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声優『月影凛子』
リアのポケットからジリリリリリと昔の電話のような携帯音が鳴った。
「はい! 『月影凛子』です!」
月影凛子はどうやらリアの芸名らしい。
「はい! はい! え!? 役が決まった! わかりました! 失礼します!」
リアは涙を流しながら、なぜかカヨにハイタッチした。
「わー。リアさん合格おめでとうございます!」
「ありがとう!」
「どんな役なんですか?」
「海外アニメの主人公の飼い猫!」
「は、はぁ……」
カヨはそれがどれほどすごいのかわからず曖昧な返事をした。
リアほどの技術を持ちながらなぜあまり声優の仕事がないのか一番の謎だとカヨは思った。
天才は人に知られるから天才なんだ。
明日、アナタが出逢うであろう知らない人から知っている声が聴こえたら。
ボイスパイはアナタのすぐ側にいる。




