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東方幻想夏記  作者: やまとく改二
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第七話〜戦う覚悟、対決への道〜


「チッ、何だよ!今日は全然釣れねぇじゃねえか!!」

「本当だよ!今日は帰って飲み直そうぜ!!」

この若者二人は毎日のように飲み歩き、ナンパをするのが日課のようになっていた。しかし、この日の夜ばかりは全く釣れなかったらしく、イライラしているようだ。

若者は帰る為、大通りを抜け、薄暗い路地裏へと入って行った。

「あーあ、こんな路地裏にいい女なんか居ねえかなぁ。」

「いや、流石に居ねえだろ、こんな物騒な所女だけで歩くってのは相当馬鹿....。」

そう言いかけたその時、前から人が歩いてくるのが見えた。若者は一瞬妖怪かと身構えたが、近づいて来たその人影の正体は若い女性だった。年齢は十代後半だろうか、色白な肌に、黒い浴衣を着ていた。

収穫がゼロだった若者達は、この機会を逃してはならぬとその少女に話しかけた。

「やあ、君一人?名前は?彼氏は居るの?」

「もし良かったら俺達と飲みに行かない?」

少女は立ち止まって俯いたまま喋り出した。

「やあ、君....一人?名....前、は?彼氏は居るの?もし良かった....ら俺達と飲みに行かない....?」

少女は若者達の言葉をそっくりそのまま返した。

「はははっ、何君、緊張してるの?大丈夫だよ!俺達悪い人じゃないから!」

「そうだよ!だから飲みに行こ!な?」

若者達は面白い冗談だと言わんばかりに少女に話しかけた。しかし、

「は...は...はっ、なぁに君、きんちょーして....るの?大丈夫だよ....。俺達悪い人じゃないから。そーだよ。だから?飲みに行....こ....な?」

やはり何を喋ってもオウム返しにしてくる少女に、若者は腹が立って来た。

「おいもう行こうぜ。話にならねえよ。」

「いや待てよ。おい、君さぁ、そんなに俺たちの事馬鹿にしちゃっていいのかよ?その気になれば君一人さらってやっちまうくらい楽勝なんだぜ?」

片方は呆れてしまって早く帰りたい様子だが、もう一人は相当腹が立っているようだ。

「いや待てよ....。おい、君さー....。」

少女がまたもやオウム返しにしようとしたその時、

「このアマ!!俺をナメたらどうなるか教えてやらあ!!」

遂に限界が来た若者が少女に殴りかかった。そして呆れていた若者が止めようとした瞬間だった。

ブシュッ!!

何かが切れる様な音がした。止めようとした若者は一瞬何が起こったか分からなかったが、目の前の光景を見てすぐに理解した。殴りかかった若者の首が宙を舞い、胴体からは噴水の様に血が吹き出している。

「う、うわぁぁぁぁっ!!」

若者が逃げ出そうと少女に背中を向けた瞬間、若者は胸を貫かれ、その場に倒れこんだ。

「な、何なんだ....。何者なんだお前!」

若者は力を振り絞って問いかけたが、少女は黙ったまま若者を見下していた。

若者はだんだんと痛みが消え、意識が薄れ、やがて息を引き取った。

「ふ....ふふっ。」

若者二人を殺害した少女、否、悪霊『奈落刃』は、二人の魂を喰らい、夜明けが近い夜の微かな闇の中へと消えていった。

夜が明け、日が昇り出した早朝、カズマは目が覚め、布団から出た。カズマはいつも通り掃除と朝食の支度をしようと台所へ向かった。すると、台所から音が聞こえた。カズマは気になり、すぐに走って行った。すると、そこには料理をする霊夢の姿があった。

「霊夢さん!?」

カズマの声に気付いた霊夢が振り返る。

「あら、カズマ。おはよう!昨日はありがとう!もう大丈夫だから。」

霊夢は昨日のアレが嘘だったかのように明るかった。

「いえ、大丈夫なら良かったです。では境内の掃除をして来ます。」

カズマはそう言って玄関に向かったが、

「もう終わったわ!今日は私に任せて!」

一体どうしてしまったのだろう。カズマはこの霊夢が偽物ではないかと一瞬疑った。

「やあね、カズマったら。本物よ。もうすぐ紫が来るから。」

「ああ、そうですか。分かりました。」

カズマがそう言って台所に戻ろうとした丁度その時、玄関を叩く音が聞こえた。カズマは玄関を開けて出迎えた。そこに居たのは紫....ではなく、魔理沙と銀髪のメイド服を着た女性だった。

「よお、カズマ!元気にしてたか?紫に聞いて来たんだ!」

「はじめまして。十六夜咲夜よ。よろしくね。」

カズマは思わぬ来客に驚きの表情を浮かべた。

「はじめまして、カズマです。よろしくお願いします。」

自己紹介を終えたところで、二人を中へ通した。

「あら、魔理沙、咲夜。いらっしゃい。紫から何か聞いたの?」

霊夢はちゃぶ台に朝食を並べながら二人を出迎えた。

「なんだ霊夢、大丈夫そうじゃないか!心配したぜ。」

「落ち着いたみたいで何よりよ。」

魔理沙と咲夜は安心したようだった。

「あら〜、三人共もう着いてたの〜?早いのね〜。」

そこに紫も到着し、これで全員が揃った。霊夢はお茶を運んできて、一つずつ入れていった。

「みんな、心配掛けてごめんなさい。悪いんだけど、私とカズマ、まだご飯食べてないの。話は食べてからで良いかしら?」

その霊夢からの問いかけを、紫、魔理沙、咲夜は承諾した。時間をかけてしまっては申し訳ないので、霊夢とカズマは少し早めのペースで食べ終えた。すると、紫が喋り出した。

「さて、それでは良いかしら?」

紫からの問いかけに、四人は頷いた。

「それじゃあ早速だけど、さっき人里で悪霊が絡んでると思われる事件が起きたわ。」

その言葉を聞いた途端、さっきよりも緊張感が高まった気がした。そして早速被害者が出たという真実に、カズマは驚愕した。

「本当ですか!?紫さん!」

「ええ、被害に遭ったのは人里に住む若者で、一人は首を切断され、もう一人は胸を貫かれていたそうよ。」

手口が惨すぎて、カズマは思わず口を覆った。紫は、そんな事はお構いなしに話を進める。

「悪霊の仕業かどうかは死体を見ればすぐに分かるわ。」

死体を見れば分かる。という事は、何か特徴を残していくのだろうか。

「紫!それはどうゆう事なんだ!?」

魔理沙のその質問に、紫よりも先に霊夢と咲夜が答えた。

「悪霊は普通の妖怪と違って魂を喰らうのよ。」

「よって悪霊に捕食された者の肉体は、ミイラのような抜け殻になってしまうという事です。」

魔理沙とカズマは初めて知る事だった。

「お見事、正解よ。そして悪霊にはもう二つ特徴があってね、一つは死んだ人間の魂しか喰えない事。もう一つは外見的な特徴よ。悪霊は額に『怨』という文字の様な傷がある。だから見分ける時にはそれを目印にすると良いわね。」

悪霊の特徴。これが分かっただけでもカズマは大分戦いやすくなった様な気がした。

そして紫は再び喋り出した。

「そしてこれは本題なのだけど、私達はこれから、幻想郷を守る為に悪霊達と戦わなくてはいけない。それと、何故悪霊達が結界を引き裂くのかを突き止めなくてはいけない。人工的に引き裂かれた結界の裂け目は物凄く不安定になる。よって外の世界は外の世界でも、どの時間軸の外の世界と繋がってしまうか分からない。」

「紫さん、どの時間軸か分からないというのはつまりどういう事でしょうか?」

「カズマ、これは貴方を元の世界に返せない理由の一つなの。」

カズマはますます混乱した。今幻想郷の結界を悪霊達が無理矢理引き裂いている。そしてそのせいでカズマや高木が迷い込んだ。しかし、紫はわかるように説明した。

「人工的に結界を引き裂くと、幻想郷と外の世界の間の空間が全体的にアンバランスになる。よって色々な時間軸と繋がってしまう。その状態で結界を私が広げる、あるいは緩んでしまったらどうなるのか。それは幻想郷と外の世界の崩壊を表すわ。ね、霊夢?」

紫がそう言うと、霊夢は頷いた。

「そうよ、紫の言う通り。つまりカズマ、貴方は偶然貴方の時間軸に繋がった裂け目のトンネルを潜って幻想郷に来たってわけ。」

カズマはようやく理解出来た。

「じゃあ、高木さんは別の時間軸の人間、ということですか?」

カズマは霊夢に問いかけた。

「ええ、そうよ。」

霊夢はそう答えた。すると咲夜は、

「頭が混乱するのも無理は無いわ。でも、少しずつでもその状況を受け入れなくてはいけない。そして、悪霊達と戦う覚悟も。」

その言葉を聞いたカズマは、胸をナイフで突き刺された気分になった。

戦う覚悟を決める。確かにそうだ。今まで自分は、ただ霊夢やみんなの役に立ちたい、悪霊達を倒したいと考えていた。でも、よく考えてみれば無謀過ぎた。

霊夢や紫でも厄介だと言う相手。それを普通の人間であるカズマに簡単に倒せるわけが無かった。

カズマはしばらく黙ってしまったが、その沈黙を遮る様に、紫が口を開いた。

「霊夢、もし辛かったら無理にとは言わないわ。でも、これは幻想郷の未来が掛かってるの。貴女の答えはどうなの?悪霊達と戦う覚悟は。」

霊夢をまっすぐに見つめて覚悟を問う紫。その紫と真っ正面から向き合う霊夢。霊夢の答えは出た。

「私は覚悟を決めるわ、あいつらと戦う!幻想郷を守る為に、そして、八年前の惨劇を繰り返さない為に!」

「....よく言ったわ。」

紫はそう呟くと、霊夢の頭に軽く手を置いた。そして、カズマも答えは出た。

「俺も戦います!その覚悟を決めます!俺はみんなの様に強くは無い....。でも、このまま見ているなんて出来ません!」

その答えに皆、首を縦に振った。

「そうこなくっちゃ!!それでこそ男だぜ!」

魔理沙はそう言うと、親指を立てて笑った。

「....決まりね。それじゃあ私はそろそろ失礼するわ、お嬢様方の昼食の支度があるので。」

そう言うと、咲夜は立ち上がり、「またね。」と言いながら手を軽く振って帰って行った。

「それじゃ、みんな今日は解散で良いかしら?」

紫の問いかけに、残った三人は皆「YES」と答えた。

すると紫は、スキマを開き、笑顔で手を振って消えていった。そして魔理沙も、

「私もそろそろ帰るぜ!新しい魔法の研究があるんだ!」

と言って玄関から出ると、ほうきにまたがって帰って行った。

残った二人は、

「それじゃ、これから忙しくなるけど、改めてよろしくね?」

霊夢は笑顔でカズマに言った。そしてカズマも、それに答えた。

「こちらこそよろしくお願いします。霊夢さん!」

そう言って、二人でまた笑った。

「あとカズマ、敬語じゃなくていいわよ?」

「え?」

霊夢は「何でもない。」と神社の中に戻って行った。カズマは軽くため息を吐くと、晴れ渡った空を見上げて呟いた。

「霊夢に伝えるのは、まだ先かな....。」






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