2・まるで新宿
「聞いたかよ?」
「成瀬が単騎で新宿突っ込んだんだろ!?」
「さすがラナだな」
「六本木が新宿なんかに舐められてたまるかよ。よくやったわ」
この時代で金持って生きて行くにはスピードが重要だ。
すでに六本木の飲み屋で広がる噂。
六本木有名キャバ嬢、成瀬ラナが新宿に突っ込んだ・・
「よしっ今日店行ってお褒めのアルマンド入れてやろう。」
「ふっ・・でもまるで『新宿』だなアイツは」
「それな。」
今、ダセえ事、ダセえシノギ、ダセえ不良、古臭い物はすべて『新宿』とののしられる。
「ウォン・・」
「動画回しとけよ。ラナのお帰りだ」
「オッケー」
とはいえ・・
この時代に禁忌を犯すか?
暗黙の了解だ・・不良もヤクザも六本木は六本木。新宿は新宿・・
黒服「おはようございます。すでにお客様多くいらしてます」
成瀬「はい。すぐにフロア入れます。」
風のせいで多少髪が乱れたくらいだ。
メイクも服装もバッチリで新宿に突っ込んだのだから。
「・・・いい画角だな」
「遠くから隠し撮りしました・・感な」
この成瀬を隠し撮りしてる集団・・・
「ショートでまずアップしとけよ」
「了解」
「遠藤君早く飲み行こうよー」
港区女子引き連れて六本木の街をさっそうと歩く遠藤
通行人「わー遠藤君居る!」
通行人「チャンネル登録してるよー。今度スパチャ送っとくねー」
遠藤「ありがとう」
ふっ・・六本木は、くせえシノギしか出来ねぇ新宿とは違うんだよ。
遠藤「え~緊急で動画回してます!!」
そう言って取り巻きの仲間にカメラを回させる遠藤。
ヤクザ「・・インフルエンサーか・・変わったよな・・・」
ヤクザ「そうですね・・」
それを見ている六本木のヤクザ
これが今の不良・・今の六本木・・
Do you remember?
なぁ覚えてるか?あの頃・・
ヤクザ「もうなくなっちまうなロアも」
ヤクザ「そうですね・・」
ひと昔前の六本木の夜の象徴ロアビルはもうすぐ解体取り壊しだ。
何かこれで六本木の風通りが変わっちまいそうと言うか・・
六本木のガキ達も寂しそうにロアを語るが・・
でもお前等現役世代が知ってるのは、もうすげぇガキの頃見た景色だろう?
あのロアに集まる不良達の時代は・・
「♪ヴゥ・・ヴゥ・・」
若手ヤクザのスマホに着信が有り・・
「はいっ・・はい・・。兄貴っ新宿の虎重が本部に来られたそうです」
「行こう。」
新宿のヤクザ、新宿城西連合会 渉外委員長 虎重組組長 虎重
新宿の若手ヤクザの有望株だ。
急に向うの渉外委員長が六本木に来るのは今日のラナの件だろう。
まぁ当然ヤクザも反応せざるを得ない。
自分たちの縄張りで、面倒見ている不良達がヤラれたのだから。
「お邪魔しております・・」虎重
六本木に・・
「ウチのラナが何か!?」
ふっ、先に言ってやろう。
舐めてるらしいな?六本木はヤクザも今どきのヤクザだって?
新宿は極道で六本木はただのケーヤク(経済ヤクザ)だぁ?
ヤクザはヤクザなんだよ!暴力を背景にしか生きられねぇな!
「六本木に何の用だ?新宿が!」
「ちょっと兄貴っ!いきなりそんな新宿の方に!」
俺だって熱くなってんだよ・・
時代が・・動きそうでよ・・