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51 逃亡する嫡男たち

「疑問に思うのは最もだが、本当に今の俺には、時間があるのだ」


 リードルからのまさかの暇人アピールにドン引きするアーリエアンナ。生まれてこのかた、この国で、暇な王族など、見たことがないのだから、時間があると言われても信じられない。無理をして時間を作るという意味かと思うが、気のせいか、リードルの顔色が良い様に見えた。


 ん?いつものお疲れ極悪人フェイスではない?

 目の下が……


「く、クマ()が逃亡?」

「クマ?」

「いつもの青クマ()がいませんね?」

「青クマ?」

「そうです、いつも目の下で飼っている青いクマ()です」

くま()……は、寝不足じゃないので、いなくなった」

「そんな!」

「そこは残念に思うところじゃないと思うが」


 まあ、そうですけど。


「ん?よく見ると若返っていらっしゃる様な?リードル様が、20代前半に見えちゃう様な?乙女の血でも飲まれたのでしょうか?」

「人をバケモノ扱いするな。俺は正真正銘20代前半だ!アーリエアンナとは、5歳しか差がないのだから、寝不足でなければ、目の下にクマなど飼わぬわ!」


 こちらの世界には、乙女の血を飲む吸血鬼はいませんが、私が嫌なものを見た様な顔をして、意味不明なセリフを吐いた時には、なんとなく意味を察してしまう幼馴染様でございます。


「バケモノ」「悪魔」「鬼畜」。リードル様には聞き慣れたであろう、罵倒用語ですね。意味は全部「なんだかわからないけれど、人外で怖がられるもの」という風に訳されている模様。


「俺と、ロードニス公爵家の養子縁組は解消した。公爵位はロードニス前公爵にお返しした。引退にはまだ早い歳だからな。アスターダ公爵家に入っていたカルードルも、養子縁組を解消して、俺と一緒に王城に戻っている」

「あの、それでは、公爵家が王族から外れてしまうのでは?」


 我が国の公爵家の数は12家で固定され、代々王弟が公爵の座を継ぎ、王族として仕事をすることが決められている。その為、現王弟が成人すれば、公爵家の当主が、王弟と入れ替わることになっている。


 ロードニス公爵家もアスターダ公爵家も現当主は、先王の再従兄弟で、王族であるが、その子息の代では王族から外れる。そういった王家の血が薄まった家に、現王家の王弟が少年期から養子に入り、嫡男となり、代替わり時には、公爵の座を引き継ぐ形で、現王族が公爵となる。


 だから、ロードニス公爵家には、リードルが。アスターダ公爵家にはカルードルが養子に入っていたのだ。


「ロードニス公爵家の嫡男パープスタとアスターダ公爵家の嫡男ピンクアータが、公爵位を継ぐわけではない。現公爵は、共に王族の範囲内だ。引退時期を大幅に遅らせただけだから、10年か15年かすれば、予定通り俺とカルードルが跡を継ぐ」


「何故急にそんなことに?」


「公爵家当主の仕事は激務であり、どの家の当主も、代替わりを待ち望んでいる。だから、王弟と入れ替わる家の代替わりは極端に早い」


「まあ、確かに。王弟の成人後5年が多いとか。リードル様なんて、3年でしたものね」


「そうだ。青二才に爵位を譲るには早すぎるだろう?まあ、引退しても、仕事からは逃げるなど許さないが。だが、前公爵となる人間が、いつ引退しようが、仕事さえしてくれるのであれば、問題ない」


「引退して逃亡できた方は、病気理由以外にいらっしゃいませんし、少なくとも10年は現役でお仕事されますよね」


「だが、王弟が生まれた時点で、次期公爵の座から逃れることができる前公爵の実の息子の嫡男に、問題がありすぎる」


 それは、ピンクアータ・アスターダ様のことでしょうか?


「ロードニス公爵家の嫡男パープスタとアスターダ公爵家の嫡男ピンクアータは次期公爵にはならなくて済むが、次期公爵となる我ら王弟の義理の弟だ。公爵家の人間なのだから、当然俺とカルードルの側近として働くことになる。だが、パープスタもピンクアータも、正直使い物にならないというか、いつも行方不明だ」


 まさか、あのピンクアータ様だけでなく、もしやパープスタ様も問題児なのですか?いつもお忙しいとかで、これまであまりお会いする機会がなかった気がしますが。


「次期公爵の座からの逃亡を成功させた嫡男で、真面目に働いている奴は1/3だ。あとは、後継教育を全く受けないもの、数年受けるもの、これは、嫡男の年齢と王弟の年齢によるが、大抵は成人よりずっと前に自由の身となる。そこから、公爵の右腕になる為に、努力をすると思うか?」


 父親の前公爵が全力で立場から逃亡しようとしているぐらいですから、嫡男が敏腕な側近を目指すわけがないですよね。「父様、お先に〜」と、自由を満喫されちゃうかと。


 そういえば、ロードニス公爵家の側近()、嫡男じゃない方でした。 



 ああ、なる〜〜(なるほど)



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