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作者: べっかんこ

 先生は、難しい文献の講釈と、回向の織り交ぜた、頗付に有り難いお話の中に、自己を埋没させて仕舞っていた。丸で、開闢以来より、因果が己に在る様な口吻で、御説法を施してくる。聞くに耐えない、胸が悪くなる。机の下で女性の耽美の本を盗み見てると、先生のと、おのが視線が交わってしまった…。右手には、服の開けた嬋媛たる美女の山だ。改頁すればする程、胸の底で茫然と蟄居する、無分別の禽獣が幅を取る。私は此れを滅茶苦茶にしたいと言う、素直な了見をむらむらと起こした。そんな思索を巡らせている裡に、左手の剥がれ掛けた爪が、血の脈打つ度に、痛い痛いと何度もうねった。先生は眼の逢った一刹那丈、そのど頭を優しく掻き毟った。慌てて私は盗人の手を止め、自己省察のお時間に這入った。

さて私の住む塵芥に於いての自我に対しては、衰退、矮小、卑小、萎縮等の語彙が当てられるかもしれないが、私たちの自我は益々肥大している。見呉こそ美醜様々なものが有るが、嬋媛たる美麗さを具した者が、塵芥の塵芥に至る迄の煤煙を、靡けて仕舞う単簡な調子を持っている事だ。然もおのが善悪を超越して、美醜に拘泥する物が有る。心衷でその獣欲に拮抗する、無私の情が有るかどうかである。火の不始末、餉の食止の如く心甫では不安の感が多過ぎるのだ。岨の多く、様々な起伏を連ねた崖の岩上の様に、塵を多く湛え、又潢洋たる海より打ち上げられた水の少なきに、残り切れなくなく飽和して、取り残された塩の如く塵が残る塵芥では、分別の弁えぬ禽獣のみが蔓延り、不吉な象を具している。住む事に於いては、零落の極である。

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