3・新時代のヤクザ
場所は六本木にある東京銀桜会本部事務所応接室。
虎重「・・・・ギンオウ会の指示・・」
謀り事でしょうか?
六本木の有名キャバ嬢ラナが新宿に突っ込んで来た。
これはただの若者同士のトラブルなのか、ヤクザが仕掛けた禁忌犯しなのか・・
いきなり高圧的な歓迎もそういう意味でしょうか?
「最近のガキ共は歴史も知らねぇくせに名前だけは引き継ぎやがる・・」
過去の東京に存在した伝説のチーム名・・
虎重「答えになっておりませんが?」
だが言ってる意味はよく分かる。
俺達世代だってギリギリあの激動の時代の端っこに居たくらいだ。
伝説のチームに不良達・・今とは違ってアウトロー達が躍動していた。
「おかしなもんだな」
虎重「何がでしょうか?二階さん」
こちらも若くしてギンオウ会の幹部を務める、二階組組長 二階
二階「虎重さん・・アンタ・・」
六本木の色なんだよ・・
何ていうか、新宿の匂いがしねぇ・・
虎重「・・・褒められてますか?」
二階「俺は嫌いだ」
ヤクザってのはよぅ・・やっぱ昔ながらのあれがヤクザだろうが。
大声出して、街でも肩で風切って歩いてカタギ泣かしてよ・・
まぁ本件に戻れば最近のガキ共がイキりたってる理由は解ってる。
何かラナの客を、新宿のガキがタタいて六本木煽ったとか・・
まぁ、それがきっかけだが本当は押さえきれない衝動だ・・俺もだ。
新宿のアイツの噂は六本木にも響いてるぞ・・
東京史上最高傑作だぁ?
マクって行くのか?歴代のお先輩方達の歴史、記録、記憶さえも?
「ラナの件はギンオウ会の指示ではない」二階
ただのガキ・・この時代の人間達だけのちょっとしたイザコザの話だ。
六本木のヤクザが新宿侵攻のきっかけに使ったとかではない。
虎重「では先ほどの罵声、無礼は?」
二階「うるせぇ!ぶち殺すぞ新宿」
ふぅ・・こっちだって渉外委員として『鎖』付けて六本木に来てるのだぞ・・。
それなのになぜ強く当たる?機嫌が悪い?
大体俺が六本木の色?てか、あんたが新宿臭くてたまらねぇよ・・
※『鎖』 役職幹部のみ許されるチェーン付きの代紋バッジ
二階「覚えてるか?」
虎重「・・・・・・」
知らぬ仲ではない二人。遠くからではあるがあの時代の端っこに別々のチームで居た。
虎重「ええ・・」
きっとあの時代だろう。
俺達はギリギリ触ったか触らなかったの端っこに居ただけの世代だが、あの景色は忘れられない。
憧れの先輩たちが金属バット持って突っ込んで殴り合って・・
二階「ロアももう無くなるぞ・・」
虎重「そうみたいですね・・」
「スッ・・」「スッ・・」
なんとも・・これが終わりの言葉。
お互い目も合わせず、それではこれでや、ではまた、ではなく、
ロアももう無くなるぞ・・そうみたいですねでお互い立ち去っていく。
これを見ていたヤクザの若衆は・・
かっこいいなぁ・・二人共・・
いわゆる、新時代のヤクザなんだよなぁ・・
よく分からない会合だったが、やはりヤクザでも新宿と六本木のバチバチ感は存在する。
何となく双方を言い表せる表現がある・・
六本木と新宿の不良、ヤクザははまるで別物・・
優雅に海を泳ぐシャチと野生のサバンナを泥臭く走るハイエナ・・
交わる事なく住み分けてきたが、手が届く位置まで突っ込めば・・
噛み合い潰し合うぞ・・・