38 天国キターー?
本日も短め。
「姉様、姉様!この崖、魔物とかが出てきそうですよね!」
テンションを爆上げ中のアーリエリアンナに影響され、レーリスのテンションも急上昇!ロマリアには、姉弟共に、いや、(母を除く)一族総出で、妄想族であるとバレているせいか、遠慮なく、冒険の世界の住人になりきっている。
「そうね、魔物が出てきそう!うん、出るんじゃない?」
「いやいや、魔物は出ないと思うわ」
「ロマリア様、そこはサービスで、出まくるとかなんとか……」
「可愛い2人にはサービスしてあげたいけれど、魔物はちょっとねぇ」
「ちぇっ」
「出ないのですか……」
「残念でした。まだ、歩くわよ。例の場所はもう少し先だから」
「ハイホー」
「ハイホー」
期待した魔物との遭遇はなかったが、お楽しみはこれからだと、姉弟の足取りは軽い。そのまま崖沿いを歩いていると、いつの間にか周囲の木の種類が変わっていた。少し前まで背が高くて太い木が多かったが、ここにはまだ若いのか、そういう種類なのか、細い木が多い。
足元には腰までの高さのこん盛りワサワサした葉っぱの塊みたいな植物が生えていたり、トラップの様にこんがらがった雑草が生えていたり。山菜もそこかしこに生えている。
大きな茂みの中に、沢山の赤い木苺が見えた。周囲を見渡せば、黄色や、黒の木苺もこんもりした茂みの中に生っている。様々な色の木苺は、宝石の様に輝き、どれも美味しそうだ。
「姉様、あそこに黄い木苺が!あ、あっちには赤いのが!」
「ここは、楽園か!木苺、可愛い、美味しそう!つるんとしたのとかポコポコしたのとか色々あるね!」
「ここはうちの敷地だから、森に果物や山菜を採りにくる人間には見つかっていない穴場なのよ。まあ、商売にできる程の量じゃないから、ここに来た人間が少しだけお土産に持って帰ってくるぐらいで、あとは小動物が食べるだけね。食べたかったら、好きなだけどうぞ。山菜も取り放題よ」
「え?そう?じゃあ、冒険者生活の大事な食料にさせてもらいまーす」
「食料!!僕、山菜と木苺沢山摘みますね!」
「どうぞ、どうぞ。トゲには注意してね!」
「はーい」
「あ、あそこよ!」
木苺に喜ぶ姉弟の視線が、崖に向いた。
「おおおおおおおお!」
「うわああああああ!」
言葉になっていないが、アーリエリアンナもレーリスも、大興奮だ。
「姉様、姉様、崖に穴が!」
「洞窟キターーーーーー!!」
「はい、はい、落ち着いてね」
「いや、無理、落ち着けない!」
「ぼ、ぼ、僕も無理ぃ」
目的地の洞窟を前にした、姉弟のテンションはいつ落ち着くのか。
えーーーしばらくお待ちください。
…………もうしばらくお待ちください。