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東方幻想夏記  作者: やまとく改二
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第十三話〜待ち侘びた帰還、店長高木再び!〜


散々走り回ったカズマは、ヘトヘトな状態で夕食と入浴を済ませ、病室に戻ってベッドに入った。

「あー、疲れた。逃げ足は早いんだよなぁ。」

正直てゐの事は追いかけなくても良かったのだが、これが良い薬になってくれる事をカズマは祈った。

「失礼しまーす。皆さん体調は大丈夫でしょうか?」

鈴仙が夜の見回りに来た。本当に外の世界の入院と変わらない事にカズマは懐かしさのようなものも覚えた。

「お変わり無いみたいですね!それじゃあ失礼します。おやすみなさい。」

「鈴仙さん。」

「はい?」

鈴仙は立ち去ろうとしたが、カズマが引き止めると、鈴仙は振り返った。

「あの、俺と霊夢は明日には帰れるんでしょうか?」

「ああ、それは師匠の判断ですが、霊夢さんは怪我の具合は比較的軽症ですし、カズマさんは付き添いのような感じですので、多分大丈夫かなと思います。」

「そうですか、椛さんはまだ不可能でしょうか?」

カズマの質問に、鈴仙は少し考えるような素振りを見せた。

「椛さんは怪我の具合があまり良くないので、二週間前後になってしまうかと....。」

「そうですか。ありがとうございます。おやすみなさい。」

「はい、おやすみなさい。」

鈴仙は再び挨拶を返すと、電気を消して去って行った。やはり予想はしていた事だが、あの時自分がもっと早く向かっていたらという感じる必要のないはずの罪悪感が湧いてくる。カズマは布団を頭から被り、眠りについた。

朝、カズマは目を覚ました。どういう訳だろうか、病院のベッドはいつもより良く眠れる。霊夢はまだ寝ているようだが、椛は目が覚めたようで、体を起こしている。

「椛さん、おはようございます。体調はどうですか?」

「カズマさん、おはようございます。すみません、心配かけてしまって....。まだ痛い所はありますけど、大丈夫です。」

椛は少し微笑んで答えた。しかし、比較的鈍感なカズマでも気付くぐらいに、その笑顔が作り笑顔である事は明白だった。

「椛さん、嘘は吐かないで下さい。俺が...もっと早く行っていれば....。もっと早く狙撃していれば椛さんもこんな怪我をする事は無かった....。ごめんなさい。」

椛はしばらく黙っていたが、カズマへの恨みや憎しみと言った感情はこれっぽっちも無かった。

「カズマさん、顔を上げて下さい。私、カズマさんの事は恨んだりしてないです。むしろ、最後に狙撃で手助けしてくれるカズマさんはカッコ良かったです。」

カッコ良かったとは一度も言われた事がないカズマは、少し嬉しかったが、素直に喜べるかと言われれば喜べなかった。

「カズマさん、ちょっといいですか?」

椛はゆっくりベッドから出ると、よろけながらゆっくりとカズマのベッドへ歩いて来て、ベッドに座った。

「椛さん、無理しちゃダメです。手伝いますから、ベッドに戻りましょう。」

カズマがそう言ったその時だった。椛はカズマに寄り掛かり、そっとカズマの背後に両腕を回した。

「ちょっとだけ....。このままでいて下さい。私、悔しくて....。戦いが始まってすぐに吹き飛ばされて、スペルカードまで簡単に真似されて、結局他の人に倒して貰って....。」

椛はカズマの胸に顔を当て、泣いていた。カズマはそっと椛を抱きしめたが、正直なんと声を掛ければ良いのか分からなかった。

「はい、大丈夫ですよ....。その気持ち、良く分かります。」

その一言だけ言うと、カズマは椛をベッドまで連れて行き、再び寝かしつけた。丸くなって眠る姿は本当に犬のようだ。

「....椛さん、ありがとうございます。」

カズマがベッドに戻ろうとすると、どうやら霊夢も起きたようだ。

「ふぁ〜、よっく寝た〜。おはよ〜カズマ。」

「おはよ。爆睡してたよな霊夢。足は大丈夫か?」

ため口OKになってからずっとこんな感じの会話だ。だがカズマとしてはこっちの方が楽だった。

「足なら大丈夫よ。傷も消えたし。まったく、この私が悪霊に傷を負わされるなんて散々だったわ。」

確かにそうだ。霊夢は基本どの異変の時にも無傷で帰って来るらしい。しかし、そんな霊夢に傷を負わせるという事は、悪霊の戦闘力が尋常じゃないという事だ。これでは普通の人間であるカズマがタイマン張っても勝てる訳がない。

「おはようございます、霊夢さん、怪我の具合は如何ですか?椛さんはまだ眠ってらっしゃるようですね。」

そんな事を話しているうちに、鈴仙が病室の見回りに来た。

「おはよ〜、全然平気よ。むしろ前より良くなったわ。」

「それは良かったです。師匠が霊夢さんは怪我の具合が大丈夫そうなら退院しても構わないって言ってましたよ!」

「そう、助かったわ。世話になったわね。」

「ありがとうございました。鈴仙さん。八意先生にもお世話になりましたと伝えて下さい。」

それを聞いた鈴仙はニコッと笑った。

「はい!カズマさんも何かありましたらまた来てくださいね!」

「了解です。それではこれで失礼します。それと、椛さんの事、よろしくお願いします。」

鈴仙はこくっと一回頷いた。

「任せてください。きっと大丈夫ですから。」

「ありがとうございます。」

カズマは鈴仙に椛の事を託すと、霊夢と共に永遠亭を後にした。

「本当に治ってるんだな、あの薬、凄い効果だ....。」

「ええ、カズマにも心配掛けたわね。」

しばらく会話をしながら歩いていたが、一向に景色が変わらない事にカズマは不安になった。

「あの、霊夢。さっきからずっと竹林ばっかりな気がするんだけど。」

「ああ、カズマは初めてだもんね。ここは迷いの竹林よ。出口なら知ってるから、任せておきなさい。」

そうとあれば心強い。しかし、何処までも続いているような竹林。一人で来ていたら絶対に迷っていただろう。

「あとここ、よく妖怪やら妖精やらが出るから気をつけなさいよ。」

「脅かすなよ。」

噂をすれば何とやら。五メートル程先に、蠢く何かの姿を確認した。

「あれ、何かいる。妖怪かしら。」

「マジかよ....。」

霊夢はお札、カズマは銃をケースから取り出し、身構えた。すると、あちらもこちらの存在に気付いたようで、歩いて近寄って来た。

「あれ、霊夢ちゃんとカズマじゃんか!何してんだい。こんなとこで。」

歩いて来た影は妖怪では無く高木だった。

「なんだ、妖怪じゃなかったわね。」

「高木さんじゃないですか、そっちこそ何してるんですか?」

高木の格好は、青いつなぎに長靴、竹でできた大きな籠を背負い、片手にはスコップを持っていた。

「なんだとはご挨拶じゃのう。俺は店で使うたけのこ掘りに来てたんじゃぞい。」

「そっか、そうだったのね。私達は永遠亭で治療して貰った帰りよ。」

「そうです。それにしてもびっくりさせないでくださいよ〜。てっきり妖怪が出たのかと思いましたし。」

カズマの言葉を聞いた高木は笑った。

「はっはっは!そう言う事だったのか!まったく、人里で天狗が配ってた新聞見てびっくりしたぞ!博麗霊夢と謎の少年、妖怪の山で悪霊と激突し勝利!しかし博麗霊夢が足を負傷、警備の天狗がほぼ全滅なんてでっかく書いてあったからよ〜。心配したぞい。」

うん、心配はしていたのだろうがこの喋り方とたけのこ掘りの真っ最中という事で説得力が無い。

「確かにその通りよ。あれで下から二番目って言うんだから笑っちゃうわよね。カズマと魔理沙の援護が無かったら死んでたわ。」

「なるほどなぁ、カズマ〜お主女の子の危機を救うとは中々やるな〜。その銃も、見る限りかなりの命中率がありそうだし。」

「いえいえ、魔理沙もいたおかげです。それより、ここは危ないらしいですから出口に行ってから話しましょう。」

「おお、そうだな。まあ俺は今まで三・四体出会してるけど、何とかなったな。」

そして、三人で出口に向かって歩いた。しばらく歩かないうちに、出口の光が竹の間から差し込んだ。

「はあ、やっと出口ね。相変わらず長いわ!この竹林!」

「そうだな、こんなに長いとは思わなかった。」

「いや〜でも、大量のたけのこはゲットできた事だし!二人は無事だった事だし!良かった良かった!これで安心して帰れるぞい。それじゃ、またの。」

高木はそう言うと、こちらに手を振りながらまっすぐ続く道を歩いて行った。二人も高木に手を振ると、帰り道である反対方向に歩いて行った。

帰る途中、カズマは一つ気になった。

「んー?」

「どうしたの、考え事?」

霊夢はカズマにさり気なく質問した。

「あ、いや。高木さん、一人で迷いの竹林のあんな奥に行ってる上に、妖怪と三・四回出会して無事なんだよな....。」

「ええ、そうみたいね。それがどうかしたの?」

霊夢は特に気にしていないようだった。しかし、

「いや、もしかしたらあの高木さんって、実は結構強いんじゃ....。」

その瞬間、しばらく二人の間に沈黙の空間が出来たような気がした。

「ええ?....ふふっ!きっと運が良いだけよ。変な事気にしてないで早く帰るわよ!」

「....ああ、そうだな。」

二人は再び歩き出した。神社に着く頃には昼になっているだろう。しかし、二人はそんな事は気にせず、まっすぐな道を進むのだった。

その頃....。

「....紫さーん。いるんじゃろ?出てきてくれないかい?」

少し大きめの声で紫を呼ぶと、スキマが開き、紫が姿を現した。

「呼んだかしら?高木。もしかして例のあれのこと?それならもうすぐ出来るわ。なんでも、私が一度も作った事の無い物だから....。」

「そいつは助かるの〜。流石に二枚だけじゃ本気が出せなくて。」

高木は鼻の下を手で擦りながら照れくさそうに笑った。

「でもまあ、面白いわよ。今まで作った事の無いスペルカードを作るのって。それじゃあまたね。」

紫はそう言うと、スキマを閉じて姿を消した。残された高木はしばらく立ち尽くした。

「....スペルカード発動。制圧・G3A3!!」

高木は道端の木に向けてそれを発動した。その瞬間、高木の手に銃が形成され、その銃から放たれた無数の弾丸が木を撃ち抜いた....。



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