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【完結】非日常なんて日常茶飯事 ~平穏を望んでも、彼の性格でそれは難しい~  作者: しょぼん(´・ω・`)
非日常なんて日常茶飯事 第三巻 ~偽りの婚約者~

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第三十話:乙女達の決意

 雅騎が目を覚ましたと聞いて、いの一番に駆けつけたのはフェルミナだった。


 彼女は店を閉め、ここ数日ずっと雅騎の回復に努めていた。

 目を赤く腫らし、憔悴しきっていた彼女は、ベッドで上半身を起こし出迎えた彼の胸に、霧華や秀衡ひでひらの目もはばからず飛び込んでいた。


「馬鹿! どうして何時もそんな無茶してるの! あなたが死んだらどうするの! ご両親だって悲しむのよ! みんなだって悲しむのよ! 少しは考えなさい!」


 言葉は怒っていた。

 だが、顔は泣いていた。


 彼女の泣き顔に申し訳無さが募り。

 雅騎が謝ろうとした瞬間。


「ごめ──いっつ!!」


 フェルミナは彼の腹部を片手でぎゅっと掴んだ。


 激痛に身体が緊張し、咄嗟に彼女に抱き返すように腕でしがみつく形になった雅騎に対し。


「こういう時はちゃんと抱き返すのが大事なのよ。覚えておきなさい」


 ふふっと悪戯っぽく笑うと、涙をそのままに、暫し無事を確かめるように、雅騎を愛おしげに抱きしめていた。


*****


 その後、メイド達が同じく部屋にやってきた時にもまた、一苦労した。


「お嬢様。わたくしに彼の世話役をさせていただけませんでしょうか?」


 落ち着いた様子でしずが口にしたのだが。


「あ〜! しず様! 抜け駆けはダメですよ~!」

「せやなぁ。ここは平等に、雅騎はんに好みの子、選んで貰いましょか」

「な、何でそんな事になってるのよ!?」

「……結衣は、参加しない?」

「そそそそ、そんな事言ってないでしょうが!」

「全く。結衣は素直じゃないですね」

「うっさいわね! 大体アイナは普段こういうの乗り気じゃないでしょうに。なんでこんな時だけ……」

「そんな事も分からぬとは。こりゃ、本当に結衣は外しても構わんじゃろ? な? 良子」

「ちょ!? 冗談でしょ!?」

「いいえ。シャオさんの言う通りですね。さあご主人様。誰を選びます? あ、勿論結衣さん以外でお願いしますね」


 雅騎そっちのけで勝手に喋ったメイド達が、恥ずかしげに。悪戯げに。嬉しそうに彼を見る。


「え? あの? その……」


 予想しなかったあつにたじろいだ雅騎は、頭を掻くと、霧華に助けを求めるように視線を向ける。

 彼のあまりの間抜け顔に、思わず彼女もくすくすと笑ってみせた。


*****


 騒ぎが一段落した後、次に入ってきたのは普段通りのスーツ姿の圭吾と、着物姿の銀杏いちょうだった。


此度こたびもまた、娘達を救ってくれたのですね。本当に、ありがとうございます」


 雅騎の無事に安堵し、少し目を潤ませながら頭を下げる彼女に。


「助けられたのは俺の方です。頭を上げてください」


 これまた困ったように彼は必死にそう促した。

 続けて、圭吾が口を開いたのだが。


「お前が助けた十六夜いざよい家の御曹司の事だが……」


 少し言いにくそうな素振りをする彼に、雅騎は大きく深呼吸をすると。


「話してください」


 覚悟を決めた顔で、じっと圭吾を見つめ。

 圭吾もまたその視線に腹を括り、全てを話した。


 将暉まさきは無事だった。

 だが、やはり死への恐怖が強過ぎたのか。

 彼は強い幼児退行を見せていた。


 今までの記憶を失い、幼き頃に両親に甘えた記憶だけを話す彼の姿は、見るも無惨な姿。

 だが、二人の両親はその姿に心を痛めながらも。


「これまでの行いは、我々の育て方がいけなかったのです。ですから、今度は真っ当になるように、育てていこうと思います」


 父親がしっかりとそう口にし、引き取っていったのだそうだ。


 圭吾の話を聞きながら、雅騎と霧華はぐっと奥歯を噛む。

 自分達の命を脅かしたとはいえ、一人の男の人生を酷く変えてしまったのは間違いない。

 きっと、それ知らずに生きる選択もあっただろう。

 だがそれでも。


「話してくださり、ありがとうございます」


 雅騎はそれを受け入れ、背負うかのように。

 真剣な顔で、深々と頭を下げた。


*****


 こうして、色々な者の訪問を受けた雅騎だったが。

 目覚めてから数日。

 佳穂、御影、光里の三人が姿を見せる事はなかった。


 霧華が、彼が意識を失っている時にフェルミナが語った全てを聞かせた上で。


「あの子達には考える時間が必要なのよ。だから、待ってあげて」


 そんな優しい言葉を掛けるも。


「フェルねえの言う通り、きっとまた俺は無茶して哀しませると思う。だから、これで縁が切れた方がみんな幸せでいられるさ。如月さんも、俺なんか気にせず離れた方が良いよ」


 と、彼は何処か寂しそうに笑った。

 向けられた笑みに心を痛めつつも、彼女はそれを表に見せず呆れるように笑い返す。


「私は、貴方が嫌がってもずっと側にいるわ。貴方の困った顔見るの、案外楽しいもの」


 冗談か、本音か。

 それは分からない。


 だが、フェルミナと同じく、その選択を口にしてくれた彼女に、雅騎は少しだけはにかみながら、


「ありがとう」


 そう、感謝を口にした。


*****


 あの激闘から丸一週間。

 新たな日曜は、二月に入る直前にも関わらず、春先の暖かさを感じる快晴だった。


 風もなく穏やかな中。

 佳穂、御影、光里の三人が、霧華の案内で深空みそらの墓の前に立っていた。

 互いに冬物のコートを着込み、私服姿のまま。墓を掃除し、仏花を供え、線香を焚き。

 皆が並んで手を合わせる。


「ここが、例の者の墓か?」


 拝み終えた御影が神妙な顔で尋ねると。


「ええ。雅騎が昔助けられなかった、彼の()()()の墓よ」


 霧華もまた目を開くと、三人に身体を向け、真剣な顔で口にする。


 想い人。

 フェルミナが語らなかった真実を口にされ、御影、光里、佳穂の三人は思わず顔を見合わせた。


「でも、どうして私達をここに?」


 佳穂が疑問を呈するのは最もだろう。

 三人は前日に突然、霧華に今日自分に付き合えと半ば強引に約束させられ、車に乗せられここに連れて来られた。

 それまでに理由も場所も明かされずに。


「そうね。決意表明って所かしら?」


 何処か不穏な言葉を口にしながら、霧華は三人をじっと見た。


「雅騎が目覚めたと伝えて数日経ったけれど、三人共まったく顔を出さなかったわね。フェルミナさんの言っていた通り、雅騎にはもう逢わないって事で良いのかしら?」


 その言葉に、三人は気まずそうに視線を落とす。

 誰も言葉を発せず、迷いばかりをはっきりと顔にして。


 そんな三人の煮え切らぬ姿にため息をいた霧華は、今度は質問を変えた。


「佳穂。フェルミナさんが言っていた『死んでもいいなんて言わないで』って言葉。何処で彼に掛けたのかしら?」


 突然名指しされ、思わずビクッとした佳穂が、上目遣いに霧華を見ると、彼女は真剣な表情のまま見つめ返してくる。


「……それは……」


 佳穂は少し躊躇うも、有無を言わさぬ雰囲気を漂わせる彼女に根負けしたのか。ゆっくりと語り出した。


 雅騎がエルフィを追って来た妹、レイアに命を奪われ掛けた事。

 エルフィが彼女から真意を聞き出すため、決闘デュアラスを挑んだ事。

 その中でレイアが、姉が無実だと気づき、姉の手で殺されようとした事。

 雅騎がそれを止め、代わりに命を落とし掛けた事。


 その時の意識なき雅騎を思い返してか。

 彼女の声が少し震える。だが、佳穂は涙を堪え、語り切った。


「……これが、その時の全て」

「そう。辛い事を話させて悪かったわね。ありがとう」


 気落ちする彼女に、意外にも優しく微笑み返した霧華は、表情を戻すと、今度は御影を見た。


「御影。貴女は私達を騙したわね」


 これまたびくっとした御影が、ばつの悪そうな顔を霧華に向ける。


「やっぱりあの時、雅騎が助けに行っていたじゃない」

「え?」


 思わず顔を上げた佳穂に、ちらりと視線を向けた霧華は続きを語る。


「ほら。御影がいなくなった時。彼がバイトを休んでいたでしょ?」

「……まさかあれって、フェルミナさんの、嘘?」


 佳穂も唖然としながら御影に視線を向けると、悔しげに頭を掻いた御影が開き直った。


「仕方なかろう! 雅騎に口止めされたのだ。お前達に天野様がついた嘘を真実とせねば、二人が不安になるからと」

「ふふ。雅騎らしいわね。で? 何があって、どう助けられたの?」

「そ、それは……」


 更なる追及に思わず口を濁す御影。

 あの時の戦いを思い出し、少しだけ辛そうな顔で俯く。

 そんな中。


「私が、お話しします」


 凛とした表情で口を開いたのは、光里だった。


 彼女は語って聞かせた。

 神降之忍かみおろしのしのびの因縁の相手、羅恨らこんの存在。

 それを封印し続けるため、二人が行わなければいけなかったにえの儀。

 それを止め、神降之忍かみおろしのしのびと傷だらけになって戦った雅騎が、そんな身体のまま自分達と共に羅恨らこんに挑み、未来を繋いでくれた事。


「結局。私も姉様ねえさまも、また雅騎様に、救われたのですね……」


 口惜しそうな顔で俯き、しんみりと話す光里に釣られるように、その時の事を思い返した御影も唇を噛む。


「……情けない。私は結局、あいつに助けられてばかりではないか」


 悔しそうに語る彼女に。


「そうね」


 短く相槌を打った霧華は刹那。ふっと微笑む。


「でもそれは、私も同じよ」


 その言葉に、皆の視線が集まると、彼女もまた語って聞かせた。


 過去に命がけで助けられた、あの日の事を。

 そして、父の想いが空回りして経験した、ひと時の同棲生活を。


 最初は神妙に聞いていた三人だったが。

 同棲生活の話を聞いた瞬間。佳穂と光里は強く驚き、御影はその顔を真っ赤にして狼狽うろたえた。


「霧華! お、お前はこの間、雅騎とは何もないと──」

「ごめんなさい。あれは嘘よ。まあ一度だけ一緒のベッドで寝たけれど、勿論何もしてないし、何もされなかったわ。あながち間違いじゃないでしょ?」

「いっ!? 一緒にベッドで、寝ただとぉぉぉっ!?」


 露骨に強い戸惑いを見せる御影に、可笑しくなったのか。

 霧華は思わず小さく吹き出してしまう。


「ええ。でも以前言った通り。あの時の私は雅騎に助けられ一緒に過ごしていただけで、まだ好きとまでは思っていなかったわ。過去に助けてくれた恩人かもしれない。だけど十六夜いざよい先輩がその恩人の振りをしていて、戸惑いばかりだったから」

「……()()、ですか?」


 察しのいい光里がぽつりとそう口にすると。霧華は真面目な表情で、こう宣言した。


「ええ。今は違うわ。私は、雅騎が好きよ」


 瞬間。

 三人は一気に目をみはり唖然とし、言葉を失う。

 だが、そんなものは関係ないと言わんばかりに、彼女は語り続けた。


「彼は幾度も私を助けてくれたわ。幼き日もそう。ドラゴンとの戦いでも。御影がいなくなり不安ばかりだった時も。父のせいで私が路頭に迷いかけた時も。私が十六夜いざよい先輩が恩人だったらどうすべきか迷った時も。そしてあの塔でも。私はそんな彼の事を想って気づいたの。やはり側にいたい。共に歩みたい、とね」


 しっかりと告げられた想いに、三人は未だ何も言えず、視線だけを落とす。

 そんな中、霧華は問いかけた。


「御影は、ずっと前から雅騎を好きだったわよね?」

「なっ!? 何を言って──」

「見え見えよ。私が以前病院で彼の事を聞き出そうとした時、随分恥ずかしそうにしてたけれど。幼馴染というだけで、あんな反応しないわ。その癖、幼馴染として親しいアピールだけは露骨に強調して牽制する。それで惚れてないわけないでしょう?」


 図星。

 顔を一気に赤くした彼女は、またも頭を激しく掻くと。


「あぁぁぁぁっ!!」


 やけになって叫んだ。


「悪いか! あいつは私が小さい時、ずっと家で独りだった私にできた初めての友だった。私の我儘に応え、親に見つかり説教を食らった時も、自分が勝手にやったと庇ってくれたのだ! 一度あいつが引っ越し離れ離れになって気付かされた! 私はあいつが好きだったと! だから再会できて喜んだのだ! ずっと側にいたいと思ったのだ!」


 一気に捲し立てるようにそこまで叫んだ御影が、荒くなった息を必死に整えながら、顔を真っ赤にしたまま霧華を睨む。

 彼女は満足そうな笑みを返すと、次に光里を見た。


「光里。貴女もよね?」

「な!?」


 予想外の言葉に強く驚いたのは、またも御影。

 対する光里は顔を真っ赤にし、もじもじとしている。


「貴女って御影に似てるわ。彼の事を話す時、何処か夢心地で、嬉しそうに話すもの。違う?」


 そう優しく問いかけられ。暫しちらちらと霧華と御影を交互に見た彼女は諦めたようにため息をくと、覚悟を決め話し出した。


姉様ねえさま、申し訳ありません。私は私達を助けてくださった、優しく、素敵な雅騎様と出逢い、多くの優しいお言葉を掛けられ、とても嬉しく感じました。そして、私達姉妹の為に戦い抜いて下さった姿を見て、ときめいたのです。この方と一緒になれたら、どれだけ幸せかと……」


 話しながら、また彼との想い出を振り返ったのか。幸せそうな顔をする妹に、御影は驚愕したまま、やり場のない感情にわなわなと震えている。


「佳穂はどう? 随分と彼の事信頼している口振りだったから、同じじゃないかと思ったのだけど」

「私は……」


 最後に問いかけられた佳穂は、自信なさげに俯くと、目を合わせぬまま話し出す。


「私ね。今まで男子でまともに話したのなんて速水君位で。それまで、誰かに憧れたり、好きになった事もなくて。ずっと好きって気持ちが、分からなかったの」


 そこまで口にして目を閉じると、ふっと小さく笑い、首を横に振った。


「ううん。きっと、分からないって、思い込んでたの」


 そしてすっと、顔を上げると、霧華を真剣な瞳で見つめる。


「私。速水君と話せるだけで嬉しくて。速水君に背中を押されたら頑張らなきゃって思えて。一緒にいられたら幸せで。でも、霧華と速水君が付き合ってるかもって噂を聞いた時、すごく切なくて、辛くなった。だからきっと、私も速水君の事……好き、なんだと思う」


 初恋を認めた佳穂の視線に、霧華はまたも満足そうに笑みを浮かべ。光里もまたその気持ちを理解して微笑む。唯一御影だけは、ライバルが増えた事に困った表情のまま。


「……まったく。彼は本当に優し過ぎるわね。だから惹かれるのだけど」


 呆れたように口にした霧華は、次の瞬間。少しだけ寂しげに笑った。


「でもね。今、彼が好きなのは、そこにいる助けられなかった子だけ。ずっと、彼女への後悔に縛られてるのよ」


 そう言って視線を墓に向けた彼女に釣られ、皆が墓をじっと見つめる。


「私は、雅騎がその傷心から立ち直り、幸せな未来を歩めるまで、ずっと側にいて見守ろうと思ってるわ。勿論、彼が私に振り向いてくれるとは限らないけれど。それでも良いの。私は少しでも共に歩みたい。彼が私達の為に傷つくかもしれなくても。私が彼の姿に傷つく事があっても。共にね」


 その言葉に、三人は改めて霧華を見つめる。

 浮かびし表情から読み取れる本気。そこに、彼女の強さと決意を感じる。

 と。そんな彼女が三人を真剣な目で見た。


「貴女達はどうなの? もう逢わなくて本当に良いの? そんなに助けられた恩義を感じているのに? これだけ好きな気持ちを抱えているのに?」


 その言葉が煽りではない事を、三人は彼女の表情からはっきりと感じ取る。


 恋敵こいがたきとなるはずなのに。

 それはまるで普段と同じ。戦友に向ける顔。


 互いに見つめあっていた四人だったが。ふぅっとため息を漏らした御影は、何かを吹っ切ったように、笑った。


「お前には敵わんな。霧華」

「あら。褒め言葉と受け取っておくわ」

「私はやはり、雅騎様に逢いたいです」

「うん。元気になったなら、早く元気な顔を見たいね」


 続くように、光里が。佳穂が笑みを溢したのを見て、霧華が告げる。


「いい? まだ雅騎は傷心中。だから無理矢理奪い取ろうなんてのは止めて。あと、将来彼が誰を選んでも、恨みっこなしよ」

「うん!」

「分かりました」


 佳穂と光里は素直に応えるも。


「……正直耐えられるか分からんが、努力はする」


 御影は何処か不満げに口を尖らせ、何とか納得する。

 その姿を見て、光里がくすりと笑った。


姉様ねえさま。そんな顔を見られたら、幻滅されますよ」

「う、うるさい! 雅騎はそんな心の狭い奴ではない!」

「うん。きっと大丈夫! 呆れそうな気はするけど」

「か、佳穂!? お前まで霧華みたいな事を言うのか!?」

「あら、心外ね。やっぱり御影は置いていこうかしら」

「ふ、ふざけるな! お前達だけで逢うなど許さん! 絶対許さんからな!」


 顔を真っ赤にして必死になる御影に、皆が思わずくすくすと笑う。

 そして霧華が手桶を手に持つと。


「貴女の分まで、私達が雅騎を守り、幸せにしてみせるから」


 墓に向け、笑みを浮かべそう告げると、頭を下げた。

 佳穂と光里ももう一度手を合わせ、静かに頭を下げたのだが。


「折角なのだ! 頼むから私を選ぶよう雅騎に伝えてくれ!」


 まるで神頼みするように拝む御影に、流石に三人は呆れて彼女を見た。


姉様ねえさま。流石にそれは罰当ばちあたりですよ」

「うるさい! そこの娘が認めてくれれば公認だぞ! 公認!」

「その言い方は、本気で幻滅するかも……」

「う……。そ、そんな目で見るな! それよりさっさと雅騎の所に行くぞ」


 佳穂と光里の白い目に晒された御影は、耐えきれなくなったのか。一人先行して歩き出す。


「あ! 姉様ねえさま!」

「慌てたって、みんな同じ車だよ?」

「うるさいうるさい!」


 慌てて彼女を追いかける二人から逃げるように、早歩きで歩を進める御影。

 何処か明るげで、普段らしさを感じる彼女達を見てはにかんだ霧華もまた、ゆっくりと歩み出す。


 暖かな陽射しを浴びながら。四人は互いの心に決意を持ち、去って行った。

 彼と共に歩む事になる、新たなる未来に導かれるように。

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