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オルベリオンのスコールは不定期に訪れるため、雨をしのぐための道具が必要になる。

しかし、雨合羽や傘をただ普通に使うでは一時しのぎにしかならず、ずぶ濡れになってしまう。

対策としてアカたちが用意したのはロープと杭だった。

雨合羽をいくつもバラしてつなぎ合わせた大きな覆いを使って雨宿りのためのテントを用意するのだ。

アユリの魔法で作り上げた支柱とロープと杭で枠を作り、覆いを被せて固定する。

最後にアユリが魔法で硬化させることで強い突風や雷にも耐えることの出来る強固なテントを作ってしのいでいた。



この二週間の道程で既に六度のスコールに見舞われている。

さすがにアユリがうんざりした様子で雨に濡れた髪を拭いていた。

アカはリルハの髪を拭いてあげながら不機嫌そうなアユリに苦笑する。

こう度々何時間も足止めを受けては不機嫌になるのも仕方がないことだろう。

アユリはアカの身体の心配をしているため不機嫌なのだがアカは知るよしもない。

雨に濡れて風邪でも引いてしまっては身体の弱いアカにとっては危険になる可能性も低くはなかった。

前回のオルベリオン横断の際もアカは高熱で寝込んでしまったのだ。

風邪を引いてから我慢してそのまま何度かスコールにやられたせいでかなりまずい状態になってしまう。

そのため今回もアユリはスコールの度気が気でないだけなのだ。


アカの調子が悪くなっていないか確かめるためにアカを見つめ続けておきたいのだがそうしているとリルハに誤解されて喧嘩になる。

かと言って見つめている理由をアカに知られてしまうとアカは隠そうとするので言えず、結局リルハにもアカにも誤解されたままだった。

アユリはどうしたものかと頭を抱えるしかない。

どの道アカを気にしていないといけないのは事実なのでもう誤解されようが気にしないで置こうかとも思っていたがスフェンのことが気になってできなかった。

そのせいでさらに不機嫌になるアユリを見てリルハがからかうように絡んで言い合いになる。


今回のテントを張ってから二時間ほど、そんなことを繰り返して過ごしていた。

外から聞こえてくる風の音は止む気配を見せない。

まだ夜には早いがこのままでは今日これ以上進むのは難しいだろう。

アカはそう考えて腰を落ち着ける準備をしていく。

アユリもそれに倣って準備して行き、リルハが夕食の準備に取り掛かったところで外の雨音が弱まっていくのがわかった。




夕食を終え、アカは空を見るため一人でテントの外に出る。

既に太陽は落ち、星が煌めいていた。

綺麗、とつぶやいて空に手を伸ばす。

その手が頂点についた時、流れ星が一筋、流れ落ちた。

「――あ」

とっさに閉じた手のひら。

流れ星をつかめるとでも思ったのだろうか、アカは自嘲する。


『逃げられるとでも思っているの?』

「……できれば逃げたいとは思っているよ」

『諦めないんじゃなかったのかしら?』

「それでも、怖いんだ」

『臆病ね』

「家に帰りたいよ」

『あなたに帰る場所なんてない』

「そうだね」

『あなたが壊した』

「その通りだよ」

『あたしの帰る場所もないわ』

「申し訳ないと思っているよ」

『謝って済むものではないわ』

「うん」


『それで、あなたはどうするの?』

「ぼくにできることをするよ」

『何かできると思っているの?』

「ぼくは無力だ」

『そうね、あなたは何もできない』

「何も救えない」

『逃げるだけしかできない臆病者、それがあなた』

「どうすればいいのかわからないんだよ」

『わかったところであなたはそれができるの?』

「できることならやりたいよ」

『できないくせに』

「そうだね、きっと、できない」


『弱虫』

「返す言葉もないよ」

『なら死ぬの?』

「まだ死なないよ」

『でも死ぬわ』

「わかっているよ」

『惨めに最後に死ぬの』

「ぼくにはお似合いだよ」

『隣で笑ってあげるわ』

「最後までそばにいてくれるのかい?」

『当然でしょう?あなたほど滑稽な人、あたしはもう一人くらいしか知らないわ』

「そう、ありがとう」


『もう一人の滑稽な人はいったいどうするのかしらね』

「ぼくとは違うよ」

『そうね』

「きっと諦めない」

『そうでしょうね』

「……けど、勝てないよ」

『当たり前じゃない。エンドロールは必ず訪れるの。そのあとには続かないわ』

「終わらないものはない、かな」

『抗うことなど不可能よ。だからこそあたしはあなたのそばにいるの』

「何故君はぼくのそばにいるの?」

『弱くてちっぽけで情けなくてどうしようもない、あなたみたいな人を見ているのが一番楽しいからよ』

「そっか」


『せいぜい嘘を吐き続けるといいわ』

「罪悪感が途切れないよ」

『自業自得ね』

「本当に、容赦がないね」

『甘やかしてほしいのかしら?』

「それはごめんだけれど」

『身の程をわきまえているあなたみたいな人は好きよ』

「それはどうもありがとう」


『その身に相応な終わりを』

「君に永遠の幸あれ」

『あなたに永遠の愛を』

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