記憶の行方2
記憶の行方2
あの怒涛の数時間?いや数分か?
嵐のような勢いで、私に問題を残して、
嵐のように全てをなぎ倒していくような
力で、私をねじ伏せて、そのまま颯爽と
消えていったあの女性。
(椿 純子か・・・)
今、伸びてるIT企業ってやつだねぇ・・・。
私リリィは、彼女からもらった名刺をマジマジと細かく
見直している。
確か、女性をターゲットにして、
簡単な仕事をも斡旋してたりで、
主婦層の小遣い稼ぎで、リピーターを
増やしてる会社だったかな?
テレビで見たことあるかも・・
あの人は知らないけど、この会社名は知ってる感じ。
見るとこ限られてるし、両目で穴が開くほど見る事なんてないんだけど、
そんな少ない情報の名刺をぐっと見つめて、
でも本当はその向こうにある私が可愛いと思ってる彼の気持ちや状態を、
想像してたりする。
なので、怖いんだけど両手で少しずつ、名刺をずらして、
チラッと目の前の白と黒の世界から視野を広げていくと。。。
問題のあの少年が、私の目の前に座っている。
まだ目線合わせてくんないしし・・
口もぎゅっとつむんだまんま。。。
両手もグーのまま、緊張してるというか、
何もこっちに渡さないぞ!っていう覚悟を見せつけられてるというか。。。
ちと、かなしぃなぁ〜
おっと!ため息出るとこだった。
こんな緊迫したクライアントの前で、あくびは絶対厳禁!
それで、相手を何度も怒らせたことあるのに、またやろうとしてたわ。
早めに気付いてラッキ−♪、またミスするところだった。
(でも、マジであんまりん寝てないんだよぉねぇ〜。)
そんな事をぼけ〜っと思いながらでも、顔は真面目に!
眠いので、瞼がとろんとして半眼状態だけど、
それがかえって、私を聡明で理性的なフインキを作ってたりする。
これって私の勝手な妄想?なんて思いながらだけど。
近くにあったクライアント用の、
ソファの手のところに、腰かけて彼をじっと見る。
これもお気に入りの一品。
コテコテなゴシック調の家具がどうしても好きみたい。
ま、煌びやかって言ってもいいんだけど。
豪奢で金ぴかな飾りにどうしても心惹かれる。
こんなのなくったって、座れればいいんだけど。。。
でも、こういう無駄ってすごく好きなんだよね。
そんな私のお気に入りのソファには全く興味無しな彼。
座ろうともしない。
簡易のパイプ椅子がいいみたい。
情緒なんておさらばって感じね。。。
でも、私の位置から彼は丁度対角線上で、
横顔しか見えないけど、
全体は分かる。
(これで、今回は良しとするか。。。)
この位置だと、彼と直接目を合わせる事もないし、少し離れてるから
緊張が取れるといいんだけどねぇ〜。
ここは、私の(魔術師リリィとしての)作業場でも
あったりする。
作業といっても、物を作るとかじゃなくて、
催眠誘導や、リリィオリジナル儀式なんかやったり等などで、
よく見ると、色んな文字や円が描かれてて、それも白で。
全部自分で描いたんだよ。
自慢じゃないけど。
所謂、魔法円ってやつなんだけどね。
そういうのをいっぱい描かれてたりなんかで、
普通、ドン引きして気味悪がるんだけど、
この子は一向にそういうのがないのはいいけど、
ずっと私を無視したまま。
それに言葉通じてる?って感じで、座らないし立ったままだったけど、
彼をなんとか誘導して、この部屋に入れて(一応仕事しなくちゃだからw)
でも、立ったままで座らないから、
簡単な椅子をおいて、とにかく座らせた。
そんなにここのアイテム嫌いなんだろうか?
それとも私が嫌われてるんだろうか?
ま、普通なら後者だよね。
わたしがあの子の立場なら、そう思うとおもう。
(お!丁度、金運アップの魔法円の中に座ってるな・・・)
そのまま生贄にしちゃうか♪
私の金運アップに♪なんて
思ったりしたけど、後のことを考えると、
そんなことして、何の得にもならないって事がわかってるから、
この子放置状態w
(そんな事したら、あの女に何されるか?怖すぎ・・・!。)
あ、あの女性からもらった封筒?(正確には前金ってやつの札束)
こっそり、事務所に隠した。
くれるものは、有り難く頂戴しちゃわないとねw
(確かにうちの家って、重厚感があって、ちょっと見、かっこよかったりするけど。。。)
見た目は蔦がいっぱい家にしがみ付いてる洋館で、、
何か出そうっていうのが、もっぱら近所の噂らしい。
そりゃ、築年数が違いますしねw
そんなところから、こんなゴスロリのイカれた女が出てきたら、
普通じゃないよね。。
今時の周りの可愛くて白っぽい家々と、うちのレンガ造りで蔦生えまくりの家とじゃ、
雲泥の差だし、薄気味悪くて当然だよね。
(家のオーラが違うっていうか・・・)
そんな事、どうでもいいんだけど。
それをも越す位のこの部屋の重い空気。
ただ、なんか違う事考えてないと、
この空気の重さが耐えられんのよw
喋らないし、どうせ聞いても答えんだろうし、
どうしたもんかね〜っと、宙を見ながら作業場の自分の椅子に足を向けた。
事務所と同じ形っぽいアンティークな机。
ここの机の上は片付いてる。
どれをとっても同じものは置いてない。
既製品って好きじゃないから。
それにこの子たち、買ってって呼ぶんだよね。私を。
ここは、私の大事な仕事場。
特別な場所だしね。
ま、違う場所にもそういう場所あるけど、
普段の依頼はこの部屋で十分事足りる。
私にとって、ここは神聖なる場所でもあるから。
良いものでお気に入りを置いておきたい。
それに、ここはあえて暗くしてる。
全部見えると、ほんと皆気味悪がっちゃってw
驚く人達の反応を見てると面白いんだけど、
一応、仕事しなくちゃだからね。
極力、不安は取り除いて・・・(全然取り除けてないかもですがw)
それでなくても、絶対数の少ないお客様相手だからw
余計なものは見えないようにしてる。
それに私自身蛍光灯って好きじゃないの。
自然光が一番落ち着くかな〜って思っていて、
それで足りないときは蛍光灯の明かりより
蝋燭をつけてみたりして、調節してる。
合計10本ほど?位つけるかな?
段々、いかにも!って感じですがw
でも、この蝋燭には全く意味はない。
気持ちもなんだか落ち着いてくるし、
優しい光がほんとに心地よいのよ。
彼もそう思ってもらえるといいなって思って、
自分が一番好きな部屋の状態にしてみたりするんだけど。。
頑なでした。
手ごわい!
(もしかして?怖がらせたかな?それともダンマリ続ける気?)
この部屋には時計もない。
時間の束縛を感じたくないから。
だから、私の腹時計が唯一時計としての役割になってる。
何分経ったのかな?
1分?それとも3時間?
私の腹時計も彼の前じゃ、何の役にも立たないらしい。
(そ、それにこの圧迫する空間に耐えられん!、マジ寝そう・・・)
まといつくような空気の重さ。
すっごくどよ〜んとしてて、寝てもいいわよって、
耳元なんかで囁かれたもんなら、自信もって即効、寝てしまいそう。
足元からどんどん、這い上がってくる空気の重さ。
居たたまれない。
どうしてここまで、空気が思いの?
話さないだけでこんなことになるんだろうか?
まとわりつく重い足元の空気を断ち切るためにも、
クルクル椅子をまた、廻しながら、考えていた。
(この子の記憶を消しなさい!)
あの女の声が頭の中でコダマする。
そのおかげで、睡魔を撃退してくれてたりするかもw
強烈だった。あの勢い。久々に感じた怒りとも思える怒涛の感情の流れ。
あの人の周りに、花は咲くんだろうか?
すべてをなぎ倒していきそうな勢いだったなぁ・・
それに比べて、この子はまるっきり正反対の性格みたい。
よく視てないから、わからんのですが、
ただ、自分の意思を貫く強さは母親譲り?
なんて思いながら、チラッとあの子を見てみたりして・・・。
マジ、ほんとにママリンさんの言うとおりにしていいのかな・・・って
ガン見はしなくて、チラ見のみ。
でも、あの子を見ても、長い前髪であんまり表情が見えない。
まつ毛流そう。。。そんで色が白い・・・
綺麗な二重だし。細そうだし。
指長そうだし。
普通にモテるじゃないの?て思うんだけど、、
全く会話のないこの空間の空気はどよん重たくて
脚からどんどんまとわりついてきて、私の自由を拘束する感じ・・・
辛すぎる・・・
私は、いつもは吸わないけど、緊張したり、
動揺を抑えたりする為に、キセルを吸うんだよね。
自分を落ち着かせるために、
そして、このどよんとした空気を切り離すために。
薬とかも処方してもらったけど、そんなものより
やっぱりこれが一番効果があると思ってるだけなんだけど。
(ほんと、何にも喋らない。持久戦に持ち込んだら、私が負けるとでも思ってる?)
確かに私は持久戦は苦手。
さっさと終わらせて、次行こう!ってタイプだけど、
なぜか気になるこの子。
母性本能を擽るとか、そういうのじゃないけど、
目がね、悲しそうなんだよ。
私のみょう〜〜〜なおせっかい気質がウズウズしちゃうんだよね。
なんとなくだけど、大体の理由は分かってるつもり。。
記憶を消せっていうんだから、あの人とってよっぽど気に入らないことがあったんだと思う。
それは常識という範囲を超えたもので、
社会的に排除される思想だったりするんじゃないかなって
これは私の勝手な推測。
だからこそ、彼の口から聞きたい。真実をね。、
(何分経ったんかな・・・)
眠気もMAX!半分、どうでもいいや!って気持ちになってる私。
思考が停止するというか、何も考えられん。。。
こうだまってられると、イライラ通り越して、感動さえ覚えちゃいそう。
自分を泡沫の世界に引きづり込まれないように、
極力あの子に煙が行かないように、私はなんとか自分と戦ってる。
寝る事も許されない健気な哀れな戦士。
自分と向き合うのは彼で、なんで私が自分と戦わにゃならんの?
(ここ、そんな感情の場所じゃないでしょ!)って、
自分でツッコミながらも背を向けて、
そしてキセルに火をつけて、すぅ〜っと一息吸って、
口から煙を吐き出した。
あ〜〜やっぱり楽!気持ちいい・・・。
す〜っと胸一杯に吸い込んで、
口からはぁ〜と出す。
その行為を繰り返すだけで、
変な気持になっちゃいそう。。
天国みたい。。。
ぽわんとしてきた・・・
ヤク中じゃないけど、少し眠気おさまった??
フラフラして、少し気持ち良かったりでまったり気分だたった。
「タバコ、吸うんだ・・・。」
え?
誰の声?
まさか、あの子?
思いっきり、椅子を廻して、ダン!と両手を机を叩き、
その反動で身を乗り上げるような感じで、彼を見た。
(どしたの?喋ったよ、あいつ。)
でも、少し嬉しかったかも。。。
キセルでポワンとした気分に、初めて聞いたあの子の声。
眠気もプラスされて、アドレナリンでまくって、
変に興奮してたりするw
自分がされたら厭な事は相手にもしたくない!
これが私の座右の銘だったりするので、
無理強いや強制はしない。
だって、心はだれのものでもなく、自分のものだもの。
眠気防止の意味ももあって、数回キセル吸ってたんだけど、
こんな事で声が出るとは思ってもいなかった。
思いがけない神様からのプレゼント?
でもタバコじゃなくて、キセルなんですが。。。
今の子にゃ、一緒かもね、キセル自体、見たことないかも・・
そんな思いは0.006秒位で、私の中では終わってて、
彼への興味がまた沸々と沸いてきた。
にっこり笑ってあげた。
そしたら、目が合った。
彼が初めて私を見た。
少し長い前髪を箸より重いものを持った事ないっていう感じの長い指で、
少し掻き分けて、私にやっと視線を向けた。
やっぱり綺麗な目。顔も小さいし、目も大きい。
まつ毛やっぱり長いし、綺麗な二重だし髪の毛柔らかそう。
スベスベした肌。女でもあんまりいなさそう。。って感じだ。
言う事ないじゃん!って顔。
(綺麗な瞳・・)
ククッと彼は笑った。
?
なんで?
これも初めて。
私を見てから、彼は笑った。
じゃ、私がなんか原因?
私は自分の姿を再チェック!
(なんか変かな・・・?)
うわっ!
顔が赤くなってない?
今更だけど。
(スカートの中、丸見えじゃん!)
声が出たって事で、嬉しくてさ、
勢いに押されて、机に乗り上げたのはいいんだけど、
右足まで乗り上げちゃたもんだから、
彼の方からは、私の下着も完ぺきに丸見え・・・。
ミニのゴスロリは失敗・・・。
あんな年下に笑われるなんて、って
悔しかったり、恥ずかしかったり、
自分がどんな顔してるか?わからないしと
少し、乙女ちゃんになってたりで
穴が有ったら、入りたいって感じ。
でもでも。そんな事思ってる場合じゃないし!
さっきの動揺はなったように、サッと、右手でサッと前を小さなフリルにスカートで
隠した。
スカート短すぎた・・・ちょっとショック!
もう、遅いんだけど。。。
せめて、パンティ位は・・・
一応、女だしねw
素早く対処して、!
一応、えへへと苦笑いw
照れながら、頭もかいてみたりして、ニッコリスマイル♪
彼はまだ、クスクス笑ってる。
完全見えたな。。。でも今日の下着は白のフリルで可愛いはず!
見えても大丈夫な、顔はひきつってたかもですが、
ここは私もプロよ!
(何のプロだよ!)
うるっと涙という汗に滲んだ瞳。
心の中で負けないぞ!っと小さくガッツポーズ!
(何に対してか?自分でもわかってないけど)
そうよ。そうよ
少し見えたって、何でもないわよ。
乙女な年ですか?リリィさん?。
それに見えたからって減るもんでもないし、恥ずかしがる年でもないっしょw
こういう時は、開き直りが一番!w
「私、リリィよ。なんだか、あなたとは気が合いそうな気がするの。
よろしくね。」
満面の笑みして、握手してくれたら、最高!って思って
手を出した。
当然、手を出してくるはずはない。
でも、極上の笑みをもらった。
こんなのでも笑ってくれてよかった。
臨機応変にチャンスを生かす!
これも私の座右の銘なんてね♪
でも。、笑ってくれて有り難かった。
少し、気が楽になったよ。