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他の学校へ行ってみる

学校~夜~

彼女は廊下を歩いている。


場所は学校。外では月が太陽の代わりに辺りを照らしている。月明かりに照らされている校舎は、日中の校舎とは異なる白さを出している。

日中では、日常の象徴とも言える学校。

しかし、夜の学校にそんな雰囲気は一切無い。


そんな中、彼女は一人廊下を歩く。前を向きながら歩く。ただ、その目には光がない。意識があるのか、ないのか。それさえも、その目からは読み取れない。

彼女は、ただ歩き続ける。

そう、前を向きながら。

彼女は、気づいているのだろうか。彼女の後ろには、月の明かりではない光がある。彼女が通り過ぎた窓には、何かが写っている。


彼女は廊下を歩いている。


彼女が、いつから歩いているのか。

彼女が、どこまで歩くのか。

彼女が、いつ校舎から出られるのか。


それは、誰も知らない。


彼女は、廊下を歩き続ける。








「夜の学校を探検してみようか」

この言葉が始まりだった。



卒業も近くなり、なにか思い出に残るようなことをしてみたかった。かといって、旅行に行けるほどお金もなかった。話し合っているうちに、彼女は言った。

「夜の学校を探検してみようか」

確かにそれはおもしろそうだった。お金もかからない。見つかったら大変かもしれないが、この学校には夜先生がいることはなかった。見回りをする人さえいないのだ。

その事をもう少し深く考えれば良かったのだが、その時は考えなかった。

ただ、都合がいいと思っただけだった。


結局他にいい案もなかったので、夜の学校に行くことになった。


その日は、雲が少しあるくらいの満月の夜だった。

学校には簡単に侵入できた。見つかりにくい場所の窓の鍵を開けといただけ。本当に簡単だった。戸締りくらい事務員が確かめたはずなのに簡単だった。中から誰かに、招かれたような簡単さだった。

この学校には、よくある七不思議や怖い話は特になかった。ただ、周りに墓場があった。この学校がある場所は昔墓場だった、という話があるが、それは当たり前といえば当たり前だ。学校というたくさんの土地を使う建物を建てるには、お金が掛かる、土地が安く土地が広い墓地を使うのは、よくある話だった。この学校もそうだったのだろう。しかし、彼女たちはそのことを知らない。ただ周りに墓場があって不気味だな、程度の認識だった。

探検は何事もなく進む。定番の理科室、保健室などを巡り、何事もなく進む、特に何かが起こるわけではない。

ただ、夜の校舎という不気味さが、いつも通っている学校をなんだかいつもと違うように感じさせるだけだった。どこまでも、続いていそうな廊下と階段。日中は、人で溢れている教室。いまそこに、あるのは整然と並ぶ机と椅子。あたりまえの様に並んでいるそれが、とても不気味に見える。

しかし、それだけだ。何事もなく探検は続き、一通り巡り、何も起こらなかった。

彼女たちは、気づいていない。

彼女たちの後ろにある光。窓に写っているものに。

彼女たちは学校を出る。入ったところの窓から出る。

月明かりはない。

月は雲に隠れている。

暗い。

そんな中、彼女たちは帰ろうとする。帰るほうが大変なのは、当たり前なのに

カラカラカラ

軽い音がした。後ろからだった。振り向くと、窓が開いている。彼女たちが、出てきた窓だった。彼女たちは、見つめあう。お互いに考えていることを口にはださない。しかし、考えていることは一つしかないだろう。

あの窓、今、開いた?

一人が、おもむろに窓に近づく。その一人をただ見守る。そして、窓を閉めた。彼女は、走って戻ってくる。そして、みんなの顔を見て、

「さぁ、帰りましょう。」

引きつった顔で、笑いかける。


カラカラカラ

引きつった顔のまま、彼女は固まる。軽い音がした。後ろからだった。彼女は振り向けない。みんなの顔を見れば、なにが起こったかわかったからだ。いや、そんな理由がなくても彼女は振り向くことはできなかっただろう。しかし、何かに引っ張られるように、振り向きたくないけど、向いてしまう。

窓が、また、開いている。

彼女たちは動けない。なにかに捕まったように、そこから動くことはできない。


開いた窓の向こうに、明かりが見えた。

懐中電灯のような光だ。先生かと思った。でも、この学校は夜誰もいない。何故か、誰もいないのだ。

しかし、明かりは確実に見える。ゆらゆらと揺れながら少しずつこちらに近づいてくる。一つ、二つ、三つ、四つと、明かりが増える。増えながら近づいてくる。

急に周りが、明るくなった。月が雲から出てきたようだ。

校舎が明るくなる。窓から入る光で、彼女たちはそれを、見た。

その明かりは、懐中電灯の光だった。それだけなら、問題なかった。問題は持っている者だった。人だった。あの状態で歩けるならば、人と言えた。

あるものは、頭が半分だった。目がない。虚ろな空洞があるだけ。腕が無かった。胴体に穴が開いていた。穴からは、何かが出ている。片足で進んでいる。手足が、皮一枚で繋がっている。その手足が、歩くたびに揺れる。そして、取れる。血が、流れ落ちる。しかし、近づいてくる。歩いているような、進み方ではない、滑るようにゆっくりと・・・・・

生きている者ではなかった。もはや、死んでいるものだった。

一番前のものは、すでに窓際に辿り着いている。

しかし、こちらにはこない。ただ、こちらを見ている。目が無いものも、見ている。じっと、こちらを見ている。

彼女たちは、ただ震えるしかない。おびえるしかない。動くことはできない。叫ぶことさえできない。

後悔することしかできない。

月がまた、雲に隠される。

また、見えなくなる。


パン

それを、待っていたように軽い音がした。

彼女たちは、音がしたほうを見てしまう。それが、義務のように見てしまう。

音がしたのは、二階の窓だった。手形があった。あんな軽い音では、つきそうもない手形だ。月光がない状態でも、はっきりわかった。

パンパンパン

また音がする。音が一つなるたびに、窓に手形がつく。

いや、手形ではなかった。手そのものが張り付いている。見えるのは手だけだ。そ

こに、顔はみえないし、胴体があるとは思えない。

パン。

今度は、三階に一つ。

パン。

また一つ。

パン。パン。パン。パン。パン。パン。

バン。

大きい音がした。先ほどとは、音の質が違う。

窓に、顔が張り付いている。窓全てに、顔がある。先ほどの手の持ち主なのだろ。窓に張り付いて、こちらを凝視している。窓に手をつき、顔をつけこちらを見ている。恨めしそうな目だ。窓全てに、その顔がある。全ての顔がこちらを見ている。怖い。

バン

一つの窓で、手が窓を叩き始めた。窓を叩き壊そうとしているようだ。

バンバンバンバン

それに続くように、他の窓でも手が叩き始める。そこから、出たいかのように叩き続ける。


声が聞こえる。どこから、ともなく聞こえてくる。

おいで、とも聞こえる。出て行け、とも聞こえる。こっちへ来い、とも聞こえる。あっちへ行け、とも聞こえる。校舎で声が、反響する。近くで、聞こえているような。遠くで、聞こえているような……





彼女たちは、気を失ってしまったようだ。

朝、教師に保護された。

彼女たちは、夜の出来事を話す。そんな彼女たちに、教師が言う言葉は、一つだけ。


「夜の学校には、二度と近づくな」


学校シリーズみたいなホラー短編でした。


終わりかた、微妙ですね。


終わりが1番重要ですけど

1番難しいですよね。


読んでいただきありがとうございました~

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