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第五十七話 制裁

 第五十七話   制裁



 天狗が神様の見習いとしてやってきて、一週間が経った。


 「なかなか上手になったね~」 オッキーが誉めていると

 「ありがとうございます。 姫も認めてくれますかね?」

 天狗が頬を赤らめるが、最初から顔が赤い為に分かりづらい。



 「おはよう♪」 アメノウズメが起きてきた。

 しかし、オッキーは不満そうな顔をしている。


 「何よ?」 アメノウズメがオッキーを見る。

 「アメ子……自分だけ布団で寝れてさ……」


 オッキーは不満そうだった。


 「いや~ ほら、人間の世界に慣れるようにしないとだし……」

 笑って誤魔化す、アメノウズメである。


 「そういえば、消されたツクヨミとかはどうなったの?」

 アメノウズメは、同じ時期に現世にやってきたツクヨミが心配になる。



 「あの方を怒らせたからな……」

 そう言いながら社に入ってきたのが九尾である。


 「九尾……久しぶりね」 アメノウズメとオッキーはニコニコしている。

 「色々とあってな……ところで、こちらは?」


 「私は天狗です。 神様の仲間に入りたくて修行をしています……」

 天狗が頭を下げると、九尾も頭を下げる。


 「私は九尾だけど、現世では『栗林 朋子』って名前で生きているの」

 そう言って、栗林が自己紹介すると



 「芸能人なのですね。 モデルですか? 女優ですか?」

 唐突な天狗の質問に


 「いや……ハードルを上げないで……」

 困ってしまう栗林である。 天狗は芸名だと思っていたようだ。



 「どうしてココには多くの神様が集まるのでしょうか?」

 これは天狗にとって不思議なことである。 実際、祀られているのがオッキーだけだからだ。



 「どうして……と言っても……」 これにはアメノウズメも返事に困ってしまう。


 そこにオリガミが出勤してくる。


 栗林は気を利かせ、「ほら、神様の象徴がいるじゃない♪」 そう言って、オリガミの肩を持って前に押し出す。



 「ちょっと……」 オリガミは訳が分からず、困った顔をする。

 「姫様、おはようございます」 天狗が頭を下げると


 「英語で十は?」 「テン」

 オリガミは親指を立てて、社務所に向かっていった。


 (やはり、神様になるには高度なものが必要なんだな……)


 それを見た栗林は、天狗の肩を掴み

 「お前、いいのか? 本当にいいのか?」 を、連発して聞いている。



 天狗は神様のあり方を勘違いしていたようだ。


 「おはよう♪」 オリガミが元気に社務所に入ってくると、

 「おはよ、オリガミ」 テマリの表情が暗いのに気づく。


 「どうしたの? テマリ……」 オリガミが聞くと


 「なんか、変なのが来てから疲れちゃって……」 変なのとは天狗である。 その前から多くの神がやってくる度にテマリは気疲れをしてしまったようだ。



 「困ったね……滅セージを送ろうか?」 オリガミは気を利かせて言ったつもりだが


 「いや、神様を消しちゃダメでしょ― 古事記のページが余っちゃうわよ」

 様々な神様が消えていく事を恐れたテマリである。



 その時、二人の耳に歌声が聞こえてくる。

 「つまさき立てて海へ~ モンローウォークしてゆく~♪」


 「あのモンローウォークは……?」 「お父さん??」



 「おはよう~」 トウジが手を挙げて社務所に入ってくる。

 「何の用かしら?」 オリガミとテマリが冷たい視線を浴びせると、


 「その目……父ちゃん、悲しい……」

 トウジはショボンとする。



 その横でアメノウズメとオッキーは背筋を伸ばしていた。

 (怖い……) トウジの正体はイザナギである。 逆らえば、一瞬で消されてしまう。 そんな恐怖に神様でも怯えてしまうのだ。


 「それで、何の用?」 オリガミが目を細めて聞くと

 「天狗って、来てるの?」


 「来てるわよ。 知ってるの?」 オリガミとテマリが驚く。


 「まぁね。 しっかり面倒をみてやんな……」 トウジは社務所の本棚を見る。

 「何しているのよ?」 不審に思ったオリガミがトウジに聞くと、


 「コレ…… 天狗って、数少ないが神様として祀られているんだよ」

 トウジが『日本の神社』と書いてある本を取り出す。



 「本当だ…… でも、それなのに尊神社に来た理由は?」

 テマリが本を眺めながら聞いてくると、


 「何か理由があるんだろうな……」 そう言って、トウジは帰っていく。



 オリガミは険しい顔で外に出ると

 「朋子……天狗と戦ってみて」 いきなり言い出す。


 「なんでよ? 戦う理由がないじゃない!」

 栗林がキョトンとすると


 「たいして理由がないのに、私たちとも戦ったじゃない」

 オリガミが言うと、栗林の表情が落ちていく。



 「じゃ、私からでいいかしら?」 後ろからテマリが顔を覗かせると、

 「止めておきなよ。 テマリは私にも負けているんだから……」


 栗林が優しく制止すると、テマリはカチンときたようだ。



 「ほう…… じいじが入院したと嘘をついて、不意打ちしたクセに言うわね……」 テマリが栗林を睨む。


 「不意打ち? ちょっと、姫の姉だからと言って、言葉が過ぎるんじゃない?」

 栗林も睨み返す。


 「ちょっと、やめなよ~」 流石に、アメノウズメとオッキーが止めに入ると

 「私はどちらでも構いませんよ」 天狗は、挑発するように手招きをする。



 「よし、私が行こう!」 珍しく、オリガミが乗り気になってきた。

 「いや、私が」 「いえ、私が……」 段々と決まらなくなってきた所で、アメノウズメが「ちょっと……」



 言いかけた所に、 「コイツ、お前の事を『かまととブス』って言ってたぞ!」

 栗林がアメノウズメに言うと


 「はぁ?」


 すると、尊神社の空気が一変する。


 その中で、まだオリガミたちはモメている。

 「だから、私が行くってば~」 「お前は天然なんだから下がっていろ!」


 これが神様の喧嘩である。


 昔、「たくさんのお守りを持たない方がいい。 神様が喧嘩する」なんて言われたことがあるだろう。


 これが醜い神の喧嘩である。 


 そこに、「どきな……」 ユラ~っと、アメノウズメが出てくる。


 (どうしたの? アメちゃん、目が据わっているけど……)

 ただならぬ空気を出したアメノウズメが天狗に近づく。


 「お前か? 私のことを「かまととブス」と言ったのは……」

 「えっ? いや、私は言っていな……」


  “ガンッ―” アメノウズメの強烈な右フックが天狗を襲う。


 「ぎゃー」 天狗は飛ばされ、木に激突して倒れた。

 「ふぅ……」 アメノウズメが大きく息を吐くと、



 「コイツ、やっぱり「かまとと」だった……」

 全員が目を丸くする。



 こうして天狗の一件が終わったところ、アメノウズメは夕飯の支度を始める。

 台所では、天狗が正座をさせられていた。


 「ほい、出来た。 天狗、早く運びな!」 アメノウズメの目は天狗を見る時だけ厳しかった。



 人には裏表がある。 実は、神様と呼ばれる者にも裏表は存在していた。


 「こんばんは。 お邪魔します……」 護は、帰宅途中にある尊神社に寄ってオリガミを迎えにきていた。



 「おかえり~」 オリガミとテマリが笑顔で手を振る。

 「おかえりなさい。 スーツがシワになるから掛けておきますね」

 そう言って、アメノウズメがスーツを受け取りハンガーに掛けていく。



 アメノウズメは、好きな男性には優しく接するようだ。


 (やっぱり、かまとと……) 誰もが思ってしまう。



 天狗は寂しそうな目で、アメノウズメを見つめていた。


 その後、宮下から天狗に告げられる。

 「お前、祀られておるぞい」

 「えっ?」 天狗か驚く。


 「まぁ、神社というより寺が多いようじゃ……」

 宮下の言葉に、ホッとする天狗なのだが



 「そういえば…… 随分と、私を馬鹿にしてくれましたね」

 天狗がアメノウズメに近寄る。


 「なに? 随分と態度が大きくなったんじゃない?」

 「そりゃ、そうですよ…… 私は祀られていない小物だと思っていましたが、実際は祀られている訳です。 それを貴女は私を馬鹿にしたり、殴ったりしましたよね……」


 天狗が言うと、社務所は不穏な空気が流れる。


 「何よ! 分かった瞬間に態度を変えるなんて、どうしようもないヤツね!」 アメノウズメが鼻で笑うと、天狗が戦闘モードに入る。


 「やるの? 教えてあげるわよ」 アメノウズメがニヤッとすると、

 「あの……穏やかにしませんか?」 護が仲裁に入る。



 「そうですね。護がそう言うなら~♡」 アメノウズメがニコニコする。


 『ムッ―』 オリガミが嫌な気配を感じる。


 「そうなんですね。 やっぱり『かまととブス』でしたね」

 天狗が禁断の手を出すと



 アメノウズメの表情が一変し、

 「表、出ろい!」 と、叫ぶと


 秒殺で、天狗の鼻が短くなってしまった。


 「次、言ったら 豚の鼻にしてやる……」


 舞の神様と言われたアメノウズメは、天女のようだと言い伝えがある。

 実際は、天狗の制裁を簡単に行ってしまう凶暴な神様でもあったようだが



 「普段は優しいからね~♡」

 キャピっとした仕草も魅力的な神様でもあった。



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