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第二十八話  追跡

第二十八話    追跡ついせき



元旦に護が失踪し、二時間が過ぎた。



オリガミはスマホを開き、護の所在を調べようとしていた。


(くっ……) 何やら苦しそうにしているオリガミを、テマリは不思議そうに見ていた。




「どうしたの? 護の居場所は分かった?」 テマリはオリガミの顔を覗き込む。



「それが……」

「それが?」


「GPSで所在確認のアプリって何?」 オリガミは、目が点になっていた。



「はぁ…… ―ちょ、違う」 テマリが慌てていた。


オリガミがアプリを入れてなければ、いくら護のネックレスにGPSが付いていても探せない。


テマリのため息が深く、間違えて、つい龍神まで吐き出してしまった。

そして、一瞬の登場であったが龍神はテマリの口に帰っていった。



(無駄にコマを使わせるんじゃないわよ……ったく)



「どうする? バイトも少ないから探すにも……」 テマリは元旦の稼ぎ時に空けるのは消極的であった。



「私だけでも抜けれるかしら……?」 


「いいんじゃない? 新しいバイトが来たし……」 テマリがあごを新入りに向ける。



「奈菜ちゃん!」 オリガミは驚いたように奈菜の名を叫んだ。


「えへへ……明けましておめでとうございます」 奈菜は眩しいくらいの笑顔だった。



「助かる~」 オリガミは奈菜に頬ずりをしていた。



「行ってきます!」 オリガミは急いで外に駆けだした。



「はい。 奈菜ちゃんに……」 テマリが神社の羽織を奈菜に渡すと


「それで、オリガミさんはどこに行ったんです?」 奈菜の問いに、またもやテマリは ため息をついた。



「オリガミは……アホから脱却する為にみそぎおこないに出かけたのよ」



「アホって……」 奈菜は苦笑いをしていた。




そしてオリガミは、ただ走っていた。

勘も無く、文明の力を使う訳でもなく、古代人オリガミは ただ走っていた。



「ぜぇ ぜぇ……」 そして、疲れていた。

やはり、オリガミはアホであった。



「オリガミさん、どうやって護さんを探すんでしょうね……?」

売り子をしている奈菜は、休憩に入ったテマリに話しかけるが



「さぁ……」 ゆっくり水を飲んで、テマリが首を傾げていた。



しばらくして

「ちょっと行ってくる」 テマリは私服に着替え、出掛けようとしていた。



「どちらへ?」 奈菜がニコニコして聞いた。



「アホなんだけど、お姫様だからね……オリガミは」 テマリは、そう言って社務所を出て行った。



「お姫様? 確かに美人だけど……」 奈菜は、不思議そうな顔をしてテマリを見送る。




テマリは人気の無い場所に来ていた。


「はぁぁぁ……」 息を吐きだし、龍神が出てきた。


「龍神、オリガミを探して。 あと護も……お願いね」

龍神は空に向かって泳いでいく。



「さて……私も探すかね」

テマリは護が最後に向かったであろう場所、境内に向かった。



(この辺に来たはずなんだが……) 護には境内正面は人混みで気晴らしにはならないと思い、境内けいだい裏手うらてに来ていた。



(いないか……) 裏手に回り、手がかりを探していたテマリが気配を感じる。



「―誰っ?」 振り返ると人は居なかったが、テマリは気配を感じて下を見ると、小さな物の怪が立っていた。


その物の怪は、何かを言おうとしている。



そしてテマリは折りたたんで持っている紙の手毬てまりを伸ばし、息を吹き込んだ。


そして紙手毬を作り、物の怪に近づける。



「……見た」 小さい声だが、物の怪は話していた。

テマリが持っている手毬は、人間が見えない物や霊的なものに反応してくれる物であった。



そして、手毬を通して会話をする。

「何を見たの?」 テマリは物の怪に聞いてみた。



「あっち……」 物の怪は、神社の裏門を指さした。


「ありがとう♪ お前も行くか?」 テマリが物の怪に声を掛けると首を横に振った。



「そっか、行ってくる」 テマリは神社の裏門から外に走り出す。



裏門から外に出ると、狭くて迷路のような小道になっている。

テマリは走って角を曲がると


『ドンッ』 と、人にぶつかった。



「―すみません」 テマリは謝り、走ろうとした時


「テマリか?」 声を掛けてきたのはトウジである。

「トウジさま……」 テマリは驚いていた。



“キョロキョロ ” トウジは周辺を見渡す。


「誰もいませんよ……」 テマリは、トウジを落ち着かせた。



「そうか……オリガミは?」

「護が失踪したので、探しに出ています」



「そうか……それで、「トウジ様」は止めてくれ! オリガミに聞かれたら大変だ」


そして、また周囲をキョロキョロとしていた。


「あの……そのジャマイカンな恰好、どうにかなりません?」


「あぁ……ステップのこと?」


(だから、モンローウォークじゃねーよ) と、テマリは心でツッコミを入れていた。

(お若い方は知らないですよね。 スミマセン……)



「とにかく、オリガミを探さないと……」 テマリは急いで去ろうとしたが、トウジが阻止そしする。



「―なっ?」 

「アテも無く探しても無駄だよ……理由は分かるのか?」

トウジは冷静に話している。



「消えたのは護ですから……オリガミなら理由があるでしょうけど……」

テマリも呼吸を整え、トウジに説明をしていた。



「オリガミって、そんな嫌われてるの? 父ちゃん、悲し……」


「そうじゃないです! オリガミは、お姫様なんですから……」

そう言って、我にかえったテマリは周辺をキョロキョロする。


 (こいつも同じ行動するのな……) テマリの行動を、冷めた目で見るトウジであった。



「まだ言ってないのか……」


「言ってません……」 うつむくテマリであった。




※ ※  ※

オリガミは駅に向けて歩いていた。


「何処に居るのよ……」 呟きながら歩いているオリガミは、泣きそうになっていた。



(ここにも護はいない……) オリガミは、疲れて公園のベンチで休んでいた。



「私、無力だわ……護を守るなんて言っていたのに……」

小さく涙を流し、オリガミが悔やんでいた時


「なんだい? どこの泣き虫かと思ったら……」 そう、オリガミに話しかけてきた女性がいた。



「なんでもありません……」 オリガミは涙をぬぐい、顔を上げた。



「えっ? お母さん?」 オリガミは驚いた。 話しかけてきた女性はヒサメであった。



「なんで此処に? 神社はいいの?」

元旦の神社は忙しい。 参拝客が多く押し寄せる正月に、ヒサメはオリガミの所に来ていた。



「なんか、お前が必死そうなのが伝わったから来てやったんじゃないか……」

ヒサメはタバコに火をつけた。



「公園でタバコは禁止よ。 お母さん」

オリガミは冷めた声で言った。 すると


“ボカッ ” と、鈍い音がした。


ヒサメは、オリガミにゲンコツを落としていた。



「いたっ……このDV母めっ……」 オリガミは小さい声で言ったが、ヒサメには聞こえていた。



「ほぅ……言うようになったじゃないか。 この泣き虫が」


「すみません……あの、護が消えちゃって……」 オリガミがヒサメに事情を話す。



「この前の男の子か……お前が人間の男の子に恋をするなんてね……」


「どういう意味?」

「そのうち分かるよ」 ヒサメは軽く流した。



「それで、探すんだろ?」

「今、探している最中……」



「じゃ、行くぞ」 ヒサメは、オリガミを立たせようと手を差し出した。


「お母さん……」 オリガミは、ヒサメの母親らしい優しさに目を潤ませた。




すると、


「おばさん……ここ、禁煙だよ」 近所の人だろうか、タバコを咥えているヒサメに注意をしてきた。



「おば……」 ヒサメはカチンと来て

「貴様……黄泉よみを見学させてやろうか……」 いけない言葉を発していた。


「―ダメッ、お母さん」 必死に止めるオリガミであった。



「―とにかく行くよ」 オリガミは、ヒサメの手を引っ張った。



そしてオリガミとヒサメは、護を探しに歩いたが

「ぜぇ ぜぇ……」 ヒサメは二十分ほどで疲れていた。



(何しにきたのよ……さっきの感動を返してほしいわ……)

オリガミは困っていた。



仕方なく、ベンチで休む二人。

もはや、人探しではなく散歩になっていた。



そこにテマリとトウジが合流してきた。



「おや?」 ヒサメは驚いていた。

「あれ?」 トウジはバツの悪そうな顔をしていた。



「あんた……妻には冷たいクセに、娘には甘いんだね~」

ヒサメはトウジを睨んだ。



「そんな事を言うなよ~ 早く探しに行こう」 そう言って、トウジは一人で遠くに行ってしまった。



「まったく、しょうがない男だね……男ってのは、みんなそう……」 ヒサメは、ため息をつきながら腰を上げた。



「あっ、アプリが出てきた」 オリガミはスマホを見ると、追跡できる状態になっていた。



「どうしてスマホに出てきたんだろ……?」


「それなら、私がさっきインストールしたけど……」 何も知らないオリガミに替わって、テマリが設定をしていたようだ。



「さすが従……ゴホッ」 テマリはヒサメの口に手を押し当て、話さないようにしていた。



(何よ! あなた言ってないの……?)

(言ってません。 申し訳ありませんが、黙っててくれます?)


テマリとヒサメは、オリガミに聞こえないように会話をしていた。



「これで、これがこれで……できた!」 オリガミのスマホから護の位置が分かった。



「いくよ!」 オリガミの顔が明るくなった。


そして、オリガミは護のGPSが反応した場所まで急ぐのであった。






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