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9 鬼畜上司と王族達の憂鬱 前編

 書類仕事が終わらない。


「はぁ……」


 仕上げても仕上げても、新しいものが届き、目の前に積まれていく。せめて、これらの処理だけに時間を費やせていれば良いのだが。そうはいかない。


「はぁ……」


 連日、朝から会議がある。同じ議題をこねくり回しているのではない。議題に上がる“問題”が多過ぎるのだ。


 参加者は昼食に割く時間が惜しいので、あまり旨くないが必要な栄養を混ぜ溶かしたドリンクと、これまた栄養を練り込んだ片手でつまめるサイズのスティック状のパンを齧りながら、休憩なしで話し合う。


 会議の議題への対応策を決めるにしても、問題の一つ一つに詳細な状況説明や調査の報告が入ってくるので、それはもう時間がかかる。


 状況説明と調査報告を聞ける段階まで来ているのなら、最後の判断ぐらい簡単にできる?そもそも、会議出席者が事前にまとめられた報告書を読めば良い?


 簡単にどうすれば良いか決まるなら、現場で解決しているだろう。事前に?そんな時間あるわけがない。事前と言われる時間には、他の仕事をこなしているに決まっているだろう。無駄に広い国を治める王族に時間の余裕なんてないのだ。


 そう。会議の参加者は、まだ二十代の若い現王と王弟や従兄弟である公爵達、その親である「王座から早めに退いても、逃しませんよ?」と息子達に凄まれて引退できない前王と、叔父の元公爵達、それに加えて、伯従父や叔従父に又従兄弟達。何も王家の親族、王位継承権30位以内の面々だ。


 実はこの国の王族や高位貴族は直轄の領地をもたない。王家とその親族たる公爵家、その配下たる侯爵家と一部の伯爵家には、領地を管理する余裕などないのだ。


 とにかく、国が広すぎた。その広い国土に、一領主あたりが受け持つ領地が他国より広いときた。


 一般的には王族と上位貴族の宰相と複数の大臣、そして実務をする大勢の下位貴族の役人で国の政をこなす。重要な事案には貴族会議など開くだろうが、常の政治は王族達に任せているだろう。

 国土は、各領主が治めるものだが、寄子制度で、貴族のトップである公爵から順番に下の貴族と繋がっているので、国の一大事でなければ、大体は公爵や侯爵あたりで問題は解決される。国にはお伺いや報告が届くだけだ。


 だが、この国は広すぎた。


 広大な公爵領や侯爵領を治めつつ、これまた広い領土を持つ寄子の伯爵、子爵、男爵の面倒まで見る?高位貴族なので、大臣などの役職にもつく?


 いや、無理無理!


 断固拒否な王族とその仲間達である、高位貴族は、王族である12の公爵家が領土の監督を2家を1組として6分割にした範囲の国土と領地を担当し、領地の政治には直接口出しすることは少ないが、税の管理と運営の補助をそれとなくしている。公爵家1組に対し、3つの侯爵家と1つの伯爵家が配下としてつき、領土をもつ伯爵以下の貴族達と領民たちを守っているのだ。どれだけ頑張っても、ほとんどの国民には知ってもらえないけれど。


 国は管理できるレベルの広さをキープするのが一番だ。


 そもそも国が広すぎるので、この国のほとんどの国民は王都や国の政に関わる王族や高位貴族中央の政治に不満を抱き謀反を起こそうなんて考えない。王様も王都も、ほぼファンタジーの世界の話だと思っているレベルに、現実感のない、存在なのだ。


 旅芸人さえ、人が住んでない土地と数える程しか人が住んでない土地を移動して、やっと少しだけ人が住んでいる土地に到着するような国で広範囲の興行をするなんて考えられない!と、王都周辺でしか活動してくれないぐらいなのだ。当然全国を股に掛けるような商売人も存在しない。旅ができるのは馬車で片道3週間が限界。腐らない荷物を運ぶにしてもそれ以上は厳しい。なんせ、途中での補給ができないのだから。(道がまともに通ってなかった時代には1週間が限界だったそうだ)


 ちなみに、凶悪な犯罪集団が遠距離移動を可能にしていたのは、通り過ぎる村を壊滅させた上で、貯蓄食料と馬、荷馬車を根こそぎ奪うなどしていたからである。


 犯罪を犯さず法律遵守で、2週間以上、1ヶ月や2ヶ月の旅を強行するのは、国からの命を受けた者達のみ。彼らはそれはもう決死の覚悟で、飲食物を確保し、休憩と補給と狩場を決めてから出発するのだ。


 この国で一番移動しているのは、辺境の民ではなく、中央である王都に住む、不幸な王族とその仲間達かもしれない。


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