パズル
肌寒くなってきた2月。私の通う高校でも美味しいと評判のカフェテリア。
そんなところで本……雑誌とにらめっこしている私は、奇異の目を向けられても文句は言えないだろう。
「お姉ちゃん、まだ〜?」
向かいの席に座った、私とそっくりな顔をした少女……美佳が、退屈そうに頬杖をつきながら口を開いた。
私はその言葉に、伏せていた顔を上げて、軽く睨むように視線を向ける。
「……そんなにヒマなら、少しは手伝おうとか」
「思わない」
私の言葉を遮って即答する美佳に、私は今日になって何度目か分からないようなため息を吐きながら、こうなった理由を思い出していた。
発端はいつものごとく、美佳の一言だった。
「お姉ちゃん。新しいパズルの雑誌買ってきたから解いて〜」
この言葉を聞いた私は、ゆっくりと口の中で反芻してから、思わず聞き返していた。
「……一緒に解こう、じゃなくて?」
「うん。ほら、私はただ純粋に懸賞に応募したいだけだから」
「そうじゃなくて。私が、一人で、このパズルを、解くの?」
一言一言を区切ってゆっくりと分かりやすく聞いてみると、美佳は満面の笑みで頷いた。
「うん」
……まぁ、そんなわけで私一人がパズルに挑戦することになったんだけど、それならと言うことで出した条件が、このカフェテリアだった。
「私もう飽きたよ〜……」
そんなことを言う美佳を無視して手を進める。
「……よし。これでおわりーっ」
最後の文字を記入してシャーペンをテーブルに置く。
そこで思わず出した声に気づいて、辺りを見回した。
店は相変わらずゆったりとした音楽が流れ、ほかの人たちも気にしてないようで、ホッとしながら前に向き直る。
「終わったの?」
そこでは美佳が目を輝かせていた。
私が頷くと、お疲れ〜、と言ってカフェを差し出してくる。
私はそれを受け取って飲んでから、席を立った。
「じゃ、そろそろ行こっか」
「うん」
「お姉ちゃん、ありがとね」
帰り道で機嫌良さそうにそう言う美佳の頭を撫でる。
「良いよ、別に。それに楽しかったしね」
「……そっか」
そんな何気ない会話をしながら、家に向かって歩いていく。
こんな日も良いな、と思ったりした日曜日だった。
一週間後
「お姉ちゃん、また新しいパズルの雑誌見つけてきたんだけど……」
「やらないわよ?」
「最近出来たファミレスのジャンボパフェなんてどう?」
「よし。その話、乗った」