03_ゴミ捨て場_2
だが、その瞬間、予期せぬ強烈な衝撃が全身を襲った。
「……っ!」
体がまるで何かにぶつかったかのように激しく揺さぶられ、息が詰まった。体が宙を舞い、まるで自分の体が重力から解放されたかのように感じた。その瞬間、冷たい風が全身に突き刺さり、目の前が暗闇に包まれた。何が起こったのか理解できないまま、頭の中が混乱し、世界がぐるぐると回り続けた。
やがて、痛みと混乱の中で、ゆっくりと目を開けると、目の前に一人の女性が立っていた。その姿は、月明かりを浴びて銀色に輝いていた。長い銀髪が風に揺れ、その目には鋭い光が宿っていた。彼女は片手に剣を構えており、その姿からは明らかな強者の風格が漂っていた。
彼女の体から放たれる威圧感は、これまで出会ったどの人物とも違っていた。まるで彼女の周囲の空気が震えるかのように、強い力が全身に伝わってきた。俺はその場で呆然と、何も言えずに彼女を見つめるしかなかった。
恐怖から這いずるように後ずさった時、俺は背後に崖があることに気づいた。崖の縁に立たされ、下を見下ろすと、はるか下方に水面が光を反射しているのが見えた。崖の下に広がる水面は、月明かりを受けて静かに輝いていた。
遥か下方に広がるその光景は、まるで別世界のように見えた。高さを恐れる余裕もなく、ただその下に広がる水面が、今の俺にとって唯一の逃げ道であることを直感的に理解した。
「……逃げるしかない……」
その考えが頭を駆け巡る。今の俺には、もう選択肢が残されていなかった。このまま彼女に斬られるのか、それともこの崖から飛び降りるのか。どちらにしても、生き延びる可能性は限りなく低い。だが、水面に飛び込むことが、わずかな希望に思えた。
「ここで終わるわけにはいかない……!」
俺はその一瞬の思いに突き動かされ、崖の縁から身を投げ出した。体が宙を舞い、風が耳元を切り裂いていく感覚が全身に伝わった。眼下に広がる水面が次第に近づいてくる。その冷たい光が、俺を包み込もうとしているかのようだった。
心臓が激しく鼓動し、恐怖と共に、希望が胸の奥で燃え上がる。生き延びるために、この水面に飛び込むことが最後の賭けだった。冷たい水が近づくにつれて、俺の意識は徐々に研ぎ澄まされ、ただ無事に着水することだけを願っていた。
冷たい風が耳元を切り裂き、体が宙を舞う中、次第に水面が迫ってくるのが分かった。心臓が喉元まで跳ね上がり、恐怖と緊張が全身を駆け巡った。次の瞬間、凍てつくような衝撃が全身を貫いた。
「……っ!」
水面にたたきつけられる感覚は、まるで硬い岩に体をぶつけたかのようだった。激しい痛みが体中を走り、息が一瞬で奪われた。水の冷たさが皮膚に刺さり、頭がくらくらと回り始めた。水中で体が上下に揺さぶられ、どちらが上か下かも分からなくなる。
肺が空気を求めて苦しみ、必死にもがこうとするが、体はすでに限界を超えていた。意識が急速に遠のいていくのを感じながら、俺は次第に闇の中に引き込まれていった。
(もう……だめだ……)
その言葉が心の中に浮かんだ瞬間、意識が完全に途切れた。
どれくらいの時間が経ったのか、意識が朦朧とする中で、俺は再び何かを感じ取った。体が何かに引っ張られている感覚があり、水の中から引きずり出されるような感覚があった。だが、それが何なのか、何が起こっているのか、全く理解できなかった。
息が詰まるような感覚と共に、再び意識が遠のいていく。体は冷たく、痛みが全身を支配していた。目を開けようとする力も残っておらず、ただ誰かに引きずられるままに、再び深い闇の中へと沈んでいった。
世界は完全に消え去り、俺の意識は再び暗闇に包まれた。