24 少年少女はハイホーと叫ぶ
男性の下屋敷とは反対に、貴族家の女性が仕切る王都街屋敷は本邸から離れすぎると困ることもあり、ハイエリアとミッドエリアのハイエリアに一番近い場所に置かれることが多い。
近年、森の中の道が改善したことにより、早朝に宿を出発したアーリエアンナとレーリスは、途中で宿で用意してもらったお弁当を食べ、午後を過ぎた頃には森を抜け、ミッドエリアに入った。ここでも馬車道を使えば、王都街屋敷まであと少しだ。
今回。アーリエアンナは、仕事で王都街屋敷に向かっているわけではない。王都の本邸から逃亡し、弟と共に冒険の旅に出たのだ。
気持ちには、そんな感じ!
ていうか、そうだと良いと思うのよ!
そのほうが楽しいでしょ?
人生、テンションアゲアゲで楽しまなくちゃ!
現実なんて、みちゃダメ!
我ら平民姉弟!冒険者だぜぃ、ウェ〜イ!
森では、ハイホーと叫んじゃうぜぃ!
な感じで行くわよ、レッツラゴー!
そんな訳で、ついつい、ちょっと趣味に走った服装でここまで来てしまったのよ〜ん!
先月にね!?
いい感じにオーバーサイズなオフホワイトのシャツに渋い鋼色の細身パンツ!腰回りにナイフをセットできる幅広の飾り彫鹿革ベルトに、同じデザインのヒールブーツに!出会ってしまったの!
古着屋さんで、投げ売りしてたし!みんながいらないなら、私が買うしかないじゃない?
そりゃあ、買うわよね?買っちゃうわよね?買うでしょ!?
そ、れ、に!自分の店の品ではないということは、これは正真正銘、まともな平民服!
街で来て歩いても大ジョーブ!
家で試着して楽しむだけじゃなく、街歩きデビューしちゃって、オッケーな服!
カモンベイベー!でしょ?
でも、お母様にはエヌジーーーーーーーー!
バレたら、ヤッベェ
マジ、ヤッベェ〜ってやつ〜!
んん〜〜、こほん。
ありますの、持って来てますのよ、お母様に仕立てていただいた貴族令嬢らしい品のあるお忍び服も!
旅の準備で背嚢に荷物を詰めたとき、「平民服とぉ、下着とぉ、この間仕立てた格好良い冒険者風衣装とぉ」の後に、ちゃんと入れましたとも!ちなみに、今着ているのが平民服ジャンルにツッコンだお買い得な古着で、仕立てた格好良い冒険者風衣装はまだ温存しておりますのよ!必要な時が来たら着なくちゃですからね、備えあればというやつですわ!必要なとき、コイコイコイ!
私もですが、お母様にお会いする前に、昨日買ったばかりのピタピタつんつるてんではないおニューな古着をヨレヨレにして、腹ペコすぎて死ぬぅ!という感じで脱力しているレーリスも、凛々しい貴族の若様に戻さねばなりません。
レーリスの貴族令息らしい品のあるお忍び服は、ちゃんと彼のナップサックにはいっています。
大丈夫です。慣れていますのよ、私。きりっ!
当家の管轄外で、情報が漏れない筈!の、美味しい肉焼きランチのお店を知っておりますの!
個室です!このエリアの中では高級店ですので、お化粧室もついてますわ!
さあ、レーリス、好きなだけ食べると良いわ!
ここもお姉様の奢りでしてよ!3人前でも5人前でも、入るだけ召し上がれ!
食べたら、顔を洗い、身体を布で拭い、洋服を着替えて、髪を整えるのよ?
姉様は、支度に時間がかかるので、ささっと食べて、先に着替えますからね。
「あ、店員さん、この子に日替わりをとりあえず3食!私は肉丼1つ!この子は後で追加注文すると思いますから、よろしくね!」
ランチが届くまで、テーブルに突っ伏して動かないレーリスを横目に、アーリエアンナは、背嚢から、軽量素材のオシャレな旅行鞄を取り出し、背嚢から出した荷物を詰めていく。全ての荷物を出して空っぽになった背嚢は小さく畳んで布で巻いてから鞄に隠し入れる。
弟の背負い鞄はアーリエアンナお手製の大きめナップサックだけど、お母様公認!荷物を詰め替える必要なし。3年前に作ったので、少し古びているし、成長した彼には少し小さい。今度は肩紐がしっかりしていてポケットもある大きなリュックサックを作って、いや、面倒くさいから、オーダーしてあげようと考える、優しい姉であった。
ハイホー!
おほほほほ〜!