40 前世のことを考える夜
今日から、復活。m(_ _)m
うふふ、あははと、楽しんでいる洞窟キャンプ。
ここでの生活は、冒険というよりは散策で、魔物のまの字もありませんが、冷たく硬い岩の宿はなかなか快適……は嘘ですけれど、本物感があって非常によろしい!
本物感って何だよっと言うツッコミは、聞こえませんの。こんな時は、アレですアレ!ア〜ワレワレハウチュウジン……あら?なんだか違うような?
うむむ。
私の前世の記憶は、商売をする上で、凄く役立つヒントになることはあるけれど、今の世界での生活向上にはほぼ役に立っていない。
前世の私がどんな家で暮らしていたのかとか、どんな家柄だったのかとか、一族の仕事は何を担当してたのかとか?そんなことも思い出せれば良いのに、考えても考えても、思い出せず。名前や性別すら謎のまま、今日に至る。
平和な国の平民だったことぐらいは覚えているけれど。
でも、多分、前世で受けた教育は、今の私の中に少しは残っていると思う。この世界での教育が、私にとっては凄く簡単に感じるものだったから。
言葉もね。セリフのようなものがポンと浮かぶことがある。そんな時は、意味を理解できるとかできないとか関係なしに、なるべく使ってみるようにしているの。だって、使わないと忘れちゃうでしょ?
前世で楽しんでいただろうゲームの夢は、小さい頃良く見ていたの。最近はあまり見なくなったから、寂しい。けれど、昔から夢に見たことや、頭に浮かんだことを、忘れないよう、記録するようにしてきたから、寂しさはあっても、困ることはないかもしれない。
ただ、ゲームの知識の中にも、使えないなと思うものが結構ある。
ゲームに出てきた高校という学舎のこともその一つ。多分、前世の私も通ったんだと思う。賢くなるのよ、通えば。でも、私が思い出せるゲームには学びのシーンがないので、この世界の学校に取り入れるのは、ちょっと難しいというか、嫌かも。
高校というのは、私の今住んでいる国では見たこともないような人ばかりが通う場所。教室と中庭と図書室と保健室と生徒会室と廊下で構成されている。
生徒も教師も、様々な髪色をしていて、髪型がおかしな形で固定されているの。そして、みんな目が異常に大きい!少年と少女が通う場所なのだけど、特にヒロインという名の女の子の目が大きくて!顔の半分が目なの。その少女はおパンツが見えそうなスカートを履いていて、何もないところで転ぶことが出来るのよ。毎回自分からおパンツを見せつけた相手に、上目遣いの涙目で泣きつくゲーム!楽しかったか?うーん。それは覚えていない。
前世の私の姿は思い出さないのが正解かもしれない。紫の炎のような髪型だったら嫌だし。顔中が目なのも怖い。
あ!短くないスカートで転ぶやつもあったわ!毎回自分で転ぶ癖に、私が嫌いだから、こんな酷いことをするのですね!私が平民だから!と周囲にアピールするの。それで、どうなったんだっけ……?王子とか騎士団長の息子とかも出てきて、そうだそうだ!とコールするゲームだったような?楽しかったか?うーん。それは覚えていない。
そんな高校の記憶で、役立つことは何か。
ない、かも。
よく夢に見たのは、森やら平原で戦う系。
街も出てきて、ギルドと食堂があって。宿なんかも出てくる。
HP・MP、攻撃力、防御力とかがあって、それが上がったり下がったりするのだけど、多分前世の私の興味はそこになく、美味しそうな食べ物のことや、格好良い武器や、筋肉ムキムキな冒険者のことばかりが記憶に残っている。大剣を振りかぶって、飛んだり跳ねたりして、魔物を倒していくあの姿。ホレちまうよね。
夢みたいな楽しい世界。心躍る世界。
小さい頃の私は、その夢の世界に常に憧れていた。
自分が生きている世界がつまらなくて、灰色に見えていた。
でも、家族は好きだし、一族のことも好き。可愛い弟も生まれたし、面白くてつまらない世界なら、私がなんとかすれば良いんじゃない?と、気づいた。
そこから始まるアーリエリアンナの世界大改造……は出来ていないけれど、冒険世界の素晴らしさを身内に伝道することには成功した気がする。
ボーボルド家洗脳により、冒険ロマンが止まらない一族が爆誕!
良い仕事をしたな、私。
そんな私が、プロデュースのキャンプ道具は、もちろん冒険者仕様。焚き火の上に吊るせるお鍋とか!袋型の水入れとか。フライパンもあるし、木の匙もある!毛布、たいまつ、ロープ、ナイフ、コップ、お皿もあるし。食料は、干し肉と、チーズと、酒、あとは硬いパン。塩と砂糖もある。
火は森の中では使っちゃダメだけど、洞窟の入り口付近での使用許可はとってあるので、昨日の夜は、焚き火して、パンとチーズを炙って食べるというミッションをクリア!シンプルすぎる食事だったけど、木苺食べ放題も付いていたので、弟の持つブラックホールは静かでした。
楽しい楽しい冒険キャンプ中に、前世のことを語るのは何故か?
それはね。
2日目の夜には、ちょっと飽きてきちゃったからです!えへっ。




