01_召喚と失意_1
目を開けた瞬間、見知らぬ場所にいた。冷たい石畳の感触が背中に広がり、重々しい空気が辺りを包んでいた。低い天井には古びたランタンが揺れ、淡い光が闇をかき消すように薄ぼんやりと照らしている。その光は青白く、どこか不気味で、まるでこの場所が現実ではないかのような錯覚を覚えた。
「ここは……どこだ?」
呟いても返答はない。ただ、静寂だけが支配する空間。だが、その静寂の中に、かすかな息遣いが混じっていることに気づいた。俺は恐る恐る身を起こし、周囲を見回す。薄暗い室内には、黒いローブに身を包んだ数人の人物が立っていた。その姿は、まるで亡霊のように不気味で、心臓が冷たく締め付けられるようだった。
彼らの顔は、フードに深く隠されて見えない。ただ、彼らの目だけが光を放ち、鋭く俺を見つめていた。まるで、この世界に突然現れた異物を検分するように。
「これが……今回の召喚者か?」
先頭に立つ一人が低い声で呟くと、他の者たちも一斉に視線を俺に向けた。どこか冷ややかで、感情が読み取れない声だったが、その中に微かな好奇心と警戒心が混じっているのを感じた。
俺は、足元がふらつくのを感じながらも立ち上がった。頭がまだ混乱している。さっきまで俺は……何をしていたんだっけ……?どうしてこんな場所に……。質問が次々と頭をよぎるが、何から問えばいいのかさえ分からない。
「お前の魔力を測る必要がある」
その言葉に、俺の意識が現実に引き戻された。魔力?俺には何のことかさっぱり分からない。しかし、彼らはすでに俺に近づき、淡々と手順を進めているようだった。
彼らの一人が、手に持った杖をゆっくりと俺に向けた。杖の先端には奇妙な宝石が埋め込まれており、暗い光を放っている。その光は、まるで俺の内側を覗き込むかのように揺らめいていた。
「動くな」
厳しい声が俺に命じる。背筋が凍りつくような命令口調だ。俺は何も言えず、ただその場に立ち尽くす。心臓の鼓動が耳の奥で響き、息をするのも忘れるほど緊張が走る。
杖を持ったローブの男が、それを俺に向けた。低く、そして不気味な響きが耳に届く。言葉は理解できないが、その力が俺の周囲の空気を震わせるのを感じた。まるで、見えない力が俺の中に入り込んでくるようだった。
突然、杖の先端が光り輝き、俺の胸に向けて放たれた。その瞬間、体の中に何かが流れ込んでくる感覚に襲われた。熱く、重いエネルギーが俺の全身を駆け巡り、意識がぼんやりと遠のきそうになる。
「お前には……」
ローブ姿の一人が、ゆっくりと俺を見つめながら言葉を続けた。しかし、その続きを聞く前に、俺は目の前が暗くなるのを感じ、意識を手放していた。