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30 大事な大事なアーリエアンナのこと

 あのリードル(鬼畜)様のお仕事で1〜2日ではないお休みをいただくなんてという、お母様からの的確すぎる指摘に、ちょっと感動してしまうアーリエアンナ。


 そう、そうなんですよ、あのリードル(上司)様ってば、休暇申請出しても、怖い顔して却下する鬼畜なのですよ。


 この王国の貴族令嬢は、基本的に、格上に嫁ぎたがらない。侯爵家以下は、女性の戦いの場である、家業に集中するのが当たり前。その為に勉強をしたり、市場調査をしたり、商品開発をしたり、商売の中で自分が力を一番発揮できる仕事を探すのだ。


 ボーボルド侯爵家本家にとって、アーリエアンナは現在唯一の姫で、直系の血筋には、4代ぶりの女児であった。先先代や現在の侯爵夫人のように完全なる他家から嫁入りしてくるケースはあるが、親族の多くは数代関係を持たなかった身内一族内で婚姻している。


 そのため、現王弟で、現公爵家当主であるリードルとの婚約は、お断りしたかったのが正直なところ。


 両思いならまだしも、アーリエアンナは、年齢差5歳の幼馴染として幼少期からリードルと交流があったにも関わらず、全くリードルに懐かず、苦手としていた。リードル側から政略結婚(ゴリ押し)の申し入れがあった時には、連日の親族会議で大変だったのだ。


 女の子なので、家を継ぐわけではないし、今は現侯爵夫人が、次には長男の嫁である次期侯爵夫人が、家業の責任者になることは決まっている。だけど、その時代の直系女子は、特別なのだ。当代である現侯爵夫人の娘であり、一族女性総出で手をかけて育てる(スパルタ教育)エース候補であり、キラキラと眩しく光る、未来の希望のような存在なのだ。


 逆に、娘比率の多い一族では、アーリエアンナの母のように、血筋的に政略が組みやすい本家の娘をなるべく外に出し、一族内で嫁入り先が不足しないようにしている調整しているケースもある。


 そんな訳で、アーリエアンナの嫁入り先は、一族のまた従兄弟とかそのあたりを希望!が一族の総意であった。当時はまだ王城に住んでいた王子リードルからの、正確にはリードルの熱意(執着)に負けた王家からの、命令とも取れる政略結婚(ゴリ押し)の申し入れを断る方法を、連日の親族会議でなんとか絞り出したかったが、返事の催促がきた1週間が経っても、何も出てこなかったそうだ。


 うちのアーリエアンナを、王族にされるなんて!

 王家じゃないだけマシだけど、それでも嫌だ、止められず無念だと!


 アーリエアンナが成長し、ある程度の年齢になるまでは、一族内で「どうにかして破談にすべき」という意見が消えなかったとか。今のボーボルド家一族にはもうない、懸念だ。


 賢く、自由なアーリエアンナを見ていると、不思議と嫁入り先がどうのという心配は無用な気がしてくるから。


 奪われてしまうと思った我が一族の姫は、公爵家に嫁入りしようが、公爵夫人になろうが、ボーボルド家出身の女性になってしまうのでなく、公爵家で活躍しながらも、ボーボルド家のアーリエアンナであり続けるだろうとの確信が持てたから。


 強くて、なんでも出来るアーリエアンナは、本当に嫁入りを阻止したいと思えば、自力で破談に持っていける子であるから、今の一族の心配は、「破談するなら、なるべく穏便に」が叶うかどうかぐらいなのだ。


 そんなこんなで、アーリエアンナが、嫁入り前に公爵家で公爵夫人になるべく教育を受けろと言われ、たったの1ヶ月でそれを済ませて、帰ってきた時も、家業が仕事の女性でも、成人前の本来は教育期間な今は、仕事をする義務はないはず!アーリエアンナは教育を早く終えすぎて暇なのだから、未来の夫の仕事を手伝え!と、就職を強要してきた時も、ボーボルド家の人間は最早焦らず、面白いことになったと笑えるようになっていた。


 一名だけ。生粋のボーボルドではない、母だけは、未だに愛娘の嫁入りのことを心配しているようなので、アーリエアンナとしては、無駄にヤキモキさせないため、母にはなるべく事後報告をすることにしている。


 王城や公爵家で、事務仕事でもしていると思っている娘が、まさか、王都の外で。囮の潜入捜査官をするなんて聞かされれば、心配してしまうだろうとの娘心だ。


 決して、うるさく言われるのがウザイとかではない。そう、決して。チガウホントニ。


 今からする母への報告。何から話せば、怒られ……いや、心配させずに済むか。やっぱりアレでしょうか?アレですよね?


「えー、お母様には、まず一番に大事なご報告があります。実は私、リードル様から婚約破棄されました!」


 このことは、晴れ晴れとした笑顔で報告できちゃいますよ!自信ありです!どうですか、お母様、良い報告ですよね?

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