第36話 友達
学園の制服に着替える。
「よし!」
ビシッと制服を着て、学園に持っていくカバンの中身をチェックする。
「えーと、国語と数学と魔法と貴族科の教科書OK!おっとっと!筆箱も入れて、これで完璧!」
そして準備したカバンをインベントリに放り込む。あれ?カバンいらなくない?
と思ったヒロトだった。
部屋の扉を開けて、廊下に出る。他の部屋からは学生と思われる人の声と、メイドなどの従者の声が複数聞こえる。
俺は従者を連れてきていないから変にお節介を焼かれることもないし、前世から1人暮しにはちょっとだけ憧れてたからちょうど良かったかもしれない。
そのまま廊下を歩き、階段を降りて管理人室に入る。
「失礼します。鍵を置きに来ました」
「おっ!昨日の坊主じゃねーか!お前の噂すごいな!婚約者が3人もいるらしいじゃねーか!男の夢、ハーレムを実現させるとは…くっ!坊主が羨ましいぜ!」
あ、あはは。確かに今では慣れてしまったけど、異世界ものの定番といえばハーレムなんだよなぁ。いやー、貴族に生まれて良かった良かった。
「そうですね。それで鍵はどこに置けばいいんですか?」
「食えねーやつだな坊主は!それで鍵だったか?鍵なら自分で管理するんだぞ?」
「そうなんですか!?」
「なんだ初めて知ったのか。というかいちいち俺のところに鍵を置きに来たり取りに行ったりするのは面倒くさいだろ?それと俺は寮の管理人だからな?鍵職人じゃないからな?」
「ははは、そうですね。じゃあ学園に行ってきます」
「坊主…あのな、ここも学園だし向こうの建物のことは校舎って言うんだぞ?」
ビクッ
「…ははは。もちろん知ってるに決まってるじゃないですか。それでは失礼しました。」
「どうだかな」
これからどうするかなー?校舎に行くにしてもまだ時間があるし…女子寮に行くにしても不審者扱いされたら困るし…。
「あれ?何をやってるんだろう?」
学生?が剣を振っているように見える。
とりあえず近づいてみるか!
歩きながら近づく。
「?君、こんなところでどうしたんだい?」
髪が白い。まさかとは思うけど…
「君が剣を振っているのを見たから来たんだ。それで君の名前は?」
「俺?俺の名前はブレイド・スパニッシュ。王太子だよ。だからと言って膝を着いたりしなくていいからね。それで、君の名前は?」
あっまずい。敬語を使わなくては。
「はっ!私の名前はヒロト・クラッシェルです。侯爵をしています」
「そうか、君が妹の婚約者か。妹を頼むよ」
「お任せください」
「じゃあ折角だし僕に剣を教えてくれないかな?」
「それはできません。私の剣術はブラト流なので王国剣術とは違います」
「なるほど…だったら模擬戦はどうだい?」
え?論外なんだが…
「模擬戦なんて出来ないですよ」
「それもそうだね。じゃあどうしようか?」
うーん…あっインベントリに入れて置いたやつがあるジャーン。
「であれば僕が作ったクッキーを食べてみませんか?」
「毒は入ってないかい?」
「入ってる訳ないですよ!」
「ははは、冗談だよ。では頂くとしようかな」
王太子殿下が俺の作ったクッキーを食べる。たまたま会っただけだが、クッキーを食べてもらったのにはいくつかの目的がある。1つ目はヒカリの兄なので、結婚すれば義兄さんになる。その時の為だ。2つ目は王太子を味方に付ける為だ。クラッシェル領では楽市楽座をしているから住人やお金が集まってくる。そのせいで色んな貴族に恨みを買っている。やめる気はない、ここでやめたら後々支障が出る。反発を抑制したりするためでもある。まぁその儲けたお金で反発が起きたら意味がないんだけどね。3つ目は人脈作りの為だ。お金に困った時、戦争が起きた時など、あればきっと役に立つからだ。このような理由で今王太子にクッキーを食べて貰っている。仲良くなって損はないからね。
「おお…中にチョコチップが入っていてとても美味しい!…下手したら王家お抱えの料理人より美味しいかもしれないな」
「それは良かったです」
ふぅ。どうやら王太子殿下も満足したようだな。
「このクッキーに免じてちょっと話をしたいんだが…聞いてくれるか?」
「是非聞かせてください」
いやーどんな話をするんだろう?
「もしかしたらヒカリからもう聞いているかもしれないが、実は僕、男の子の友達がいないんだ。女の子の友達なら沢山いる。王太子だから、世継ぎの為だからとか、そういう事は分かってるんだ。だけど、いつも王城から外で楽しく遊んでいる男の子達を見て、僕もそんな風に遊びたいと思ってしまう。普段は婚約者と一緒に遊ぶけど、ヒロトみたいにそこまで婚約者とは仲が良くないんだ」
「…」
「だからさ、ヒロト。僕の友達1号になってくれないかい?」
王太子と友達になって損はないし、むしろ得しかない。それに人脈とか関係なく、王太子殿下とは友達になりたいな。学校で遊んだり、家で遊んだり…
「…王太子がそれでいいなら…。それに僕も同年代の男友達がいなかったので」
「ははは!そうだったのか!今まで嫉妬していた自分がバカみたいだ!」
「?」
「ああ、ごめんごめん。今までヒロトには婚約者に友達、権力とか全部を持ってると思ってたんだ。それで嫉妬していたんだ、だけど人は見かけによらないね。侯爵の当主でもボッチだったのか!」
王太子がまた笑いだす。
いやいやそんな人間どこにも居ないし。そんなの小説の中だけだ。
「笑わないで下さいよ!それに殿下だって同じじゃないですか!」
「僕は王城という檻に囚われてたから仕方ないだよ。だけど君は…くっ、あっはっはっは!」
「そんなに笑ってひどいですよ!」
「いやーごめんごめん。それにしても友達かぁ。僕には縁が無いものだとずっと思ってたんだが…こんなにいい友達を持てて僕は幸せかもしれないな」
「僕だってそうですよ」
「それもそうか。ところで友達に敬語っておかしくないか?」
うわ。めんどくさそう。
「僕は友達いなかったので分かりません」
「そうか…じゃあもう俺達の仲だろ?だから敬語なんていらないな。」
「そうですかね?」
「俺の心の内の事を話したんだ。もう親友と言って…いや、もう親友だな。じゃあ親友として命令する。俺の事はブレイドと呼び、敬語はなしだ。いいな」
「分かったよ、ブレイド」
というか親友として命令って…さすが王太子殿下だ。
「うん。いいな」
「じゃあ他にもお菓子あるから食べる?」
「何を言ってるんだ?もう7時30分だぞ?ほら」
そう言ってブレイドが学園の大時計を指指す。
「ほんとだ」
「言ったろ?そうだヒロト。学園の教室が開くのは何時か知ってるか?」
…何時だろ?
「8時?」
「違うぞヒロト。8時は1時間目の時間だ。正解は7時45分だ」
思ったよりおしかったな。
「そうだったのか。ブレイドはよく知ってるね」
「?当たり前だろ。だって俺は将来の王だぞ。他のものより能力で上を行かなければならないからな」
なるほど。
「それより、早く教室に行くぞ」
「え?どこの教室なのかとか見なくていいの?」
「ヒロトは子供でも上級貴族なんだぞ?だからA級は取れて当たり前、そのA級の中で何点なのかが大事なんだ」
いきなりハードルあげてくるじゃん。ところであれ?
「点数と組分けって同じところにあるんじゃないの?」
「そんなことも知らないのか。点数と組分けは同じ場所にないぞ。それと教室とかの場所は分かるのか?」
「何も分からない…」
「そうか。ヒカリから聞いてきた通り常識知らずなんだな」
と、ブレイドが笑う。
「いつ聞いたの!?」
「ん?俺の父さん…いや、国王から教えてもらったんだ」
え〜。そういう事は言っちゃいけないと思うんだけど…
校舎に近づくにつれてガヤガヤと騒音が大きくなっていく。
「なんだ?」
「どうしたの?」
ブレイドが首を傾げている。
「いや…もう校舎は開いているはずなんだが…何かあったようだ」
何があったんだ?とヒロトが考えていると、中から先生?と思われる人が出てきた。
「すみません。教室や点数、順位付けに時間がかかりました。それでは!」
そう先生が言うと、扉が開く。
「よし。俺達も行くか」
「うん」
ブレイドにくっついて進んでいくと、クラス分けの表があった。
「順位付けのやつは先だな」
そう言ってブレイドは進んでいく。
俺は不安だからクラス分けを見てみる。すると、
「あっ!あったぁー!」
無事A級のクラスに入れた。チラッとしか見なかったから自分のしか見れなかったが、まぁクリスにヒカリ、ユーリも皆頭がいいから大丈夫だろう。
「おーい。ヒロト、置いてくぞー」
「あっ!待ってよ!」
「ほら。ヒロトは…1位だな…」
「やったぁ!」
俺は200点満点だったから、めっちゃ喜んだが、ブレイドの元気がない。
「どうしたのブレイド?ブレイドも2位じゃん」
まぁユーリもクリスもヒカリも2位だけど。
「だってさ。ヒロトの婚約者達と同じ順位なんだぞ!しかもヒロトに負けたし…」
あっそれが原因だったか。
「でも2位だし、198点で十分すごいじゃん」
「いや…俺は王太子だから1位にならないと…だからといって手を抜くなよ!」
「抜かないし、そんなに気を張らなくてもいいと思うけどなぁ。だって王太子だって1人の人間なんだからさ!辛いことがあったら言ってよ」
「そう言ってくれると嬉しいな。だからといって2位を取っちゃいけないけどな」
「そうか。じゃあ頑張れよ、王太子殿下。」
「ああ」
サボってすみませんでしたー!
コロナに感染した訳じゃなくて、単純に学校で忙しかったです!(学力テストがあるので…)
本人は至って元気です!
ちなみにサボったからと言って何かする訳でもないです。




