイトに行かなきゃ……」


オリガミは支度をして神社に向かった。





「えっ? 神社の留守番?」 オリガミは、宮下にバイトを頼まれた。



「今日と明日は出掛けないといけなくなった。 そこで日中は神社の留守番をしてくれぬか?」 宮下がスーツのネクタイをめながら言うと、



「はぁ……わかりました」


「では、行ってくる」  


「いってらっしゃい」 オリガミは本日、二度目の見送りをした。



「種、売れないか……何をしようか……?」

オリガミは種売りが出来なくて、時間の使い道に困っていた。



オリガミは巫女の服に着替えていた。


そして、神社の敷地を歩いて何をしようか考えていた。



「あれ? これって……?」

オリガミは、敷地の隅に咲いている植物に目を向けると



「殻が開いている……」



オリガミは同じ植物の殻が開いているのを見て、不安を感じていた。



(きっと近くにいるはず……)


オリガミは神社の敷地内をウロウロと探していた。



境内の裏手を歩いていると、草むらから『ガサッ―』と音がした。


 「――?」


オリガミが草の音に反応して目を向ける。



そして草をかき分けてみると裸の女性がしゃがみこんでいた。



(―いた……) オリガミは裸の女性と目が合ったが、 


「いや……あの……」 裸の女性は何か言いたげであった。



二人とも言葉が出ず、オリガミは、足早あしばやにその場から去っていった。



そして数分後、オリガミは自身の衣服を持って、裸の女性がいた場所に戻ってきた。



「これ……」 オリガミが裸の女性に自身の服を差し出す。


「ありがとうございます……」 裸の女性は慌ててオリガミの服を着る。



「あの……下着がなくて ごめんなさい……」 オリガミは服を貸したのだが、下着がないことを謝った。



「いいえ、すみません……」 裸の女性はペコペコと頭を下げた。


 なぜか初対面なのに、落ち着いて会話をしている二人であった。



お互いに顔を見合わせると、女性の容姿ようしがオリガミとそっくりであった。



グレーの髪のオリガミに対し、裸の女性の髪色は濃紺…… 


 それ以外は全てが同じであった。



似ているのは、それだけではなかった……



二人の距離はジリジリと離れ、かなりの距離がいた。



「……」

そして、下を向いて二人ともが無言になっている。



そこから二人が見合うも、言葉もないまま警戒けいかいし合っていく。



その時、「すみませーん……」 と、境内横の社務所から声が聞こえ

「――っ」 二人はビクッとした。



「誰か来たよ。 行ってきな!」 オリガミは裸だった女性に声を掛けると、


「え~っ? 留守番を頼まれてたの、貴女でしょ?」


裸だった女性は、さすがに理不尽りふじんなことには抵抗ていこうしていた。




「そうか……なんか嫌だな……」 と言葉を残し、社務所に向かった。



来客の用事を済ませ、オリガミは先程の場所に戻ってきた。


「そういえば、貴女の名前は?」 オリガミは裸だった女性に聞いた。



「私は、九条 テマリ……」 彼女の名前は同じ九条であった。



「私は、九条 オリガミ……よろしくね♪」


オリガミも名乗り、お互いにホッとしていた。



そしてオリガミとテマリは神社の敷地を歩いていた。



「なんか下着が無いとスースーするわね……」


テマリはオリガミのスカートをしきりに気にしていた。



(さっきまで素っ裸だったのに……?)


オリガミは心の中でツッコミをいれていた。



「ところで、神社で何をしていたの?」


オリガミはテマリが何故に神社に居たのかが気になっていた。



「ん~ よく分からないの……」 テマリは下を向いて答える。

 


「しかし、よく出来たものね~。 ここまで似てるとは……」

オリガミはテマリの顔を覗き込む。



「似ているの?」 テマリは自分の顔が分かっていなかった。


「来て!」 

オリガミはテマリの手を引き、社務所に向かった。



そしてテマリに鏡を見せ、オリガミと並んで映した。



「あら? そっくり?」 本当の姉妹のような顔に、二人はどこか親近感しんきんかんを覚えている。



「テマリ、住む所はあるの?」 


「ない…… さっきからから出たばかりだから……」 テマリは簡単に答える。



「今日、ウチ来る? って言っても私の家じゃないけど……」


オリガミはテマリを家に誘った。



「いいの? 行く!」 テマリは簡単に返答してきた。


「……貴女、簡単に答えるのね? 心配とかない訳?」 


オリガミは慎重しんちょうな分、テマリの簡単に即決そっけつできる姿勢に戸惑っている。



夕方になり、オリガミとテマリは護のアパートまでやってきた。



「ここなの? オリガミが住んでいる所って……」


テマリは室内をキョロキョロしている。



「そうよ。 もうすぐ家主あるじが帰ってくるわ!」


オリガミは部屋の掃除を始める。



「そうだ、テマリはシャワーにでも入ったら?」


オリガミは着替えを出してきた。



「いいの? あっ、下着までありがとう♪」


テマリはオリガミの言葉に甘えてシャワーを浴びにいった。


 


「良い水でした♡」 テマリがオリガミに感謝を言う。



「やっぱり、テマリも水で良かったのね♪」


オリガミは何故かホッとしていた。



「ただいま~」 そして、護が帰宅してくると



「おかえりなさい♪」


オリガミが玄関まで迎えに行くと、護が驚いて口をパクパクさせている。



「どうかしたの?」 オリガミが不思議そうな顔をしていると、後ろにテマリもついてきていたのだ。



それを見て護は驚いていた。



「……そういう訳で、テマリを連れて帰ってきてしまいました……」


オリガミは、順序よくテマリのことを説明すると



「わかったけど……しかし、似てるを通り越して同じだもんな……」


護は不思議な感覚になっていた。



「それとさ……同じ九条で、同じ顔なのに知り合いじゃないのに驚きなんだよね……」



「そ、そうよね……これには私も混乱しています……」

オリガミも同じだったようだ。



「まぁ 落ち着くまで、テマリさんも休んでいきなね」

護は、テマリが泊まることを承諾した。




そして朝方、護はベッドでモゾモゾしていた。


(なんか狭い……オリガミさん、珍しく寝相が悪かったのかな?)


護は寝苦しさで、目をうっすら開ける。 



「―どわーっ! なんでーっ?」 護が絶叫ぜっきょうしていた。



護の寝苦しさの原因は、オリガミとテマリが護のベッドに入って寝ていたせいであった。

 

それも、二人共が裸だった……


 

その後、護は不機嫌な顔でトーストを食べている。


「……」 三人は無言である。



「ご、ごめんね……」 ようやくテマリが口を開く。



「私、下着とか慣れてなくてさ……」


テマリが弁解しているが、 “そこが問題ではない…… ” と、護とオリガミは思っていた。



「知らない人が見たら『何処どこかの、偉い人のパーティー』かと、思われるわっ!」 


護のツッコミは当然である。



「護、何かの雑誌の裏表紙に載っているネックレスとか買ったの?」


 オリガミが水を飲みながら訊いていると、


「買ってねーわっ!」 と、護の声が響く。 そんな朝であった。



護が出勤して、オリガミも家事をしてから仕事の支度をしている。



テマリはオリガミを眺め、


「しかし、オリガミって凄いね~。 しっかり主婦じゃん♪」


テマリがうらやましそうに話すと、



「本当になれたら嬉しいけど、私たちって……だから」


オリガミの言葉にテマリは何も言えなかった。



そうして掃除や洗濯を済ませ、オリガミとテマリは神社に向かった。



仲良く道を歩く二人の姿は、美人姉妹にも見えていた。



「着いた! さぁ、テマリも着替えよう♪」


「着替える? 何に?」


 オリガミの言葉に、テマリはキョトンとしていた。



「これ! 同じ服にしようよ♪」 オリガミは、巫女の衣装をテマリに手渡す。



テマリは巫女の衣装に着替え、二人で神社の清掃から始めた。



オリガミは敷地をホウキで()いていると、鼻歌を歌っていた。



「……」 テマリは、オリガミが楽しそうにしている姿を横目で追っている。



そして、掃除を終えた二人は種売りの準備を始めた。



「ここで何をしてるの?」


『ヒョコ……』 っとテマリは、オリガミの肩口から顔を出す。



「これは私の本職。 ここで種を売っているの♪」


オリガミはテーブルに折り畳み椅子を出し、開店準備をしていた。



「どれどれ?」 テマリは、オリガミが用意した種を見ていると、



「せっかくだから神社にも花を咲かせようよ♪」

テマリは敷地に花壇かだんを作ろうと提案した。



オリガミは提案に乗っかり、花壇を作り始める。


スコップを使い、土を柔らかくして拾った石で囲いを作った。



「ぜぇ ぜぇ……」 そして、オリガミとテマリは疲れてきていた。



「ねぇ こんなに広くしなくても……」 テマリの言った通り、結構な区間の花壇を作ってしまった。



「まぁ 全部じゃなくてもね……さて、種を撒きましょう♪」


オリガミはそう言って、袋から種を取りだす。



そこに宮下が神社に帰ってきた。


「ただいま戻った。 特に変わった様子は……」 宮下は目をパチクリさせた。



「……儂は疲れているのかの? オリガミが二人に見えるわい……歳は取りたくないのぅ……」 などと言い、宮下は眼がしらを押している。




しばらく時間が経ち、オリガミは宮下にテマリの事を話した。



「そうなのか……? しかし……」


宮下がチラッとオリガミの方を見ると、同じ顔の二人がニコニコしながら宮下を見ていた。



「テマリと言ったな? おぬし、泊まる所はあるのか?」


宮下はテマリに訊いたが、テマリは首を横に振った。



「ならば、ここに居るといい。 オリガミは彼氏がいるのじゃからな……」


宮下はテマリに部屋を与えた。



テマリの笑顔にオリガミも笑顔になった。


そうしてオリガミの生活に笑顔が増え、心にも変化が見えてきたのだ。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ