第十五話〜早苗とカズマ、弾幕バトル!!〜
妖怪の山での奈落刃戦から二週間。悪霊の襲撃、異変などは無く、紫からの連絡も無い。今日もカズマは境内の掃除に励んでいた。
「霊夢〜、ここ終わったら休憩で良いか?」
「そうね、大分綺麗になったし、大丈夫よ。」
霊夢から休憩の許しが出たところで、カズマは最後のひと頑張りと言わんばかりに掃除を続けた。
「そういえば霊夢、少し気になったんだけど、人里で妙な噂を聞いたんだ。」
「妙な噂?どんな?」
首を傾げる霊夢に、カズマは噂の内容を説明する。
「なんでも人里から少し離れた森の奥に廃神社があって、肝試しに行った若者が女の声や男の声を聞いたとか。」
ただ人が話してたのを聞いただけだろう。と聞き流すのかと思ったが、霊夢は珍しく真面目に聞いてくれた。
「うーん、確かにある事にはあるわよ。でもあそこには私や紫ですら近づくのを拒む場所なの。ぶっちゃけ一億円貰っても行きたく無いわ。」
一億円貰っても行きたく無い....。あの霊夢が金を貰っても行きたく無い場所があるとは、余程やばいのだろうか。
「カズマも行かない方が良いわ。あそこ、カズマだから言うけど、悪霊の上位三人と最も出会しやすいらしいから。」
うん、それを聞けば意地でも行かない。カズマは知らないで近づかなくて良かったと考えたが、もしそこが悪霊達のアジトになっているのであれば、いずれは行かなくてはならない事が目に見えていた。
「それで....。」
「こんにちは!!」
霊夢は話を続けようとしたが、それは元気のいい少女の声によってかき消された。
「え、あ、こんにちは。(誰だろう、めちゃくちゃかわいい。でも何処かで見たような....。)」
「やっほー早苗。相変わらず元気そうね。洩矢の方まで被害が出なくて良かったわ。」
「ええ、でも天狗達が大変な騒ぎになってたんですから!椛さんだってこの前戻って来たばっかりですし。」
妖怪の山の騒動と椛を知っている、という事は妖怪の山かもしくはその周辺の住人で間違いない。しかしあの辺に他に家などあっただろうか。
「あ!こんにちは、貴方がカズマさんですね!文さんの新聞読みました!銃を使えるなんて凄いですね!でも、失礼ですが見た感じ日本人....ですよね?」
銃や日本という国を知っている。という事はこの人は外の世界の人間である。カズマは一発で勘付いた。
「はじめまして。カズマです。よろしくお願いします。」
カズマの自己紹介を受け、少女はニコッと笑った。
「こちらこそはじめまして。東風谷早苗と言います!洩矢神社で巫女をしていて、元は貴方と同じ高校生ですよ!JKってやつです!」
今まで結構外の世界の人とは会ってきたが、カズマはこの人が一番話しやすいと感じた。
「ん?そういえば東風谷早苗さんってテレビで出てたあの巫女さんですか?」
「あ、多分そうです!ご存知だったんですか?」
カズマは元の世界にいた時、テレビの神社の番組で巫女さんが映り、一度会ったみたいと思った事を思い出した。
「まさかこんな所で会えるなんて、お会いできて光栄です!」
カズマは気持ちの昂りを抑える事ができない。
「ちょ、そんな大した人じゃ無いですよ。たまたま取材が来てただけで....。」
早苗は恥ずかしそうに頬を赤らめた。
「ちょっと二人共、私さっきから全く話についていけないんだけど。」
二人で盛り上がっているのが気分悪かったのか、霊夢はむすっとした顔で首を突っ込んだ。
「ああ、ごめん。外の世界にはテレビって言う道具があって、そこに一度早苗さんが映ったんだ。」
「はい、直接会った事は無いんですけどね。」
それを聞いた霊夢は何となく理解したようだった。
「へぇ〜、なるほどね。そういえば早苗も外の世界の人間だしね。それで、今日は何しに来たの?この前みたいにいきなり襲撃とかやめてよ。」
霊夢は早苗に襲撃された過去があるため、神社に来る度にほぼ毎回と言っていい程言っていた。
「そんなんじゃ無いですよ〜!ただでさえ今は人間や妖怪同士で争ってる場合じゃ無いのに!」
早苗は片手を前に突き出して激しく振り、全力で否定した。
「霊夢さんが怪我したって聞いたからお見舞いに来たんです!あ、これお見舞いの品です。」
早苗は風呂敷を手渡すと、話を続けた。
「それと、今日はカズマさんに会いに来たんです!」
思わぬ展開。こんなにかわいい女の子が会いに来てくれるなんて一度も無かったカズマは、心から天に感謝した。
「そうだったんですか!ところで、どんな用件で?」
「はい!悪霊を倒した凄い人と是非一度弾幕勝負をしてみたいと思いまして!」
実質襲撃じゃねぇか....。霊夢は腹の中でそう思ったが、口には出さなかった。
「いや、あの、俺スペルカード持って無いんですが....。」
「早苗、残念だけどそういう事だから、弾幕勝負は無しって事で....。」
霊夢はそう言いかけたのだが、
「大丈夫ですよ!手加減しますし、もし怪我しちゃったら私が膝枕で好きなだけ寝かせてあげますから。」
「よっしゃキタすぐやりましょう。」
カズマの返事の方が早かった。
「膝枕に釣られたわね....。どうなっても知らないわよ。」
霊夢は呆れた様子で端に避難した。
「それでは行きますよ!えいっ!」
早苗は宙に浮き上がると、光の弾を出現させ、カズマに飛ばした。しかし、空も飛べないカズマは避けるので精一杯だ。
「うわっと!やばっ、こりゃ連射じゃないと無理だな....。」
カズマは銃を単発から連射に切り替え、早苗に発砲した。しかし、早苗は当たる前にバリアを張り、弾の被弾を防いだ。
「カズマさん!もうおしまいですか?では、こちらも行きますよ!スカイサーペント!!」
早苗は手を前に突き出すと、そこから大蛇の様な弾幕が飛び出し、カズマに襲い掛かった。
「クッソ!避けなきゃやばい!」
カズマは頬に弾幕が掠ったが、直撃は逃れた。
「(どうする俺!スペルカードは使えねぇし、弾には限りあるし!)」
カズマが自問自答しながら必死に避けまくっていたその時、
「カズマ!できない確率の方が高いけど、自分が出したい技を意識して全力で想像したスペルカードの名前を叫びなさい!!」
霊夢はスペルカードの出し方をカズマに教えた。普通に考えればできる訳ない、だって唯の人間だ。能力だって境内を掃除する程度の能力のカズマに何ができるというのだろう。
「カズマさん!もう降参ですか?私はまだまだやれますよ!」
早苗の弾幕は弱まらない。これはもうやるしかない。
「ああ!こうなりゃ厨二病全開で行きますよ!!」
カズマは技の内容を全力で想像(妄想)した。そして、
「よし!あれだ!スペルカード発動!!ルナティックレッドアイズ!!」
その瞬間、カズマの目は赤く光り、辺りを異空間のように変えた。
「なっ!?」
「あれは鈴仙の!一体どこで!?」
早苗と霊夢は驚愕した。一体どうして鈴仙のスペルをカズマが使えるのだろう。
「てゐを一緒に追いかけた時の巻き添いが今になって役に立った!次はコレです。スペルカード発動!!夢符・封魔陣!!」
カズマが叫ぶと、光の柱が早苗を直撃し、早苗は墜落した。そして、カズマが気を抜いた瞬間、異空間は消え去り、元の博麗神社に戻った。
「(本物に比べて威力は低いけど、まさか他人の技を再現できるなんて....。)」
霊夢は他人の技を再現するとは思っていなかった為、これには度肝を抜かれた。
「あっ!早苗さん!すみません、大丈夫ですか?」
カズマはすかさず早苗に駆け寄った。
「いたた、大丈夫です。まさかあんな能力があるなんて知りませんでした。」
否、カズマも自分にあの能力があるとは知らなかった。
「霊夢、これは一体....。」
「分からない。カズマは博麗の『加護』は受けている。でも、博麗の『力』は持っていないから本来なら博麗に関係するスペルは使えないはずだけど....。」
霊夢が首を傾げるのも無理は無かった。本来なら本当に博麗に関係するスペルは再現すら出来ない。紫なら何か知っているのだろうか。否、こんな例は聞いた事がない。しかし、他人の能力を真似する能力、これはまるで....。
「ん?どうした霊夢。」
「いえ、何でもないわ。」
「まあ、何はともあれ楽しかったですよ!またやりましょうね!それでは私はそろそろ帰ります。」
早苗は満足げに言うと、手を振りながら帰っていった。
その晩、いつもより遅く寝床についたカズマに、特にこれと言って変わった事は起きなかった。
「結局、昼間のは偶然だったんだな....。あの後再現しようと思ったけど出来なかったし....。」
そんな独り言を言って目を閉じかけたその時、カズマは部屋の隅からただならぬ気配を感じた。体も動かない。金縛りという奴だ。
「(クソ、体が....。動かねえ!)」
向きたくはなかったが、辛うじて動かせる首を気配がする方向にゆっくりと向けた。
「誰....だ?」
部屋の隅には人影が見えるが、顔が見えない。しかし、目が慣れてくるとその姿がはっきりしてきた。黒い浴衣、長い髪のポニーテール。そして、月明かりが額の『怨』の文字を照らし出した。
「お前は....!」
そこに正座していたのは間違いない。悪霊『奈落刃』だ。カズマの額を冷たい汗が流れた。そしてついに、止まっていた歯車が動き出す....。




