46 月夜に輝く、私の希望。
更新お待たせしました。(待っていてくださる方がいれば良いのですが)
完結まであと少し。頑張ります。
王城内のサロンのソファーで始めた、夜のティータイム。
大きな窓から見えるのは、綺麗なお月様。
実に優雅な時間だ。
だがしかし。ソファーに座る2人の女性からは寛いだ様子が見えない。
「……再婚約を諦めて欲しいとお願いするのではなく、諦めるしかない……ように?」
「はい、諦めて欲しいとお願いしても、無理ではないかと……」
「まあ、それはそう……ね。」
リードルに、アーリエアンナとの婚約解消を懇願しても無駄。ハイ、テストに出ますから、覚えておくように。そんなことを言われた覚えはないのに、貴族界隈での常識となっている認識だ。
そうなると、リードルが、仕事の為に、嫌々した婚約破棄を破棄のまま放置してくれる可能性は?
再婚約を諦めてくれる可能性は?
うん、無理だよね。誰に聞いても答えは同じ。
うん、知ってる。アーリエアンナの答えも同じ。
ならば、方法としては、誰かに命令してもらう?
うん、無理だよね。誰に聞いても答えは同じ。
うん、知ってる。アーリエアンナの答えも同じ。
年上は敬うものだとかそんなことを無視すれば、リードルの上にいる存在は、現王家のみ。
いつも、鬼畜と罵っている相手ではあるが、リードルは、王族。
婚約問題では、王族を信用してはいけない。
王族の皆様とも、普段は親しく、楽しく、遠慮なく過ごしている自信のあるアーリエアンナでも、リードルの頼みとアーリエアンナの頼みでは、どちらが優先されるかなんて、聞かなくともわかる。
「諦める……諦めるしかない……難しいですわねぇ」
「難しいのです……」
うむむっと悩む女性二人は、無意識にクッキーに手を伸ばす。
「考えるには、もっと脳の栄養が必要な気がしてきましたわ」
「そうですね、色々足りない気がします。栄養も、ヒントも」
少し待っていて。と、マールリがサロンから出て行く。
ほどなく戻ってきたマールリは、手に果実酒が入ったカゴを下げていた。
乾燥果実やナッツの入った小袋も入っている。
「先週から売り出した低アルコール果実酒ですの。よかったらどうぞ。軽食も出しておきますわね」
この国では、10歳になれば低アルコールの飲料は飲めるようになる。食事時や、夜の会議などにも出されることが多い、一般的な飲み物だ。
「ありがとうございます。いただきます」
「どうぞ」
キラキラした琥珀色の果実酒を口に含めば、芳醇な香りが鼻に抜ける。甘いのにさっぱりしていて飲みやすい。
「あっ、これ凄く美味しいですね!」
「でしょう?氷砂糖とお酒と果実で出来て、簡単といえば簡単な果実酒ですけど、スパイスを足したり、氷砂糖やお酒の産地や種類にこだわってみたり、果実の若さや甘さにこだわってみたりで、随分と出来上がりが変わりますのよ」
「ふふふ。伝統的な組み合わせしかないなら、マールリ様が熱心に果樹園と植物研究所に通われる必要はないですものね」
「そうですわよ。折角我が国には、色々な果物があって、それを更に研究してくれる方々がいるのですもの。昔ながらのまま、挑戦しないなんて、勿体ないですわ」
「その挑戦のお陰様で、こんなに美味しい果実酒が味わえるのですね」
「あっ!そう、そうですわ!」
「え?」
突然何か閃いたらしいマールリの目が見開かれる。
「ねぇ、アーリエアンナは、どんな殿方となら、結婚したいと思えるのかしら?」
マールリからの唐突な質問に当惑しつつ、聞かれなくとも語りたいその話題に食いつく、アーリエアンナ。
「え?それは勿論……」
「勿論?」
「とにかく身体が大きくてっ!」
「大きくて。それから?」
「全身筋肉というか、ムッキムキで!」
「ムッキムキで。それで?」
「顔が、男性的というかっ!」
「ふむふむ」
「こう、強面?というかっ!」
「ふむふむ」
「大工の棟梁みたいな」
「ふむふむ」
「悪党の大親分風でも良くてですね!」
「ふむふむ」
「顔に大きな切り傷があるような、顔も良いな、なんて!」
「ふむふむ、いいですわね」
「ですよね!それで、それで、悪風な見た目だけど、悪人ではない、みたいな!」
「ふむふむ、いけそうですわね」
「それでいて、性格は大型犬のように素直だったり」
「ふむ……それは難しいかも……いや、もしかしたら……」
「え?マールリ様。もしかして、この条件に該当する、素敵な方をご存知なのですか?」
「んん〜、そうねぇ」
「そ、その方は、フリーですか?」
「んん〜、そうねぇ」
「是非共、紹介してください!」
お母様〜〜!私もしかしたら、素敵な旦那様を見つけられるかもしれません!