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青春ってなんだ。  作者: 京極 凛
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【第1章 登校時間 黒崎ナリ】〜 【第1章 2限目裏の顔】

【プロローグ】


日本随一の有名校 聖アリナ女学校


多くの官僚や政治家の娘、社長令嬢の通う言わゆる「お嬢様学校」だ。


ここは男子生徒禁制の女子の花園。容姿端麗な生徒も多く通うのでモデルや女優として芸能界で活躍する生徒がいるのも珍しくはない。


しかしこういった学校は「裏の顔」があるものだ。

誰もこの輝かしい空間で大量虐殺が起こるとは想像しないだろう。


【第1章 登校時間 黒崎ナリ】


私、黒崎ナリは今年中学1年生の13歳。

父は国の官僚。母は教育評論家。2つ上の姉が1人の4人家族。

私は自分で言うのもなんだが絵に書いたような裕福で幸せな空間で生きている。

私のような生徒が通うに相応しい学校は聖アリナ女学校しかない。


明日は聖アリナ女学校の入学式。

私の青春がやっと始まる。


【第1章 1限目 入学式】


「ナリ入学式遅れるぞ」

私の父、隆弘が言う。


「まって!まだメイク終わってない〜!」


今日は久しぶりに父にあった。子供っぽく少し浮かれているのを隠すことが出来ない。

普段両親が仕事で忙しく常に家にいることはない。だからたまに集まるこういった大きな行事は本当に楽しみだ。


結局予定の5分遅刻でドライバーの運転する車に乗り込んだ。

車では無言。父だけ電話で誰かと話してる。

いいのいいの。一緒に入れるだけで嬉しいから。


学校に到着すると物凄い量のテレビ局、リポーターが目に付く。

当たり前か。日本で1、2を争う有名学校の入学式なんだから。

噂に聞くとここでスカウトされる人も多いらしい。


父は娘の私が芸能界の荒波に揉まれるのが嫌で声掛けられる前からやめとけと言われてる。

いつも家にいなくて私の事気にも留めてないはずなのに、そういう所だけは嫌がる。私の希望より何かあった時の世間体の方が大事なのかな。


カメラを向けられた正門に向かって歩くと少し有名人になた気分だ。


受付を終え、校舎内に入るとそこには異様な空気が流れていた。

2、3年生全員240人が壁1列に私達の出迎えをしている。


凄いのではない。異様なのだ。


誰一人として姿勢を崩さず目線も動かさない。皆同じ高さの位置で髪を結び服も一緒。違うのは顔だけだった。


素直に私は「気持ち悪い」と思った。


生徒が並ぶその廊下は、なぜだか物凄く寒くて冷たかった。


凍った廊下を通り1-Aの教室に入る。


「ナリ!!」


元気よく私を呼ぶ声の主は、足立ミサキ。小学校からの同級生だ。私を一番よく知る子。


「ミサキ!一緒のクラスでよかったー!ほっとした よ!」

「私も私も!友達できるか心配でさー」

「ねぇミサキ、さっきここの廊下通った…?」

「通ったよ。みんな怖かったよね…。

さっき通ってる時さ気のせいかもだけど1人泣いてる 人いて、顔にアザがあって。ここの生徒大丈夫かな?暴力沙汰?」

「そんな人いたんだ。どうしたんだろうね。」


周りにはクラスメイトが続々と入ってくる。

もちろんだが1つ結びで揃えている訳では無いので私達1年生だけが浮いている。そんな感覚だった。


私達がそんな話をしてるうちに、男の人が1人入ってきた。

「皆さん!ご入学おめでとう。担任の須崎 翔吾です。 1年間どうぞよろしく!」


第一印象は不覚にもかっこいいと思ってしまった。そして明るい。さっきの廊下とは打って変わって太陽のようだ。

まずこの人が担任で良かった。そう思えた。


【第1章 2限目 裏の顔】


入学式を終えてから2日経った。今日は集会や教科書配布などをして、明日からは授業の予定だ。


今日は校舎内で朝から嫌なものを見た。


ミサキと一緒に校門をくぐり校舎に入ると、女子生徒1人が目に入った。一緒にいるのは教師と思われる男性が1人。男性の先生は担任の須崎だ。須崎がなにか話している。


「おい。お前何年何組の生徒だ。答えろ。早く。」

「1-Cです。」

女子生徒が答えると、

「お前生徒の分際でそんな格好していいと思ってんのか? ん? 生徒指導するからこっち来い。泣いてんじゃねーよ悪いのどっちだ。ノロマ。早く来い。」


須崎は女子生徒の細い手を乱暴に掴んで歩いていった。女子生徒は恐怖からか足がすくみ、まともに歩けていない。すると須崎は女子生徒の結んでいない綺麗に巻かれた髪を鷲掴みして引っ張りながら歩いていった。


ミサキと私は須崎と思えない言動に恐怖を覚え、足が止まった。


誰か助けてあげないと。


生徒指導でそんなこと思うことがあるだろうか。周りの教師は見て何もしない。いや、教師同士で嘲笑っていた。


ここの教師終わってんな。そう思った。


ミサキと私はホームルームまで時間があることを確認し、勇気をだして生徒指導室まで行くことにした。


ー先に言うと、この時私は行かなければよかった。この行動が私を大きく変えたから。だが今の私はそんなこと知らない。


ミサキと私は生徒指導室に着いた。物音1つしない。


おかしい。あの勢いで入ったら暴言の一つや二つあるはずだ。


ミサキと私はノックをして入る。中には誰もいない。

おかしい。須崎はここに向かって歩いたから。

中に入ると「入室禁止」の文字が書いている扉があった。中からなにか聞こえる。

すると ガン!! と何かを叩きつけるような音がした。

ここだ。

扉を開ける。


「は…?なに…やってんの?」


思わず声が出てしまった。

須崎は女子生徒の腹に蹴りを入れていた。1回では無いのが女子生徒の意識の朦朧さを見ればすぐわかる。


須崎が口を開く。


「あれ。黒崎さんと足立さんじゃないですか〜!どうされました?なんでここにいるんですか?」


「朝その女の子連れて行くのをついて行ったらここに着いたのよ。何してるの。暴力じゃない。」

「何言ってるんですか。正常な生徒指導ですけど。てかなんで勝手に入るんです?非常識過ぎませんか。それともなんですか。生徒指導されたいんですか?」


こいつやばい。今ここで口論したら確実に殴られる。蹴られる。


「そういう話じゃないわ。とりあえず生徒指導は終わったかしら?その子クラスに連れていくわ。」


「ああ、それは非常にありがたい。

それと忠告ですけど、この事変なふうに言ったらこの女子生徒より強い指導行わざるを得ないですからね。」

「了解しました。ミサキ行くよ。」


私とミサキは女子生徒の方を担いで指導室を出る。

クラスではなく保健室に連れていった。彼女の足取りは確かではない。明らかにふらついている。こんなになるまで何をされたんだ。


保健室入る。

「先生!助けてください。今にも倒れそうなんです!」

「あーはいはい。ここのベットに寝かせておいてー!」


いや、雑かよ。


ミサキと保健室を出る。

朝のホームルームまで時間がギリギリだ。指導される前に教室に急がなければならない。


この学校はなんなんだろう。軍隊か?牢屋なのか?


私こんなとこで青春謳歌できるのかしら。


ホームルームが始まる。無事時間には間に合った。さっき会った須崎が鬱憤を晴らしたような表情でクラスに入る。

諸々の連絡を終えると最後に一言。低く感情のない声で、

「今日の放課後黒崎は生徒指導室まで。 はい!ホームルーム終わり!今日も1日授業頑張るように。」


言葉通り


ああ、これ死ぬ?


そう思った。


【第1章 3限目 生徒指導室】に続く…


【第1章 3限目 生徒指導室】に続く。

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